確証バイアスは、「自分の考えに合う情報ばかりを集めて、合わない情報を、見ない、軽く見る」という、心のくせです。頭のよしあしとは、関係がありません。だれにでも、あります。
私は、業者向けのオークションで、業務用のモニターを、10台まとめて、落札したことがあります。落札の前に、相場を調べました。「5,000円以上で売れた」という履歴が、見つかりました。10台で3,400円。大もうけだ、と思いました。結果は、1円で出しても、売れませんでした。私が調べたのは、「売れた証拠」だけでした。「売れなかった証拠」は、さがしていませんでした。
この記事では、意味と有名な実験を先に書いて、そのあとで、体験できる小さなゲーム、私の例、対策を書きます。
1. 確証バイアスとは
イギリスの心理学者、ピーター・ウェイソンが、1960年代の実験をもとに、名づけました。人は、ある考え(仮説)を持つと、次の3つを、無意識に、やります。
| 段階 | 何をするか | 例 |
|---|---|---|
| さがし方 | 考えに合う情報を、さがしに行く。 | 「この商品は売れる」と思って、「売れた例」を検索する。 |
| 読み方 | あいまいな情報を、考えに合うほうに、読む。 | どちらとも取れるレビューを、「やっぱり良い商品だ」と読む。 |
| 覚え方 | 考えに合う出来事を、よく覚えている。 | 当たった予想だけを覚えていて、外れた予想を、わすれる。 |
大事な点は、うそをついているわけでも、手をぬいているわけでもない、ということです。本人は、「ちゃんと調べた」と、感じています。
2. 体験してみる:2・4・6の問題
ウェイソンが、1960年に発表した実験を、そのまま、道具にしました。読む前に、やってみてください。
「2, 4, 6」という3つの数は、私が決めた、あるルールに、合っています。あなたの仕事は、そのルールを、当てることです。3つの数を入れて、ボタンを押すと、その組がルールに合うかどうかを、答えます。何回でも、試せます。「分かった」と思ったら、答えを見てください。
結果:—
試した回数:—
2-1. 何が起きたか
多くの人は、「2ずつ増える偶数」と、考えます。そして、「8, 10, 12」「20, 22, 24」を、試します。ぜんぶ、「合う」と出ます。自信を持って、「2ずつ増える数」と答えて、まちがえます。もとの実験でも、1回目の答えで当てた人は、少数でした。
当てるために必要だったのは、「合わない」と言われるはずの組を、わざと試すことでした。「1, 2, 3」を試す。「6, 4, 2」を試す。自分の仮説がまちがっていたら、どんな結果が出るか、を考えて、それを、取りに行く。人は、これを、ほとんど、やりません。
3. ほかの有名な実験
- 4枚カード問題(ウェイソン、1966年):「片面が母音なら、裏は偶数」というルールを確かめるために、どのカードをめくるか。正しくは、「母音」と「奇数」のカードです。ルールをこわす可能性があるのは、その2枚だけだからです。正解する人は、1割ほど、と言われています。多くの人は、ルールに合いそうな「偶数」のカードを、めくります。
- 同じ資料で、意見が、さらに分かれる(ロード、ロス、レッパー、1979年):死刑の制度に、賛成の人と、反対の人に、同じ2つの研究の資料を、読ませました。1つは、死刑に犯罪をへらす効果がある、という内容。もう1つは、ない、という内容です。どちらの側の人も、自分の意見に合う研究を「よくできている」と評価し、合わない研究の欠点を、くわしく指摘しました。読んだあと、両方の側が、もとの意見を、さらに強めました。
情報をふやせば、意見は近づく、とは、かぎりません。同じ情報が、分かれ目を、深くすることがあります。
4. 私の例
4-1. モニター10台:「売れた証拠」だけを、見ていた
はじめに書いた話の、くわしい中身です。業者向けのオークションに、業務用のモニター10台のロットが、出ていました。1台あたりの落札の相場は、2,000円前後。一方で、5,000円以上で売れた履歴が、見えました。私は、10台で2万円までなら出せる、と計算して、入札しました。3,400円で、落ちました。
