「窓際族」「社内ニート」「追い出し部屋」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。
窓際族・社内ニート・追い出し部屋は、どれも法律の言葉ではありません。この記事では、窓際族を「籍も給料もあるが、仕事をほとんど任されない人」、社内ニートを「勤務中に仕事がほとんどない状態の人」、追い出し部屋を「退職に追い込むために人を集め、仕事を与えない、または程度の低い仕事をさせる部署」という意味で使います。勝ち組かどうかについての私の考えは、「雇用規制が今のまま続き、勉強ができるなら旨味はあるが、規制が変われば窓際の間に何を身に着けたかを問われるので、相応のリスクがある」です。事実としては、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でなければ無効です(労働契約法16条)。解雇が無効なときにお金で解決する制度は検討が続いていますが、導入を決めた資料は見つかりませんでした。転職した人の賃金は、45〜49歳では増えた人(41.1%)が減った人(30.1%)より多く、50〜54歳では減った人(42.0%)が増えた人(29.4%)より多くなります(令和7年雇用動向調査)。仕事を与えないことは、業務上の合理性がなければパワハラの「過小な要求」に当たり得ます。厚生労働省の指針は、管理職を退職させるために誰でもできる仕事をさせることと、嫌がらせのために仕事を与えないことを例に挙げ、意に沿わない人の仕事を外して長期間別室に隔離することも「人間関係からの切り離し」の例に挙げています。退職勧奨は拒否できます。多数回・長期にわたる執拗な勧奨で、市に損害の賠償が命じられた最高裁の事件もあります。社内ニートが何割いるかの公的な統計はありません。窓際に居続けた場合の年数・時間・給与の合計と、年齢ごとの転職者の賃金の変化を出す計算機を9章に置きました。
この記事は民間の会社で働く人の話です。公務員の人事の仕組みは扱っていません。
| 知りたいこと | 答え | 章 |
|---|---|---|
| 窓際族・社内ニート・追い出し部屋の違い | どれも法律の言葉ではない。窓際族は人、社内ニートは状態、追い出し部屋は部署を指して使われる | 2章 |
| 窓際族は勝ち組か | 私の考えは「規制が今のままで勉強ができるなら旨味はあるが、相応のリスクがある」。50代では、転職して賃金が減った人のほうが多い | 4章 |
| 仕事を与えないのはパワハラか | 業務上の合理性がなければ「過小な要求」に当たり得る。能力に応じて業務を一定程度軽くするのは当たらない | 5章 |
| 追い出し部屋は違法か | 名前では決まらない。配置転換の目的、退職勧奨のやり方、仕事の与え方で個別に判断される。退職勧奨は拒否できる | 6章 |
| 空いた時間をどう使うか | 勤務中は職務に専念するのが原則。副業は勤務時間外に、会社の規則に沿って | 7章 |
| 何割いるか | 公的な統計はない。パワハラを受けた人の24.5%が「過小な要求」を受けたと答えている | 8章 |
1. 先に、立場を書きます
私は会社に勤めたことがなく、窓際族や追い出し部屋を身近に見聞きしたこともありません。ですから、この記事の事実は、厚生労働省の指針・調査、判決、国会の会議録で書きます。
このテーマを書くのは、研究職の人の悩みを調べるなかで、知恵袋に「窓際」「社内ニート」「追い出し部屋」の質問が多く、どれもよく読まれていたからです(3章)。前の記事では、研究員の肩書きの違いと、人事異動を拒否できるかを書きました。異動の先で仕事がなくなる、というのが今回の話です。
この記事のために、私は次のように答えました。
| 問い | 私の答え |
|---|---|
| 窓際族は勝ち組か | 「雇用規制が今のまま続き、窓際族として勉強が出来るならまあまあ旨味はあると思う。でも雇用規制が撤廃されたら窓際族やってた時に何を身に着けたのかを次の職場で問われるので詰むと思う。相応にリスクは有る」 |
| 窓際族や追い出し部屋を身近に見聞きしたことは | 「ない」 |
| 読み終えた人に持ち帰ってほしいこと | 「空いた時間を外の買い手づくりに」 |
| 追い出し部屋について | 「窓際族というか追い出し部屋として合法的に辞めさせるコンサルがあるぐらいなので、この手の処置は規模の大きな会社ならやっているところはかなりあるのではないか。」 |
