ニッパチの法則とは|2月・8月は売れない?2割が8割?2つの意味を、経済産業省の検証と20年の月次の数字で確かめる(判定ツールつき)

ニッパチの法則の2つの意味。2月と8月は売上が下がる?という二八と、2割が8割を生むパレートの法則(2:8)は別の話 法則・原理の検証

「ニッパチの法則」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。

ニッパチの法則には2つの意味があります。1つは「2月と8月は商売が低調で、売上が下がる」という二八(にっぱち)。もう1つは「全体の8割は、2割の要素から生まれる」という2:8の法則で、パレートの法則とも呼ばれます。前者を経済産業省が統計で検証したところ、小売業全体で落ちるのは2月で、2月は日数が少ないので落ちるのは当然といえば当然、とされました。8月は小売業全体ではむしろ平均的で、落ちていたのは百貨店や総合スーパー、衣服の小売でした。なかでも百貨店の衣料品は、2月と8月の落ち込みがはっきりしていました。後者は、2と8がきっちり決まった法則ではありません。「少数が大半を占める」という経験則で、偏り方はデータごとに違います。

私は中古品の仕入れと販売を約20年続けてきて、年間を通して数字は月ベースで見てきました。2月と8月に数字が悪くなった、ということはありません。むしろ2月と8月は仕入れどきだと思っています。理由は5章の「私の見方」に書きました。自分の売上で2つのニッパチを確かめるツールは6章にあります。

1. ニッパチの法則の2つの意味

意味 中身 別の呼び方 よく出てくる場面
2月と8月 2月と8月は売上が下がる 二八(にっぱち) 小売、飲食、サービス業の閑散期の話
2割と8割 2割の要素が、8割の結果を生む 2:8の法則、80対20の法則、パレートの法則 売上、顧客、不良品などの分析

どちらの意味かは、話の流れで決まります。「2月と8月は暇だ」という話ならニッパチは前者で、「売上の8割は2割の商品から」という話なら後者です。検索結果でも、この2つが混ざって出てきます。この記事では両方を扱います。

2. 2月と8月は本当に売れないのか:経済産業省の検証

経済産業省の経済解析室が、「二八」が本当に起きているのかを、第3次産業活動指数などの統計で検証しています(2016年8月2日公開、2018年2月19日最終更新)。小売業全体と業種別は第3次産業活動指数(活動の量)で、百貨店は販売額で見ています。中身は次の3つです。

2-1. 小売業全体で落ちるのは2月。8月は平均的

小売業全体では、2月に落ち込むことは確かでした(自動車小売業は除きます)。一方で、8月に前後の月より落ち込む傾向は読み取れず、飲食料品小売業では、むしろ8月の販売量が多くなっていました。小売業全体で目立つのは、2月の落ち込みと12月の盛り上がりで、8月の水準は「平均的」だと書かれています。

2-2. 2月が少ないのは、日数のぶん

経済産業省は、2月は日数が少ないので、落ち込むのは当然といえば当然だ、としています。日数だけでどれくらい違うかを計算すると、次のとおりです。

比べる相手 計算 日数だけで生まれる差
1か月の平均(365日÷12=約30.4日) 28÷30.4=約0.92 約8%少ない
1月や3月(31日) 28÷31=約0.90 約10%少ない
うるう年の2月(29日)と、1か月の平均(366日÷12=30.5日) 29÷30.5=約0.95 約5%少ない

経済産業省の解説では、この差を「2÷30.4=6.5%程度」と書いています。平均より2日短いとして概算した数字です。平年の2月は平均より約2.4日短いので、上の表では28÷30.4で計算しました。

どちらも前提は、1日あたりの売上が年じゅう同じだ、ということです。それでも2月の売上は、1月より約10%少なく出ます。売上を月の合計で比べると、2月は「落ちた」ように見えます。1日あたりで比べれば、何も起きていないことがあります。経済産業省の解説は、実際の2月の落ち込みのうち、どれだけが日数のぶんかまでは分けていません。6章のツールは、自分の数字から日数の差を除いて判定します。

