「メラビアンの法則 誤解」「メラビアンの法則は嘘?」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。
メラビアンの法則(7-38-55)は、「人は見た目が55%、声が38%、言葉が7%で判断する」という法則ではありません。好き・嫌いのような気持ちを食い違って伝えたときに、相手がどれを重く受け取るかを測った1967年の2つの実験(言葉と声、声と表情)の結果を、メラビアンがあとから1つにまとめた式です。メラビアン本人も、話し手が自分の気持ちや態度について話しているのでなければ、この式は当てはまらないと書いています。
| よく聞く言い方 | 実験で分かったこと |
|---|---|
| 言葉は7%しか伝わらない | 好き嫌いの気持ちを単語1つと声などで食い違わせた実験をもとに、言葉の重みを7%とした式。話の中身全体の話ではない |
| 人は見た目が9割 | 実験は見た目の良し悪しではなく、表情が示す気持ち(好意・中立・嫌悪)を使った |
| 第一印象は数秒で決まる | メラビアンの実験に、秒数の話は出てこない |
| 話し方が大事で、中身は二の次 | 事実や説明を伝える場面には、式は当てはまらない(本人の注意書き) |
1. 先に、立場を書きます
私は中古品の売買を20年近く続けてきた出品者で、いまは講座や個別指導を売っています。顔は出していません。売るときに相手に届くのは、販売ページ(LP)とステップメールの文章だけです。
有料講座の会員に、ステップメールで高額の個別指導を案内したときの成約は、無在庫転売を教えていたころで30人に1人くらい、ブランド品や修理品の転売にしてからは100人に1人くらいでした。声も顔もなく、言葉だけで買ってもらっています。
その立場から「言葉は7%しか伝わらない」という説を、メラビアンの元の実験にさかのぼって読み直しました。私自身の見方は7章に書きます。この記事の実験の中身は、論文の要旨(APA PsycNet)とメラビアン本人のサイトで、2026年10月9日に確かめたものです。
2. メラビアンの法則の元になった実験
心理学者アルバート・メラビアンが1967年に発表した2つの実験が元になっています。
2-1. 1つ目:単語1つと、声の調子を食い違わせた
Mehrabian & Wiener(1967)「Decoding of inconsistent communications」では、好意・中立・嫌悪のどれかを示す単語1つを、好意・中立・嫌悪の3段階の声の調子と組み合わせました。
その結果、聞いた人が話し手の態度を判断するときの違いは、主に声の調子から来ていました。たとえば、単語が示す態度と否定的な声の調子が食い違うと、全体として否定的な態度だと判断されました。
2-2. 2つ目:声の調子と、表情を食い違わせた
Mehrabian & Ferris(1967)「Inference of attitudes from nonverbal communication in two channels」では、中立の単語1つに乗せた声の調子(3段階)と、表情(3段階)を組み合わせました。
その結果、表情と声を合わせた判断は、それぞれが示す態度に重みをかけて組み合わせた式(線形の関係)で表せて、表情の重みは声の約1.5倍(3対2)でした。
2-3. 7-38-55は、この2つを合わせた式
メラビアンは著書『Silent Messages』で、2つの実験の結果を合わせて、次の式にまとめています(本人のサイトの説明)。2つの実験は、言葉と声、声と表情をそれぞれ別に組み合わせたもので、言葉・声・表情の3つを同時に組み合わせて7%・38%・55%を測ったわけではありません。表情と声の55対38は、2つ目の実験の約3対2に近い比です。
Total Liking = 7% Verbal Liking + 38% Vocal Liking + 55% Facial Liking
「Liking」は、相手をどれくらい好いているか(好意)です。言葉・声・表情がそれぞれ示す好意に重みをかけて合わせると、全体として受け取られる好意になる、という式です。
そして本人は、すぐあとにこう注意しています(訳は私)。
この式と、言葉と非言語の相対的な重要さについての式は、気持ちや態度(好き・嫌い)を伝える実験から導いたものです。話し手が自分の気持ちや態度について話しているのでなければ、これらの式は当てはまりません。
