完璧主義は、とても高い基準を自分に課して、そこに届かないものを、「失敗」とみなしてしまう、考え方のくせです。質の高い仕事を生むこともあります。いっぽうで、始められない、終えられない、人に任せられない、という形で、仕事を止めることもあります。
私は、教材を、1年以上、完成させられませんでした。販売ページは、直すたびに長くなって、5万字をこえました。人をやとったときは、相手にも自分と同じ仕上がりを求めて、だれも、育てられませんでした。ぜんぶ、同じ根から出ています。
この記事では、完璧主義の種類を先に整理します。そのあとで、私が完璧主義で止まった3つの場面と、直そうとせずに、しくみで外した方法を書きます。先に結論を書くと、私は、完璧主義を、直せていません。いまも、納得がいかずに、直しつづけています。変えたのは、性格ではなく、順番です。「やめたい」「人に頼れない」と感じている人への答えは、7章にまとめました。
1. 完璧主義とは
心理学では、完璧主義を、1つのものとしては、あつかいません。だれに向いているかで、3つに分けます。カナダの心理学者、ヒューイットとフレットの分け方です。
| 種類 | 中身 | 出てくる言葉 |
|---|---|---|
| 自分に向く完璧主義 | 自分に、とても高い基準を課す | 「この出来では、まだ出せない」 |
| 他人に向く完璧主義 | まわりの人にも、同じ高い基準を求める | 「なんで、これくらい、できないのか」 |
| まわりから求められていると感じる完璧主義 | 「完璧でなければ、認めてもらえない」と感じている | 「失敗したら、終わりだ」 |
1-1. 役に立つ面と、害になる面
もう1つの分け方は、中身を、2つの部品に分けるものです。
| 部品 | 中身 | はたらき |
|---|---|---|
| 高い目標を持つ | 良いものを作りたい。もっと、うまくなりたい | たいてい、役に立つ |
| 失敗を、おそれすぎる | 少しの欠点も、ゆるせない。人からどう見られるかが、こわい。終わったことを、くよくよ考える | たいてい、害になる。先のばし、つかれ、落ちこみと、結びつきやすい |
問題は、目標の高さでは、ありません。「届かなかったものを、どう、あつかうか」のほうです。8割の出来を、「2割足りない失敗」と見るか、「8割できた。残りは、次に直す」と見るか。
1-2. 近い言葉との違い
| 言葉 | 中身 |
|---|---|
| 完璧主義 | 高い基準と、届かないことへの、きびしい評価 |
| 先のばし | やるべきことを、あとに回す。完璧主義の、よくある結果の1つ。完璧にできないなら、始めたくない |
| パーキンソンの法則 | 仕事は、使える時間いっぱいまで、膨らむ。完璧主義の人に、しめきりのない仕事を渡すと、終わらない |
| インポスター症候群 | 成果を出していても、「自分は、実力がない。いつか、ばれる」と感じる |
| こだわり | ここだけは、ゆずらない、という選んだ基準。完璧主義とのちがいは、「どこに力を入れて、どこは捨てるか」を、自分で選べているかどうか |
2. よくある例
- 資料を、しめきりの直前まで、直しつづける。出したあとも、直したところではなく、直せなかったところが、気になる
- 「ちゃんと準備ができてから」と言いつづけて、始めない
- 人に任せた仕事を、けっきょく、自分で、ぜんぶ、やりなおす
- 部下の仕事の、できている9割ではなく、できていない1割から、話を始める
- メールを1通送るのに、30分かける
- 99点を取って、落とした1点のことを、考えている
組織の中でやっかいなのは、3つ目と、4つ目です。他人に向く完璧主義は、本人には、「仕事の質を守っている」ように、感じられます。まわりから見ると、「何をしても、直される」です。任された人は、考えるのを、やめます。どうせ直されるなら、はじめから、言われたとおりにだけ、やる。そして、完璧主義の上司は、「うちの部下は、自分で考えない」と、なげきます。期待が人の成果を下げる流れは、ゴーレム効果の記事に書きました。
3. 私の例①|教材が、1年以上、完成しなかった
