社会的証明は、何が正しいか分からないとき、人は「ほかの人がどうしているか」を手がかりにする、という心の働きです。『影響力の武器』の7つの原理の1つで、「社会的証明の原理」とも呼ばれます。お客様の声、レビューの星、「累計〜万人が利用」。売る文章では、いちばん当たり前に使われています。
この記事では、原理の中身を説明したあとで、私が自分の販売ページでこの原理をどう使っているか、なぜ控えめにしか使っていないかを書きます。理由は2つあります。1つは、この業界の「実践者の声」が、うまくいった人の声だけでできていること。もう1つは、私のいる中古品の売り買いの世界では、みんなと同じことをした人から負けていくからです。
1. 社会的証明とは
テレビのお笑い番組に入っている、録音の笑い声。作りものだと、見ている人は全員知っています。それでも、笑い声が入っているほうが、番組は面白く感じられ、実際によく笑う。『影響力の武器』は、この話から始めます。ほかの人が笑っている、という合図だけで、私たちの判断は動きます。
この原理が強く働く条件は、2つです。
- 自分では判断がつかないとき。はじめて買うもの、くわしくない分野、急いでいるとき
- 相手が、自分に似ているとき。年齢、仕事、立場が近い人の行動ほど、手がかりにされます。販売ページの「お客様の声」に、年代と職業が書いてあるのは、このためです
経済学では、みんなが持っているから欲しくなるこの働きを、バンドワゴン効果と呼びます。逆向きの働きとあわせて、ヴェブレン効果・スノッブ効果とはに書きました。
ふだんは、役に立つ近道です。混んでいる店は、たいていおいしい。ただ、この近道は、みんなが同じように間違えているときと、だれかが「みんな」を作っているときに、外れます。
2. 私の販売ページでの使い方
私の29,800円の講座の販売ページには、実践した人の記録を3件のせています。構成はLPの作り方に書きました。使ってはいますが、次の決まりをつけています。
| 決まり | 販売ページに実際に書いてあること |
|---|---|
| 上位の例には、上位と書く | 月10万〜12万円の例には、「本ページに掲載した中では、上位にあたる例です」と添えている |
| 全員の結果ではない、と書く | 「全員がこの結果になるわけではありません。むしろ最初の数ヶ月は、利益が出ない月があっても不思議ではありません」 |
| 悪い数字を、同じ場所に置く | 「10台に1台程度は利益が出ないことを前提にしています」「月100万円のような数字は、この段階では起きません」 |
| 記録の作り方を明かす | 複数の人の記録をもとに、個人と商材が分からないように、属性や機種をまとめて調整している、と掲載の前に書いている |
| 自分のことも並べる | 実践した人の記録の前に、私自身がやってきたことと、やっていないことを置いている |
4つ目には、理由があります。だれが、何の機種で、いくら利益を出したかをそのまま書くと、読んだ人がその機種に集まります。集まれば、仕入れの値段が上がり、いまその機種をやっている人が損をします。これは、次の章の話につながります。
3. 中古品の売り買いでは、社会的証明に従うと負ける
私が20年いる世界では、「みんながやっている」は、やめる合図です。
「この商品が儲かる」という話が広まると、みんなが同じ商品を仕入れます。仕入れの値段は上がり、売る人が増えて、売値は下がります。広まった時点で、その商品の利益は、ほぼ終わっています。教材や塾が、特定のジャンルや商品を名指しで教えると、教わった全員が、同じ棚の前に並ぶことになります。私が教材でジャンルを固定していないのは、このためです。
利益が残るのは、ほかの人がやりたがらない場所です。壊れている。古い。分解しないと分からない。面倒くさい。私の登録ページには、「この事業の参入障壁は、お金でも技術でもなく、『面倒くさい』でできている」と書いてあります。社会的証明が働かない場所、つまり、だれも並んでいない場所に、価格の差が残ります。考え方はニッチ市場の成功例にも書きました。
4. この業界の「実践者の声」を、どう読むか
私が、教える側に回る前に、この業界を外から見ていて嫌だったのは、うまくいった人の声しか聞こえてこないことでした。たまたまその時期だったから稼げた人。いまから始めても同じ条件ではない人。そういう人の声が、「実践者の声」として並びます。うまくいかなかった人は、黙ってやめていくので、声になりません。このくせには名前がついています。→ 生存者バイアスとは
社会的証明は、「多くの人がこうしている」という手がかりです。ところが、販売ページに並ぶ声は、多くの人の中から、売る側が選んだ数人です。読むときは、次のことを確かめてください。
- いつの話か。3年前にうまくいったやり方は、いま同じ条件ではありません
- 何人中の、何人か。成功した3人の後ろに、何人の買った人がいるのか。書いていなければ、分かりません
- 前提が書いてあるか。使えた時間、元手、もともとの経験
- うまくいかなかった割合を、売る側が自分から書いているか。
- その声の人を、ほかの場所で確かめられるか。スクリーンショットの数字は、作れます
私自身、最初に売った教材では、買った人の中から達成者が出ませんでした。資金の回りが悪すぎるやり方だったからです。その時期に、のせられる声はありませんでした。声がないなら、のせない。それしかありません。この経緯は商品の作り方に書きました。
5. 私に届いている、いちばん確かな社会的証明
以前のメールマガジンで、「どこで私を知りましたか」と聞いていました。返ってきた答えの中に、「友人が登録していた」「同僚が細野さんから学んでいる」というものが、何度もありました。私が頼んだわけではなく、知らないところで、紹介が起きていました。
これは、販売ページにのせる声とは、性質が違います。読む人は、自分の知っている人が、実際にお金と時間を使っているのを見ているからです。似ている人の、作られていない行動。1章の2つの条件が、いちばん素直な形でそろっています。売る側にできるのは、これを作ることではなく、紹介してくれた人が恥をかかない中身にしておくことだけです。
6. 受け取る側のときの、守り方
『影響力の武器』が勧めている守り方は、2つです。
- 作られた証拠に、気づく。録音の笑い声と同じで、並んでいる声が売る側の用意したものだと分かったら、それは手がかりから外します
- みんなが見ている方向ではなく、事実を自分で見る。説明会の会場で、まわりが次々に申し込んでいるとき。その人たちも、あなたと同じように、まわりを見て決めているだけかもしれません
3章に書いたとおり、私のいる世界では、もう1つあります。「みんなが儲かっている」と聞いた商品は、買う前に、終わっていないかを疑う。
7. まとめ
- 社会的証明は、判断がつかないときに、ほかの人の行動を手がかりにする働き。自分に似た人の行動ほど、強く効く
- 私は販売ページで使っているが、上位の例には上位と書き、うまくいかない割合を同じ場所に置き、記録の作り方を明かしている
- 中古品の売り買いでは、みんなと同じ商品に並んだ人から負ける。利益は、だれも並んでいない面倒な場所に残る
- この業界の「実践者の声」は、うまくいった人の声だけでできている。いつの話か、何人中の何人かを確かめる
- いちばん確かな社会的証明は、知っている人が実際に使っていること。売る側が作れるものではない
7つの原理の全体は、『影響力の武器』要約に書きました。
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