これは「当てはまらない場面」の線引きです。逆に、気持ちや態度の話なら、どんな場面でもこの割合が成り立つ、と確かめられたわけではありません。実験は、単語1つと声・表情という、しぼった条件で行われています。
3. よくある誤解と、実際
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| コミュニケーション全体で、言葉は7%しか伝わらない | 7%は、好き嫌いの気持ちを、単語1つ・声・表情で食い違わせたときの言葉の重み。説明や議論の中身の話ではない |
| 見た目(顔立ち・服装)が55% | 55%は表情が示す気持ち(好意・中立・嫌悪)の重み。顔立ちや服装は実験に入っていない |
| 第一印象は○秒で決まる | メラビアンの2つの実験と本人の説明に、秒数は出てこない。別の話が結びつけられている |
| だから話の中身より話し方を磨け | 本人が、気持ちや態度の話でなければ式は当てはまらないと書いている。中身を伝える場面では、中身が要る |
| メラビアンの法則は嘘 | 作り話の数字ではなく、実際の実験から導いた式。ただし、その実験だけで、いろいろな場面に当てはまると証明されたわけではない。間違っているのは、条件を外して広げた使い方のほう |
55%と38%を足すと93%になるので、「見た目と声で9割」と言いたくなりますが、これは好き嫌いの気持ちが食い違ったときの、表情と声の重みです。2005年に出た竹内一郎『人は見た目が9割』(新潮新書)は、非言語コミュニケーションの入門書です。目次にも「言葉は七%しか伝えない」という項目がありますが、本文で7%をどう説明しているかは、この記事では確かめていません。少なくとも、書名の「9割」は、メラビアンの実験で測った数字ではありません。
4. 当てはまる場面、当てはまらない場面
| 場面 | 元の実験との関係 |
|---|---|
| 口では「いいですよ」と言いながら、声や顔が不機嫌 | 近い場面(好き嫌いの気持ちの食い違い)。ただし、7-38-55の割合がそのまま成り立つとは限らない |
| 謝っているのに、声や表情に反省が見えない | やや近い。反省や誠実さの評価は、好き嫌いだけの話ではない |
| 電話で、言葉は丁寧だが声がぶっきらぼう | 1つ目の実験(言葉と声の食い違い)に近い |
| 商品の説明、手順、数字を伝える | 当てはまらない(本人の注意書き:気持ちや態度の話ではない) |
| メール・LP・チャットなど文章だけ | 式の前提がない(声と表情が届かない) |
| 言葉と声・表情が合っている | 食い違いを扱うこの研究の対象から外れる(合っていても、受け取り方の個人差はある) |
ここから先は、実験で確かめられたことではなく、この研究を踏まえた提案です。気持ちを伝えるときは、言葉と、声・表情をそろえる。言葉を飾るより先に、本心と声・表情が合っているかを確かめる。合わせられないなら、本心を言葉ではっきり言う。
5. 文章だけで売るとき、何で決まるか
私のように文章だけで売る場合、7-38-55の式の前提(言葉と、声や表情が一緒に届く)がそもそもありません。届くのは言葉だけなので、言葉で伝わる分がすべてです。
では文章なら何でも伝わるかというと、そうでもありません。7章に書くとおり、私は伝わるかどうかは読む人の理解度で変わると見ています。同じ文章を読んでも、伝わる人と伝わらない人がいます。
6. 当てはまる場面かを確かめる
伝えたいこと、相手に届くもの、言葉と声・表情が合っているかを選ぶと、7-38-55が当てはまるかと、することを出します。
メラビアンの法則(7-38-55)が当てはまる場面か
7. 私の見方
顔を出さず、文章だけで講座や個別指導を売ってきた立場から、「言葉は7%しか伝わらない」という説について、私はこう見ています。
「相手の理解度に依存する。理解力が高ければ文章だけでも伝わるし、理解力が低ければ指摘された通り低い割合しか伝わらないと思う。指導実績を計算させたら17%だったので自分では自信を持っていても現実は大半の人が結果を出せていない」
17%は私の指導実績の数字で、メラビアンの7%とは測っているものが違います。研究の上で共通点があるわけではなく、言葉で教えたことが、そのまま相手の結果になるとは限らない、という私の実感の話です。教える側の数字の見方は、生存者バイアスの記事にも書きました。
8. よくある質問
メラビアンの法則は嘘ですか?
