パーキンソンの法則は、「仕事の量は、完成のために与えられた時間を、すべて使い切るまで膨らむ」という法則です。1週間あれば1週間かかり、1か月あれば1か月かかります。仕事の中身が同じでも、です。
同じ名前で、もう1つあります。「支出の額は、収入の額に達するまで膨らむ」。こちらは第2法則と呼ばれます。
この記事では、2つの法則の中身を説明したあとで、私自身の例を書きます。時間のほうは、1年以上かけても完成しなかった教材と、更新するたびに2万字から5万字にふくらんだ販売ページ。お金のほうは、月の利益が80万円から200万円あったのに、逆ザヤになった仕事です。
1. パーキンソンの法則とは
言い出したのは、イギリスの歴史学者、シリル・ノースコート・パーキンソンです。1955年に、雑誌『エコノミスト』に書いた文章がもとになっています。
パーキンソンが見ていたのは、役所です。イギリスの海軍では、軍艦の数も、兵の数も減っていた時期に、本部の役人の数だけが増えていました。植民地を管理する役所では、植民地が減っていくのに、職員は増え続けました。仕事の量と、人の数は、関係がなかったのです。
理由を、パーキンソンは2つ挙げました。役人は、ライバルではなく部下を増やしたがる。そして、役人は、おたがいのために仕事を作り合う。人が増えれば、連絡と確認と会議が増えます。全員が、忙しくなります。忙しいので、また人が要ります。
| 名前 | 中身 |
|---|---|
| 第1法則 | 仕事の量は、与えられた時間をすべて使い切るまで膨らむ |
| 第2法則 | 支出の額は、収入の額に達するまで膨らむ |
| 凡俗法則(自転車置き場の議論) | 会議で使われる時間は、議題の大事さと反対になる。原子炉の建設はすぐ通り、自転車置き場の屋根の色で長くもめる。だれでも口を出せる話ほど、時間を食う |
3つとも、形は同じです。空いている入れものがあると、中身のほうが、入れものの大きさに合わせて増える。時間でも、お金でも、会議でも、起こります。
2. 私の例①|期限のない教材は、1年以上、完成しなかった
私は、壊れた機械を直して売るやり方を、メール講座の形で教えています。いまの有料の講座は、72通あります。
この講座は、いまの形になる前に、1年以上、完成しませんでした。構成を考える。書く。読み返す。納得がいかない。作り直す。作り直した回数は、数えきれません。
だれかに、期限を決められていたわけではありません。自分の商品なので、期限は自分で決められます。つまり、いくらでも延ばせます。「納得がいくまで」という完成の条件は、時間がいくらあっても、満たされません。時間があるぶんだけ、直したいところが見つかるからです。
形になったのは、AIを使い始めてからです。伝えたいことを私が出し、文章の大半をAIが書く形にして、1か月で72通になりました。自分ひとりでは、1か月でこの量は無理です。作り方は、コンテンツの作り方に書きました。
ここで言いたいのは、「AIは速い」ではありません。1年以上かけた私と、1か月で終えた私は、同じ人間で、持っている材料も同じでした。ちがったのは、1通を書き上げるのにかかる時間が短くなって、「全部を書き終える」ところまで、初めて行けたことです。それまでの私は、書き終える前に、最初のほうを直し始めていました。仕事が、時間に合わせて膨らんでいました。
正直に書くと、いまも直しています。買った人の声と、市場の変化に合わせて、この講座は増やし続けるつもりです。ただし、これは「完成しないから出せない」とは、ちがいます。出したうえで、直す。膨らむ場所を、売る前から、売ったあとに移しました。
3. 私の例②|販売ページは、直すたびに2万字から5万字になった
商品を売るためのページ(LP)でも、同じことが起きました。
私の販売ページは、更新するたびに長くなりました。読む人に、これも伝えなければ。あれも先に説明しておかなければ。そう感じる水準まで書き足すと、毎回、2万字から5万字を超えました。
長いページが、いつも悪いわけではありません。ただ、私の場合は、書き足すことに終わりがありませんでした。株やFXで、売買の条件を足しすぎると、条件に合う場面がほとんどなくなって、売買そのものができなくなります。あれと同じ状態です。伝えることを足すたびに、最後まで読む人は、減っていきました。
直す時間が、いくらでもある。ページの長さにも、上限がない。入れものが2つとも無限なので、中身は、無限に増えました。いまのページの作り方は、LPの作り方に書いています。
4. 私の例③|時間を区切っている仕事は、膨らまない
逆に、膨らまない仕事もあります。私が、あらかじめ、時間の入れものを小さく切っている仕事です。
- 修理。手をつけて2時間で原因が分からなければ、直すのをやめて、部品取りに回します
- 売ること。出品して最初の24時間の反応を見ます。だめなら、赤字でも値段を下げて、現金にもどします
