「マーフィーの法則とは」「なぜ起きるのか」「科学的根拠はあるのか」を調べて来られた方に、先に結論を書きます。
マーフィーの法則は「失敗する可能性のあるものは、いつか失敗する」という経験則です。科学の法則ではありません。ただ、「なぜ、よりによって起きるように感じるのか」には、研究で説明できる部分があります。避けようとしている失敗ほど、頭や体に負荷がかかったときに起きやすくなるという心理学の実験と、トーストがバターの面から落ちやすい理由を計算した物理学の論文です。
私にも、覚えのある例があります。車をぶつけたくないと思っているのに、ぶつける。スマホを落としたくないと思っているのに、落として画面を割る。洗車した次の日に台風が来て、車が泥だらけになる。この記事では、この3つを、説明できる部分とできない部分に分けます。
なお、「引き寄せ」「潜在意識」で出てくるマーフィーは、ジョセフ・マーフィーという別の人の成功法則です。この記事の法則とは関係がありません(6章)。
| 知りたいこと | この記事の答え |
|---|---|
| 意味 | 「失敗する可能性のあるものは、いつか失敗する」。悪いことが起きてほしくないときに限って起きる、という経験則(1章) |
| 由来 | 1949年、米空軍のロケットそり実験で、技術者エドワード・マーフィーが配線の間違いに言った言葉が始まりとされる。日本では1993年の翻訳本で広まった(1章) |
| なぜ起きるのか | 避けようとするほど起きる(心理学の実験)、物理で説明できる(トースト)、起きなかった日は覚えていない(記憶)の3つで説明できる部分がある(3章) |
| 科学的根拠はあるか | 法則そのものにはない。上の3つのように、一部の例には研究がある(3章) |
| 例・例文 | トースト、洗車と雨、隣のレジの列。「洗車した次の日に台風。まさにマーフィーの法則だ」のように使う(4章) |
| どう付き合うか | 気をつけるより、起きても困らない形にしておく。これが元の意味に近い(5章) |
1. マーフィーの法則とは|意味と由来
英語では「Anything that can go wrong will go wrong.」と書かれることが多く、日本語では「失敗する可能性のあるものは、失敗する」と訳されます。そこから広がって、「起きてほしくないことに限って起きる」という経験則の総称として使われています。
由来として知られているのは、1949年のアメリカ空軍の実験です。エドワーズ空軍基地で、人が急停止に耐えられるかを調べるロケットそりの実験(MX-981)が行われていました。技術者のエドワード・A・マーフィー・ジュニアが、減速を測る計器の配線が逆につながれていてデータが取れなかったときに、その間違いに対して言った言葉が始まりとされています。その言葉を、実験の責任者だったジョン・スタップ少佐が外で紹介して広まった、という流れです。
ただ、この話には細部の違う言い伝えがいくつもあり、「とされる」以上には確かめられていません。英国物理学会(IOP)の教材サイトも、「マーフィーから来ているかもしれない」という書き方をしています。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1949年 | 米空軍のロケットそり実験(MX-981)で、エドワード・A・マーフィー・ジュニアの言葉が生まれたとされる |
| 1993年 | アーサー・ブロックの本の翻訳『マーフィーの法則』(アスキー出版局)がベストセラーになり、日本で広く知られる(日本語版ウィキペディアの記述) |
| 1995年 | 物理学者ロバート・マシューズが、トーストがバターの面から落ちる理由を論文にする(3章) |
| 1996年 | その論文がイグノーベル賞(物理学賞)を受ける |
| 1998年 | 心理学者ダニエル・ウェグナーらが、避けようとした失敗ほど起きる実験を発表する(3章) |
2. 私に起きたマーフィーの法則|車・スマホ・洗車
私に覚えのある3つです。右の列は、3章で説明する仕組みのうち、どれが当てはまりそうかです。
| 起きたこと | マーフィーの法則ふうに言うと | 当てはまりそうな仕組み |
|---|---|---|
