「早期退職 その後」「早期退職 50代」「早期退職 45歳」「早期退職 後悔」「黒字リストラ」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。
早期退職に応じてよいかは、割増を含めた退職金と、辞めたあとの年収で決まります。私の考えでは「市場価値があれば受けていい。低ければ会社にしがみつくしかない」で、その市場価値は、スカウトで提示される年収で確かめるのがいちばん確かです。統計では、50代で転職した人は、賃金が増えた人より減った人のほうが多くなります(50〜54歳で増えた29.4%、減った42.0%)。この記事の例(50歳・勤続27年・退職金2,266万円)で65歳までの手取りの合計を比べると、再就職後の年収が今の88%を下回ると残ったほうが多くなり、自己都合の退職金に年収2年分の割増が乗る場合は79%が分かれ目でした。早期・希望退職の募集は2025年に上場43社・1万7,875人で、募集人数の85.0%は直近の決算が黒字の会社(黒字リストラ)でした。
| 知りたいこと | 答え | 章 |
|---|---|---|
| 黒字リストラとは。なぜ黒字の会社が募集するのか | 業績が黒字の会社が、早期・希望退職を募ること。2025年は募集した上場43社のうち29社(67.4%)が黒字。理由として挙げられているのは、事業構造の転換、不採算部門の整理、年齢層の適正化など(東京商工リサーチ) | 2章 |
| 技術職に関係あるか | 2025年は電気機器が18社で最多。2026年1〜9月は22社のうち20社が製造業(業種の数字で、職種ごとの人数は分からない) | 2章 |
| 早期退職のその後、年収は下がるか | 転職した人で見ると、45〜49歳までは増えた人が多く、50〜54歳から減った人が多くなる。55〜59歳では、転職先で正社員でない人が34.1% | 3章 |
| 後悔する人、しない人の違い | 私の考えでは、今すぐリタイアしても生活が破綻しない人と、社外でも仕事を受けられる人脈とスキルがある人は後悔しにくい。後悔する人はその逆 | 4章 |
| 失業保険は会社都合になるか | 判断基準では、人員整理のための希望退職(離職前1年以内に導入、募集期間3か月以内)は特定受給資格者に当たる。前からある早期退職優遇制度は当たらない。決めるのはハローワーク。45〜59歳・雇用保険20年以上の給付日数は330日と150日で、上限額で約301万円と約137万円 | 5章 |
| 得か損か | 計算機で、65歳までの手取りの合計と、得か損かの分かれ目になる再就職後の年収を出せる。例では、割増が年収1年分増えると分かれ目は約9ポイント下がる | 6章 |
この記事は、会社が募集する早期退職・希望退職に応じたあとの話です。自分の資産で早くリタイアする「FIRE」の話は扱っていません。
1. 先に、立場を書きます
私は会社員の経験がありません。学生のころには中古品の売買で月収が30万円を超えていたので、「これを本気でやれば食べていけないことはない」と考えて、就職せずに独立しました。親には反対されました。それから20年近く、中古品の売買と、講座・コンサルの仕事を続けています。
ですから、早期退職の募集に手を挙げた経験はありません。この記事の制度と統計は、2章からの公的な資料で書きます。私の考えとして書くのは、会社の給料に頼らずに生活を組み立ててきた側から見た「辞めても破綻しない条件」です。
この記事のために、私は次のように答えました。
| 周りで早期退職・希望退職に応じた人はいるか、その後は | 「いる・独立や別収入でうまくいった,不動産投資をインフレのかなり前2000年代前半にスタートしていてそちらが安定しているので退職しても破綻しなかった人がいる」 |
| その人は、不動産の収入で生活費をどれくらいまかなえていたか | 「地方都市で自宅も持っているので不動産収入は年間300万弱だがそれでも破綻しない生活だった。それに[店で仕入れた品物をネットで売る商売]を加えて月収60万推移」 |
| 自分が会社に入らずに独立する前に、決めていたこと | 「会社員経験はないが[中古品の売買]で学生時代の段階で月収30万超えていたのでこれをガチったら食えないことはないなとは思えた。親には反対された」 |