私は、物を仕入れて、直して売るやり方を教える教材を、作っています。メールで届く形式で、いまは、72通です。
この教材は、1年以上、形に、なりませんでした。構成を考える。書きはじめる。「この順番では、伝わらない」と感じて、構成から、作りなおす。これを、くり返していました。作りなおした回数は、数えきれません。
しめきりは、ありませんでした。自分の商品なので、だれも、せかしません。「納得がいくまで」が、完成の条件でした。時間がいくらでもあるとき、納得は、できません。直せるところは、いつまでも、見つかるからです。この話は、パーキンソンの法則の記事に書きました。
3-1. 動いたのは、基準を下げたからでは、なかった
形になったのは、AIを使いはじめてからです。伝えたいことをAIに話して、下書きを、書かせる。1か月で、72通が、できました。自分だけでは、このペースは、むりでした。
ここで起きたことは、「基準を下げた」では、ありません。順番が、変わりました。
| 前 | あと | |
|---|---|---|
| 順番 | 頭の中で、完璧な構成を作る → 書く | まず、ぜんぶの下書きが、ある → 直す |
| 完璧主義が、働く場所 | 始める前。だから、始まらない | できたものを、直すとき。だから、質が上がる |
| 手もとにあるもの | 何も、ない | 60点の、全体 |
完璧主義は、白紙の前では、ブレーキにしか、なりません。60点の全体が目の前にあるときは、エンジンになります。どこが足りないかが、具体的に、見えるからです。私は、いまも、この教材に、納得していません。参加した人の声と、世の中の変化に合わせて、直しつづけています。ただ、それは、「売っているものを、直している」のであって、「売るものが、まだない」のとは、まったく、ちがいます。作り方は、コンテンツの作り方に書きました。
4. 私の例②|販売ページが、5万字をこえた
商品を売るためのページも、直すたびに、長くなりました。「これも、伝えなければ」「あれも、先に説明しておかなければ」。そう感じるところまで書き足すと、毎回、2万字から、5万字を、こえました。
読む人が、最後まで読むかどうかは、考えていませんでした。考えていたのは、「説明が足りない、と思われたくない」です。1章の表でいうと、下の段です。失敗を、おそれすぎていました。足すことは、私を、安心させました。読む人は、へっていきました。
株やFXで、売買の条件を足しすぎると、条件に合う場面が、ほとんどなくなって、売買そのものが、できなくなります。あれと、同じです。「もれなく」は、「伝わる」と、別のものでした。いまの作り方は、LPの作り方に書いています。
5. 私の例③|人を、育てられなかった
いちばん高くついたのは、他人に向く完璧主義です。
ブランド品を、本業の大きさで回していたころ、私は、人をやといました。撮影と、出品を、任せようとしました。そして、相手に、自分と同じ仕上がりを、求めました。できないと、いら立ちました。育てることが、できませんでした。人件費のほうが大きくなって、事業は、逆ザヤになりました。
いまは、原因が、2つあったと、分かっています。
- 私の頭の中にある「完璧な仕上がり」を、外に出していなかった。出していないものを、相手に求めていた(知識の呪いの記事)
- 相手にとって、その仕上がりにする理由が、なかった。仕上がりが良くなっても、その人の給料は、変わりません。私にとっては、自分の商品です。相手にとっては、時給の仕事です
5-1. 直さずに、向きを変えた
私は、この性格を、直せませんでした。だから、この性格が、害にならずに、役に立つ場所へ、移りました。
いまの仕事は、個人への指導です。相手は、自分のお金と時間を使って、自分の商売を、伸ばそうとしている人です。私が高い基準を求めると、相手の収入が、直接、上がります。だから、相手も、本気で、こたえてくれます。同じ「相手にも、高い水準を求める」性格が、やとった人には、害になりました。教える相手には、価値になりました。
完璧主義を、なくす必要は、ないと思っています。「高い基準を求めることが、相手の得にも、なっているか」。この条件がそろう場所を、さがします。人を使う側に回って、うまくやれなかった話は、ピーターの法則の記事に書きました。
