先延ばしとは、「やったほうがいい」と分かっていることを、あとに回してしまうことです。なまけているのとは、ちがいます。なまけている人は、気にしていません。先延ばしをしている人は、ずっと、気にしています。気にしながら、べつのことを、しています。
先に、書いておきます。私は、教材を、1年以上、完成させられませんでした。学生のころは、単位を落として、卒業を、何度も、のばしました。「重要だけれど、急ぎではないこと」を後回しにして、サイトの記事と、アカウントを、失ったことも、あります。直ったのは、意志を強くしたときでは、なく、しくみを、変えたときでした。この記事は、その話を、書きます。
この記事では、意味としくみを先に書いて、そのあとで、計算機、私の例、直し方、受診の目安を書きます。
1. 先延ばしとは
1-1. 意味
心理学では、先延ばしを、「おくらせると、自分が損をすると分かっているのに、自分の意思で、おくらせること」と、定義します。予定を、考えて、あとに回すのは、先延ばしでは、ありません。それは、計画です。
| 先延ばし | 計画的な後回し | |
|---|---|---|
| 理由 | いまは、気が乗らない | ほかに、先にやるべきことがある |
| あとに回した時間 | べつの、楽なことを、している | 先にやるべきことを、している |
| 気分 | ずっと、気にしている | 気にしていない |
1-2. しくみ:先延ばしの、式
カナダの心理学者、ピアーズ・スティールは、2007年に、先延ばしの研究を、数百本、まとめて、分析しました。そして、やる気を、1つの式で、あらわしました。
やる気 =(できそうな見こみ × 得られる価値)÷(気の散りやすさ × しめ切りまでの遠さ)
| 要素 | 先延ばしが、ふえるとき |
|---|---|
| できそうな見こみ | やっても、うまくいく気が、しない |
| 得られる価値 | つまらない。やっても、自分に、何も返ってこない |
| 気の散りやすさ | 手のとどくところに、すぐ楽しめるものが、ある |
| しめ切りまでの遠さ | しめ切りが、遠い。または、ない |
下の2つが、分母です。人は、遠い先のごほうびを、実際より、ずっと小さく、感じます。しめ切りの前の日に、急に、やる気が出るのは、性格では、なく、この式の、とおりです。
1-3. 「意志が弱い」では、説明できない
式を見ると、分かります。4つの要素のうち、「意志」は、どこにも、入っていません。先延ばしをへらすには、式の中の数字を、動かすしか、ありません。見こみを上げる。価値を上げる。気が散るものを、遠ざける。しめ切りを、近づける。3章からの私の例は、全部、このどれかです。
2. 計算機:その仕事の、やる気の点数
いま、先延ばししている仕事を、1つ、思いうかべて、入れてください。
できそうな見こみ(0〜10) 得られる価値(0〜10)
気の散りやすさ(1〜10) しめ切りまでの日数 日
いまの、やる気の点数:
しめ切りを、「今日の分」に切った場合(1日):
さらに、気が散るものを遠ざけた場合(気の散りやすさを、半分に):
これは、スティールの式を、かんたんにした、目安です。正式な尺度では、ありません。はじめの数字だと、やる気の点数は、0.28。しめ切りを、30日先から、「今日の分」に切ると、7。25倍です。気が散るものを遠ざけると、12。43倍です。仕事の中身も、自分の能力も、何も、変わっていません。変えたのは、分母だけです。
3. 私の例:先延ばしで、失ったもの
3-1. 教材が、1年以上、進まなかった
私は、物を仕入れて、直して売るやり方を教える教材を、メールでとどく形で、作っています。いまは、72通です。この教材は、1年以上、形に、なりませんでした。「やる気が出たら、書こう」と思っているあいだは、1行も、進みませんでした。
式で言えば、「できそうな見こみ」が、低かった。白紙に、最初の1行を書くのが、私には、いちばん、重かったのです。しめ切りも、ありません。自分の商品なので、だれも、さいそくしません。分母は、無限に、大きい。進むはずが、ありませんでした(くわしくは、作業興奮の記事と、完璧主義の記事)。
3-2. 「重要だが、急ぎでない」を、後回しにした
急ぎの仕事は、先延ばし、できません。しめ切りが、近いからです。あぶないのは、「重要だけれど、急ぎでは、ない」仕事です。しめ切りが、ありません。やらなくても、今日は、何も、起きません。私は、これを後回しにして、サイトの記事と、アカウントと、1年を、失いました(アイゼンハワーマトリクスの記事に、書きました)。