| 割増退職金を提示された40〜50代の技術職に、まず何をしろと言うか | 「マーケットバリューがあれば受けていいけど、自分の市場価値が低ければ会社にしがみつくしかない」 |
| 市場価値は何で確かめるのがいちばん確かか | 「スカウトで提示される年収」 |
| 早期退職を後悔する人の典型は | 「リタイアしても生活が破綻しない、人生設計を若い頃からやってきたので今すぐリタイアしても成り立つ。社外でも仕事を受けられる人脈やスキルを有している。後悔する人はこの逆」 |
| 「今すぐリタイアしても成り立つ」の線を数字で引くなら | 「資産からの収入>生活費」 |
| 研究・開発・設計の技術職で、会社の外でも仕事を受けられる人が持っているもの | 「狭い分野の専門性,自分で手を動かせる,客と直接話せる,人脈」 |
[ ]の中は、業界の言葉を言い換えたものです。周りの人の話は、本人から聞いた話で、私が帳簿を見たわけではありません。
2. 黒字リストラとは:業績のよい会社が早期退職を募る理由
2-1. 募集の数
黒字リストラは、直近の決算が黒字の会社が、早期退職・希望退職を募って人を減らすことを指す言葉です。法律の用語ではありません。東京商工リサーチが、上場企業の適時開示資料などから集計しています。下の表の募集人数は、各社が公表した募集の人数(応募の見込みや応募した人数で数えられているものもあります)で、実際に辞めた人数とは違います。
| 期間 | 募集した上場企業 | 募集人数 | 黒字の会社 | 黒字の会社の募集人数 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年(1〜12月) | 43社(前年57社) | 1万7,875人(前年比78.5%増。2009年以降で3番目の多さ) | 29社(67.4%) | 1万5,205人(85.0%) |
| 2025年度(2025年4月〜2026年3月) | 46社(前年度51社) | 2万781人(前年度8,326人の約2.5倍。2009年度以降で4番目) | 32社(69.5%) | 1万6,908人(81.3%) |
| 2026年1〜9月 | 22社(前年同期34社) | 5,345人(前年同期1万1,909人) | 14社(63.6%) | 3,406人(63.7%) |
2026年は、9月までで社数も人数も前の年より減っています。一方で、募集した会社の6割超は黒字のままです。東京商工リサーチは、事業構造の転換や技術革新に伴う人員のミスマッチ、コストの上昇が続いており、今後も募集に動く可能性を残している、と書いています。
2-2. なぜ黒字なのに募るのか
東京商工リサーチの記事に書かれている理由は、次のとおりです。
- 将来の事業の転換を見越して、将来性の乏しい部門を見直し、新しい事業に進む
- 不採算の部門を整理する
- 年齢層の適正化(中高年が対象の募集が定着している)
- 技術革新に伴う人員のミスマッチ。2025年度の記事では、大企業の59.1%が生成AIを組織的に活用しているという同社のアンケートを挙げ、事務職・管理職を対象にした「AIウォッシング」の広がりも懸念される、と書いています
対象の年齢は、会社ごとに決めています。記事に出てくる例では、三菱ケミカルグループは50歳以上(1,273人が応募)、明治ホールディングスは50歳以上(44人が応募)、沖電気工業は55歳以上かつ勤続10年以上(668人が応募)でした。
2-3. 技術職の会社に多い
業種で見ると、2025年は電気機器が18社(41.8%)で最も多く、2026年1〜9月は22社のうち20社(90.9%)が製造業、そのうち電気機器が8社でした。業種の数字なので、技術職が何人対象になったかまでは分かりませんが、研究・開発・設計の技術職が働く業種です。
厚生労働省の就労条件総合調査(2023年)では、勤続20年以上かつ45歳以上で退職した人の理由は、定年56.5%、自己都合31.7%、会社都合6.1%、早期優遇5.7%でした。従業員1,000人以上の会社に限ると早期優遇は8.6%、製造業では会社都合が11.2%、早期優遇が6.4%です。
3. 早期退職のその後:再就職した人の年収と働き方
3-1. 50代の転職は、年収が下がる人のほうが多い
