認知バイアスとは、人が、ものごとを判断するときに起こす、「決まった向きの、かたより」のことです。でたらめなまちがいでは、ありません。だれもが、同じ場面で、同じ向きに、まちがえます。だから、名前がついていて、先に知っておくことが、できます。
先に、書いておきます。このサイトには、認知バイアスの記事が、30本以上、あります。全部に、私が実際にそのバイアスにはまった話か、売る側として使った話を、書いています。この記事は、その入口です。私がお金を失ったバイアスを、金額の大きい順にならべたあとで、全部の記事を、種類ごとに、一覧にします。
この記事では、意味を先に書いて、そのあとで、チェックリスト、私の損の順位、種類ごとの一覧、つき合い方を書きます。
1. 認知バイアスとは
1-1. 意味と、由来
研究の出発点は、1974年に、エイモス・トヴェルスキーと、ダニエル・カーネマンが、科学雑誌に発表した論文です。人は、むずかしい判断を、かんたんな近道(ヒューリスティック)で、すませている。その近道は、ふだんは役に立つ。けれど、決まった場面で、決まった向きのまちがいを、生む。2人は、これを、実験で、次々に、示しました。カーネマンは、この研究で、2002年に、ノーベル経済学賞を、受けています。
1-2. なぜ、起きるのか
カーネマンは、人の考え方を、2つに分けて、説明しました。
| 速い考え(システム1) | おそい考え(システム2) | |
|---|---|---|
| 動き方 | 自動。直感。つかれない | 意識して、順に考える。つかれる |
| 使う場面 | ほとんど、全部 | 計算、くらべる、うたがう |
| 弱点 | 決まった向きに、まちがえる | なまけもの。すぐ、システム1に、まかせる |
認知バイアスは、速い考えの、くせです。頭が悪いから、起きるのでは、ありません。速く判断するための道具が、合わない場面で、使われているだけです。くわしくは、『ファスト&スロー』の記事に、書きました。
1-3. 知っていても、なくならない
やっかいなのは、ここです。バイアスは、知っても、消えません。目の錯覚と、同じです。2本の線が同じ長さだと知っていても、ちがう長さに、見え続けます。さらに、人は、「ほかの人のバイアスには気づくのに、自分のバイアスには、気づかない」ことが、分かっています(バイアスの盲点)。だから、対策は、「気をつける」では、なく、「判断の手順のほうを、変える」になります。
2. チェックリスト:いまの判断に、どのバイアスが、かかっていそうか
大きなお金や、時間を使う判断の前に、当てはまるものに、チェックを入れてください。
当てはまった数:
うたがうバイアス:
おすすめ:
このチェックリストは、私が作った、かんたんな目安です。心理学の、正式な尺度では、ありません。3つ以上ついたら「決めない」としているのは、バイアスは、重なるほど、おたがいを、強め合うからです。
3. 私が、実際にお金を失ったバイアス(金額の大きい順)
| 順位 | バイアス | 何が起きたか | 失ったもの |
|---|---|---|---|
| 1 | コンコルド効果、認知的不協和、ギャンブラーの誤謬 | FXの自動売買を、100個以上、検証した。通算でマイナスなのに、まだ、やめていない | 200万円以上 |
| 2 | ハロー効果、バンドワゴン効果 | 有名な人がプロデュースする仮想通貨を、ブームの中で買った。ビットコインも、暴落で、手ばなした | 30万円以上と、50万円以上 |
| 3 | 確証バイアス | 「売れた記録」だけを見て、業務用モニターを10台、落札した。1円でも、売れなかった | 落札の代金、参加費、送料の、全部 |
| 番外 | 正常性バイアス | 「自分のサイトが、ねらわれるはずがない」と思っていた | サイトの、全部の記事 |
表を見ると、1つ、気づくことが、あります。大きな損は、1つのバイアスでは、起きていません。いくつかが、重なっています。1位のFXには、3つの記事が、あります。負けるたびに、かける額をふやす自動売買で、口座を破綻させた話(ギャンブラーの誤謬)。やる価値がないと分かっていて、やめられない話(コンコルド効果)。やめられない自分を、正当化している話(認知的不協和)。同じ1つの損を、3つの方向から、書いています。2章のチェックリストで、「3つ以上なら、決めない」としたのは、この表の形からです。
もう1つ。私は、どの損でも、生活は、こわれませんでした。借りたお金で、投資をしたことが、1度もないからです。バイアスを消すことは、できません。けれど、はまったときの損の上限は、先に、決められます。
4. 種類ごとの、一覧
4-1. 確率と、数字を、読みちがえる
| 名前 | ひとことで | その記事に書いた、私の例 |
|---|---|---|
| 代表性ヒューリスティック | 「それらしさ」で、確率を見つもる | 「成功者らしさ」で買って、損をした |
| ギャンブラーの誤謬 | 続いたから、次は逆が出ると思う | ルールを守る自動売買で、口座を破綻させた |
| 平均への回帰 | 極端な結果のあとは、ふつうにもどる | いちばんよかった月を、ふつうだと思った |
| アンカリング効果 | 先に見た数字に、引っぱられる | 入札の上限は、せりの前に、計算で決める |
| フレーミング効果 | 同じ中身でも、言い方で、判断が変わる | 直した箇所を全部書いて、高く売ってきた |
| プロスペクト理論 | 得より、損を、大きく感じる | 「買値にもどったら売る」と決めている |
| 生存者バイアス | うまくいった例だけを見て、判断する | 自分がかせげたやり方を教材にして、達成者が出なかった |
