同調圧力とは|全寮制の学校と、仲間と作った会社から離れた私が出した結論

同調圧力とは|全寮制の学校と、仲間と作った会社から離れた私が出した結論 心理学・バイアス

同調圧力は、集団の中で、少数の人に、多数と同じ考えや行動をとらせようとする、目に見えない力です。だれかが命令するわけではありません。「みんな、そうしている」という空気だけで、人は動きます。学校でも、会社でも、親せきの集まりでも働きます。

私は、この力に、うまく合わせられない人間です。全寮制の学校でも、仲間と作った会社でも、合わせられずに離れました。この記事では、同調圧力の中身を説明したあとで、私の2つの経験を書きます。そして、そこから出した私なりの結論、「同調圧力は、我慢の問題ではなく、逃げ場の数の問題だ」を書きます。

1. 同調圧力とは

心理学者のソロモン・アッシュが、1950年代に行った実験があります。何人かで、線の長さをくらべる、かんたんな問題に答えます。答えは、見ればだれでも分かります。ところが、本物の参加者は1人だけで、ほかの全員は、わざと同じ間違った答えを言うように頼まれています。

結果は、こうでした。

  • 1人で答えれば、ほぼ間違えない問題なのに、まわりが全員間違えると、およそ3回に1回は、まわりに合わせて間違えた
  • 参加者のおよそ4人に3人が、少なくとも1回は、まわりに合わせた
  • ところが、自分と同じ答えを言う人が、たった1人いるだけで、まわりに合わせる割合は、大きく下がった

3つ目が、この記事でいちばん大事なところです。同調圧力は、「全員 対 自分ひとり」のときに、いちばん強く働きます。味方が1人いるだけで、人は、自分の目を信じられるようになります。

日本では、この力を「空気」と呼ぶことがあります。だれが決めたわけでもないのに、逆らえないもの。決めた人がいないので、文句を言う先もありません。

2. 私の経験①|全寮制の学校

私は、中学受験をして、全寮制の私立の学校に入りました。テレビも、マンガも、ゲームも禁止。学校の外には、出られません。朝から晩まで、同級生との共同生活です。入学して3日で、辞めたいと思いました。

もともと、人との距離の取り方が、うまくない子どもでした。ふつうに話しているつもりなのに、誤解される。実際とは違う受け取られ方をして、批判される。ひとりっ子だったことも、あると思います。

寮が苦しかったのは、決まりがきびしかったからではありません。逃げる場所が、どこにもなかったからです。ふつうの学校なら、家に帰れば、学校とは別の世界があります。塾の友だちも、近所の友だちもいます。寮には、それがありません。同じ顔ぶれの中で浮いたら、24時間、浮いたままです。1章の実験で言えば、「全員 対 自分ひとり」が、ずっと続く場所でした。

3. 私の経験②|仲間と作った会社

大人になってから、もう一度、同じ形を経験しました。

私は、尊敬していた人と意気投合して、長野県に、一緒に会社を作りました。私は東京から週に1回通い、検索からの集客と、広告の出稿を担当していました。ほかのメンバーは、週に6日、交代で現場に出ていました。

しばらくすると、「仕事の量が少ないのに、不公平だ」という不満が出ました。私は、担当が違うのだから、貢献の形も違う、と考えていました。ほかのメンバーは、働く量は同じであるべきだ、と考えていました。当時、会社は利益が出ておらず、私は無報酬でした。無報酬で働いて、批判される。私には、どうしても、それが理解できませんでした。

いま振り返ると、これは、どちらが正しいか、という話ではなかったと思います。「同じ時間、同じ場所にいること」を、仲間であることの証にする集団と、「出した結果」を証にしたい私が、合わなかった。それだけです。私は、会社を離れました。

その会社は、その後も成長を続けています。だから、私の判断が正しかった、という話でもありません。合わせられる人たちが、合わせられる形で、うまくやった。私は、そこに合わなかった。

4. 分かったこと|我慢の問題ではなく、逃げ場の数の問題

2つの経験から、私が出した結論は、1つです。

同調圧力の強さは、その集団のほかに、自分の居場所がいくつあるかで決まります。

寮が地獄だったのは、ほかに居場所がなかったからです。会社を離れられたのは、私に、自分ひとりでやっていた転売という、別の稼ぎ口があったからだと思います。

会社で同調圧力に苦しんでいる人に、「気にするな」「自分を持て」と言う人がいます。私は、それは無理だと思っています。アッシュの実験で、まわりに合わせた人たちは、意志が弱かったわけではありません。ひとりだったのです。

同調圧力が強く働く 弱くなる
居場所の数 その集団しかない ほかにも、1つ以上ある
お金の出どころ そこからしか、入ってこない 少しでも、ほかから入ってくる
評価してくれる人 その集団の中にしか、いない 外にも、1人いる
抜けたときに失うもの 全部 一部

会社員が、会社の空気に逆らえないのは、性格のせいではありません。収入も、評価も、平日の人間関係も、全部がその1つの集団から来ているからです。抜けたら、全部を失う。だから、合わせるしかありません。

逆に言えば、会社のほかに、月に数万円でも、自分の判断にお金を払ってくれる相手が1人いるだけで、この表の右側に、少し動けます。会社を辞める必要はありません。「いざとなったら、ここだけではない」と知っている人は、同じ会議に出ていても、受ける圧力がまるで違います。1章の実験の、「味方が1人いるだけで、大きく下がった」と、同じ形です。

5. 逃げ場の作り方

  • 会社とは関係のない、小さな稼ぎ口を持つ。私の場合は、壊れた機械を直して売る仕事でした。仕入れの判断も、値付けも、自分ひとりで決めます。会議も、根回しも、ありません。始め方は初心者の館にまとめています
  • その集団の外に、自分を評価してくれる人を、1人持つ。買ってくれたお客さんでも、かまいません。自分が決めた値段で、だれかが買ってくれた。その経験が1つあるだけで、会社の評価だけが自分の値段ではない、と分かります
  • 合わない集まりには、行かない。行かないと決めるのにも、力が要ります。私が同窓会に行かない理由は賢い人は同窓会に行かないに書きました

6. 同調圧力が、役に立つ場面もある

公平のために、書いておきます。同調圧力は、悪いだけのものではありません。決まりを細かく書かなくても、集団がまとまる。災害のときに、列を守る。合わせられる人にとっては、居心地のいいしくみです。私が離れた会社が、その後も成長しているのは、その証拠だと思います。

問題は、合わせられない人が、合わせるしかない場所に、逃げ場なしで置かれることです。自分がどちらの人間かを知って、合わせられない側なら、早めに、逃げ場を1つ作っておく。私に言えるのは、それだけです。

「会社員に向いていない」と感じる人への話は会社員に向いていないと感じる原因に、上司の評価に苦しんでいる人への話はピーターの法則は「間違い」なのかに書きました。

7. まとめ

  • 同調圧力は、「みんな、そうしている」という空気だけで、少数の人を多数に合わせさせる力
  • アッシュの実験では、およそ4人に3人が、少なくとも1回は、間違った多数に合わせた。味方が1人いるだけで、その割合は大きく下がった
  • 私は、全寮制の学校と、仲間と作った会社で、合わせられずに離れた。離れた会社は、その後も成長している
  • 同調圧力の強さは、その集団のほかに、居場所がいくつあるかで決まる。我慢や性格の問題ではない
  • 会社のほかに、小さな稼ぎ口と、自分を評価してくれる人を、1つずつ持つ。辞めなくても、受ける圧力が変わる

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