厚生労働省の雇用動向調査(2025年)で、転職した人の賃金が前の仕事と比べてどう変わったかを年齢別に見ると、こうなっています。
| 転職した年齢 | 増えた | うち1割以上 | 変わらない | 減った | うち1割以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 40〜44歳 | 44.9% | 29.9% | 24.6% | 27.4% | 17.6% |
| 45〜49歳 | 41.1% | 30.0% | 28.0% | 30.1% | 16.1% |
| 50〜54歳 | 29.4% | 18.4% | 26.7% | 42.0% | 28.3% |
| 55〜59歳 | 25.5% | 16.8% | 33.0% | 38.9% | 30.6% |
| 60〜64歳 | 21.1% | 11.0% | 24.2% | 54.3% | 47.6% |
増えた人が減った人より多いのは45〜49歳までで、50〜54歳から逆になります。ただし、50〜54歳でも29.4%は賃金が増えています。下がると決まっているわけではなく、人によって分かれる、というのが統計の読み方だと思います。
3-2. 55〜59歳は、3人に1人が正社員以外
厚生労働省の転職者実態調査(2025年)では、フルタイムで転職した人の今の働き方は、45〜49歳で正社員80.0%、50〜54歳で76.7%、55〜59歳で61.4%でした。55〜59歳では34.1%が正社員以外(契約社員13.4%、嘱託社員4.3%など)です。
同じ調査で、前の会社を辞めた理由を見ると、55〜59歳では「早期退職優遇制度等」が6.8%、「倒産・整理解雇・人員整理による勧奨退職」が6.6%でした。50〜54歳ではそれぞれ2.4%と5.6%です。
3-3. この統計で分からないこと
どちらの調査も、再就職できた人の数字です。早期退職に応じた人だけを追いかけて、何割が再就職し、年収がいくらになったかを示す公的な統計は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。まだ次が決まっていない人は、この数字に入っていません。また、自分から転職した人も、会社の都合で辞めた人も混ざった数字なので、一人ひとりの再就職後の年収を予想するものではなく、50代の転職の全体の傾向として読んでください。
4. 後悔する人、しない人(私の見方)
4-1. 市場価値があれば受けていい
私の考えはこうです。
「マーケットバリューがあれば受けていいけど、自分の市場価値が低ければ会社にしがみつくしかない」
市場価値を何で確かめるかは、「スカウトで提示される年収」がいちばん確かだと考えています。自分で思う値段や、社内の評価ではなく、社外の会社が実際に出すと言った額です。ただ、スカウトの年収は値段の目安で、仕事の中身、責任、勤務地、何歳まで雇われるかは別に比べる必要があります。6章の計算機は、65歳までの手取りの合計で辞めたほうが多くなる再就職後の年収(分かれ目)を出します。スカウトで提示される年収がその分かれ目より上か下かが、私の言う「市場価値があるか」の目安になります。
会社に残る判断にも根拠があります。3章のとおり、50代の転職は年収が下がる人のほうが多いからです。ただ、残る場合も、役職定年や定年後の再雇用で年収は下がります。その下がり方は役職定年を社内規定から逆算する記事にまとめました。そして、残っても会社や部署が続くとは限りません。2章のとおり、募集は黒字の会社でも出ます。
4-2. 後悔しないのは、今すぐリタイアしても破綻しない人
「リタイアしても生活が破綻しない、人生設計を若い頃からやってきたので今すぐリタイアしても成り立つ。社外でも仕事を受けられる人脈やスキルを有している。後悔する人はこの逆」
この「今すぐリタイアしても成り立つ」の線を、私は「資産からの収入>生活費」で引いています。配当や家賃など、働かなくても入る収入が、毎年の生活費を上回っている状態です。これは「今すぐ辞めても生活費が出るか」を見る私の目安で、後悔しないことを保証する線ではありません。家賃や配当は、空室・修繕・減配・税金で減ります。この線に届いていない場合は、辞めたあとの年収で足りるかを6章で計算します。
