一貫性の原理は、人は一度とった立場や、一度口にしたことと、食い違う行動をとりにくい、という心の働きです。『影響力の武器』では「コミットメントと一貫性」という名前で出てきます。小さな「はい」を先に取れば、あとの大きな「はい」が取りやすくなる。売る技術としては、こう説明されます。
この記事では、原理の中身を説明したあとで、私のメール講座のどこにこの原理が入っているかを見せます。そのうえで、この原理が売る側の自分にも働いていた話を2つ書きます。直せない機械に何時間も使ってしまうこと。そして、うまくいっている自分のやり方を守るために、試してもいない理論を低く見ていたことです。
1. 一貫性の原理とは
『影響力の武器』で紹介されている実験です。住宅地の家を回って、「安全運転」と書かれた小さなステッカーを、窓に貼ってもらえないかと頼みます。ほとんどの家が、引き受けます。2週間後、別の人が同じ家を訪ねて、今度は、庭に大きくて見ばえの悪い看板を立てさせてほしいと頼みます。ふつうなら、ほとんどの家が断る頼みです。ところが、先にステッカーを貼った家は、多くが引き受けました。
小さな行動が、その人の「自分はこういう人間だ」という見方を変えます。交通安全に協力する人だ、と自分を見るようになった人は、次の頼みを断ると、自分の見方と食い違ってしまう。だから、引き受けます。
この原理は、次のときに強く働きます。
- 自分で選んだとき。押しつけられた約束は、効きません
- 行動にしたとき。思っただけより、書いた、言った、押した、のほうが強い
- 人に見える形にしたとき。
- 手間がかかったとき。苦労して入った集まりほど、人はその集まりを高く評価します
2. 私のメール講座の、どこに入っているか
全体の設計はステップメールの作り方に書いてあります。
| 場所 | やっていること | 一貫性のどの条件か |
|---|---|---|
| 登録ページ | 「面倒くさそうだと感じたなら、登録しないでください」と書く | 自分で選ぶ。登録した人は、面倒を引き受けるほうを自分で選んでいる |
| メールの中 | 1文字で返信できる問いを出す | 行動にする。一度返信した人は、そのあとの課題にも返事をくれやすい |
| 6日目のメール | 元手ゼロでできる、70分ほどの課題を出す | 手間をかける |
| 申し込みフォーム | 「返品・返金ができないことに同意します」にチェックを入れないと、ボタンが押せない | 行動にする |
| 登録から100日目ごろ | 「このまま受け取り続けますか」のリンクを押した人にだけ、配信を続ける | 自分で選ぶ |
| 個別の指導 | 面談を通った人にだけ売る | 手間をかける |
小さな「はい」は、相手のためにも取っている
これだけ並べると、読む人を少しずつ追い込んでいるように見えるかもしれません。私がこの形にしている理由は、もう1つあります。手を動かさない人に、買ってほしくないからです。
70分の課題をやらなかった人が、29,800円の講座を買っても、やりません。やらなければ結果は出ず、結果が出なければ、不満が残ります。小さな課題は、売るための足がかりであると同時に、「自分は、これをやる人間か」を、買う前に本人が確かめる場所です。やってみて、向いていないと分かった人は、ここで降りられます。
お金についても、同じことを考えています。私は、人に教えるときは、少ない金額でもお金をもらいます。極端に言えば、500円でもかまいません。無料で教えた相手は、やりません。お金を払う、という行動が、「自分はこれをやると決めた」という立場を作るからです。
3. 売る側の自分にも、働いていた
「直せるはずだ」と、何時間も使ってしまう
壊れた機械を仕入れて直す仕事で、いちばん高くつくのは、安い仕入れに失敗したときではありません。「ここまでやったのだから」と、直らない機械に6時間、10時間と使ってしまったときです。仕入れた、分解した、部品を注文した。行動を重ねるほど、「これは直せる」という立場から降りられなくなります。
だから、始める前に基準を決めます。
- 事前の調査に30分かけて、修理の記録が見つからなければ、手をつけない
- 手をつけて2時間で原因が分からなければ、部品取りに切り替える
- 部品代が、売れる見込みの金額の15%を超えるなら、やめる
一貫性の原理から身を守るいちばん確かな方法は、熱くなる前に、降りる条件を書いておくことです。熱くなってから考えた基準は、続ける理由にしかなりません。すでに使ったお金や時間に引きずられる形については、コンコルド効果とはに、私がいまも切れていない例と一緒に書きました。仕入れの前の関門については4台目の選び方に書きました。
うまくいっているやり方を、守ってしまう
もう1つは、もっと気づきにくい形です。私は、物語の型を土台にして発信を作り、それで安定して売れてきました。そのせいで、ほかの型、たとえばPASONAの法則を、試してもいないのに「たいしたことはないはずだ」と見ていました。自分が選んだやり方と、食い違う事実を、見たくなかったのです。
あとで自分の登録ページを当てはめてみたら、使っていないはずのPASONAの順番に、ほぼそのまま並んでいました。くわしくはPASONAの法則とはに書いています。一貫性の原理は、だまされる場面だけでなく、うまくいっている人が、学ぶのをやめる場面でも働きます。
4. 受け取る側のときの、守り方
この原理は、高い買いものの手前で、よく使われます。無料の説明会に行く。アンケートに「変わりたい」と書く。仮の申し込みをする。頭金を払う。1つずつは小さくても、積み上がると、降りにくくなります。
『影響力の武器』が勧めている問いは、これです。「いま知っていることを全部知ったうえで、時間を戻せるとしたら、同じ選択をするか」。答えが「しない」なら、ここまでにかけた時間やお金は、続ける理由になりません。
もう1つ。申し込みの前に、「ここまで来たのだから」という言葉が自分の中に出てきたら、それは、商品が良いからではなく、この原理が働いている合図です。
5. まとめ
- 一貫性の原理は、一度とった立場と食い違う行動を、とりにくくなる働き。自分で選び、行動にし、人に見せ、手間をかけたときに強くなる
- 私のメール講座では、1文字の返信、70分の課題、同意のチェック、継続のリンク、面談に入っている
- 小さな「はい」は、売るためだけでなく、向いていない人が買う前に降りられる場所でもある
- 売る側にも働く。直らない機械に時間を使い続ける。うまくいっているやり方を守って、ほかを試さない
- 守り方は、熱くなる前に降りる条件を書いておくこと。そして、「いまの知識で時間を戻せたら、同じ選択をするか」と聞くこと
7つの原理の全体は、『影響力の武器』要約に書きました。

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