ポジショニングとは、客の頭の中で、自分の商品や店を、競合とはちがう場所に置くことです。「安くて早い店」「高いけれど、全部まかせられる店」。客が、比べるときに使うものさし(値段、手厚さ、速さなど)の上で、自分がどこにいるかを、先に決めます。
この記事では、まず、意味と、ポジショニングマップの作り方を、説明します。次に、道具で、自分と競合の位置を入れて、近すぎる相手と、空いている場所を、出します。最後に、「数を追わない」位置をえらんだ、私の例を、書きます。私は、知識と指導を売る側にいます。利害のある立場であることを、先に、書いておきます。
1. ポジショニングとは
1-1. 意味
この言葉を広めたのは、広告の仕事をしていたアル・ライズと、ジャック・トラウトです。1970年代に、「ポジショニングは、商品に対してすることではなく、客の頭の中に対してすることだ」と、説明しました。客は、1つの分野で、いくつもの名前を、覚えていられません。だから、「〇〇といえば、ここ」という場所を、先に取ったほうが、強い。
1-2. マーケティングの中での、位置
マーケティングの手順では、よく、STPという順番で、説明されます。
- S(セグメンテーション):客を、いくつかの集まりに、分ける。
- T(ターゲティング):その中から、ねらう集まりを、えらぶ。
- P(ポジショニング):ねらった客の頭の中で、競合とちがう場所を、取る。
1-3. ポジショニングマップ
客が比べるときに使うものさしを、2つえらび、縦と横の線にします。自分と競合を、その上に、置きます。これが、ポジショニングマップです。大事なのは、ものさしの、えらび方です。
- 客が、本当に比べているものを、使う。売り手が言いたいことでは、ありません。
- 2つのものさしが、ほぼ同じものを、はからない。「値段」と「高級感」は、たいてい、いっしょに動きます。
- 空いている場所に、客がいるかを、たしかめる。だれもいない場所は、客もいない場所かもしれません。
2. 道具:近すぎる相手と、空いている場所
横は値段(1=安い、5=高い)、縦は手厚さ(1=うすい、5=手厚い)です。自分と、競合3つの位置を、1から5で、入れてください。考えを整理するための道具です。
自分:値段 手厚さ
競合1:値段 手厚さ
競合2:値段 手厚さ
競合3:値段 手厚さ
いちばん近い競合と、その距離:
自分がいる場所:
4つの場所ごとの、競合の数:
はじめに入っている数字は、例です。3は、「安い」「うすい」の側に、数えています。答えは、いちばん近い競合が競合2(距離3.6)、自分は「高い×手厚い」で、そこにいる競合は0です。競合は、3つとも「安い×うすい」に、集まっています。
距離1.5という線と、3を真ん中にする分け方は、私が、この道具のために、決めたものです。空いている場所が見つかったら、次に、「その場所に、お金をはらう客が、いるか」を、たしかめてください。
3. 私の例:数を追わない位置
3-1. 多くの競合は、「早く、たくさん」
かせぎ方を教える業界を、売る側から、見てきました。大きなスクールの多くは、規模を広げることが、先にあります。それを実現するために、経験の浅い卒業生を講師にして、教える期間を短くし、早く人を送り出します。人数は、多い。2章のマップでいえば、手厚さは「うすい」側に、近い位置です。
3-2. 私は、反対の角を、えらんだ
私は、その反対を、えらびました。
| ものさし | 多くのスクール | 私 |
|---|---|---|
| 人数 | 多い | 個別の指導は、月に2人、1年に24人まで |
| 値段 | スクールによって、ちがう | 入口の講座が29,800円、個別の指導が98万円 |
| 教える人 | 経験の浅い講師がふえる | 私が、全部を見る |
| 売る相手 | だれにでも売る | 面談を通した人にだけ売る |
| 作り方 | 早く出して、あとで直す | 研究と開発に時間をかけて、出した時点で完成に近いものを出す |
私は、この対比を、回転寿司にたとえています。原価率の低い店と、原価率の高い店です。長い目で見て、どちらが生き残るかは、はっきりしている、と私は考えています。これは、売る側にいる私の、見立てです。
3-3. 位置を取ったあとに、起きたこと
この位置にしてから、起きたことを、書きます。
- 面談の形にしてから、致命的なクレームは、起きていません。
- メールで「どこで私を知ったか」を聞くと、「友だちが登録していた」「同僚が、細野さんから学んでいる」という答えが、何度も、来ました。私の知らないところで、紹介されていました。
- いっぽうで、上の商品に進む人の割合は、教える内容を変えたときに、30人に1人から、100人に1人に、下がりました(アップセルの記事)。位置を取っても、数字が、全部よくなるわけでは、ありません。
3-4. 売り場にも、位置がある
売り場どうしにも、位置の、ちがいがあります。私は、オークションのサイトは売り手に有利、フリマのアプリは買い手に有利、と見ています。フリマでは、「ノークレーム・ノーリターン」が、使えません。すぐに売れてほしい商品は、Yahoo!フリマにも、出します。商品によっては、メルカリより、早く売れます。同じ商品でも、どの売り場の、どの位置に置くかで、売れ方は、変わります。
4. ポジショニングを、決める手順
- 客が比べている、ものさしを、2つ、書き出す。売り手の言いたいことではなく、客が「どっちにしよう」と迷うときの基準です。
- 競合を、マップに、置く。2章の道具で、近すぎる相手と、空いている場所を、見ます。
- 空いている場所に、客がいるかを、たしかめる。だれもいないのは、需要がないからかもしれません(楽観バイアスの記事)。
- 位置を守れる理由を、1つ、持つ。まねされやすい位置は、すぐにうまります(参入障壁の記事)。
- 何を捨てるかを、決める。「全部よい」は、位置になりません(トレードオフの記事)。
- 大きな相手と、同じものさしで戦わない考え方は、ランチェスター戦略の記事に、書きました。
5. まとめ
- ポジショニングは、客の頭の中で、自分を、競合とちがう場所に置くこと。STPの、最後の段階。
- マップは、客が本当に比べている、2つのものさしで、作る。
- 空いている場所が見つかったら、そこに客がいるかを、たしかめる。
- 私は、「早く、たくさん」の反対、「手厚く、少なく」を、えらんだ。人数の上限と、面談で、その位置を、守っている。

コメント