| 勉強に使う時間は | 「仕事中も含む」 |
私の考えには、4章・6章・7章で事実を並べます。考えと事実が食い違うところは、そのまま書きます。
2. 窓際族・社内ニート・追い出し部屋の違い
3つとも法律の言葉ではないので、決まった定義はありません。この記事では、次の意味で使います。
| 言葉 | この記事での使い方 | 指す相手 | 関係する法律・指針の考え方 |
|---|---|---|---|
| 窓際族 | 籍も給料もあるが、仕事をほとんど任されない人。主に中高年を指して使われてきた | 人 | 仕事の与え方によっては、パワハラ指針の「過小な要求」(5章) |
| 社内ニート | 勤務中に仕事がほとんどない状態の人。年齢を問わずに使われる | 状態 | |
| 追い出し部屋 | 退職に追い込むために人を集め、仕事を与えない、または程度の低い仕事をさせる部署 | 部署 | 配置転換の権利の濫用(不当な動機・目的)、退職勧奨の限度、パワハラの「人間関係からの切り離し」「過小な要求」(6章) |
違いをひとことで言うと、窓際族と社内ニートは「仕事がない」ことを指し、追い出し部屋は「辞めさせる目的」があることを指します。仕事がない理由は、景気で仕事が減った、役職を外れた、本人の能力に合わせて仕事を軽くした、などさまざまで、辞めさせる目的があるとは限りません。そもそも役職に就く人は多数派ではなく、50〜54歳で課長級・部長級にいるのは全体で約2割です(課長・部長になれる確率の記事)。子会社への出向や閑職への異動など、左遷と受け取られる人事の扱いは左遷・出向の記事に書きました。
3. 知恵袋で読まれている悩み
知恵袋で「窓際族」「社内ニート」「追い出し部屋」など20語を調べ、関係する質問を読みました。よく読まれていたのは、次の質問です(閲覧数は2026年10月14日時点)。
| 質問の中身(要約) | 閲覧数 |
|---|---|
| 追い出し部屋では、何をさせられるのか | 28,079回 |
| 社内ニートで、暇すぎて辛い | 26,334回 |
| 追い出し部屋に移され、作業服でどぶさらいをさせられている | 24,384回 |
| 40歳手前で窓際になり、一日中座っているだけ | 19,106回 |
| 仕事を与えられないパワハラで、休んでしまった | 10,929回 |
| 40代で役職がなく窓際。周りから下に見られる | 7,584回 |
| 閑職は楽なのに、なぜ嫌がるのか | 6,561回 |
| 働かずに給料をもらえるのは最高では。なぜ悩むのか | 5,115回 |
悩みは3つに分かれます。1つめは、何もしない時間がつらいこと。2つめは、周りから孤立する、見下されること。3つめは、辞めさせられるのではという不安です。反対に、「働かずに給料をもらえるなら最高では」という質問も読まれています。勝ち組かどうかは、4章で考えます。
4. 窓際族は勝ち組か
4-1. 私の考え
「雇用規制が今のまま続き、窓際族として勉強が出来るならまあまあ旨味はあると思う。でも雇用規制が撤廃されたら窓際族やってた時に何を身に着けたのかを次の職場で問われるので詰むと思う。相応にリスクは有る」
この考えの前提は2つです。雇用規制が今のまま続くか。会社を出たとき、窓際の間に身に着けたものが通用するか。この2つを、事実で確かめます。
4-2. 解雇は、理由と相当性がなければ無効
労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。窓際にいるからといって、会社が自由に解雇できるわけではありません。一方で、解雇が必ず無効になるわけでもなく、有効かどうかは事案ごとに判断されます。
4-3. 「規制の撤廃」は決まっていない
雇用規制の撤廃を決めた資料は、見つかりませんでした。議論が続いているのは、解雇が無効とされた場合に、働く人がお金を受け取って労働契約を終えられる制度(解雇無効時の金銭救済制度)です。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2022年4月12日 | 厚生労働省の検討会が、制度を仮に入れる場合の法技術的な論点を整理した報告書を公表 |
| 2025年11月18日 | 労働政策審議会の労働条件分科会で、解雇などに関する調査の結果を報告。有識者の検討会を設ける方向に |