2-3. 8月に落ちるのは、百貨店・総合スーパーと衣服の小売

業種を分けると、百貨店や総合スーパーのような各種商品小売業と、織物・衣服・身の回り品小売業では、8月と9月に販売量が明らかに下がっていました。

百貨店の販売額を分野別に見ると、飲食料品には2月と8月の落ち込みは見られません。ところが、百貨店の販売額の約5割を占める衣料品では、2月と8月の落ち込みがはっきり出ていて、その結果、百貨店の合計でも「二八」がはっきり見えます。

経済産業省は、その理由を次のように見ています。百貨店はフランスの年2回のセール「ソルド」に学んで、初夏と冬にセールをしていて、そのセールの直後に、衣料品の売上の「谷」が来る。そして、近代的な商業の象徴だった百貨店の衣料品の季節の動きが、あたかも小売業全体の動きのように言われたのではないか、という見方です。

衣料品を、国内の出荷と輸入を合わせた供給の側から見ると、「二八」はまったく見られません。同じ衣料品でも、作って卸す側と、小売で売る側とでは季節の動きが違っていて、経済産業省は、「二八」は小売販売に特有の現象だ、としています。

2-4. よく言われる理由と、統計で確かめられたこと

月 よく挙がる理由 経済産業省の検証で示されたこと
2月 年末年始にお金を使ったあとの節約、寒さで出かけない 小売業全体で落ちる。日数が少ないので、落ちるのは当然といえば当然とされている
8月 暑さで出かけない、お盆休み 小売業全体では平均的。落ちるのは百貨店・総合スーパーや衣服の小売で、百貨店の衣料品は夏のセールの直後の谷と見られている

左の列の理由がまちがいだ、という意味ではありません。統計で示されているのは右の列だ、ということです。この検証の対象は小売業で、飲食店やサービス業は、この解説では確かめられていません。自分の店がどうかは、自分の数字で確かめるのがいちばん早いです。

3. 2割が8割を生む:2:8の法則(パレートの法則)

3-1. 名前はパレート。広めたのはジュラン

名前のもとは、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート(1848〜1923年)です。大学で品質管理を教えていたジョセフ・M・ジュランが1979年に立てたジュラン研究所(いまの名前はJuran)の説明では、パレートは1895年に、少数の人が富の大半を持っていることを見つけました。

それを、「共通の結果に関わる要因の集まりでは、比較的少数が結果の大部分を占める」という、分野を問わない原則として「パレートの原則」と呼んだのはジュランです。ジュラン本人の振り返りでは、1940年代の終わりに『Quality Control Handbook(品質管理ハンドブック)』の初版(1951年刊)の原稿を書いていたとき、この普遍的な現象に短い名前をつける必要に迫られ、富の偏りと品質の損失の偏りを示した図に「パレートの不均等分布の原則」という見出しをつけました。ジュランは、結果の大部分を占める少数を「vital few(決定的な少数)」、残りの多数を「trivial many(取るに足らない多数)」と呼び、「useful many(役に立つ多数)」とも呼んでいます。

そのジュラン本人が1974年に、「普遍的な原則としてのパレートの原則は、パレートのものではない」と書いています。パレートが調べたのは富の分布で、それをあらゆる分野の原則に広げたわけではないのに、見出しがそう読めてしまった、という訂正です。

3-2. 2と8は、足して10になる必要がない

「2割」は商品の数の割合で、「8割」は利益の割合です。数えているものが別なので、2と8を足して10になる理由はありません。上位1割で8割のこともあれば、上位2割で5割のこともあります。

たとえば、10点の商品の利益が次のとおりだったとします。

順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
利益(円) 30,000 20,000 15,000 10,000 8,000 6,000 5,000 3,000 2,000 1,000