| 車をぶつけたくないと思っているのに、ぶつける | ぶつけたくないときほど、ぶつける | 避けようとするほど起きる(3-1) |
| スマホを落としたくないと思っているのに、落として画面を割る | 落としたくない物ほど、落とす | 避けようとするほど起きる(3-1)、割れた日だけが残る(3-3) |
| 洗車した次の日に台風が来て、泥だらけになる | 洗車すると雨が降る | 起きなかった日は覚えていない(3-3) |
3つのうち、洗車だけは性質が違います。車とスマホは、自分の手と注意が関わっているので、「避けようとしたこと」が結果に影響しうる。洗車と台風は、私が何を思っても天気は変わりません。変わるのは、覚え方のほうです。
3. なぜ起きるのか|説明できる3つの部分
その前に、いちばん単純な説明があります。回数です。スマホは毎日何度も手に取りますし、車は乗るたびに、ぶつけうる場面を何度も通ります。失敗する可能性が少しでもあることを何百回、何千回とくり返せば、いつかは起きます。マーフィーの言葉の元の意味も、ここに近いものです。そのうえで、「よりによって」と感じる部分を、次の3つで説明します。先に書いておくと、マーフィーの法則らしく感じる現象には、それぞれ別の原因があります。ひとつの仕組みで全部を説明できるわけではありません。
3-1. 避けようとするほど起きる|心理学の実験
心理学者のダニエル・ウェグナーらは、1998年に、ゴルフのパットと振り子を使った実験を発表しました。人は、自分がしようとしたことの正反対の動きをしてしまうことがあります。実験では、そうした失敗を避けようとした人ほど、頭や体に負荷がかかった状態で、まさにその失敗をしやすくなりました。自分の動きを目で見ながら行ったときに、その傾向がはっきり出ています。
ウェグナーの説明は、こうです。「〜しないように」と思うと、頭の中で「〜していないか」を見張る働きが動きます。見張るためには、避けたいことを思い浮かべ続けなければなりません。ふだんは、それを打ち消す働きのほうが勝ちます。疲れている、急いでいる、ほかのことを考えているときは、打ち消す側が弱くなり、見張っていたほうが表に出てきます。
車をぶつけたくないと思うほど、ぶつけたくない物に注意が向きます。ただ、この研究は実験室でのパットと振り子の話で、車の運転そのものを調べたものではありません。私の件がどこまでこれで説明できるかは分かりませんが、構図は同じです。禁止されるほどしたくなる気持ちについては、カリギュラ効果にも書いています。
3-2. 物理で説明できる|トーストはバターの面から落ちやすい
「トーストは、バターを塗った面を下にして落ちる」は、マーフィーの法則の代表例です。これを、物理学者のロバート・マシューズが1995年に論文にしました。
| 論文の説明 | 中身 |
|---|---|
| なぜバターの面が下になるか | テーブルの縁から滑り落ちたトーストは回転しながら落ちる。ふつうのテーブルの高さだと、床に着くまでに半回転ほどしかできない。上にあったバターの面が、ちょうど下になる |
| テーブルの高さを決めているもの | 人間の背の高さ。マシューズは、人の背の高さそのものが、物理の基本的な定数で決まっていると論じた |
| バターの面を上にして着地させるには | 英国物理学会の教材サイトの紹介では、約3mの高さのテーブルが必要 |
| 落ちかけたときの対策 | 手で前に払って、回転する時間を減らす |
この論文は、1996年にイグノーベル賞の物理学賞を受けています。論文が説明したのはトーストの落ち方で、マーフィーの法則そのものを証明したものではありません。それでも、マーフィーの法則の「例」のなかには、運や気のせいではなく、物理で説明できるものがある、ということは言えます。
スマホが画面から落ちるように感じる件についても、Motorolaが同じマシューズに調べさせたと、イグノーベル賞の主催者のサイトが紹介しています。ただ、その記事に結果は載っていません。私のスマホの件は、物理ではなく3-1と3-3のほうで考えています。
3-3. 起きなかった日は覚えていない|記憶の偏り(確証バイアス)
