ダイナミックプライシングとは、需要や時期、残りの在庫に合わせて、同じ物の値段を、そのつど動かす売り方です。「変動価格制」とも言います。ホテルや航空券が、混む日に高く、すいている日に安くなるのが、代表的な例です。ネットで物を売る人が使う「価格改定ツール」も、ダイナミックプライシングの道具です。
この記事では、まず、何を理由に値段を動かすのかを、表でまとめます。次に、売る側として私がどう値段を動かしてきたか、買う側としてどう使っているかを、書きます。最後に、計算機で、「高く売れるまで待つと、本当に得か」を、出します。
1. ダイナミックプライシングとは
1-1. 意味
ふつうの値段は、一度決めたら、しばらく変えません。ダイナミックプライシングは、反対に、状況が変わるたびに、値段を変えます。ほしい人が多いときは上げ、少ないときは下げる。売れ残りそうなら下げ、残りわずかなら上げる。こうして、売り手は、その時々で、いちばん利益が残る値段を、ねらいます。
1-2. 何を理由に、値段を動かすか
| 動かす理由 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 需要 | ほしい人が多い日は高く、少ない日は安く | ホテル、航空券、イベントのチケット |
| 時間 | 売れる期限が近づくほど、安く | 閉店前の弁当、出発直前の空席 |
| 在庫 | 残りが少ないほど、高く | 座席、部屋、数量限定の品 |
| 競争相手 | ほかの売り手の値段に、合わせる | ネット通販の、同じ商品のページ |
1-3. どんな物で、効くか
値段を動かして得をするには、値段で、売れる数が変わる必要があります。ほかで同じ物がすぐ買えるなら、値段を上げたとたんに、売れなくなります。反対に、代わりのない物は、下げても、売れる数は、あまり増えません。値段を変えたときに売れる数がどれだけ変わるかは、価格弾力性の記事に、くわしく書きました。
もう1つ、同じ物の値段が人や日によってちがうことに、買う人が不満をもつこともあります。上げるときほど、「なぜ、この値段なのか」の説明が、いります。
2. 売る側として、私が値段を動かしてきたやり方
2-1. 新品は、道具で最安値に合わせる。中古は、動かさない
Amazonで売っていたころ、私は、値段を自動で変える道具を使っていました。機能は、ほかの売り手の最安値に合わせるだけの、単純なものです。ただし、使い分けていました。
- 新品は、最安値に合わせる。新品は、回転を取るものなので、早く売り切りたい。
- 中古は、自動で動かす対象から外し、高めの値段のまま置く。中古は、状態の説明や、手を入れたことで売っていたので、最安値を取りに行く必要がなかった。
同じカタログに並ぶ新品は、ほかの売り手とくらべられます。値段を決めているのは、自分ではなく、いちばん安い売り手です。ここでは、ダイナミックプライシングは、利益を守る道具というより、置いていかれないための道具でした。同じ物を売る売り手どうしの値下げが、どこで止まるかは、ナッシュ均衡の記事に書いています。道具の選び方は、価格改定ツールの記事です。
2-2. 反応が悪ければ、少しずつ下げずに、1円スタートに出す
中古の、探す人が少ない物では、値段を少しずつ下げていく売り方を、私は取りません。出品して、最初の反応を見て、悪ければ、すぐに1円スタートのオークションに出します。
オークションは、いちばん極端な、ダイナミックプライシングだと、私は考えています。値段を決めるのは、売り手ではなく、その日に集まった買い手です。ほしい人が2人いれば競り上がり、1人なら安く終わる。売り手が「いくらなら売れるか」を当てる必要が、ありません。
反対に、メルカリで来る値下げの依頼は、基本的に、無視しています。値段を、個別の交渉で、下げることはしません。私の値段の動かし方は、「決めた値段で待つ」か、「オークションで買い手に決めてもらう」かの、どちらかです(値下げ依頼の記事)。
3. 買う側として、値段の動きを使う
ダイナミックプライシングは、買う側から見ると、「安い日を選べる人が得をする」仕組みです。私は、ヤフーショッピングで、5のつく日に、プロテインを買っています。値段そのものではなく、ポイントの上乗せですが、日によって、実質の値段が変わる点では、同じです。タイミングによっては、Amazonより1,000円近く、安くなります。
毎月買う物は、安い日が決まっているなら、その日に寄せるだけで、差が出ます。ただし、ポイントでの値引きは、現金の値引きとは、同じに数えられません。ポイントを現金にするといくらかは、メンタルアカウンティングの記事の計算機で、出せます。
4. 計算機:高く売れるまで、待つと得か
自分の在庫の値段を、「いまは安いが、待てば高く売れる」と、動かしたくなるときがあります。けれど、待つあいだ、仕入れに使ったお金は、止まります。そのお金を回していれば、ほかで利益を出せたはずです。その分を引いて、待つ価値を出します。
待って、上がる分:
待つあいだに、回せなかった分:
差し引き:
待ってよい日数の上限:
はじめの数字は、例です。いま1万円で売れる物が、60日待てば1万1,000円で売れそうだとします。月の利回りは、10%にしてあります。私は、せどりで月10%を、控えめな数字と見ているからです。
答えは、上がる分が1,000円、待つあいだに回せなかった分が2,000円、差し引き1,000円の損です。待ってよいのは、30日まで。60日待つなら、いま1万円で売って、そのお金を回したほうが、残ります。
月の利回りを、自分の数字に変えてみてください。お金を回す先がなく、利回りが0%なら、待つほど得です。回す先があるほど、待つ値打ちは、下がります。止まったお金の考え方は、機会費用の記事と、キャッシュフローの記事に書きました。
5. ダイナミックプライシングを、使う前の手順
- 値段で、売れる数が変わる物かを、たしかめる。代わりのない物は、下げても、売れる数は増えません。
- 値段を決めているのは、だれかを見る。同じ物が並ぶなら、いちばん安い売り手です。自分で決められないなら、道具で合わせるか、並ばない物を売ります。
- 待って上げるなら、止まるお金の分を、引く。4章の計算機で、待ってよい日数の上限を出します。
- 決められないなら、買い手に決めてもらう。オークションは、その日の買い手に、値段を決めてもらう方法です。
- 買う側では、安い日に寄せる。毎月買う物ほど、差が積み上がります。
6. まとめ
- ダイナミックプライシングは、需要・時間・在庫・競争相手に合わせて、同じ物の値段を、そのつど動かす売り方。
- 効くのは、値段で売れる数が変わる物。代わりのない物は、下げても売れる数は、あまり増えない。
- 私は、新品は道具で最安値に合わせ、中古は動かさなかった。反応が悪い中古は、少しずつ下げずに、1円スタートで買い手に値段を決めてもらう。
- 高く売れるまで待つなら、止まるお金の分を引く。1万円が60日後に1万1,000円でも、月10%で回せるなら、1,000円の損。
- 買う側では、安い日に寄せる。ただし、ポイントでの値引きは、現金とは分けて数える。

コメント