| ピークエンドの法則 | 体験の記憶は、山場と、終わり方で、決まる | 多くの人がうまくいった売り方を、1件の悪い終わり方で、やめた |
| 利用可能性ヒューリスティック | 思い出しやすいことを、よく起きることだと、見つもる | 3件続いた不払いを、長い記録の中に、置きなおした |
4-2. 自分の考えを、守ろうとする
| 名前 | ひとことで | その記事に書いた、私の例 |
|---|---|---|
| 確証バイアス | 自分の考えに合う証拠だけを、集める | 「売れた証拠」だけを見て、モニターを10台落札した |
| 認知的不協和 | むじゅんを、考えのほうを曲げて、消す | 試していない理論を、低く見ていた |
| 後知恵バイアス | 結果を知ってから、「分かっていた」と思う | 「あのとき売らなければ」は、反省になっていない |
| ダニング=クルーガー効果 | できない人ほど、自分を高く見つもる | 「全員がやるべきだ」と思っていた、上位側のまちがい |
| 公正世界仮説 | 努力は、かならず報われると信じる | 100個検証したFXで負け、積立で勝った |
| バーナム効果 | だれにでも当てはまる話を、自分のことだと思う | 性格診断を置いている側から、説明した |
4-3. 変えない、やめない
| 名前 | ひとことで | その記事に書いた、私の例 |
|---|---|---|
| 現状維持バイアス | 変えることの損を、大きく見つもる | 住む場所を、20年、動かせなかった |
| コンコルド効果(サンクコスト) | もどらない費用に、判断を引っぱられる | FXの自動売買を、まだ、やめられていない |
| 正常性バイアス | 「自分は大丈夫」と、危険を小さく見る | 「自分はねらわれない」で、全記事を失った |
4-4. まわりの人に、引っぱられる
| 名前 | ひとことで | その記事に書いた、私の例 |
|---|---|---|
| 社会的証明 | みんながやっていることを、正しいと思う | 「実践者の声」を、ひかえめにしか使わない理由 |
| バンドワゴン効果 | 人気が、人気を呼ぶ | ブームの仮想通貨に乗って、30万円を失った |
| 同調圧力 | まわりに合わせるよう、おされる | 全寮制の学校と、仲間と作った会社から、はなれた |
| 傍観者効果 | 人が多いほど、1人1人は動かない | 怒られ続ける先輩の、となりの席にいた |
| ハロー効果 | 1つの目立つ特徴が、全体の評価を引っぱる | 有名人の名前で、仮想通貨を買った |
| 権威性 | 立場のある人の言うことを、信じやすい | 権威のない個人サイトが、かわりに出しているもの |
| ウィンザー効果 | 本人より、第三者の声を、信じる | 入札者の言葉より評価を見て、その評価も割り引く |
| 内集団バイアス | 自分の集団を、外の集団より、高く見る | 「自分たちがNo.1、ほかはアホの極み」と考えていた時期がある |
4-5. 売り場で、よく使われる
| 名前 | ひとことで | その記事に書いた、私の例 |
|---|---|---|
| 希少性の原理 | 少ない、期限がある、と、ほしくなる | 72時間の期限を、本当に閉じる理由 |
| 返報性の原理 | もらうと、お返しをしたくなる | 無料でわたしても、お返しが起きなかった |
| 一貫性の原理 | 1度言ったことと、同じ行動を取りたくなる | 小さな「はい」の使い方 |
| カリギュラ効果 | 禁止されると、やりたくなる | 「買わないでください」を、選別に使う |
| ヴェブレン効果・スノッブ効果 | 高いから、人とちがうから、ほしくなる | 社外品の部品で値段が落ちるブランドと、落ちないブランド |
| ジャムの法則(決定回避) | 選択肢が多いと、えらべなくなる | 松竹梅の3つをやめて、1つにしたら、売れた |
5つ目の表は、売る側が、買う人のバイアスを、使う場面です。私は、売る側でもあるので、それぞれの記事に、「どこまで使っていて、どこから使っていないか」を、書いています。まとめは、『影響力の武器』の記事に、あります。
5. つき合い方
- 消そうと、しない:1章の3つ目のとおり、知っても、消えません。「自分は、かからない」と思うことが、いちばん、あぶない。
- 決める前の手順を、決めておく:入札の上限は、せりが始まる前に、計算で決める。やめる基準は、始める前に、書く。その場の自分に、判断を、まかせません。
- 大きな判断は、1晩、おく:速い考えは、時間がたつと、しずまります。いそがせる相手からは、はなれます。
- 逆の立場で、言いかえる:「買う理由」を3つ書いたら、「買わない理由」も、3つ、書きます。
- 損の上限を、先に、決める:3章の、2つ目の教訓です。はまる前提で、はまっても、こわれない大きさに、します。
- 他人のバイアスを、せめない:相手のバイアスは、よく見えます。自分のは、見えません。見えている分だけ、自分のほうが正しい、とは、かぎりません。
6. まとめ
- 認知バイアスとは、判断の、決まった向きのかたよりです。1974年の、トヴェルスキーとカーネマンの論文が、出発点です。
- 速い考え(システム1)の、くせです。頭のよしあしとは、関係ありません。知っても、消えません。
- 私の大きな損は、どれも、いくつかのバイアスが、重なって、起きていました。
- 対策は、「気をつける」では、なく、「決める前の手順」と、「損の上限」を、先に、決めておくことです。
- それぞれのバイアスは、上の一覧から、くわしい記事に、進んでください。
関連記事
【免責】この記事の投資の話は、私の経験の説明で、売買をすすめるものでは、ありません。FXと仮想通貨は、元本を大きく失うことが、あります。

コメント