6. やり方|性格は変えない。順番と、しくみを変える
6-1. 先に、60点の全体を、作る
1章から完璧に仕上げて、2章に進む、を、やめます。ぜんぶの章を、あらい形で、先に、うめます。完璧主義は、そのあとで、使います。いまは、AIに、あらい下書きを作らせるのが、いちばん早い方法です。白紙を、なくすことが、目的です。
6-2. 時間の入れものを、先に、小さくする
「納得がいくまで」を、完成の条件に、しません。私は、直す仕事なら2時間、売る判断なら24時間、と、先に、数字で決めています。時間が来たら、その時点のものを、出します。完璧主義の人は、時間があるだけ、直します。だから、時間のほうを、しぼります。
6-3. 出してから、直せる形にしておく
印刷する本は、出したら、直せません。ウェブの記事も、メールの教材も、あとから、直せます。「出したあとで、直せる」形を選んでおくと、出すときの、こわさが、へります。私の教材は、完成させないことを、前提にしています。
6-4. どこに使うかを、選ぶ
ぜんぶに、100点を求めると、どれも、終わりません。「ここだけは、100点にする」を、1つか2つ、選びます。ほかは、70点で、流します。私の場合、100点を求めるのは、教材の中身と、教える相手への答えです。それ以外は、先に出して、あとから直します。
6-5. 人に求めるときは、先に、外に出す
人に高い基準を求めるなら、先に、その基準を、見える形にします。動画、マニュアル、テンプレート、良い例と悪い例。それを渡したうえで、届かなかったところを、いっしょに直す。渡していないなら、求めません。それでも自分で直してしまうなら、その仕事は、人に任せる仕事では、ないのかもしれません。
6-6. つらさが、強いとき
完璧主義が、眠れない、食べられない、仕事に行けない、というところまで来ているなら、やり方の工夫でどうにかする段階では、ありません。医師や、カウンセラーに、相談してください。この記事に書いたのは、仕事の進め方の話です。
7. 完璧主義をやめたい・人に頼れないとき
「完璧主義をやめたい」「人に頼れない」と感じて、この記事に来た人もいると思います。この記事の答えは、6章と同じです。完璧主義を、やめようとは、しません。止まっている場所を分けて、順番と、しくみを、変えます。「人に頼れない」には、仕事を人に任せられない話と、人に頼むこと・聞くこと自体ができない話があるので、この章では、2つを分けて書きます。
7-1. まず、どこで止まっているかを、分ける
ここからは、この記事としての整理です。「やめたい」と感じる場面を、2章の例と、6章・7章に、つなげると、次のとおりです。すべての場面を網羅した分け方では、ありません。
| 止まっている場面 | 2章の例 | 先に読むところ |
|---|---|---|
| 始められない | 「ちゃんと準備ができてから」と言いつづけて、始めない | 6-1(先に、60点の全体を、作る) |
| 終えられない | 資料を、しめきりの直前まで、直しつづける | 6-2(時間の入れものを、先に、小さくする)、6-3、6-4 |
| 人に任せた仕事を、やりなおしてしまう | 人に任せた仕事を、けっきょく、自分で、ぜんぶ、やりなおす | 6-5と、7-2 |
| 人に頼むこと・聞くこと自体ができない | (2章の例にはない) | 7-3と、7-4 |
| 眠れない、食べられない、仕事に行けない | (2章の例ではなく、心と体の状態) | 6-6と、7-5 |
7-2. 私が、人に仕事を任せて失敗した原因
私が人に仕事を任せて失敗した原因は、5章に書いた2つです。頭の中の「完璧な仕上がり」を、外に出していなかったこと。相手にとって、その仕上がりにする理由が、なかったこと。任せる前に基準を外に出すやり方は、6-5に書きました。
7-3. 人に頼むこと・聞くこと自体が、難しいとき