作り話の数字ではなく、1967年の2つの実験から導いた式です。ただし、その実験は単語1つと声・表情というしぼった条件で、いろいろな場面に当てはまると証明されたわけではありません。間違っているのは、「会話全体で言葉は7%」のように条件を外して広げた使い方のほうです(3章)。
メラビアンの法則は、何が言いたいのですか?
気持ちを伝えるときに、言葉と声の調子と表情が食い違うと、相手は言葉より声と表情のほうを重く受け取る、ということです(2章)。
「人は見た目が9割」とは、どういう意味ですか?
2005年に新潮新書から出た竹内一郎さんの本の書名で、非言語コミュニケーションの入門書です。目次に「言葉は七%しか伝えない」という項目もあります。メラビアンの実験は、見た目の良し悪しを測ったものではありません(3章)。
第一印象は何秒で決まるのですか?
メラビアンの実験と本人の説明には、秒数は出てきません。秒数の話は、メラビアンの法則とは別のものです。
面接やプレゼンで使えますか?
中身を伝える部分には当てはまりません。熱意や感謝など気持ちを伝える部分は元の実験に近い話ですが、割合がそのまま成り立つとは限りません。できるのは、言葉と声・表情をそろえることを意識する程度です。これも実験で効果が確かめられたことではありません(4章)。
元の論文は何ですか?
Mehrabian & Wiener(1967)と Mehrabian & Ferris(1967)の2本です。メラビアン本人のサイトも、この2本(著書の参考文献286と305)を元の出どころとしています。英語では「7-38-55 rule」とも呼ばれます。
9. まとめ
- 7-38-55は、好き嫌いの気持ちを食い違って伝えたときの式。コミュニケーション全体の割合ではない
- 元は1967年の2つの実験。単語1つと声の調子、声の調子と表情を別々に組み合わせ、その結果をあとで1つの式にした
- メラビアン本人が、気持ちや態度の話でなければ当てはまらないと書いている。説明や文章には当てはまらない
- 実験で確かめられたのは、しぼった条件での結果だけ。気持ちの話でも、割合がそのまま成り立つとは限らない
- 文章だけで伝わるかは、読む人の理解度で変わる、というのが私の見方。私の指導実績は17%(7章)
10. 出典
- Albert Mehrabian「”Silent Messages” — Description and Ordering Information」(本人のサイト)https://www.kaaj.com/psych/smorder.html
- Mehrabian, A., & Wiener, M. (1967). Decoding of inconsistent communications. Journal of Personality and Social Psychology, 6(1), 109–114.(APA PsycNet)https://psycnet.apa.org/doi/10.1037/h0024532
- Mehrabian, A., & Ferris, S. R. (1967). Inference of attitudes from nonverbal communication in two channels. Journal of Consulting Psychology, 31(3), 248–252.(APA PsycNet)https://psycnet.apa.org/doi/10.1037/h0024648
- 新潮社「人は見た目が9割」(竹内一郎、新潮新書、2005年10月16日発売)https://www.shinchosha.co.jp/book/610137/
(いずれも2026年10月9日に確認)
11. あわせて読む
| 記事 | どこがつながっているか |
|---|---|
| ピーターの法則は間違い? | 同じく、よく言われる法則を元の研究で確かめた記事 |
| ハロー効果 | 見た目など1つの特徴が、ほかの評価まで引っぱる現象(メラビアンの法則とは別) |
| 単純接触効果 | 文章だけのメール講座で、接触の回数をどう配ったか |
| 生存者バイアス | 教える側の成功例だけを見ないための数字の見方 |
| 働きアリの法則(2:6:2)は本当か | よく言われる割合が、研究のどこから来たか |
12. この記事について
| 書いた人 | 中古品の売買を20年近く続けてきた出品者。顔を出さず、文章だけで講座と個別指導を売っている |
| 確かめた日 | 2026年10月9日(論文2本の要旨、メラビアン本人のサイト、新潮社の書籍ページと目次) |
| 私の経験から書いたこと | 顔を出さず文章だけで売っていること。ステップメールでの高額の個別指導の成約(30人に1人くらい、のちに100人に1人くらい)。伝わるかは相手の理解度しだいという見方と、指導実績17% |
| 確かめられなかったこと | 論文の本文(実験の人数や手順の細部)と、その後の追試。要旨と本人の説明の範囲で書いている。『人は見た目が9割』の本文 |