合計は100,000円です。上位2割(2点)の利益は50,000円で、合計の50%です。合計の8割(80,000円)に届くには、上位5点(商品の数の50%)が要ります。上位に偏ってはいますが、2:8にはなっていません。2:8の法則は、「自分の数字に偏りがあるか、あるならどれくらいか」を確かめる入り口として使うのが安全です。

3-3. 物販で使うなら:上位に寄せるか、散らすか

2:8の数字が示すのは、これまでの利益がどこに集まっていたか、です。上位の商品に資金を足せば、利益も同じ割合で増える、とまでは言えません。上位に寄せるほど、上位の商品が売れなくなったときの落ち方も大きくなります。反対側の8割の商品をどう見るかは、ロングテールとはに書きました。同じグラフを、パレートの法則は頭のほうから、ロングテールはしっぽのほうから見ています。私は、商品を散らす側でやってきました。その考え方は横積みと縦積みの違いにまとめています。上から順に並べて、A・B・Cに分けて扱いを変えるやり方は、ABC分析とはにまとめました。

4. 働きアリの法則(2:6:2)とは別のもの

「パレートの法則」と並べてよく出てくるのが、働きアリの法則です。一般には、集団は「よく働く2割、ふつうの6割、働かない2割」に分かれる、と言われます。

法則 比率 何の話か
2:8の法則(パレートの法則) 2:8 結果の偏り。どの要素が、結果のどれだけを生んでいるか
働きアリの法則 2:6:2(一般に言われる比率) 集団の中の働き方の分かれ方

どちらも「2」が出てきますが、前者は結果を、後者は集団の中の人を分けています。同じものではありません。働きアリの法則のほうで、研究に何が書かれているかは、働きアリの法則(2:6:2)は本当かにまとめました。

5. 私の見方

私は中古品の仕入れと販売を約20年続けてきました。年間を通して、数字は常に月ベースで評価してきましたが、2月と8月に数字が悪くなった、という事実はありません。売れない時期だからといって、動き方を特に変えたこともありません。そのうえで、2月と8月について、私はこう思っています。

「そもそも2月は決算前で数字を上げようと各社が安売りをする。だから仕入れには絶好の月。8月も半期決算を控える会社がやはり決算に向けてセールをやるので仕込み時。おもちゃなら12月に向けて仕込む商材の始めどき。ここまで良い条件が揃ってなぜ数字が下がるのか。ただ単にそいつの仕入れや売り方が下手くそなだけ」

8月から仕入れて12月に売り切るおもちゃの組み立て方は、おもちゃせどりのランキング基準に書きました。いちばん売れた月を「ふつう」だと思うと、ふつうの月が「落ちた」に見える、という錯覚は平均への回帰とはで扱っています。

2:8のほうについては、こうです。

「80対20の法則を指しているならトップ20%の商品が収益の80%を構成するのは正しい。ただし私は分散を効かせまくっているのでそこまできれいな分布にはならなかった。」

6. 自分の数字で2つのニッパチを確かめるツール

月別の売上を12か月ぶん入れると、2月と8月が、日数の差を除いても落ちているかを出します。商品ごとの利益を入れると、上位2割の商品が利益の何割を占めるか、利益の8割に届くのは上位何点かを出します。どちらか片方だけでも使えます。月は暦の日数で割っているので、休業日の数が月によって違う店では、その差は残ります。商品は利益で並べます。売上の上位と利益の上位は、一致しないことがあるからです。入れた数字は、このページの外には送られません。

自分の数字で、2つのニッパチを確かめる

たとえば、1日あたりの売上が年じゅう30,000円の店なら、2月の売上は840,000円、月平均は912,500円で、2月は月平均の92.1%になります。月の合計だけを見ると「2月は8%落ちた」ように見えますが、1日あたりでは年平均の100%で、落ちていない、と出ます。3章の10点の例を入れると、上位2点で合計の50%、利益の8割に届くのは上位5点、と出ます。

7. よくある質問

ニッパチの法則とは何ですか?