1章の、2000年代前半に不動産を始めていた知人は、早期退職のとき不動産の収入が年300万円弱でした。地方都市で自宅も持っていたので、それでも破綻しない生活だったそうです。そこに、店で仕入れた品物をネットで売る商売を足して、月収60万円ほどで推移していると聞いています。辞める前に、会社の外の収入がすでにありました。
4-3. 技術職が会社の外で仕事を受けられる条件
研究・開発・設計の技術職で、会社の外でも仕事を受けられる人が持っているものを、私は4つ挙げました。
- 狭い分野の専門性(その分野ならこの人、と外から名前が挙がる)
- 自分で手を動かせる(設計・実験・試作を人に任せずにできる)
- 客と直接話せる(要件を聞いて、値段をつけて、納めるまでできる)
- 人脈(仕事を回してくれる人が社外にいる)
開発方針の決定、品質問題への対応、部門をまたぐ調整、人を育てることも専門の力です。それが社外で値段になるかは、スカウトや求人で確かめるしかありません。そのうえで、管理職になって社内の調整が仕事の中心になっている人は、2つめが今もできるかも確かめてください。3つめと4つめは、会社の名刺で取れていたのか、自分の名前で取れていたのかを分けて考えると、社外での値段に近づきます。
5. お金のその後:退職金・失業給付・年金・健康保険
5-1. 退職金は、早期優遇の平均がいちばん高い
就労条件総合調査(2023年)で、勤続20年以上かつ45歳以上で退職した大卒(管理・事務・技術職)の1人平均の退職給付額は、次のとおりです(退職一時金と、退職年金を今の価値に直した額の合計)。
| 退職の理由 | 1人平均の退職給付額 | 退職時の月給(所定内)の何か月分 |
|---|---|---|
| 定年 | 1,896万円 | 36.0か月分 |
| 会社都合 | 1,738万円 | 27.9か月分 |
| 自己都合 | 1,441万円 | 30.3か月分 |
| 早期優遇 | 2,266万円 | 39.9か月分 |
辞めた年齢も勤続年数も違う人どうしの平均なので、「早期退職すると定年より多くもらえる」という意味ではありません。自分の額は、募集要綱と退職金規程で確かめてください。定年退職で勤続35年以上の人に限ると、平均は2,037万円でした。
退職金には税金がかかります。退職所得控除は、勤続20年までは1年40万円、20年を超えた分は1年70万円で、残りの半分に所得税と住民税がかかります。たとえば勤続27年で2,266万円なら、控除は1,290万円、税金は所得税と住民税で約105万円、手取りは約2,161万円です。「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出さないと20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算することになります。前年以前に退職金を受け取ったことがある場合や、同じ年に2か所以上から受け取る場合(企業年金やDCの一時金を含む)は、控除の計算が変わることがあります。
5-2. 失業給付は、募集の形で日数が倍以上変わる
早期退職で辞めたときの失業給付(基本手当)は、どの区分になるかで日数が変わります。区分は、ハローワークが離職理由で判断します。
- 特定受給資格者(会社都合と同じ扱い):会社から退職を勧められて辞めた人。判断基準では、人員整理を目的とした希望退職の募集(名称は問わず、離職の前1年以内に導入され、募集期間が3か月以内のもの)に応じて辞めた場合も当たるとされています
- 当たらない:前から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」に応募して辞めた場合(どの扱いになるかはハローワークの判断です)
- 特定理由離職者:上の条件に当たらない、企業整備による人員整理などで希望退職の募集に応じた人など。給付制限はかかりませんが、日数は一般の人と同じです
45〜59歳で、雇用保険に入っていた期間が20年以上の場合、給付日数は次のとおりです。
| 区分 | 給付日数 | 1日の上限9,110円で全部受け取った場合 | 給付制限 |
|---|---|---|---|
| 特定受給資格者 | 330日 | 約301万円 | なし |
