メンタルアカウンティングとは、同じお金なのに、出どころや使いみちで、頭の中の別の財布に分けて、あつかいを変えてしまう心の動きです。日本語では「心の会計」と言います。給料の1万円は大事に使うのに、ポイントの1万円や、臨時に入った1万円は、気前よく使う。1万円の値打ちは同じなのに、財布のラベルで、使い方が変わります。
この記事では、まず、意味と、よくある例を、表でまとめます。次に、計算機で、「手元のポイントは、現金にすると本当はいくらか」を、出します。最後に、楽天のセールでポイントの利益を出すのをやめた話など、私の例を、書きます。
1. メンタルアカウンティングとは
1-1. 意味
メンタルアカウンティングは、経済学者のリチャード・セイラーが、1980年代に名前をつけた考え方です。セイラーは、この研究をふくむ行動経済学への貢献で、2017年にノーベル経済学賞を受けています。
お金には、本来、色がありません。どこから入った1万円でも、同じ物が買えます。ところが人は、お金に「給料」「ボーナス」「ポイント」「もうけ」といったラベルをはって、ラベルごとに、別の基準で使います。これが、メンタルアカウンティングです。
1-2. よくある例
| 場面 | 起きること | 本当は |
|---|---|---|
| ポイント | 「タダでもらった物」と感じて、ふだん買わない物に使う | ポイントも、現金と同じく、ほかの物に使えた |
| 臨時収入・ボーナス | 「あぶく銭」として、ぜいたくに使う | 給料の1万円と、値打ちは同じ |
| ギャンブルや投資のもうけ | 「勝った分」として、大きく賭ける | 勝った分も、自分のお金 |
| 貯金しながら借金 | 金利の低い貯金を守り、金利の高いリボ払いを続ける | 貯金で返せば、金利の差だけ得をする |
| 費目ごとの予算 | 食費の予算は余っているのに、娯楽費が足りないと、がまんする | 合計で足りていれば、困らない |
1-3. 悪いことばかりでは、ない
財布を分けること自体は、使いようです。「生活費」と「投資に回すお金」を口座で分けておけば、使いすぎを止められます。問題になるのは、ラベルのせいで、お金の値打ちを、まちがえて数えるときです。とくに、ポイントやキャッシュバックは、「おまけ」の財布に入りやすく、額面どおりに数えてしまいがちです。同じ中身でも、見せ方で判断が変わる話は、フレーミング効果の記事に書きました。
2. 計算機:ポイントは、現金にすると、いくらか
ポイントの額面は、そのまま現金の値打ちでは、ありません。期限までに使いきれない分は、0円です。ポイントがなければ買わなかった物に使った分も、生活は楽になっていないので、0円と数えます。
現金にすると、本当の値打ち:
額面にたいする割合:
額面から消える分:
はじめに入っている数字は、例です。1万ポイントのうち8割を期限内に使い、使った分の3割が、ポイントがなければ買わなかった物だったとします。本当の値打ちは、10,000 × 0.8 × 0.7 = 5,600円。額面の56%です。4,400円分は、財布のラベルが「おまけ」だったせいで、消えています。
数字を、自分の場合に変えてみてください。期限を気にせず使いきれて、ふだん買う物にしか使わないなら、100%に近づきます。そうでないなら、ポイントのために別の店で高く買う判断は、この実質の値打ちで比べ直す必要があります。
3. 私の例
3-1. ポイントで残る利益を、やめた
楽天スーパーセールで、パソコンのパーツを仕入れて、買取屋に売り、ポイントの分で利益を出す。このやり方は、実際に回っていました。それでも、私は、やめました。理由は3つです。
- 利益が、ポイントで残る。
- セールのたびに、利益が出る商品を、前もって調べる作業がいる。
- 黒字が積み上がらず、毎回、ゼロから作り直しになる。
ここからは、私の整理です。帳簿の上では、黒字です。けれど、現金の財布を見ると、仕入れで出ていったお金が、買取の代金として、ほぼ同じだけ戻ってくるだけで、増えた分は、ポイントの財布に入っています。ポイントは、次の仕入れにも、家賃にも、自由には使えません。利益の額だけを見て「もうかった」と数えるのは、ポイントの財布と現金の財布を、同じものとして足している、ということです。商売で困るのは、利益が出ていても、手元の現金が足りないときです(キャッシュフローの記事、黒字倒産の記事)。
それに、毎回の下調べの手間を、時給で考えると、現金で同じ額をかせぐ別のやり方と、比べる必要があります(機会費用の記事)。私は、この2つで、やめると決めました。楽天ポイントの使い道の話は、楽天ポイントをAmazonで使う記事に書いています。
3-2. キャッシュバックは、「通信費」の財布に入れている
逆に、財布の分け方を、わざと使っている例もあります。私は、携帯の乗りかえのキャッシュバックを、半年に1回ほど、受け取っています。これを、私は、「もうけ」の財布ではなく、「通信費」の財布に入れて考えています。スマホの料金が、ずっと0円になっている、という数え方です(携帯の乗りかえの記事)。
もうけの財布に入れると、臨時収入として、使ってしまいやすくなります。通信費の財布に入れると、「毎月の固定費が0円」という形で、続けるかどうかを、判断できます。同じお金でも、どの財布に入れるかで、続け方が変わります。毎月出ていくお金の考え方は、固定費の記事に書きました。
3-3. 財布ごとに、注意の量がちがう
もう1つは、私の失敗です。ヤフーショッピングでは、5のつく日に、プロテインを買っています。Amazonより、タイミングによっては1,000円近く安くなるからです。ここには、ちゃんと注意を向けています。
ところが、同じヤフーのサービスでも、ヤフオクやYahoo!フリマでは、クーポンを取り忘れがちです。クーポンは、自分で取得しないと使えず、自動では当たりません。プロテインの1,000円も、クーポンの数百円から1,000円も、同じお金です。それなのに、「毎月の買い物」の財布には注意が向き、「たまの買い物」の財布には向いていない。財布を分けると、財布ごとに、注意の量まで分かれてしまいます。
4. お金の判断で、財布を1つにもどす手順
- ポイントやキャッシュバックは、現金にするといくらかで、数え直す。2章の計算機のように、期限と、使いみちで、割り引きます。
- 「もうかった」は、現金の財布で、たしかめる。利益の額ではなく、手元の現金が増えたかを見ます。
- 「おまけだから」で買う物は、別に数える。ポイントがなければ買わなかった物は、得ではなく、出費です。
- 財布を分けるなら、目的のために分ける。生活費と投資のお金を分ける、キャッシュバックを通信費に当てる、のように、使いすぎを止める向きで、分けます。
- 損をした財布を、別にしない。「この投資は、取り返すまで売らない」は、損の財布だけを、別に閉じている状態です(プロスペクト理論の記事、コンコルド効果の記事)。
5. まとめ
- メンタルアカウンティング(心の会計)は、同じお金を、出どころや使いみちで別の財布に分けて、あつかいを変えてしまう心の動き。セイラーが名前をつけた。
- ポイントは、期限までに使いきれる割合と、ポイントがなければ買わなかった物の割合で、割り引いて数える。1万ポイント・8割・3割なら、実質5,600円。
- 私は、楽天のセールでポイントの利益を出すやり方を、利益がポイントで残り、毎回作り直しになるので、やめた。
- 携帯のキャッシュバックは、「通信費」の財布に入れて、固定費0円として判断している。財布の分け方は、使いようで、役にも立つ。
- お金の判断では、最後は、現金の財布1つにもどして、たしかめる。

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