| 2025年12月16日 | 厚生労働大臣が会見で、検討会は「具体的な発足時期等については、現段階では未定」と説明。「安易な解雇を促進しかねない」という審議会委員の意見も承知していると述べた |
制度の導入を決めた資料も、新しい検討会が開かれた資料も、2026年10月14日に私が確かめた範囲では見つかりませんでした。私の考えの「雇用規制が今のまま続き」という前提は、今のところ崩れていません。ただ、議論は続いているので、前提がずっと続くとも言えません。
4-4. 会社を出たときの賃金:50代で逆転する
転職した人の賃金が、前の会社と比べてどうなったかの統計です(令和7(2025)年雇用動向調査、表6)。
| 転職した人の年齢 | 賃金が増えた | 変わらない | 減った |
|---|---|---|---|
| 40〜44歳 | 44.9% | 24.6% | 27.4% |
| 45〜49歳 | 41.1% | 28.0% | 30.1% |
| 50〜54歳 | 29.4% | 26.7% | 42.0% |
| 55〜59歳 | 25.5% | 33.0% | 38.9% |
| 60〜64歳 | 21.1% | 24.2% | 54.3% |
45〜49歳までは、賃金が増えた人のほうが多く、50〜54歳で減った人のほうが多くなります。年ごとの振れもあり、前年(令和6年)の50〜54歳は、増えた人39.0%、減った人28.2%でした。この数字は実際に転職した人だけのもので、応募して決まらなかった人は入っていません。年齢層ごとに別の人を集計したもので、同じ人が年を取ってどう変わるかを追った数字でも、窓際から転職した人だけの数字でもありません。45歳前後で求人の年齢制限があるかや、転職がうまくいかなかった場合の試算は、45歳の転職の記事に書きました。
4-5. 旨味とリスクは、窓際の時間の使い方で決まる
解雇には理由と相当性が要り、規制の撤廃も決まっていないので、今の仕組みでは、窓際にいることだけで会社が自由に辞めさせられるわけではありません。給料が出ていて時間が空くという意味では、旨味はあります。一方で、50代に入ると、転職して賃金が減る人のほうが多くなります。窓際の間に、会社の外でも通用するものを身に着けたかどうかが、出るときの条件を左右すると私は考えます。これが、私の考えの「相応にリスクは有る」の中身です。旨味の裏側には、仕事の勘が鈍る、孤立する、心身の負担が増える、という不利益もあります。3章の知恵袋の悩みは、こちらの側の声です。時間の使い方は7章に書きます。
5. 仕事を与えないのはパワハラか
5-1. パワハラの3つの要素
厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示第5号、令和8年10月1日適用の版)は、職場のパワハラを、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、とし、①から③までの要素をすべて満たすものとしています。客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラに当たりません。
5-2. 「過小な要求」の例
指針は、パワハラの代表的な6つの類型の1つに「過小な要求」を挙げ、「業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと」としています。
| 指針の区分 | 例 |
|---|---|
| 該当すると考えられる例 | 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと |
| 該当しないと考えられる例 | 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること |
窓際や追い出し部屋に近いものは、別の類型「人間関係からの切り離し」にもあります。
| 指針の区分 | 例(人間関係からの切り離し) |
|---|---|
| 該当すると考えられる例 | 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること |
| 該当しないと考えられる例 | 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること 懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること |
