群集心理(ぐんしゅうしんり)とは、人が大勢の中にいるとき、1人のときとはちがう判断や行動をしてしまう心の動きのことです。まわりが買うから買う。まわりが売るから売る。お金の世界では、多くの人が同じ方向に動くことを、ハーディング現象(群れの行動)と、よびます。
この記事では、まず、意味と、似た言葉とのちがいを、説明します。次に、計算機で、「みんなが見ている情報で動くと、1人あたりの取り分がどう減るか」を、出します。最後に、情報を流すアカウントを見て抽選に申しこみ続け、当たらなかった私の例と、流行りの仮想通貨で損をした私の例を、書きます。
1. 群集心理とは
1-1. 意味と、由来
フランスの社会心理学者ル・ボンは、1895年の本『群衆心理』で、人は群衆の中に入ると、1人のときより感情的になり、暗示にかかりやすく、責任を感じにくくなる、と書きました。いまの研究では、群衆がいつも理性をなくすわけではない、とも言われます。けれど、「まわりが動いているから、自分も動く」という力が、はたらくことは、変わりません。
1-2. ハーディング現象
投資や、市場の世界では、多くの人が、自分の情報ではなく、ほかの人の行動を見て、同じ売り買いをすることを、ハーディング現象と、言います。みんなが買うので値が上がり、値が上がるので、さらに買う人がふえる。逆も、同じです。値上がりの急さも、下がり方の急さも、この動きで、大きくなります。
1-3. 似た言葉との、ちがい
| 言葉 | 中身 |
|---|---|
| 群集心理 | 大勢の中で、判断や行動が、1人のときとは変わること |
| ハーディング現象 | 市場で、多くの人が、ほかの人の売り買いをまねて、同じ方向に動くこと |
| 同調圧力 | まわりに合わせるよう、無言のうちに求められる力(同調圧力の記事) |
| バンドワゴン効果 | 人気があるものほど、さらに選ばれること(バンドワゴン効果の記事) |
| 社会的証明 | ほかの人の行動を、正しさの手がかりにすること(社会的証明の記事) |
1-4. まねること自体は、まちがいでは、ない
自分より情報を持っていそうな人のまねをするのは、1人ひとりにとっては、合理的なこともあります。問題は、全員が同じ手がかりを見て動くと、その手がかりが、中身とは関係なく、ふくらんでいくことです。1人ひとりの正しい判断が、全体では悪い結果になる形は、合成の誤謬の記事に、書きました。
2. 計算機:みんなが見ている情報で動くと、取り分はどう減るか
抽選で買える商品を、転売する場合で、考えます。情報を流すアカウントが紹介すると、申しこむ人がふえます。当たる数は、変わりません。
当たる確率(ふだん / 広まったあと):
1回の申しこみの期待値(ふだん / 広まったあと):
時給に直すと(広まったあと):
はじめに入っている数字は、例です。私の実際の数字では、ありません。当たる数100、ふだん2,000人、情報が広まって5倍、利益1万円、申しこみに3分なら、当たる確率は5%から1%に、1回の期待値は500円から100円に、下がります。時給に直すと、2,000円です。
ここで大事なのは、情報が正しくても、取り分は減る、ということです。「利益1万円」は、うそでは、ありません。けれど、同じ情報を見た人が、全員、同じ抽選に並びます。分母がふえるだけです。
3. 私の例
3-1. 情報アカウントを見て、抽選に申しこみ続けた
私は、少ない数で、限定品の抽選や、受注生産の品を買い、届いたら、元の箱のまま売る、ということを、続けています。1個しか買えないので、利益は小さい。けれど、届いたら、すぐお金にかわります。
はじめは、転売の情報を流すアカウントを見て、利益が1万円以上出る抽選に、毎日、申しこんでいました。当たりませんでした。そこで、申しこめばかならず手に入る、受注生産や予約の品を中心に、切りかえました。申しこむ前に、フリマの販売の記録で、需要があるかを、たしかめています。
ここからは、2章の計算に当てはめた、整理です。情報アカウントが紹介する抽選は、それを見た人が、いっせいに申しこむ抽選です。私も、その群れの中の1人でした。受注生産は、申しこめば手に入るので、人数がふえても、自分の分は減りません。群れが集まる場所から、分母が関係ない場所に、移った形です。
3-2. 有名人の仮想通貨は、売り出した直後が、天井だった
私は、有名な人がかかわる仮想通貨を、買ったことがあります。売り出した直後が天井で、そこから、下がり続けました。損は、30万円以上です。ビットコインも持っていましたが、はじめのブームのあとの暴落で、マイナス30%くらいで、手放しました。損は、50万円以上です。2017年から2019年ごろのことです。
ここからは、この理論に当てはめた、整理です。話題になって、多くの人が同時に買うと、値は上がります。その値上がりを見て、また人が買う。買う人がいなくなったところが、天井です。私が買ったのは、群れが動いている最中でした。
当時は、事業で毎月、安定した収益が出ていたので、生活には、ひびきませんでした。群れに乗って損をしても、立て直せる土台があったから、続けられた。これは、運のよかった点です(投資で失敗した人の記事)。
3-3. 積み立ては、群れと、関係なく続けた
いっぽうで、株の積み立ては、学生のころに本を読んで、サブプライムショックの直後に、始めました。年によって損はありますが、長い目で持っているので、通算でマイナスになったことは、ありません。いまは、投資信託とETFだけです。
みんなが売っている時期に、決まった額を、決まった日に、買い続ける。群れの動きを、判断に入れない仕組みです。私の中で、群れに乗った仮想通貨と、群れと関係なく続けた積み立ては、結果が、はっきり分かれました。
4. 群集心理に、流されないために
- 「その情報を、何人が見ているか」を、考える。2章の計算機です。情報が正しくても、見ている人が多ければ、取り分は減ります。
- 買う理由を、1行で書く。「みんなが買っているから」「話題だから」しか書けないなら、それは、自分の理由では、ありません。
- 分母が関係ない場所を、さがす。申しこめば手に入るもの、自分にしかできない作業、人が集まらない時間。
- ルールで、判断から、群れを外す。決まった日に、決まった額。損切りの線を、先に決める(楽観バイアスの記事)。
- 群れに乗るなら、失ってよい額だけで。生活のお金と、分けておきます。
- ほかの心のかたよりは、認知バイアスの一覧に、まとめています。
5. まとめ
- 群集心理は、大勢の中で、1人のときとちがう判断や行動をしてしまう心の動き。市場では、ハーディング現象として、あらわれる。
- まねること自体は、1人ひとりには合理的でも、全員が同じ手がかりで動くと、値や競争が、ふくらむ。
- みんなが見ている情報は、正しくても、分母がふえる。例では、当たる確率が5%から1%に下がる。
- 私は、情報アカウントを見て抽選に申しこみ続けて当たらず、受注生産に切りかえた。流行りの仮想通貨では、合わせて80万円以上を失った。
- 群れと関係なく続けた積み立ては、通算でマイナスになったことがない。
