ツァイガルニク効果とは、終わったことより、途中で止まったこと、終わっていないことのほうが、頭に残りやすい、という現象です。ドラマの「つづく」が気になるのも、返していないメールが、夜に頭に浮かぶのも、これです。
先に、書いておきます。この効果は、ふつう、「つづきが気になる文の書き方」として、紹介されます。私は、逆の向きで、使っています。終わっていない取引を、頭の中に、残さない。売れた翌日には、発送まで終えて、すっきりさせたい。そのために、24時間たっても支払いがない落札は、削除します。この記事は、ツァイガルニク効果を、「人に使う技」ではなく、「自分の頭を守る道具」として、書きます。
この記事では、意味と研究を先に書いて、そのあとで、計算機、私の例、使い方と注意を書きます。
1. ツァイガルニク効果とは
1-1. 意味と、由来
名前は、旧ソ連(いまのリトアニア生まれ)の心理学者、ブルーマ・ツァイガルニクから、来ています。1927年に、この現象についての論文を、出しました。
きっかけとして、よく語られる話が、あります。先生だった心理学者のクルト・レヴィンが、喫茶店で、気づきました。店員は、まだ会計がすんでいない注文は、メモなしで、正確におぼえている。ところが、会計がすむと、すぐに、わすれてしまう。
ツァイガルニクは、これを、実験で、たしかめました。参加した人に、パズルや工作などの、かんたんな作業を、いくつも、やってもらう。半分は、最後までやらせる。半分は、途中で、止める。あとで、「どんな作業をやりましたか」と聞くと、途中で止められた作業のほうが、2倍近く、多く思い出された、と報告されています。
1-2. しくみ
レヴィンの考えでは、人は、何かを始めると、それを終わらせようとする「緊張」が、心の中に、生まれます。終われば、緊張は、消えます。終わらなければ、残ります。残った緊張が、その作業を、頭の手前に、置き続けます。
1-3. 近い言葉と、注意
| 言葉 | 中身 |
|---|---|
| ツァイガルニク効果 | 終わっていないことを、「よく、おぼえている」 |
| オヴシアンキナ効果 | 途中で止められたことを、「再開したくなる」(1928年) |
| カリギュラ効果 | 禁止されたことを、「やりたくなる」 |
注意が、1つあります。ツァイガルニクの実験は、その後、同じ結果が出た研究と、出なかった研究の、両方が、あります。「かならず、2倍おぼえている」という、かたい法則では、ありません。一方で、「終わっていない目標が、ほかの作業のじゃまをする」ことは、新しい研究でも、報告されています。数字より、向きを、おぼえてください。
2. 身近な例
- ドラマ、まんが:いちばん気になるところで、「つづく」。
- 広告、記事の題名:「3つの理由。3つ目が、意外でした」。答えを、あけたままにします。
- ゲーム:「あと1つで、全部そろう」。うまっていない1マスが、いちばん、目に入ります。
- 仕事:返していないメール。決めていない見積もり。夜、ふとんの中で、思い出すのは、終わった仕事ではなく、こちらです。
- 勉強:きりの悪いところで止めると、次の日に、始めやすい。
3. 計算機:「開いたままの仕事」が、1日に、何分うばうか
ツァイガルニク効果は、人に使う前に、自分に、かかっています。終わっていないことが、頭に浮かぶ回数を、時間に、直します。
終わっていないこと(返事まち、未決定、やりかけ)の数 件
そのうち、「次に何をするか」を、書き出してあるもの 件
1件が、1日に、頭に浮かぶ回数 回
1回浮かぶと、もとの作業にもどるまでに、失う時間 分
1日に失う時間:
1か月(30日)で失う時間:
書き出したことで、へった時間(1か月):
はじめの数字は、仮の数字です。12件が、1日に3回ずつ浮かんで、1回に2分を失うと、1日に72分。1か月で、36時間です。
「書き出してあるもの」を引いているのには、理由が、あります。2011年の、マシカンポとバウマイスターの研究では、終わっていない目標があると、ほかの作業に、じゃまが入りました。ところが、「いつ、どこで、何をするか」の計画を、具体的に立てただけで、じゃまは、ほぼ、消えました。終わらせなくても、よいのです。頭は、「もう、おぼえておかなくていい」と、分かれば、手を、はなします。この計算機は、それを、「書き出したものは0」と、かんたんにして、入れています。
4. 私の例:取引を、あけたままに、しない
4-1. 24時間で、閉じる
オークションでは、落札した人の大半は、数時間のうちに、支払います。24時間たっても支払わない人は、支払いがおそい人か、コンビニ払いで、おくれている人です。私は、売れた翌日には、発送まで終えて、すっきりさせたい。だから、24時間をこえて支払いがなければ、落札者の都合として、削除します。
