完璧主義は、とても高い基準を自分に課して、そこに届かないものを、「失敗」とみなしてしまう、考え方のくせです。質の高い仕事を生むこともあります。いっぽうで、始められない、終えられない、人に任せられない、という形で、仕事を止めることもあります。
私は、教材を、1年以上、完成させられませんでした。販売ページは、直すたびに長くなって、5万字をこえました。人をやとったときは、相手にも自分と同じ仕上がりを求めて、だれも、育てられませんでした。ぜんぶ、同じ根から出ています。
この記事では、完璧主義の種類を先に整理します。そのあとで、私が完璧主義で止まった3つの場面と、直そうとせずに、しくみで外した方法を書きます。先に結論を書くと、私は、完璧主義を、直せていません。いまも、納得がいかずに、直しつづけています。変えたのは、性格ではなく、順番です。
1. 完璧主義とは
心理学では、完璧主義を、1つのものとしては、あつかいません。だれに向いているかで、3つに分けます。カナダの心理学者、ヒューイットとフレットの分け方です。
| 種類 | 中身 | 出てくる言葉 |
|---|---|---|
| 自分に向く完璧主義 | 自分に、とても高い基準を課す | 「この出来では、まだ出せない」 |
| 他人に向く完璧主義 | まわりの人にも、同じ高い基準を求める | 「なんで、これくらい、できないのか」 |
| まわりから求められていると感じる完璧主義 | 「完璧でなければ、認めてもらえない」と感じている | 「失敗したら、終わりだ」 |
1-1. 役に立つ面と、害になる面
もう1つの分け方は、中身を、2つの部品に分けるものです。
| 部品 | 中身 | はたらき |
|---|---|---|
| 高い目標を持つ | 良いものを作りたい。もっと、うまくなりたい | たいてい、役に立つ |
| 失敗を、おそれすぎる | 少しの欠点も、ゆるせない。人からどう見られるかが、こわい。終わったことを、くよくよ考える | たいてい、害になる。先のばし、つかれ、落ちこみと、結びつきやすい |
問題は、目標の高さでは、ありません。「届かなかったものを、どう、あつかうか」のほうです。8割の出来を、「2割足りない失敗」と見るか、「8割できた。残りは、次に直す」と見るか。
1-2. 近い言葉との違い
| 言葉 | 中身 |
|---|---|
| 完璧主義 | 高い基準と、届かないことへの、きびしい評価 |
| 先のばし | やるべきことを、あとに回す。完璧主義の、よくある結果の1つ。完璧にできないなら、始めたくない |
| パーキンソンの法則 | 仕事は、使える時間いっぱいまで、膨らむ。完璧主義の人に、しめきりのない仕事を渡すと、終わらない |
| インポスター症候群 | 成果を出していても、「自分は、実力がない。いつか、ばれる」と感じる |
| こだわり | ここだけは、ゆずらない、という選んだ基準。完璧主義とのちがいは、「どこに力を入れて、どこは捨てるか」を、自分で選べているかどうか |
2. よくある例
- 資料を、しめきりの直前まで、直しつづける。出したあとも、直したところではなく、直せなかったところが、気になる
- 「ちゃんと準備ができてから」と言いつづけて、始めない
- 人に任せた仕事を、けっきょく、自分で、ぜんぶ、やりなおす
- 部下の仕事の、できている9割ではなく、できていない1割から、話を始める
- メールを1通送るのに、30分かける
- 99点を取って、落とした1点のことを、考えている
組織の中でやっかいなのは、3つ目と、4つ目です。他人に向く完璧主義は、本人には、「仕事の質を守っている」ように、感じられます。まわりから見ると、「何をしても、直される」です。任された人は、考えるのを、やめます。どうせ直されるなら、はじめから、言われたとおりにだけ、やる。そして、完璧主義の上司は、「うちの部下は、自分で考えない」と、なげきます。期待が人の成果を下げる流れは、ゴーレム効果の記事に書きました。
3. 私の例①|教材が、1年以上、完成しなかった
私は、物を仕入れて、直して売るやり方を教える教材を、作っています。メールで届く形式で、いまは、72通です。
この教材は、1年以上、形に、なりませんでした。構成を考える。書きはじめる。「この順番では、伝わらない」と感じて、構成から、作りなおす。これを、くり返していました。作りなおした回数は、数えきれません。
しめきりは、ありませんでした。自分の商品なので、だれも、せかしません。「納得がいくまで」が、完成の条件でした。時間がいくらでもあるとき、納得は、できません。直せるところは、いつまでも、見つかるからです。この話は、パーキンソンの法則の記事に書きました。
3-1. 動いたのは、基準を下げたからでは、なかった
形になったのは、AIを使いはじめてからです。伝えたいことをAIに話して、下書きを、書かせる。1か月で、72通が、できました。自分だけでは、このペースは、むりでした。
ここで起きたことは、「基準を下げた」では、ありません。順番が、変わりました。
| 前 | あと | |
|---|---|---|
| 順番 | 頭の中で、完璧な構成を作る → 書く | まず、ぜんぶの下書きが、ある → 直す |
| 完璧主義が、働く場所 | 始める前。だから、始まらない | できたものを、直すとき。だから、質が上がる |
| 手もとにあるもの | 何も、ない | 60点の、全体 |