| 特定理由離職者 | 150日 | 約137万円 | なし |
| 自己都合 | 150日 | 約137万円 | 原則1か月(2025年4月1日以降に辞めた場合) |
1日の額(基本手当日額)は、辞める前6か月の賃金(賞与を除く)から決まり、45〜59歳の上限は9,110円です(2026年8月1日から)。賃金日額が1万8,220円(月給にしておよそ55万円)を超える人は、この上限で頭打ちになります。どの区分でも、最初の7日間(待期)は支給されません。
どの区分になるかは、募集の目的や導入の経緯、離職票に会社が書いた離職理由などをもとに、ハローワークが一人ずつ判断します。手を挙げる前に、募集要綱で「人員整理を目的とした募集か」「募集期間はいつからいつまでか」を確かめてください。ハローワークで判断を受けるときは、募集要綱と、応募したことが分かる資料を持っていくことになっています。離職票には、会社が書いた離職理由に本人が異議があるかを書く欄があります。
5-3. 年金と健康保険
会社を辞めて次の会社に入るまでの間は、厚生年金と会社の健康保険から外れます。
- 国民年金:60歳未満なら、国民年金に入って保険料(2026年度は月1万7,920円)を払います。会社員の配偶者に扶養されていた妻や夫(第3号被保険者)も、第1号被保険者として届け出が必要になります
- 健康保険:辞める前の健康保険に最長2年続けて入る「任意継続」(退職日の翌日から20日以内に手続き。保険料は会社負担分も自分で払う)、国民健康保険、家族の健康保険の扶養のどれかになります。協会けんぽの任意継続は、保険料の計算に使う標準報酬月額の上限が32万円(2026年度)で、全国平均の保険料率(9.90%)に、40〜64歳は介護保険料率(1.62%)と子ども・子育て支援金率(0.23%)を足すと、月3万7,600円です。健康保険組合の任意継続や国民健康保険の額は、加入先で確かめてください
- 厚生年金:将来の老齢厚生年金(報酬比例部分)は、加入していた間の給与と月数で決まります(2003年4月以降の分は、平均標準報酬額(賞与を含む給与の平均)×1000分の5.481×月数)。加入しない期間や、再就職で給与が下がった分だけ、受け取る年金も減ります
もう一つ、住民税は前の年(1月〜12月)の所得にかかります。辞めた翌年も、在職中の給与にかかった住民税を払います。
6. 早期退職に応じた場合と、残った場合を比べる計算機
今の年齢・月給・社内の規定(役職定年、定年後の年収、定年の退職金)と、募集の条件(割増を含む退職金)、辞めたあとの見込み(次の収入までの月数、再就職後の年収)を入れると、決めた年齢までの手取りの合計を比べます。再就職後の年収がいくらより上なら辞めたほうが多くなるか(分かれ目)、退職金の税金、失業給付、空白の間の保険料、年金の差も出します。
早期退職に応じた場合と、残った場合の比較
最初の数字は、50歳・勤続27年の大卒の技術職が、割増を含む退職金2,266万円で辞めて、6か月後に今の7割の年収で再就職する例です。月給と退職金は厚生労働省の就労条件総合調査の平均、そのほか(賞与、役職定年、再就職後の年収、生活費など)は例の数字です。募集要綱と社内の規定(賃金規程・退職金規程)の数字に置きかえてから「計算する」を押してください。
あなた
残った場合
辞めた場合
家計
6-1. 例で計算すると
最初の数字は、50歳・勤続27年、月給56.7万円・賞与4か月分(年収907.2万円)で、55歳に役職定年(年収2割減)、60歳定年、定年後は6割、という例です。月給56.7万円は就労条件総合調査で早期優遇で辞めた大卒(管理・事務・技術職)の退職時の月給(所定内)の平均、退職金2,266万円は同じく早期優遇の平均、定年の退職金2,037万円は勤続35年以上の定年退職者の平均です。辞める場合は、6か月後に今の7割の年収で再就職し、再就職先でも60歳から6割になるとしました。
| 条件 | 65歳までの手取りの合計(辞めた場合−残った場合) | 分かれ目(再就職後の年収) |
|---|---|---|
| 最初の数字 | −1,549.2万円 | 今の88.2%(800.3万円) |
| 再就職後の年収が今の8割 | −698.7万円 | 同じ(88.2%) |