2つの意味があります。「2月と8月は商売が低調で売上が下がる」という二八と、「全体の8割は2割の要素から生まれる」という2:8の法則(パレートの法則)です。

2月と8月は、なぜ売れないと言われるのですか?

よく挙がるのは、年末年始の出費のあとの節約や寒さ(2月)、暑さやお盆休み(8月)です。経済産業省が統計で検証したところでは、小売業全体で落ちるのは2月で、日数が少ないので当然といえば当然、とされています。8月に落ちていたのは百貨店・総合スーパーや衣服の小売で、百貨店の衣料品については、夏のセールの直後の谷だという見方です。

ニッパチとは、閑散期のことですか?

二八の意味では、そうです。2月と8月の閑散期を指します。ただし、ニッパチの法則と言ったときに2:8の法則(パレートの法則)を指す使い方もあるので、話の流れで見分けてください。

2月は、なぜ閑散期なのですか?

まず日数です。2月は28日で、31日の月より約10%短いので、1日あたりの売上が同じでも、月の売上は約10%少なく出ます。百貨店の衣料品なら、冬のセールの直後の谷も重なります。

ニッパチの法則は、飲食店やサービス業にも当てはまりますか?

経済産業省の検証の対象は小売業で、飲食店やサービス業は、その解説では確かめられていません。店の月別の売上を6章のツールに入れれば、日数の差を除いたうえで、2月と8月が落ちているかを確かめられます。

ニッパチの法則は、英語で何と言いますか?

2:8の意味なら、Pareto principle(パレートの原則)や、80/20 rule(80対20の法則)です。

パレートの法則と、働きアリの法則は同じですか?

同じではありません。パレートの法則(2:8)は結果の偏りの話で、働きアリの法則(2:6:2)は、集団の中の働き方の分かれ方の話です。

ニッパチの法則は本当ですか?

二八については、経済産業省の検証では、小売業全体で落ちるのは2月で、日数が少ないぶん落ちるのは当然といえば当然とされ、8月に落ちていたのは百貨店・総合スーパーや衣服の小売でした。2:8については、偏りがあること自体はよく起きますが、比率はデータごとに違います。どちらも、自分の数字で確かめるのが確実です。

8. まとめ

ニッパチの法則には、「2月と8月は売れない」と「2割が8割を生む」の2つの意味があります。前者は、経済産業省の検証では小売業全体で落ちるのは2月で、2月は日数だけでも約1割短く、8月に落ちていたのは百貨店・総合スーパーや衣服の小売でした。後者は、少数が大半を占めるという経験則で、2と8という比率は決まっていません。私は20年、数字を月ベースで見てきて、2月と8月に数字が悪くなったことはなく、むしろ仕入れどきだと考えています。自分の店や物販の数字は、6章のツールで確かめてください。

9. 参考にした公式の情報

10. あわせて読む

記事 この記事とのつながり
ロングテールとは 2:8の残りの8割の側から見た考え方
横積みと縦積みの違い 商品を散らす考え方。2:8に寄せない側の設計
おもちゃせどりのランキング基準 8月に仕入れて12月に売り切る組み立て方
平均への回帰とは いちばん良かった月を基準にすると、ふつうの月が落ちて見える
メルカリで売れない時にやる順番 売れないと感じたときに、先に確かめること
働きアリの法則(2:6:2)は本当か 2:6:2の法則で、研究に書かれていることと書かれていないこと
ABC分析とは 大きい順に並べてA・B・Cに分ける方法と、パレート図を描くツール
72の法則とは 「法則」の名前がついた計算を、物販の数字で確かめた記事

11. この記事について

この記事は、中古品の仕入れと販売を約20年続け、数字を月ベースで見てきた私の立場と、経済産業省とジュラン研究所の公開資料をもとに書きました。経済産業省の検証は2016年に公開されたもので、それ以降の年の動きは含みません。自分の店や物販の数字は、6章のツールで確かめてください。

 

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