完璧主義は、白紙の前では、ブレーキにしか、なりません。60点の全体が目の前にあるときは、エンジンになります。どこが足りないかが、具体的に、見えるからです。私は、いまも、この教材に、納得していません。参加した人の声と、世の中の変化に合わせて、直しつづけています。ただ、それは、「売っているものを、直している」のであって、「売るものが、まだない」のとは、まったく、ちがいます。作り方は、コンテンツの作り方に書きました。
4. 私の例②|販売ページが、5万字をこえた
商品を売るためのページも、直すたびに、長くなりました。「これも、伝えなければ」「あれも、先に説明しておかなければ」。そう感じるところまで書き足すと、毎回、2万字から、5万字を、こえました。
読む人が、最後まで読むかどうかは、考えていませんでした。考えていたのは、「説明が足りない、と思われたくない」です。1章の表でいうと、下の段です。失敗を、おそれすぎていました。足すことは、私を、安心させました。読む人は、へっていきました。
株やFXで、売買の条件を足しすぎると、条件に合う場面が、ほとんどなくなって、売買そのものが、できなくなります。あれと、同じです。「もれなく」は、「伝わる」と、別のものでした。いまの作り方は、LPの作り方に書いています。
5. 私の例③|人を、育てられなかった
いちばん高くついたのは、他人に向く完璧主義です。
ブランド品を、本業の大きさで回していたころ、私は、人をやといました。撮影と、出品を、任せようとしました。そして、相手に、自分と同じ仕上がりを、求めました。できないと、いら立ちました。育てることが、できませんでした。人件費のほうが大きくなって、事業は、逆ザヤになりました。
いまは、原因が、2つあったと、分かっています。
- 私の頭の中にある「完璧な仕上がり」を、外に出していなかった。出していないものを、相手に求めていた(知識の呪いの記事)
- 相手にとって、その仕上がりにする理由が、なかった。仕上がりが良くなっても、その人の給料は、変わりません。私にとっては、自分の商品です。相手にとっては、時給の仕事です
5-1. 直さずに、向きを変えた
私は、この性格を、直せませんでした。だから、この性格が、害にならずに、役に立つ場所へ、移りました。
いまの仕事は、個人への指導です。相手は、自分のお金と時間を使って、自分の商売を、伸ばそうとしている人です。私が高い基準を求めると、相手の収入が、直接、上がります。だから、相手も、本気で、こたえてくれます。同じ「相手にも、高い水準を求める」性格が、やとった人には、害になりました。教える相手には、価値になりました。
完璧主義を、なくす必要は、ないと思っています。「高い基準を求めることが、相手の得にも、なっているか」。この条件がそろう場所を、さがします。人を使う側に回って、うまくやれなかった話は、ピーターの法則の記事に書きました。
6. やり方|性格は変えない。順番と、しくみを変える
6-1. 先に、60点の全体を、作る
1章から完璧に仕上げて、2章に進む、を、やめます。ぜんぶの章を、あらい形で、先に、うめます。完璧主義は、そのあとで、使います。いまは、AIに、あらい下書きを作らせるのが、いちばん早い方法です。白紙を、なくすことが、目的です。
6-2. 時間の入れものを、先に、小さくする
「納得がいくまで」を、完成の条件に、しません。私は、直す仕事なら2時間、売る判断なら24時間、と、先に、数字で決めています。時間が来たら、その時点のものを、出します。完璧主義の人は、時間があるだけ、直します。だから、時間のほうを、しぼります。
6-3. 出してから、直せる形にしておく
印刷する本は、出したら、直せません。ウェブの記事も、メールの教材も、あとから、直せます。「出したあとで、直せる」形を選んでおくと、出すときの、こわさが、へります。私の教材は、完成させないことを、前提にしています。
6-4. どこに使うかを、選ぶ
ぜんぶに、100点を求めると、どれも、終わりません。「ここだけは、100点にする」を、1つか2つ、選びます。ほかは、70点で、流します。私の場合、100点を求めるのは、教材の中身と、教える相手への答えです。それ以外は、先に出して、あとから直します。
6-5. 人に求めるときは、先に、外に出す
人に高い基準を求めるなら、先に、その基準を、見える形にします。動画、マニュアル、テンプレート、良い例と悪い例。それを渡したうえで、届かなかったところを、いっしょに直す。渡していないなら、求めません。それでも自分で直してしまうなら、その仕事は、人に任せる仕事では、ないのかもしれません。
6-6. つらさが、強いとき
完璧主義が、眠れない、食べられない、仕事に行けない、というところまで来ているなら、やり方の工夫でどうにかする段階では、ありません。医師や、カウンセラーに、相談してください。この記事に書いたのは、仕事の進め方の話です。
まとめ
- 完璧主義は、高い基準と、届かないことへの、きびしい評価。自分に向くもの、他人に向くもの、まわりから求められていると感じるもの、の3つがある
- 高い目標を持つことは、役に立つ。害になるのは、失敗を、おそれすぎる側
- 私は、教材を1年以上、完成させられなかった。動いたのは、基準を下げたからではなく、「先に60点の全体を作る」に、順番を変えたから
- 完璧主義は、白紙の前ではブレーキ、60点の全体の前では、エンジンになる
- 他人に向く完璧主義で、人を育てられなかった。いまは、高い基準が相手の得にもなる仕事(個人への指導)に、移った
- 性格は、変えない。順番、時間の入れもの、力を入れる場所を、変える
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