生存者バイアスとは|自分が稼げたやり方を教材にして、達成者が出なかった側から書く

生存者バイアスとは|自分が稼げたやり方を教材にして、達成者が出なかった側から書く 心理学・バイアス

生存者バイアス(生存バイアス)は、うまくいって残ったものだけを見て判断してしまい、途中で消えたものを数に入れ忘れる、という考え方のくせです。成功した人の話は聞こえてきます。やめた人は、黙って去るので、声になりません。だから、聞こえてくる話だけで判断すると、成功する割合を、実際よりずっと高く見積もってしまいます。

私は、中古品の売り買いを20年やり、いまはそのやり方を教える側にいます。この業界は、生存者バイアスのかたまりです。そして、正直に書くと、私自身が、その生存者の1人として、人に教えて失敗しています。この記事では、バイアスの中身を説明したあとで、その失敗と、いま自分の発信でこのバイアスをどう減らそうとしているかを書きます。

1. 生存者バイアスとは|帰ってきた飛行機の話

いちばん有名な例は、第二次世界大戦のときの、爆撃機の話です。軍は、任務から帰ってきた機体を調べて、弾の穴が多い場所を補強しようとしました。それに対して、統計学者のエイブラハム・ウォルドは、逆を勧めた、と伝えられています。補強すべきなのは、帰ってきた機体で、穴が少ない場所だ、と。

帰ってきた機体は、穴が開いても、帰ってこられた機体です。穴が少ない場所は、そこに当たった機体が、帰ってこられなかった場所かもしれません。調べられるのは、生き残ったものだけです。落ちた機体は、データの中にいません。

このバイアスがやっかいなのは、うそをついている人が、だれもいないことです。成功した人は、本当に成功しています。ただ、その後ろにいた、同じことをして消えた人たちが、見えないだけです。

2. 副業と物販の世界で、どう現れるか

私が教える側に回る前、この業界を外から見ていて、いちばん嫌だったのがこれでした。

  • たまたま、その時期だったから稼げた人の話。相場も、決まりも、ライバルの数も、いまとは違います。その人のやり方が正しかったのか、時期が良かっただけなのか、本人にも区別がついていないことがあります
  • いまから始めると不利なやり方が、昔の成功例つきで売られている。新しく出品する人への条件がきびしくなった売り場や、問屋との取り引きが、その例です。先にいた人には有利で、あとから来た人には不利です
  • 「実践者の声」に並ぶのは、うまくいった数人だけ。買った人が全部で何人いて、そのうち何人なのかは、書かれていません
  • やめた人は、発信しません。SNSに残っているのは、続いている人と、教えることに回った人だけです

3. 私自身が、生存者として教えて失敗した

私が最初に売った教材は、値段の差が小さくても確実に売れる商品を、時間をかけて集めて売る、というやり方でした。年末に売れるCDを1年かけて集める。人気の順位は低いけれど、確実に欲しい人がいる本を仕入れる。私自身は、このやり方で稼げていました。

ところが、教材を買った人の中から、達成者が出ませんでした。お金が戻ってくるまでの時間が、長すぎたからです。私は、その長さに耐えられました。買った人は、そこまで待てませんでした。

「自分はこれで稼げた」は、「これは人に教えて通用する」の証拠になりません。教える人は、全員、そのやり方の生存者です。自分が生き残れた条件を、やり方の良さだと思いこみます。私は、そう思いこんでいました。この経緯は商品の作り方に書きました。

もう1つ、例を出します。私は2009年から2011年ごろ、スーパーファミコンのカセットの電池を交換して売っていました。1本あたりの利益は1,000円から2,000円で、毎日、数十本が売れました。これは事実です。でも、いま同じことをやっても、当時ほどにはなりません。実機で遊ぶ人が、減ったからです。私がこの話を「だから、あなたもできます」という形で語ったら、それは、生存者バイアスを売っていることになります。

4. いま、自分の発信で、やっていること

生存者バイアスは、なくせません。私が何を書いても、私は「20年残った側」の人間です。できるのは、読む人が割り引いて読めるだけの材料を、一緒に出すことです。

やっていること 実際に書いてあること
数字には、時期と前提をつける 「当時の相場での数字です。いま同じことをやって、同じ結果になるわけではありません」
うまくいかない割合を、先に書く 販売ページに「10台に1台程度は利益が出ません」「月100万円のような数字は、この段階では起きません」
上位の例には、上位と書く 実践した人の記録に「本ページに掲載した中では、上位にあたる例です」
失敗と、やめたことを書く 説明文を読み落として5万円を失った。ブランド品の修復の事業からは撤退した。事業の売却と買収は未経験
下がった数字も出す 個別の指導への申し込みは、教える中身を変えたあと、およそ30人に1人から、およそ100人に1人に下がった
特定の商品を、名指しで教えない 名指しすれば、教わった全員が同じ棚に並び、先に始めた人だけが残る。それは、新しい生存者バイアスを作ることになる
別の道を選んだ結果も書く 自己紹介に、私が離れた会社について「その会社はその後も成長を続けています。僕の判断が正しかったという話ではありません」

最後の1つは、小さなことに見えますが、大事だと思っています。自分がやめたものが、その後うまくいっている。これを書かない人の話は、自分が選んだ道だけが正しかったように聞こえます。

5. 成功した人の話を、どう聞くか

成功した人の話を、聞くな、ということではありません。聞くときに、次の問いを足してください。

  • いつの話か。その時期の相場、決まり、ライバルの数は、いまと同じか
  • 何人中の、何人か。同じことを始めた人は、全部で何人いたのか。分からないなら、「分からない」と覚えておく
  • やめた人は、どこにいるか。やめた人の話を、1人でも探して聞く。いちばん役に立つのは、たいてい、こちらです
  • この人が生き残れた条件は、何か。元手、使えた時間、住んでいる場所、もともとの経験。自分は、それを持っているか
  • この人は、うまくいかなかった割合を、自分から言っているか。

4つ目が、いちばん大事です。やり方をまねる前に、条件をくらべます。私の最初の教材を買った人たちに足りなかったのは、努力ではなく、私がたまたま持っていた条件のほうだったのだと、いまは考えています。

同じ考え方で「実践者の声」を読む方法は、社会的証明とはに書きました。

6. まとめ

  • 生存者バイアスは、残ったものだけを見て、消えたものを数え忘れるくせ。うそをついている人がいなくても、起きる
  • 副業と物販の世界では、時期が良かっただけの成功例、いまからでは不利なやり方、選ばれた数人の声、として現れる
  • 私は、自分が稼げていたやり方を教材にして、達成者が出なかった。教える人は全員、そのやり方の生存者だ
  • なくすことはできない。数字に時期と前提をつけ、うまくいかない割合と、失敗と、下がった数字を一緒に出す
  • 成功した人の話を聞くときは、やり方の前に、その人が生き残れた条件を、自分とくらべる

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