出品して、すぐ、分かりました。アクセスが、ありません。「いいね」も、つきません。1円で出しても、落札されませんでした。液晶は、粗大ごみで、捨てられません。車で、リサイクル店に、持ちこみました。買取は、ぜんぶで、1,000円にも、なりませんでした。参加費、手数料、送料をふくめて、赤字です。
私が見ていたのは、「5,000円で売れた1件」でした。見ていなかったのは、「同じ型が、何件、売れずに終わったか」「売れるまでに、何日かかったか」です。売れた履歴は、検索すれば、出てきます。売れなかった履歴は、自分から、さがしに行かないと、出てきません。2・4・6の問題と、同じ形です。この市場でのほかの話は、ブランド品の仕入れルートに書きました。
4-2. 成績の良い売買プログラムだけを、えらんでいた
私は、FXの自動売買のプログラムを、100個以上、検証しました。毎日、10個単位で、過去のデータで試して、成績が良いものを、さらに検証していきました。通算の結果は、250万円以上の損失です。
いまなら、分かります。過去のデータで成績が良いものを、100個の中からえらべば、「たまたま、その期間に合っていただけ」のものが、かならず、まざります。私は、良い成績を、「このプログラムは強い」という考えの証拠として、読みました。「この成績は、偶然でも、出るか」という問いは、立てませんでした。この話は、FXで人生終わった人と終わらなかった私の差と、平均への回帰とはに書きました。
4-3. いまのやり方:わざと、反対の答えを出させる
いま、私は、調べものや、文章の点検に、複数のAIを使っています。1つのAIに聞くと、こちらの聞き方に合わせた答えが、返ってきやすい。これは、確証バイアスを、機械で強めているのと、同じです。ですので、別のAIに、同じ内容を、「まちがいをさがせ」という形で、投げます。答えが割れたところだけを、人間が、元の資料で、確かめます。やり方は、マルチタスクとはに書きました。
5. 対策
- 「まちがっていたら、何が見えるはずか」を、先に書く:「この商品が売れないなら、売れ残りの出品が、たくさんあるはず」。書いたら、それを、さがしに行きます。
- 検索の言葉を、ひっくり返す:「○○ おすすめ」で調べたら、「○○ 後悔」「○○ 売れない」でも、調べます。
- 分母を見る:「売れた1件」ではなく、「出品された何件のうち、何件が売れたか」。成功した例の読み方は、生存者バイアスとはに書きました。
- 反対の立場の人を、1人、決めておく:自分の考えの穴を、さがす役の人です。人がいなければ、AIに、その役を、やらせます。
- 決める前に、1回、小さく試す:10台のロットの前に、1台。考えが正しいかどうかは、調べるより、小さく試すほうが、早く、正確に、分かります。
6. 注意点
- 自分には、ない、と思うのが、いちばん危ない:他人の確証バイアスは、よく見えます。自分のものは、見えません。「ちゃんと調べた」という感覚は、あてになりません。
- ぜんぶを疑うと、動けなくなる:反対の証拠をさがすのは、お金や時間を、大きく入れる判断の前だけで、じゅうぶんです。
- 似た言葉との、ちがい:「それらしさ」で判断してしまうのは、代表性ヒューリスティック。結果を知ったあとで「分かっていた」と感じるのは、後知恵バイアス。確証バイアスは、その前の、情報を集める段階の、かたよりです。
7. まとめ
- 確証バイアスは、自分の考えに合う情報ばかりを集めて、合わない情報を、見ない、軽く見る、心のくせです。
- さがし方、読み方、覚え方の、3つの段階で、起きます。
- 2・4・6の問題では、多くの人が、「合う」と言われる組だけを試して、まちがえます。
- 同じ資料を読んでも、意見が、さらに分かれることがあります。
- 私は、「売れた証拠」だけを見て、モニター10台を、落札しました。1円でも、売れませんでした。
- 対策は、「まちがっていたら、何が見えるはずか」を先に書いて、それを、さがしに行くことです。
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