大きな分かれ目の1つは「業務上の合理性」があるかです。仕事が少ないことだけで、パワハラになるわけではありません。会社の業務が減った、本人の能力に合わせて一定程度軽くした、といった業務上の理由がある場合は、当たらないことがあります。退職させる目的や、嫌がらせの目的で仕事を取り上げている場合は、該当する例に近くなります。指針は、業務上必要かつ相当な範囲を超えたかを、言動の目的、経緯や状況、業務の内容・性質、言動の態様・頻度・継続性、労働者の心身の状況などを総合的に考慮して判断するとしています。例は限定列挙ではなく、個別の事案で判断されます。
5-3. 会社には相談窓口を設ける義務がある
パワハラの防止のために、会社は方針を明らかにし、相談に応じる体制(相談窓口)を整え、相談があれば事実を確かめて対応する、などの措置を講じなければなりません。大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から義務になりました。相談したことを理由に、解雇などの不利益な取扱いをすることは禁じられています。
5-4. 相談するときに持っていくもの
仕事を与えられなくなった時期、上司からの指示の内容、仕事を求めたときのやりとり、移された部署の人数と業務内容を、日付つきで記録しておきます。相談先は、社内の相談窓口と、都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料)があり、状況に応じて選べます。仕事を外す判断をした部署が社内窓口にも関わっていて話しにくいなら、最初から社外に相談して構いません。指針は、会社に対し、相談者のプライバシーを守ることや、相談したことで不利益な取扱いをされないと周知することを求めています。
数字で見ると、令和5年度の厚生労働省の調査では、過去3年間に勤務先でパワハラを受けたと答えた人は19.3%でした。パワハラを受けた人(1,546人)に内容を聞くと、「過小な要求」を挙げた人は24.5%で、男性のほうが女性より割合が高い結果でした(複数回答)。
6. 追い出し部屋と退職勧奨
6-1. 違法かどうかは、名前では決まらない
「追い出し部屋」は俗な言い方で、この言葉で違法かどうかが決まるわけではありません。判断の材料になるのは、次の4つです。
| 見るところ | 考え方 | 根拠 |
|---|---|---|
| その部署への配置転換 | 業務上の必要がない、不当な動機・目的がある、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる、などの事情があれば、権利の濫用になり得る | 最高裁1986年7月14日判決(東亜ペイント事件) |
| 退職の勧め方 | 退職勧奨は拒否できる。自由な意思決定を妨げるほど過度な勧奨は違法になり得る | 最高裁1980年7月10日判決(下関商業高校事件) |
| 部署に移して仕事を外すこと | 意に沿わない人の仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりする | パワハラ指針の「人間関係からの切り離し」 |
| 部署での仕事の与え方 | 業務上の合理性なく、程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない | パワハラ指針の「過小な要求」 |
配置転換の考え方は、人事異動は拒否できるかの3章に詳しく書きました。
6-2. 退職勧奨は拒否できる
厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、退職勧奨を受けた人は、理由にかかわらず、自由な意思で勧奨による退職を拒否できるとしています。本人の自由な意思決定を妨げたり、名誉感情を害したりする言動による勧奨は、不法行為になる場合があります。
その例として載っているのが、下関商業高校事件です(最高裁第一小法廷、1980年7月10日)。市立高校の教諭2人が、初めから一貫して応じないと表明していたのに、多数回・長期にわたって執拗に勧奨を受けました。一審・二審が賠償の請求を認め、最高裁が市の上告を棄却して、市の賠償が確定しました。「確かめよう労働条件」は判決の骨子として、この勧奨は多数回かつ長期にわたる執拗なもので、許容される限界を越えている、と紹介しています。年度をまたいで、退職するまで続けると言ったことは、際限なく続くのではという心理的な圧迫になるとされています。公立高校の教員の事件ですが、厚生労働省は退職勧奨の裁判例として載せています。何回・何か月を超えたら違法、という一律の線を示したものではありません。
