ナッシュ均衡とは、参加者の全員が、「相手がやり方を変えないなら、自分だけやり方を変えても、得をしない」という状態のことです。だれも、自分から動く理由がないので、その状態で、止まります。数学者のジョン・ナッシュが、1950年に、発表しました。
この記事では、まず、意味を、値下げ競争の例で、説明します。次に、計算機で、2つの店の値下げ競争が、どこで止まるかを、出します。最後に、オークションと、フリマで、相手の出方を読んで売ってきた、私の例を、書きます。
1. ナッシュ均衡とは
1-1. 値下げ競争で、考える
同じ商品を売る店が、2つ、あります。それぞれ、「値段を、保つ」か、「値下げをする」かを、えらびます。1か月の利益(万円)は、下の表のとおりと、します。左の数字が自分、右の数字が相手です。
| 相手:保つ | 相手:値下げ | |
|---|---|---|
| 自分:保つ | 10、10 | 2、15 |
| 自分:値下げ | 15、2 | 5、5 |
自分の立場で、考えます。
- 相手が「保つ」なら:自分は、保てば10、値下げすれば15。値下げが、得です。
- 相手が「値下げ」なら:自分は、保てば2、値下げすれば5。値下げが、得です。
相手がどちらでも、自分は、値下げが、得です。相手も、同じように、考えます。結果は、「両方が、値下げ」で、利益は、5と5です。ここから、自分だけ「保つ」にもどすと、5が2に、へります。だから、だれも、もどしません。これが、ナッシュ均衡です。
1-2. 均衡は、「いちばんよい状態」とは、かぎらない
両方が保てば、10と10でした。均衡の5と5より、両方にとって、よい結果です。けれど、「両方が保つ」は、均衡では、ありません。どちらも、自分だけ値下げすれば、15になるからです。ナッシュ均衡は、「みんなにとって、よい状態」ではなく、「だれも、自分からは、動かない状態」です。この形は、囚人のジレンマと、よばれます。
1-3. 均衡が、2つ以上あることも、ある
道路の、右側通行と、左側通行が、その例です。全員が左なら、自分だけ右を走る人は、いません。全員が右でも、同じです。どちらも、均衡です。どちらに落ちつくかは、歴史や、取り決めで、決まります。
2. 計算機:2つの店の値下げ競争は、どこで、止まるか
2つの店は、同じ条件だと、します。自分の利益だけを、4つ、入れてください。
相手が保つとき、自分の得な手:
相手が値下げするとき、自分の得な手:
ナッシュ均衡:
両方が保つ場合とくらべた、均衡での、1店あたりの損:
はじめに入っている数字は、1-1の表と同じ、10、15、2、5です。例の数字です。答えは、どちらの場合も「値下げ」、均衡は「両方が値下げ」、損は5です。
「自分だけが値下げ」の15を、9に、変えてみてください。均衡に、「両方が保つ」が、あらわれます。値下げしても、客があまりふえない商品では、値下げ競争は、起こりにくい、という意味です。値下げで客がどれだけふえるかは、価格弾力性の記事に、書きました。
3. 私の例:相手の出方を、読んで、売る
3-1. 同じ商品を、ならべて売る場所では、値下げの均衡に、落ちる
同じ商品のページに、何人もの売り手がならぶ売り場では、1-1の表が、そのまま、当てはまります。売れた個数のデータを見て、「これなら売れる」と仕入れても、競争相手がふえると、理論どおりの速さでは、売れません。1人が下げれば、ほかも、下げます。私は、売れない在庫を処分するとき、こういう売り場では、一気に半額まで、下げます。この理論で見ると、少しずつ下げても、相手も、少しずつ、ついてくるだけです。
3-2. オークションの仕入れ:終わりぎわに、入札する
私の仕入れの中心は、オークションの、自動入札です。終わりぎわに、待ちぶせて、入札する形を、いつも、使っています。これが、いちばん、期待値が取れると、私は、見ています。
ここからは、この理論に当てはめた、整理です。早い時間に、高い金額で入札すると、「この商品を、この値段でほしい人がいる」という情報を、ほかの入札者に、わたします。相手は、それを見て、自分の上限を、引き上げることが、できます。終わりぎわに入れれば、相手には、考えなおす時間が、ありません。全員がそう考えると、全員が、終わりぎわに、入れるようになります。海外のオークションの研究でも、終わりぎわの入札が多いことが、報告されています。終了時刻が自動でのびる設定の出品では、この効果は、弱まります。
3-3. 値下げの依頼:相手が、業者か、個人かで、得な手が、変わる
フリマでは、私は、強気の値段で、売ります。値下げの依頼は、基本的に、全部、無視します。
理由は、相手の出方の、読みです。個人からの値下げの依頼に応じても、買われなかった経験が、何度も、あります。「いま、お金がないので、◯日まで取り置きしてください」は、1回も、購入に、いたったことが、ありません。個人は、自分で使うために買うので、安くなっても、すぐ買う理由が、生まれにくい。これが、私の仮説です。いっぽう、相手が業者なら、安くなれば、買う理由が、ふえます。出品が0の相手は、買いつけ専門の業者です。
ナッシュ均衡の考え方は、「相手が、こう動くなら、自分の得な手は、どれか」を、相手ごとに、考えることです。同じ「値下げしてください」でも、相手によって、得な手は、変わります。
3-4. 均衡から、出る方法:同じ商品を、売らない
値下げの均衡から、1人で出る方法の1つは、ゲームそのものを、変えることです。私は、こわれた物を、直して、売ってきました。直した箇所は、かならず、全部、書きます。対策ずみの部品に変えた、性能を上げた、と伝えると、それが価値になって、高い値段で、売れます。同じ商品の列に、ならばない。ならばなければ、1-1の表は、当てはまりません。
4. ナッシュ均衡を、仕事で使う
- 自分の手だけでなく、相手の手を、表に書く。2×2の表で、十分です。相手の立場で、「自分ならどうするか」を、うめます。
- 「みんなが得をする状態」は、ほうっておくと、くずれる。1-2のとおりです。くずれない仕組み(契約、くり返しの取引、評判)が、いります。
- 均衡が悪い場所なら、表の外に、出る。商品を変える。売り場を変える。売り方を変える。競争のはげしい場所をさける考え方は、レッドオーシャンの記事に、書きました。
- 1人ひとりが得な手をえらんだ結果、全体が悪くなる形は、合成の誤謬の記事と、同じ仕組みです。売り手の数が少ない市場での、にらみ合いは、寡占の記事に、書きました。
5. まとめ
- ナッシュ均衡は、全員が、「自分だけ手を変えても、得をしない」状態。だれも動かないので、そこで、止まる。
- 均衡は、いちばんよい状態とは、かぎらない。値下げ競争は、両方が保てば10と10なのに、5と5で、止まる。
- 私は、同じ商品がならぶ売り場では、処分のとき、一気に半額まで下げる。仕入れは、終わりぎわの入札。値下げの依頼は、相手が業者か個人かで、見る。
- 悪い均衡から出るには、同じ商品を、売らない。直した箇所を書いて、1点物として、売る。

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