ハロー効果は、「1つの目立つ特徴に引っぱられて、関係のないほかの点まで、良く(または悪く)評価してしまう」現象です。ハローは、聖人の頭のうしろに描かれる、光の輪のことです。後光効果とも、言います。
私は、以前、有名人が手がける仮想通貨を、買いました。値段は、売り出しの直後が天井で、30万円以上を、失いました。その人が有名であることと、その通貨の値段が上がることのあいだには、何の関係も、ありません。それでも、買いました。いま思えば、私が見ていたのは、その人の名前だけでした。
この記事では、意味と実験を先に書いて、そのあとで、身近な例、採点のずれを見る道具、売る側と買う側の両方から見た私の例、対策を書きます。
1. ハロー効果とは
アメリカの心理学者、エドワード・ソーンダイクが、1920年の論文で、名づけました。軍の上官に、部下の兵士を、「体格」「知性」「指導力」「人がら」などの項目ごとに、評価してもらったところ、項目どうしの点数が、不自然なほど、そろっていました。体格が良いと評価された兵士は、知性も、指導力も、高く評価されていたのです。
上官は、項目ごとに、別々に、見ていたつもりでした。実際は、「この兵士は、良い」という、全体の印象が先にあって、それが、ぜんぶの項目に、もれ出していました。
| 向き | 呼び方 | 例 |
|---|---|---|
| 良い特徴が、ほかも良く見せる | ハロー効果(ポジティブ・ハロー) | 有名な大学を出ている人は、仕事もできそうに見える。 |
| 悪い特徴が、ほかも悪く見せる | ホーン効果(逆ハロー効果) | メールの誤字が多い人は、仕事も雑に見える。 |
1-1. 有名な実験
- 見た目が良い人は、性格も良く見える(ディオン、バーシャイド、ウォルスター、1972年):顔写真だけを見せて、その人の性格や、将来を、予想させました。魅力的な顔の人は、性格が良く、仕事でも成功し、幸せな結婚をする、と予想されました。論文の題は、「美しいものは、良い」です。
- 本人は、影響に、気づかない(ニスベット、ウィルソン、1977年):同じ講師が、あたたかく話す映像と、冷たく話す映像を、別々の学生に、見せました。話し方の「なまり」や「見た目」は、どちらの映像でも、同じです。あたたかい映像を見た学生は、なまりも、見た目も、「感じが良い」と評価しました。冷たい映像を見た学生は、同じなまりを、「耳ざわりだ」と評価しました。そして、学生たちは、「講師の感じの良さは、自分の評価に、影響していない」と、答えました。
2つ目の実験が、この効果の、やっかいな点を、しめしています。影響を受けている本人には、その自覚が、ありません。
2. 身近な例
- 採用の面接:はじめの数分の印象が、そのあとの、すべての答えの評価を、決める。
- 人事の評価:目立つ成果を1つ出した人が、ほかの項目も、高くつく。
- 広告:好感度の高い有名人が出ていると、商品の品質まで、高く感じる。
- 肩書き:「医師が監修」「元○○社」と書いてあると、中身を読まずに、信用する。肩書きの力については、権威性の記事に書きました。
- ブランド:同じ革、同じ作りでも、ロゴがあると、品質まで、高く感じる。
- 成功した会社:業績が良い会社は、戦略も、社風も、経営者も、ぜんぶ、すぐれて見える。業績が落ちると、同じ戦略が、「おごり」と呼ばれる。
2-1. 道具:全体の印象と、項目ごとの点の、ずれを見る
人でも、商品でも、サービスでも、かまいません。評価したい相手を、1つ、思いうかべてください。先に、全体の印象を、入れます。そのあとで、項目を、1つずつ、「根拠を、1つ、言えるか」を考えながら、入れてください。
項目の平均:—
全体の印象との差:—
読み方:—
これは、考えを整理するための、かんたんな道具です。はじめの数字は、仮の値です。「2点」という区切りにも、研究上の根拠は、ありません。目的は、点数を出すことではなく、「根拠を言えない高い点」を、見つけることです。
3. 私の例
3-1. 買う側として:有名人の名前で、買った