勧奨に応じるかは、自分で決められます。その場で退職届や合意書に署名せず、持ち帰って考えて構いません。応じないと決めたら、そのことをはっきり伝え、面談の日時・相手・言われたことを記録しておきます。断っても勧奨が続く、人格を否定するような言葉がある、不利益な扱いをほのめかされる、といった場合や、すでに署名してしまった場合は、早めに労働局の総合労働相談コーナーなどに相談してください。令和7年度に全国の総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の相談のうち、内容が退職勧奨だったものは26,022件でした(1つの相談に複数の内容があればそれぞれ数える延べ件数で、違法と認められた件数ではありません)。
6-3. 人材会社が退職を勧めることへの決まり
退職させるのを手伝う側については、職業紹介の事業者に向けた国の決まりがあります。厚生労働省は2016年6月1日に職業紹介事業者などの指針を改正し、会社の依頼で社員の再就職を支援する職業紹介事業者(再就職支援事業者)について、次のことを許されない、または適当でないとしました。
- 会社に対して、退職を強要することを促すような物やサービスを提供すること。例として「退職に関するマニュアルの提供」
- 会社に対して、退職を勧めるよう積極的に提案すること。例として、退職勧奨を決めていない会社に、依頼の有無にかかわらず退職勧奨の実施を提案すること
- 社員に対して、退職を強要するような行為や、退職を勧めるような行為を直接すること
厚生労働省は、退職勧奨が自由な意思決定を妨げるほど過度な場合は「退職強要」とみなされる、と説明しています。再就職支援事業者が「積極的に退職者を作り出すようなことは職業紹介事業の趣旨に反します」とも書いています。この指針は職業紹介事業者に向けたものです。
この改正の前、2013年の国会では、大手企業の「追い出し部屋」と人材会社の関わりが繰り返し取り上げられました。2013年10月30日の衆議院厚生労働委員会では、政府参考人が、大企業で退職強要が疑われると報道された事案について厚生労働省が直接ヒアリングをし、啓発指導をしてきたと答えました。田村厚生労働大臣は、追い出し部屋について「我が省の調査では、そこまで極端に不当な行為は行われていない、そこは認められなかった」と答えています。質問した委員は、その限られた調査でも、本来の仕事を取り上げて一室に集める部署を設けた企業があったと指摘しています。大臣の答弁は、報道された事案を対象にした当時の調査の結果で、追い出し部屋が適法だと認めたものでも、どれくらいあるかを示したものでもありません。
6-4. 私の考えと、確かめられたこと
私の考えは、「窓際族というか追い出し部屋として合法的に辞めさせるコンサルがあるぐらいなので、この手の処置は規模の大きな会社ならやっているところはかなりあるのではないか。」です。
確かめられたのは、2013年の国会で追い出し部屋と人材会社の関わりが取り上げられ、2016年に国が再就職支援事業者に向けて、退職強要を促すようなマニュアルの提供や、退職勧奨を決めていない会社への勧奨の提案などを、許されない、または適当でないとする決まりを作ったことです。一方で、国会で大臣は、報道された事案についての厚生労働省の調査では、極端に不当な行為は認められなかったと答えています。どれくらいの会社が追い出し部屋のような扱いをしているかの公的な統計は、見つかりませんでした。「かなりある」かどうかは、私の考えのままです。
会社から退職を勧められて辞めた人は、自己都合ではなく特定受給資格者になり得ます。ただし、以前から常に設けられている早期退職優遇制度などに応募して辞めた場合は当たりません。離職理由はハローワークが判定し、日数が増えるかどうかは年齢と雇用保険の加入期間によります。条件と日数は、人事異動は拒否できるかの6章と計算機にまとめました。辞めるときの退職金の平均(自己都合・会社都合)は退職金の平均の記事にまとめました。退職勧奨に応じるか断るかを、会社都合の失業給付と年代別の期待値で比べる計算機は退職勧奨の記事に置きました。