洗車した次の日に台風が来たことは、泥だらけの車と一緒に覚えています。洗車した次の日に晴れたことは、覚えていません。何も起きなかったからです。
こうして、「洗車した日」と「雨」がそろった日だけが記憶に残り、「洗車すると雨が降る」という法則ができあがります。本当に雨が多いかを知るには、洗車した日と、雨が降った日を、両方とも記録して数えるしかありません。思い出せる件数で判断してしまうくせは利用可能性ヒューリスティック、都合のいい証拠だけを集めるくせは確証バイアスに書いています。
4. マーフィーの法則の例と、例文
よく知られた例を、場面ごとに並べます。このうち研究で確かめられているのはトーストだけで、ほかは言い伝えです。右の列は、3章の考え方を当てたものです。
| 場面 | よく言われる例 | 3章のどれで説明できるか |
|---|---|---|
| 食事 | トーストは、バターを塗った面を下にして落ちる | 物理(3-2) |
| 車 | 洗車した日に限って、雨が降る | 記憶(3-3) |
| 買い物 | 自分が並んだレジの列より、隣の列のほうが早く進む | 記憶(3-3)。抜かれたときだけ覚えている |
| 急いでいるとき | 急いでいるときに限って、赤信号に止められる | 記憶(3-3)。急いでいない日の赤信号は覚えていない |
| 天気 | 傘を持って出た日は降らず、忘れた日に限って降る | 記憶(3-3) |
| 運転・手元 | ぶつけたくないときほど、ぶつける。落としたくない物ほど、落とす | 心理(3-1) |
言葉として使うときは、「悪いことが、よりによってのタイミングで起きた」ときに、半分笑って言うのがふつうです。
| 例文 |
|---|
| 洗車した次の日に台風が来た。まさにマーフィーの法則だ。 |
| 「絶対に落とさないように」と思っていたスマホを落として、画面を割った。マーフィーの法則を身をもって知った。 |
| 本番の日に限ってプリンターが動かない。マーフィーの法則を信じて、前日に一度印刷しておくべきだった。 |
| テストでは一度も止まらなかったシステムが、本番の初日に止まった。マーフィーの法則は、準備した人のところにも来る。 |
| 部品の向きを間違えられる形にしておいたら、やはり誰かが逆に付けた。マーフィーの法則のとおりだ。 |
5. どう付き合うか|気をつけるより、起きても困らない形にする
元の話に戻ると、マーフィーの言葉は、配線を逆につなげられる作りだったから、逆につながれた、という話です。「気をつけろ」ではなく、「間違えられる作りなら、いつか誰かが間違える」という意味で受け取ると、使い道が見えます。
| 考え方 | 中身 |
|---|---|
| 気をつけるより、形で防ぐ | 「落とさないように」と思い続けるより、落としても割れない状態にしておく。3-1のとおり、避けようと思うほど、負荷がかかったときに失敗しやすくなる。間違えようのない形にしておく考え方は、フールプルーフ(ポカヨケ)と呼ばれる |
| 負荷がかかっているときを疑う | ウェグナーの実験では、失敗が増えたのは負荷がかかった状態だった。疲れている、急いでいる、考えごとをしているときほど、避けたい失敗が出やすい |
| 記憶ではなく記録で判断する | 「いつもこうなる」と感じたら、起きた日と起きなかった日の両方を数える(3-3) |
6. よくある質問
マーフィーの法則に、科学的根拠はありますか?
法則そのものに根拠はありません。経験則です。ただ、一部の例には研究があります。トーストがバターの面から落ちやすいことは、物理学者のマシューズが1995年の論文で説明しています。避けようとした失敗ほど、負荷がかかったときに起きやすくなることは、心理学者のウェグナーらが1998年の実験で示しています。
「引き寄せ」「潜在意識」のマーフィーの法則とは違うのですか?
違います。そちらはジョセフ・マーフィーという人の、潜在意識と成功についての考え方です。この記事の法則は、エドワード・マーフィーという技術者の言葉が始まりとされています。日本語版ウィキペディアは、日本で出た翻訳本の『マーフィーの法則』という書名自体が、ジョセフ・マーフィーの著作のパロディだという指摘を紹介しています。
マーフィーの法則と確証バイアスは、どう違いますか?