はじめに書いた、仮想通貨の話です。いま、上の道具に、当時の自分を、入れてみます。全体の印象は、買うと決めるぐらいには、高かった。でも、ふり返ると、「実績」「中身の品質」「値段に見合うか」「うまくいかなかったときの対応」の、どの項目にも、私は、根拠を、持っていませんでした。持っていたのは、「有名な人が、やっている」という、1つの特徴だけです。それが、4つの項目を、ぜんぶ、うめていました。失った側の話は、株で人生終わった人と終わらなかった人の差に書きました。
かせぎ方を教える商材でも、同じ形を、よく見ます。売っている人の、はでな実績や、暮らしぶりが、光の輪になります。教え方がうまいか、あとから入った人でも結果が出る構造か、という項目は、その光で、見えなくなります。この話は、代表性ヒューリスティックとはと、生存者バイアスとはに書きました。
3-2. 売る側として:ロゴが、値段を決めていた
私は、ブランド品の転売を、仕事にしていました。そこで、毎日、見ていたのが、この効果です。私が扱っていた相場では、あるブランドの財布は、仕入れが5,000円前後で、売値が1万円前後。別のブランドのバッグは、仕入れが5万〜30万円で、売値が10万〜50万円でした。革の質や、ぬい目のていねいさの差だけでは、この値段の差は、説明できません。買う人は、ロゴがあることで、品質も、持つ人の格も、まとめて、高く見積もります。
これは、だます話では、ありません。ブランドとは、もともと、「1つの印で、ぜんぶを信用してもらう」ための、しくみです。買う人は、品質を1つずつ確かめる手間を、はぶけます。ただし、このしくみは、にせ物を作る人にも、同じように、働きます。ロゴさえあれば、ほかの項目を、見てもらえないからです。品質が見えない市場の問題は、レモン市場とはに書きました。
3-3. 「日本の会社」という、光の輪
海外から仕入れた商品を、ネットの店で売っていたとき、商品は、売れました。私の見立てでは、理由は、「日本の会社が、日本語で、運営している」ことでした。同じ商品は、海外のサイトで、もっと安く、買えます。それでも、「日本の店」という1つの特徴が、品質、安全、対応の良さ、という、ほかの項目の印象まで、引き上げていたのだと、考えています。売る側から見ると、ハロー効果は、「どの特徴が、光の輪になるか」を、さがす作業でも、あります。
4. 対策
- 項目を、先に決めて、別々に、点をつける:全体の印象を、先に、言葉にしない。面接なら、質問ごとに、その場で、点をつけます。
- 項目ごとに、根拠を、1つ、書く:書けない高い点は、光の輪から、来ています。
- 名前を、かくす:だれが作ったか、どこの会社かを、かくして、中身だけで、くらべます。できる場面では、これが、いちばん、効きます。
- 「この特徴は、この項目と、関係があるか」と、問う:有名であることと、運用がうまいこと。見た目が良いことと、約束を守ること。関係がないなら、その特徴は、判断から、外します。
- 悪い1点にも、同じことをする:誤字が1つあった、返事が1回おそかった。それは、ほかの項目と、関係があるかを、確かめます。
自分の考えに合う情報だけを、集めてしまう問題は、確証バイアスとはに書きました。ハロー効果で、先に「良い」と決めてしまうと、そのあとの情報集めが、確証バイアスで、かたよります。2つは、つづけて、起きます。
5. 注意点
- いつも、まちがいとは、かぎらない:良い特徴どうしが、本当に、つながっていることも、あります。ていねいなメールを書く人は、仕事も、ていねいなことが多い。問題は、確かめずに、決めてしまうことです。
- 自分は受けていない、と思うのが、いちばん危ない:1977年の実験のとおり、影響を受けている本人には、自覚が、ありません。「自分は、中身で見ている」という感覚は、証拠に、なりません。
6. まとめ
- ハロー効果は、1つの目立つ特徴に引っぱられて、関係のないほかの点まで、良く評価してしまう現象です。1920年に、ソーンダイクが、名づけました。
- 悪い方向に働くものは、ホーン効果(逆ハロー効果)と、呼ばれます。
- 影響を受けている本人には、自覚が、ありません。
- 私は、有名人の名前で、仮想通貨を買って、30万円以上を、失いました。
- ブランドは、この効果を、しくみとして使っています。にせ物も、同じしくみに、乗ります。
- 対策は、項目を先に決めて、別々に点をつけ、根拠を、1つずつ、書くことです。
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