先延ばしの費用は、毎日、少しずつでは、なく、ある日、まとめて、請求されます。だから、払う日まで、気づきません。
3-3. 単位を落として、卒業を、のばした
学生のころの話です。私は、高校でも、短大でも、大学でも、単位が足りずに、期間を、のばしています。短大では、入学の時期の選択肢を見落として、半年、空白を、作りました。
いま考えると、入学が決まった時点で、1年目の基礎の科目を、先に、つぶしておけば、よかった。それだけで、のびた分の学費と、半年の空白は、さけられたはずです(学歴ロンダリングの記事に、計算機を、置いています)。入学の前は、しめ切りが、いちばん遠い時期です。いちばん、先延ばししやすい時期に、いちばん、やるべきことが、ありました。
4. 直し方:式の数字を、1つずつ、動かす
4-1. 「できそうな見こみ」を、上げる:白紙を、なくす
私に、いちばん効いたのは、これです。文章なら、AIに、あらい下書きを、書かせる。資料なら、前に作ったものを、コピーして、開く。作業なら、道具を、前の日に、机に出しておく。「直す」は、「作る」より、ずっと、始めやすい。教材が動き出したのは、AIの下書きで、白紙をなくしてからでした。そして、先に、60点の全体を、作りました。全体が見えると、どこが足りないかが、具体的に、分かります。
4-2. 「しめ切りまでの遠さ」を、ちぢめる:時間を、先に、数字で、決める
私は、直す仕事なら2時間、売る判断なら24時間、と、先に、決めています。こわれた機械に手をつけて、2時間で原因が分からなければ、直すのをやめて、部品取りに、回します。オークションで、落札から24時間たっても支払いがなければ、落札者の都合として、削除します。
どちらも、「決めるのを、先延ばししない」ための、しくみです。待てば、直るかもしれない。待てば、払うかもしれない。その「かもしれない」が、決定を、無限に、先へ、送ります。時間が来たら、その時点の材料で、決めます(ツァイガルニク効果の記事)。
4-3. 「得られる価値」を、たしかめる:そもそも、やる意味が、あるか
何をしても、手がつかない仕事が、あります。そのときは、やる気の問題では、なく、その仕事に、問題があるのかもしれません。やる意味が、分かっていない。やっても、自分に、何も、返ってこない。私のまわりで、毎日、文章を書くと決めたチームが続かなかったのも、書いても、何も返ってこなかったからでした(リンゲルマン効果の記事)。先延ばしは、「この仕事は、やらなくていい」という、正しい合図のことも、あります。
4-4. 「気の散りやすさ」を、下げる:意志では、なく、距離で
気が散るものを、がまんするのでは、なく、手のとどかないところへ、置きます。私は、仕事の部屋と、寝る部屋を、分けています。1人暮らしでも、部屋が2つ以上ある家に、住んでいます。家の中で、場所を変えると、頭が、切りかわります。
4-5. まだ、直せていないもの
正直に、書きます。FXの自動売買は、通算でマイナスなのに、まだ、やめていません。「やめる」という決定を、私は、先延ばし、しています(コンコルド効果の記事)。やめる日には、しめ切りが、ありません。上の4つのうち、まだ、どれも、当てられていません。
5. 受診を考える、目安
先延ばしは、だれにでも、あります。ただ、次のような場合は、工夫より先に、医療機関(心療内科、精神科)に、相談してください。
- 気分の落ちこみや、何にも興味が持てない状態が、2週間以上、続いている。
- 先延ばしのせいで、仕事や、学校や、お金のことで、大きな問題が、くり返し、起きている。
- 子どものころから、ずっと、集中が続かない、わすれ物が多い、順番に進められない、という傾向が、ある。
- ねむれない、食べられない、体が動かない。
この記事の計算機は、考えを整理するための道具です。診断の道具では、ありません。
6. まとめ
- 先延ばしとは、おくらせると損だと分かっていて、自分の意思で、おくらせることです。なまけや、計画的な後回しとは、ちがいます。
- やる気は、「見こみ × 価値 ÷(気の散りやすさ × しめ切りまでの遠さ)」で、決まります。意志は、式に、入っていません。
- しめ切りを、30日先から、「今日の分」に切るだけで、点数は、25倍に、なります。
- 私は、教材を1年以上進められず、単位を落として卒業をのばし、「重要だが急ぎでない」を後回しにして、記事とアカウントを、失いました。
- 直ったのは、白紙をなくしたときと、時間を、先に、数字で決めたときです。意志を、強くしたわけでは、ありません。

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