次点の人へのくり上げも、ほぼ、使いません。相手が、辞退するか、返事をしないことが、ほとんどだからです。体感では、10回やって、1人受けるかどうか。返事をまつあいだ、その取引は、あいたままです。だから、削除して、出し直します。
まてば、払う人も、いるでしょう。それでも、閉じます。3章の計算機で言えば、「終わっていないことの数」を、自分の決まりで、へらしているのです。
4-2. 取り置きを、受けない
フリマで、「いまお金がないので、◯日まで、取り置きしてください」と、たのまれることが、あります。私は、ことわります。この形の依頼が、購入までいったことは、1回も、ありません。
取り置きは、売り手の頭の中に、「終わっていない取引」を、1件、ふやす依頼です。しかも、終わらせるかどうかを決めるのは、相手です。自分で閉じられない未完了は、いちばん、高くつきます。プロフィールに、「取り置きは、ことわります」と書いておけば、その1件は、はじめから、生まれません。
4-3. 決めたら、見直さない
支払わない相手や、受け取ったあとで難くせをつけてくる相手は、ブラックリストに、入れます。相当な理由がなければ、入れません。そして、入れたら、見直しません。上限にたっしたら、古いものから、消していくだけです。
「あの人は、外しても、よかったかもしれない」と、考えはじめると、終わった話が、また、ひらきます。決定を、決定のまま、閉じておく。これも、同じ道具の、使い方です。
4-4. 「つづく」を、人に使うときの、線
私は、メールの講座を、作っています。連載には、「つづき」が、つきものです。ただ、私の講座は、とちゅうから、くばる間かくを、週に1回に、あけています。買った人は、もう、有料の講座を読むことに、時間を使っています。そこへ、売りこみの仕こみが、毎日とどいたら、うっとうしい。自分なら、そう思うからです。
あけたままの話は、相手の頭の中の場所を、借りています。3章の計算機の「1件」を、相手に、足しているのと、同じです。借りた場所には、中身で、返す。返せないなら、あけない。私の線は、そこです。
5. 使い方と、注意
5-1. 自分に使う
- 始めるために、使う:やる気が出ない作業は、5分だけ、手をつけて、止めます。「途中」になれば、頭のほうが、つづきを、やりたがります(作業興奮の記事)。
- きりの悪いところで、止める:文のとちゅう、式のとちゅうで、その日を終えます。次の日の、最初の1歩が、軽くなります。
- 閉じるために、書く:終わらせられないものは、「次に、いつ、何をするか」だけ、書きます。3章の研究のとおり、それだけで、頭は、手をはなします。
- あける数を、しぼる:同時にあけておく仕事が多いほど、切りかえの損が、ふえます(マルチタスクの記事)。
- 閉じる決まりを、先に作る:「24時間で削除」「次回まわしは、1回まで」。決めないことにも、費用は、かかります(事なかれ主義の記事)。
5-2. 人に使う
- あけたら、かならず、閉じる:「つづきは、次回」と書いて、次回に答えがなければ、信用を、失います。
- 題名であけたものは、本文で、早く閉じる:答えを、最後まで引っぱる記事は、読まれても、好かれません。
- 完璧に閉じようと、しない:全部をきれいに終わらせようとすると、今度は、始められなくなります(完璧主義の記事)。
5-3. 夜、頭から、はなれないとき
終わっていないことが、夜になると浮かんで、ねむれない。これが何週間もつづいて、昼の生活にさしつかえるなら、この記事の工夫より先に、医師に、相談してください。この記事の計算機は、考えを整理するための道具で、診断の道具では、ありません。
6. まとめ
- ツァイガルニク効果とは、終わっていないことのほうが、頭に残りやすい現象です。1927年、ブルーマ・ツァイガルニクが、報告しました。
- 実験の結果は、その後、再現されたものと、されなかったものが、あります。数字ではなく、向きを、使ってください。
- 終わらせなくても、「次に何をするか」を具体的に決めるだけで、頭へのじゃまは、へります(2011年の研究)。
- 私は、24時間で不払いを削除し、取り置きをことわり、決めたことを見直さないことで、あいたままの取引を、へらしています。
- 人に「つづく」を使うのは、相手の頭の場所を、借りることです。中身で返せる分だけ、あけてください。

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