- 在庫。ブランド品を扱っていたころは、仕入れてから1週間で売り切ることを目安にして、実際に、大半を1週間で売り切っていました
どれも、「うまくいくまでやる」ではなく、「この時間でだめなら、やめる」と決めてあります。入れものが小さいので、仕事は、その大きさに収まります。やめる条件を先に決めておく話は、コンコルド効果の記事にも書きました。
教材と販売ページが膨らんで、修理と販売が膨らまなかった理由は、私の性格ではありません。片方には時間の上限があって、もう片方にはなかった。それだけです。
5. 私の例④|第2法則。利益が増えたら、支出が追いついた
第2法則のほうは、もっと痛い形で経験しました。
2019年から2022年ごろ、私は、ブランド品のバッグを仕入れて、直して売る仕事を、本業の大きさでやっていました。売る数は、週に50個から150個。人件費を引く前の利益は、月に80万円から200万円ほどでした。月によって、大きく動きます。
利益が出るようになって、私がやったことは、人を増やすことでした。
| 項目 | 月の金額 |
|---|---|
| 人件費を引く前の利益 | 80万〜200万円(月によって大きく変わる) |
| 人件費(社員1人とアルバイト) | 45万〜50万円 |
| 自分の給与として取りたかった額 | 100万円 |
| 倉庫や事務所を借りる場合の見積もり | 30万〜50万円以上(借りずに断念) |
人件費と、自分の給与を足すと、145万円から150万円です。利益が200万円を超える月なら、残ります。でも、そんな月は、いつもは来ません。ならすと、逆ザヤでした。1点あたりの数字は、限界利益の記事で計算しています。
在庫は、自宅を占領していました。さらに大きくするには、倉庫か事務所が要ります。見積もると、月に30万円から50万円以上。ここで、大きくするのをあきらめました。
ふり返ると、第2法則そのものです。利益の上のほう、つまり「いちばん良かった月」に合わせて、支出の形を決めていました。人件費は、毎月、同じ額が出ていきます。利益は、毎月、変わります。変わる収入に、変わらない支出を合わせると、悪い月に、足りなくなります。そして、毎月の数字に追われることが、強いストレスになりました。
自分とアルバイト1人くらいの小さな形なら、こわれなかったと思っています。会社の形にしようとしたところで、私の場合は、成り立ちませんでした。このときの数字は、ブランド品の仕入れルートの記事にも書いています。
パーキンソンが役所で見たものと、同じ形でもあります。人を増やすと、教える、確認する、直す、という仕事が増えます。増えた仕事をこなすために、自分の時間が減ります。人を使う側に回って、うまくやれなくなった話は、ピーターの法則の記事に書きました。
6. 守り方
6-1. 時間のほう(第1法則)
- 仕事を始める前に、時間の上限を決める。「終わるまで」ではなく、「2時間」「24時間」「1週間」と、数字で決めます
- 上限に来たときに、どうするかも決めておく。延ばす、は選択肢に入れません。やめる。小さくして出す。人に回す。この中から選びます
- 「納得がいくまで」を、完成の条件にしない。時間があるかぎり、納得はできません。「この3つが入っていたら出す」のように、数えられる条件にします
- 出してから直す。膨らむのを止められない仕事は、膨らむ場所を、出す前から、出したあとに移します
6-2. お金のほう(第2法則)
- 毎月かならず出ていく支出は、いちばん悪い月の収入に合わせる。良い月に合わせると、悪い月に足りなくなります
- 収入が増えたら、支出を増やす前に、増えた理由が続くものかどうかを見る。たまたま良かった月を、ふつうの月だと思わないことです
- 人を増やす前に、増えた人のために自分が使う時間を、計算に入れる。人件費は、払うお金だけではありません
毎月かならず出ていく支出を見直さないまま放っておく、という話は、現状維持バイアスの記事に書きました。
7. まとめ
- パーキンソンの法則は、仕事が、与えられた時間をすべて使い切るまで膨らむ、という法則。第2法則は、支出が、収入の額に達するまで膨らむ
- 期限のなかった私の教材は、1年以上、完成しなかった。AIで1通あたりの時間が短くなり、初めて「全部を書き終える」ところまで行けて、1か月で72通になった
- 販売ページは、直すたびに2万字から5万字にふくらんだ。時間にも、長さにも、上限がなかったから
- 修理の2時間、出品の24時間、在庫の1週間。時間を先に区切っている仕事は、膨らまなかった
- 月の利益が80万〜200万円あったブランド品の仕事は、人件費45万〜50万円と自分の給与100万円で、ならすと逆ザヤになった。良い月に合わせて、変わらない支出を決めたから
- 守り方は、時間には数字の上限と「上限に来たらどうするか」。お金には、変わらない支出を、いちばん悪い月に合わせること
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