人に頼むこと、聞くこと自体が難しいのは、7-2とは別の話です。私の場合、プライドが無駄に高かったころは、人に聞けませんでした。手放したきっかけの1つは、人に頼ったらうまくいったことで、発信のやり方を人に教わったり、外注して仕組みにしたりしました。そのころの私に当てはまった特徴は「プライドが高い人の特徴・原因|無駄に高かった私に当てはまった4つと、思い当たる学歴の劣等感(計算機つき)」に、手放したきっかけは「プライドの捨て方|無駄に高かった私が手放してから変わったこと。人の道から外れない限り試す、でもマルチには手を出さない」に書きました。なお、このプライドの話は、5章の、人をやとって育てられなかった話とは、別の話です。
また、悩みを人に相談することや、助けを求めることは、この章の「仕事の任せ方」とは、分けて考えてください。相談が必要な場面については、7-5に書きました。
7-4. いまの私の頼り方|外注と、AI
私は、人に教わったり、外注を仕組みにしたりして、頼れるようになってきました。いまの業務では、人より、AIに頼る割合のほうが、大きくなっています。私の言葉のまま書くと、次のとおりです。
大半の業務をAIに移管できるようになり人件費が数百万単位で浮いた。人に頼らずとも回せる仕組みが実装できた。相手の能力が低くても先回りして指示を会社や人に出せるので自分が求める結果を得やすくなった
「数百万単位」は、私の言葉のままです。何と比べたのか、何年分なのかは、ここでは示していません。これは私の場合の結果で、同じことをすれば同じ金額が浮く、という話でも、ありません。
教材を形にできたのも、AIに下書きを書かせてからでした(3-1)。AIで下書きを先に作るやり方は、6-5の「基準を、先に、外に出す」という考え方にも通じます。ただ、人への指示まで、毎回それができている、という意味では、ありません。やる気が出ない日にAIの下書きを使う話は「やる気の出し方|出ない日に私がやる3つ。運動・ジム週3〜4回、AIの下書き、やる気に頼らない(計算機つき)」に書いています。
この記事としての提案は、次のとおりです。仕事を任せるのが難しいときは、手順やテンプレートで基準を整理し、AIに作業の一部を任せる方法もあります。ただし、人への相談が必要な場面とは、分けて考えます。これは、私の経験から組み立てた提案で、効果を調べたものでは、ありません。人に期待するときの置き場所の決め方は「人に期待しない方法|期待をなくさず、置き場を決まりへ。友人に先に出して回収ゼロ、人を育てられなかった私の3つ(計算機つき)」に書きました。
7-5. やめたいと思うほど、つらいとき
「完璧主義の人がなりやすい病気」を調べて、この記事に来た人もいると思います。完璧主義の傾向だけでは、病気とは判断できません。ここでは、特定の病気との関連や、診断の方法は扱わず、生活に支障があるときの相談先を案内します。診断は、医師がします。
眠れない、食べられない、仕事に行けない、などの不調や、生活への支障があるときは、長引くのを待たずに、医療機関へ相談してください(6-6)。どこに相談すればよいか分からないときは、公的な相談窓口も使えます。厚生労働省の「まもろうよ こころ」に、電話やSNSで悩みを相談できる窓口が、紹介されています。
まとめ
- 完璧主義は、高い基準と、届かないことへの、きびしい評価。自分に向くもの、他人に向くもの、まわりから求められていると感じるもの、の3つがある
- 高い目標を持つことは、役に立つ。害になるのは、失敗を、おそれすぎる側
- 私は、教材を1年以上、完成させられなかった。動いたのは、基準を下げたからではなく、「先に60点の全体を作る」に、順番を変えたから
- 完璧主義は、白紙の前ではブレーキ、60点の全体の前では、エンジンになる
- 他人に向く完璧主義で、人を育てられなかった。いまは、高い基準が相手の得にもなる仕事(個人への指導)に、移った
- 性格は、変えない。順番、時間の入れもの、力を入れる場所を、変える
- 人に頼れないことは、仕事を任せる話と、人に頼む・聞く話に分けた。私は人に教わったり外注を仕組みにしたりしてきて、いまの業務では人よりAIに頼る割合が大きい(7章)
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