規模の経済とは|意味と具体例。大きくしたら1点あたりの費用が上がった、私の「規模の不経済」

規模の経済とは|意味と具体例。大きくしたら1点あたりの費用が上がった、私の「規模の不経済」 経済・経営の用語

規模の経済は、「たくさん作る、たくさん売るほど、1つあたりの費用が下がる」という現象です。「スケールメリット」とも呼ばれます。工場を建てるお金は、1個作っても、100万個作っても、同じです。たくさん作れば、その費用を、多くの数で割れます。

ところが、大きくすると、逆に、1つあたりの費用が上がることもあります。こちらは、規模の不経済と呼ばれます。教科書では、最後に少しだけ出てくる話です。

個人で商売をしている人にとって大事なのは、あとのほうです。私は、ブランド品を直して売る仕事を、大きくしようとしました。大きくするほど、1点あたりの費用が上がりました。この記事では、両方を、自分の数字で書きます。

1. 規模の経済とは

費用が下がる理由は、おもに3つです。

  • 固定費を、多くの数で割れる。家賃、設備、ツールの月額料金は、売る数が増えても、増えません
  • まとめて買うと、安くなる。仕入れの量が増えると、単価の交渉ができます
  • 同じ作業をくり返すと、速くなる。分業もできます
言葉 中身
規模の経済(スケールメリット) 量が増えるほど、1つあたりの費用が下がる
規模の不経済 量が増えると、1つあたりの費用が、逆に上がる。管理の手間、連絡、置き場所などが原因
範囲の経済 種類を増やすことで、費用が下がる。同じ設備や知識を、別の商品にも使い回せる場合
ネットワーク外部性 使う人が増えるほど、そのサービスの価値が上がる。費用ではなく、価値の側の話

2. 効く例|卸からの仕入れ。ただし、3つの壁がある

物を仕入れて売る仕事で、規模の経済がいちばん分かりやすく出るのは、卸からの仕入れです。私は2015年に、1週間で100社ほどの卸と契約しました。たくさん買えば、単価は下がります。これは、当然、あります。

では、個人がそれを使えるか。使うには、壁が3つあります。

中身
取り引きのハードル 卸は、個人とは契約しないことがあります。まとめ買いの条件(最低の注文数)も、つきます
置き場所 安くなる量で買うと、物理的に、置く場所が要ります。自宅なら生活とぶつかり、倉庫なら固定費になります
キャッシュフロー 安くなるのは、先にまとめて払うからです。売れるまでのあいだ、そのお金は、在庫の形で止まります

単価が10%下がっても、そのために倉庫を借りれば、下がったぶんは、倉庫代に消えます。お金が半年止まるなら、その半年のあいだ、ほかの仕入れができません。規模の経済は、「単価」だけを見ると得に見えて、「置き場所」と「お金が止まる期間」まで入れると、個人では、得にならないことが多いのです。卸の探し方と、実際の交渉は、卸業者の探し方に書きました。

3. 効かなかった例|直して売る仕事を、大きくしようとした

2019年から2022年ごろ、私は、ブランド品の財布やバッグを直して売る仕事を、本業の大きさでやっていました。週に50点から150点を売り、仕入れに使うお金は、月に600万円以上でした。

大きくしようとして、起きたことを書きます。

3-1. 1点にかかる時間は、量が増えても、ちぢまなかった

1万円で売る財布の場合、1点にかかる時間は、直す15分、撮影20分、出品15分、梱包10分で、合わせて60分でした。10点でも、100点でも、1点60分です。1点ずつ状態がちがう中古品は、同じ写真も、同じ説明文も、使い回せません。新品を大量に作る工場とちがって、中古品は、1点ごとに、最初からやり直しです。くり返しで速くなる、が、ほとんど効きません。

3-2. 人を増やしたら、固定費と、自分の仕事が増えた

時間の上限をこえるために、人を雇いました。人件費は、月に45万円から50万円。これで、1つも売れない月でも出ていく、固定費ができました。

そして、人が増えると、教える、確認する、やり直す、という仕事が増えます。その仕事をするのは、私です。私は、相手にも自分と同じ水準を求めてしまうところがあって、人を育てるのが、うまくありませんでした。その具体的な失敗は、ゴーレム効果の記事に書きました。人を増やして浮くはずだった私の時間は、思ったほど、浮きませんでした。この話は、ピーターの法則の記事に書いています。