| 再就職後の年収が今と同じ | +1,002.3万円 | 同じ(88.2%) |
| 次の収入まで12か月 | −1,679.4万円 | 90.6%(821.6万円) |
| 失業給付が自己都合の扱い(150日・給付制限1か月) | −1,576.5万円 | 88.5%(803.2万円) |
| 再就職先では65歳まで年収が下がらない | −596.6万円 | 76.0%(689.9万円) |
| 今の会社に役職定年がない | −2,637.8万円 | 101.0%(916.4万円) |
| 退職金が自己都合の平均(1,441万円)だけ | −2,280.8万円 | 96.8%(878.3万円) |
| 自己都合の平均に年収1年分の割増(計2,348.2万円) | −1,479.5万円 | 87.4%(792.9万円) |
| 自己都合の平均に年収2年分の割増(計3,255.4万円) | −727.5万円 | 78.6%(712.6万円) |
この例で差を大きく動かしたのは、再就職後の年収と、割増の大きさでした。再就職後の年収が今の7割か8割かで、65歳までの手取りの合計は850万円ほど変わります。割増が年収1年分増えるごとに、分かれ目はおよそ9ポイント下がります。次の収入までの月数(6か月か12か月か)や、失業給付の区分の違いは、この例では数十万円〜百数十万円です。失業給付は空白の期間を支えますが、決め手にはなりません。「再就職先では65歳まで年収が下がらない」の行は、残った場合だけに定年後の減額がかかるので、辞めた側に有利な比べ方です。
分かれ目の88.2%は、年収が1割ちょっと下がる水準です。3章の統計では、50〜54歳で転職して賃金が1割以上減った人は28.3%、増えた人は29.4%でした。今の会社に役職定年がなければ、分かれ目は今の年収を少し上回ります。残った場合の年収が下がらない人ほど、辞めるには今以上の値段が要る、ということです。
年金は、最初の数字で、残った場合のほうが年13.2万円多い計算でした。受け取りが始まってから毎年続く差で、上の手取りの合計には入れていません。
この計算機は、手取りの割合を両方とも同じ75%にしています。年収が下がると実際の手取りの割合は少し上がるので、その分は辞めた側が少し不利な計算です。また、決めた年齢までの合計なので、教育費が重なる年に足りるか、といった年ごとの資金繰りは出ません。年ごとに見るときは、役職定年の記事の計算機の「会社を離れる年齢」に辞める年齢を、「離れたあとの年収」に再就職後の年収の割合を入れてください。
家計の欄では、私の言う「資産からの収入>生活費」の線までどれくらいかを出します。最初の数字(資産からの収入が年30万円、生活費が年480万円)では6.3%で、空白の6か月の生活費240万円のうち、失業給付と資産の収入で足りない65.6万円は退職金などから出す計算です。再就職できなかった場合に備えて、退職金の手取りが、資産の収入で足りない生活費の何年分になるかも出します(最初の数字では4.8年分)。
7. 手を挙げる前にやる順番
- 募集要綱を読み、説明会で確かめる:対象の年齢と勤続、割増を含む退職金の額、募集期間、人員整理を目的とした募集か(5-2の失業給付の区分に関わる)。ほかに、応募を取り下げられるか、会社の承認が要るか、退職日と有給休暇の消化、企業年金・DCの扱い、賞与の支給日、再就職支援の中身、競業避止や秘密保持の誓約。会社が募集する理由(上場企業なら適時開示で公表される)と、残った場合の部署の先行きも
- 残った場合を計算する:役職定年の年齢と減り方、定年後の年収、定年の退職金を、賃金規程と退職金規程から書き出す(役職定年の記事の7章)
- スカウトで市場価値を確かめる:転職サイトやエージェントに登録して、実際に提示される年収を見る(私の考え)
- 計算機の分かれ目と比べる:提示された年収が分かれ目より上か下か
- 資産からの収入と生活費を比べる:どこまで届いているか。届いていない分は、給料か取り崩しで埋めることになる
- 家族の手続きを確かめる:配偶者が第3号被保険者なら国民年金の届け出、健康保険を任意継続にするか国民健康保険にするか
8. よくある質問
早期退職したその後は、どうなる人が多いですか?