マーフィーの法則は「悪いことは、よりによって起きる」という経験則そのものです。確証バイアスは、その経験則が当たっているように見えてしまう、判断のくせです。起きた日だけを覚えていると、法則が正しいように感じます(3-3)。
マーフィーの法則を、日本語で何と言いますか?
日本語でも「マーフィーの法則」と呼ばれています。中身は「失敗する可能性のあるものは、失敗する」です。
なぜ、悪いことばかり起きるように感じるのですか?
悪いことが起きた日は覚えていて、何も起きなかった日は覚えていないからです(3-3)。車やスマホのように自分の手が関わることは、避けようと思うほど失敗しやすくなる面もあります(3-1)。
マーフィーの法則の本はありますか?
日本で広まったきっかけは、アーサー・ブロックの本の翻訳『マーフィーの法則』(アスキー出版局、1993年)です。『21世紀版 マーフィーの法則』も出ています。
7. まとめ
- マーフィーの法則は「失敗する可能性のあるものは、いつか失敗する」という経験則で、科学の法則ではない
- 1949年の米空軍のロケットそり実験で、技術者エドワード・マーフィーが配線の間違いに言った言葉が始まりとされる。日本では1993年の翻訳本で広まった
- 説明できる部分は3つ。避けようとするほど負荷がかかったときに起きる(ウェグナー、1998年)、トーストはテーブルの高さのせいでバターの面から落ちる(マシューズ、1995年)、起きなかった日は覚えていない
- 私の例のうち、車とスマホは自分の注意が関わる。洗車と台風は、天気ではなく覚え方の問題
- 付き合い方は、気をつけるより、起きても困らない形にしておくこと。「いつもこうなる」は記録で確かめる
- 「引き寄せ」「潜在意識」のマーフィーは、ジョセフ・マーフィーという別の人
8. 出典
- Institute of Physics(IOPSpark)「Murphy’s Law」https://spark.iop.org/murphys-law
- R. A. J. Matthews「Tumbling toast, Murphy’s Law and the fundamental constants」European Journal of Physics 16(4), 1995https://iopscience.iop.org/article/10.1088/0143-0807/16/4/005
- Improbable Research「From tumbling toast to falling phones」https://improbable.com/2015/11/27/from-tumbling-toast-to-falling-phones/
- Daniel M. Wegner, Matthew Ansfield, Daniel Pilloff「The Putt and the Pendulum: Ironic Effects of the Mental Control of Action」Psychological Science 9(3), 1998https://journals.sagepub.com/doi/10.1111/1467-9280.00037
- ウィキペディア日本語版「マーフィーの法則」https://ja.wikipedia.org/wiki/マーフィーの法則
いずれも2026年9月27日に確認しました。
9. あわせて読む
| 記事 | どこがつながっているか |
|---|---|
| 利用可能性ヒューリスティックとは | 思い出しやすい件数を、起きやすさだと思ってしまう。洗車と雨の正体 |
| 確証バイアスとは | 「やっぱりそうだ」という証拠だけを集めてしまう |
| カリギュラ効果とは | 禁止されるほどしたくなる。避けようとするほど起きる話と近い |
| 平均への回帰とは | 悪い日のあとに良い日が来るのは、法則ではなく、ばらつき |
| 認知バイアスとは | 私が実際にお金を失ったバイアスの一覧 |
10. この記事について
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 書いた人 | 中古品の売買を20年近く続けています(古物商許可あり)。判断のくせを、自分の失敗の例で書いています |
| 私の例 | 車をぶつけたくないと思っているのにぶつける、スマホを落としたくないと思っているのに落として割る、洗車した次の日に台風が来て泥だらけになる |
| 書いていないこと | 私の例について、何回起きたか・起きなかったかは記録していないので、件数は書いていません。スマホが画面から落ちやすいかどうかの研究結果は、見つけられませんでした |
| 確かめきれないこと | 1949年の由来には細部の違う言い伝えがいくつもあり、「とされる」として書いています |

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