3-3. 置き場所が、次の固定費を呼んだ

作業場所は、自宅でした。在庫が、自宅を占領しました。さらに大きくするには、倉庫か事務所が要ります。見積もると、月に30万円から50万円以上。

ここが、規模の不経済の、いちばんはっきりした形です。費用は、なめらかには増えません。階段のように、増えます。自宅に置ける量をこえた、その1点目で、月に数十万円の固定費が、いきなり乗ります。その段をこえるには、売る数を、少しではなく、大きく増やさなければなりません。数字の計算は、損益分岐点の記事に書きました。倉庫代を足すと、損益分岐点は、過去にいちばん良かった月の利益と、ほぼ同じになりました。それで、大きくするのをやめました。

3-4. まとめると

大きくすると 工場で新品を作る場合 中古品を直して売る場合(私)
1点あたりの作業時間 下がる 変わらない。1点ごとに、やり直し
仕入れの単価 下がる 下がらない。同じ物が、まとまって出てこない
管理の手間 増えるが、仕組みで吸収できる 増える。吸収するのは、自分の時間
置き場所 計画して、先に用意する あふれてから、階段のように固定費が乗る

自分とアルバイト1人くらいの大きさなら、こわれなかったと思っています。会社の形にしようとしたところで、私の場合は、成り立ちませんでした。

4. 相手の側の、規模の経済|出品の多い市場しか、残らなかった

規模の経済は、自分ではなく、取り引きの相手の側で、効いていることもあります。

私は、業者向けのオンラインのオークション(古物市場)に、片っぱしから入会しました。最後まで使ったのは、出品の数が多い、2つの市場だけです。いちばん多い市場は、毎週5,000点から1万点が出ていました。ほかは、1,000点にも届きません。

出品が少ない市場では、同じ物に入札が集まって、利益が出る値段では、落とせません。参加費がかかる市場なら、1回ごとの固定費を、少ない落札で割ることになります。出品が多い市場は、参加する側の1点あたりの費用まで、下げてくれます。大きい市場が、さらに人を集めて、さらに大きくなる。これは、表の4行目の、ネットワーク外部性でもあります。市場の選び方は、オンライン古物市場は2社で足りるに書きました。

個人は、自分で規模の経済を作ろうとするより、すでに規模を持っている相手に、乗るほうが、確実です。

5. 個人でも、規模の経済が効く仕事

私は、物を売る現場を降りて、書いて、教える仕事に移りました。こちらは、規模の経済が、そのまま効きます。

記事は、1人が読んでも、1万人が読んでも、書く手間は同じです。メール講座は、買う人が10人でも、1,000人でも、72通を書く費用は、1回ぶんです。毎月かならず出ていくのは、サーバーとメールの配信スタンドで、月に4,400円ほど。読む人が増えても、ほとんど増えません。

物を売る仕事では、1点売るたびに、私の60分が要りました。いまの仕事では、1人増えるたびに要る、私の時間が、ほぼゼロです。私が「限界利益が浅い」と感じて現場を降りた理由を、裏から言うと、こうなります。浅い、深い、の中身は、限界利益の記事に書きました。

ただし、これは、書く材料を持っている場合の話です。材料がない人は、先に、材料を作る仕事が要ります。私にとっては、20年の売り買いが、それでした。この順番は、なぜ情報発信をするのかに書いています。

6. 大きくする前に、確かめること

  • 量を2倍にしたら、1点あたりの作業時間は、下がるか。下がらないなら、規模の経済は、時間の面では効きません
  • 量を2倍にしたら、仕入れの単価は、下がるか。下がるとして、そのために、いくらを、どのくらいの期間、先に払うのか
  • いまの置き場所は、あと何点で、あふれるか。あふれた次の1点で、いくらの固定費が乗るか。費用は、階段で増えます
  • 人を増やしたとき、教える・確認する時間を、だれが出すのか。自分なら、その時間を、浮く時間から引いて計算します
  • 自分で規模を持つのではなく、規模を持っている相手に乗れないか。出品の多い市場、人の多い売り場、がそれです

7. まとめ

  • 規模の経済は、量が増えるほど1つあたりの費用が下がること。逆に上がるのが、規模の不経済
  • 卸からの仕入れでは、たくさん買えば単価は下がる。ただし個人には、取り引きのハードル、置き場所、キャッシュフローの3つの壁がある
  • 中古品を直して売る仕事は、1点ごとにやり直しなので、量を増やしても1点60分はちぢまなかった
  • 人を増やすと月45万〜50万円の固定費ができ、教える・確認する仕事が自分に返ってきた。置き場所があふれると、月30万〜50万円以上の固定費が、階段のように乗る見積もりだった
  • 出品の多い古物市場しか残らなかったのは、相手の側の規模の経済。個人は、規模を持っている相手に乗るほうが確実
  • 書いて教える仕事は、読む人が増えても費用がほとんど増えない。個人でも、規模の経済がそのまま効く

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