再就職した人の統計では、50〜54歳で賃金が増えた人29.4%、変わらない人26.7%、減った人42.0%でした(雇用動向調査)。55〜59歳で転職した人の34.1%は正社員以外です(転職者実態調査)。早期退職に応じた人だけを追った公的な統計は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。
早期退職は何歳がいいですか?
決まった答えはありません。統計で分かるのは、転職して賃金が増えた人が減った人を上回るのは45〜49歳まで、ということです。失業給付は、特定受給資格者で勤続20年以上なら、45歳から給付日数が270日から330日に増えます。退職所得控除は、勤続20年を超えると1年ごとに70万円ずつ増えます。私の考えでは、年齢より、スカウトで提示される年収が分かれ目を超えるかで決まります。
45歳で早期退職するには、いくら必要ですか?
私の線は「資産からの収入>生活費」です。生活費が年480万円なら、配当や家賃などの収入が年480万円を超えていれば、給料がなくても生活費が出ます。そこまで届かない場合は、再就職後の年収で足りるかを計算機で確かめてください。
早期退職を後悔する人はいますか?
いると思います。私の考えでは、今すぐリタイアしても生活が破綻しない人と、社外でも仕事を受けられる人脈とスキルがある人は後悔しにくく、後悔するのはその逆の人です。これはお金と仕事の面からの私の見方で、統計で確かめたものではありません。転職者実態調査(全年齢)では、転職先への満足度(満足と答えた割合−不満と答えた割合)は職業生活全体で44.0ポイント、賃金に限ると22.2ポイントで、項目の中でいちばん低くなっています。
早期退職すると、失業保険は会社都合になりますか?
判断基準では、人員整理を目的とした希望退職の募集(離職の前1年以内に導入、募集期間が3か月以内)に応じた場合は、特定受給資格者に当たるとされています。前から恒常的に設けられている早期退職優遇制度に応募した場合は当たりません。どれになるかは、募集要綱や離職票の離職理由などをもとにハローワークが判断します。
黒字リストラとは何ですか?
直近の決算が黒字の会社が、早期・希望退職を募って人を減らすことです。2025年に早期・希望退職を募集した上場企業43社のうち29社(67.4%)が黒字で、募集人数の85.0%を占めました(東京商工リサーチ)。
黒字リストラの退職金はいくらですか?
黒字リストラに限った公的な統計はありません。就労条件総合調査(2023年)では、勤続20年以上かつ45歳以上で「早期優遇」で辞めた大卒(管理・事務・技術職)の平均は2,266万円(退職時の月給の39.9か月分)でした。定年は1,896万円、自己都合は1,441万円です。
リストラで狙われやすいのはどんな人ですか?
それを示す公的な統計は見つかりませんでした。東京商工リサーチの記事にある募集の例では、対象は年齢と勤続で決められていました(50歳以上、55歳以上かつ勤続10年以上など)。
早期退職したら、健康保険と年金はどうなりますか?
次の会社に入るまで、健康保険は任意継続・国民健康保険・家族の扶養のどれか、年金は60歳未満なら国民年金(月1万7,920円)です。配偶者が第3号被保険者なら、配偶者も国民年金の届け出が要ります。
9. まとめ
- 早期・希望退職の募集は、2025年に上場43社・1万7,875人。募集人数の85.0%は黒字の会社(黒字リストラ)。2026年1〜9月は22社・5,345人に減ったが、6割超は黒字の会社
- 業種は電気機器が最多で、2026年1〜9月は9割が製造業。技術職が働く業種に多い(職種ごとの人数は分からない)
- 転職で賃金が増えた人が多いのは45〜49歳まで。50〜54歳は増えた29.4%、減った42.0%
- 判断基準では、人員整理の希望退職(1年以内に導入、募集3か月以内)は特定受給資格者に当たる。45〜59歳・20年以上で330日(上限で約301万円)。恒常的な早期退職優遇制度は当たらない。決めるのはハローワーク
- 例の計算では、差を大きく動かしたのは再就職後の年収と割増の大きさ。分かれ目は今の76〜101%で、割増が年収1年分増えると約9ポイント下がる。失業給付の区分の差は数十万円
- 私の考え:市場価値があれば受けていい。低ければ会社にしがみつくしかない。市場価値はスカウトで提示される年収で確かめる
- 後悔しにくいのは「資産からの収入>生活費」に届いている人と、社外で仕事を受けられる人脈とスキルがある人(私の考え。保証する線ではない)
10. 参考資料
- 東京商工リサーチ「2025年『早期・希望退職募集』は 1万7,875人 、リーマン・ショック以降で3番目の高水準に」(2026年2月5日)https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202373_1527.html
- 東京商工リサーチ「2025年度の『早期・希望退職』 は2万781人 約7割が『黒字リストラ』、2009年度以降で4番目の高水準」(2026年4月30日)https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202787_1527.html
- 東京商工リサーチ「1-9月の上場企業『早期・希望退職募集』は22社 人数は5,345人、黒字企業が6割を超える」(2026年10月3日)https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203291_1527.html
- 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」表6 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/dl/gaikyou.pdf
- 厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」表8・表10・表14 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r07-gaikyo.pdf
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」退職給付の支給実態(第21表〜第23表)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/dl/gaiyou04.pdf
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html
- 島根労働局(厚生労働省)「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」https://jsite.mhlw.go.jp/shimane-roudoukyoku/content/contents/002603917.pdf
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
- 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」(2026年7月31日)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74837.html
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ」(給付制限)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000951119.pdf
- 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 日本年金機構「国民年金保険料」https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html
- 日本年金機構「会社員である夫が退職しましたが、配偶者である私は国民年金の届出が必要ですか。」https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kokunen/seido/kanyu/haigusha/20120306-11.html
- 日本年金機構「報酬比例部分」https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/hagyo/hoshuhirei.html
- 協会けんぽ「任意継続」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3270/
- 協会けんぽ「令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/news/r07_dec/1259.html
- 協会けんぽ「令和8年度保険料率のお知らせ」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/lp/2026hokenryou/
- 総務省「個人住民税」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html
11. あわせて読む
- 役職定年がみじめになるのは、計算していない人|何歳で外れ、給料と退職金はどう減る(残った場合の年ごとの家計を出す計算機)
- 管理職を降りたい・降格願いの出し方と例文|給料はいくら下がる
- 「システムエンジニアはやめとけ」は統計上どこまで正しいか|45歳で止まる年収
- 40代で「人生どん底」と感じたら、借金・職歴・出口の3つに分解する
- ピーターの法則は間違い?研究では正しかった。原因は「上司の仕事」の定義にある
12. この記事について
| 書いた人 | 中古品の売買を20年近く続けている古物商。会社員の経験はなく、早期退職の募集に応じたことはない |
| 一次情報 | 本人が就職せずに独立したときの判断と、周りで早期退職した知人から聞いたその後(1章の表)。知人の話は本人からの伝聞 |
| 確かめた日 | 2026年10月11日(東京商工リサーチの早期・希望退職の集計、厚生労働省の雇用動向調査・転職者実態調査・就労条件総合調査・基本手当日額の変更、ハローワークの特定受給資格者の範囲と所定給付日数、国税庁の退職所得と所得税の税率、日本年金機構、協会けんぽ、総務省) |
| 計算機 | 給料の手取りは割合で概算。退職金は退職所得控除と2分の1課税で計算。失業給付は月給から賃金日額を概算し、辞めてすぐ手続きした場合の上限に近い日数で、再就職手当は入れていない。年金は報酬比例部分の概算。運用益、昇給、配偶者の収入、住民税の翌年払い、年ごとの資金繰りは入れていない |
| 校閲 | 公開前にChatGPTに反論の形で校閲させ、確かめられた指摘(失業給付の区分はハローワークが判断すること、募集人数と辞めた人数・業種と職種の違い、転職の統計を個人の予想に使わないこと、手取りの割合と失業給付の日数の前提、退職所得控除の例外、後悔の線は保証ではないこと、管理職の仕事も専門の力であること、説明会で確かめる項目、割増の大きさで分かれ目が動くこと、年ごとの資金繰り)を直した |

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