7. 窓際の時間の使い方
7-1. 私の考え
読み終えた人に持ち帰ってほしいことは、「空いた時間を外の買い手づくりに」です。ここで言う「外の買い手」は、会社の外で、あなたの仕事や知識にお金を払ってくれる相手のことです。転職先、副業の取引先、資格を生かせる先などです。勉強に使う時間については、私は「仕事中も含む」と考えています。ただ、これは私の考えで、勤務中にしてよいことは会社が決めます。転職活動や副業の準備、取引先探しといった会社の外に向けた活動は勤務時間外に、勤務中の勉強は業務として認められたものに限って、と読んでください。
7-2. 勤務中:職務に専念するのが原則
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)は、遵守事項の1つに「勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと」を挙げています。自分の会社の就業規則にも、似た定めがないか確かめてください。仕事がない時間に、仕事と関係のない勉強や副業の作業をしてよいかは、自分の会社の就業規則と上司の指示で決まります。モデル就業規則は、「許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと」も遵守事項に挙げ、これに反することを懲戒の事由の例にしています。会社のパソコンで私的な作業をするのは、この点でも危険です。私の「仕事中も含む」は、会社によっては認められません。
勤務中にできるのは、次のようなことです。
- 上司に仕事を求め、そのやりとりを記録する(5章の相談のときにも使える)
- 仕事に関係する勉強(資格、業界の知識、社内の手順書づくりなど)を、業務として認めてもらえるか上司に相談する
- 社内公募や異動の希望を出す
7-3. 勤務時間外:基本的には自由。副業は規則に沿って
モデル就業規則の解説は、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であることが裁判例で示されている、としています。そのうえで、第70条で「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」とし、会社への届出を前提に、次の場合は会社が禁止・制限できるとしています。
- 労務提供上の支障がある場合
- 企業秘密が漏洩する場合
- 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
- 競業により、企業の利益を害する場合
モデル就業規則は見本で、あなたの会社の規則とは限りません。副業を始める前に、自分の会社の就業規則で、届出か許可か、禁止の範囲を確かめてください。
7-4. 外の買い手づくり
窓際で定時に帰れるようになったなら、その時間は会社の外に向けやすい時間です。たとえば、職務経歴を書き出して転職サイトに登録し、どんな会社から声がかかるかを見る。資格の勉強をする。届け出たうえで副業を小さく始め、お金を払ってくれる相手がいるかを確かめる。4章の統計のとおり、50代に入ると転職して賃金が減る人のほうが多くなるので、早いうちに外の値段を知っておくことに意味があります。
役職を外れたあとの働き方は役職定年の記事に、自分から降りたい人の話は管理職を降りたいときの記事に、早く辞めた人のその後は早期退職のその後の記事に書きました。
8. 社内ニートは何割いるか
窓際族や社内ニートが何割いるかを数えた公的な統計は、見つかりませんでした。近い数字として、次のものがあります。
| 資料 | 数字 | 注意 |
|---|---|---|
| 厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年度) | 過去3年間にパワハラを受けた人は19.3%。そのうち「過小な要求」を挙げた人は24.5%(複数回答) | 本人がパワハラと受け止めた場合だけの数字。仕事がなくても、パワハラと思っていない人は入らない |
| 内閣府「日本経済2020-2021」 | 2020年4〜6月期に、企業の中に抱え込まれた雇用(雇用保蔵)は、製造業で210万人程度、非製造業で440万人程度と推計 | コロナ禍で仕事が急に減った時期の推計。非製造業のうち、宿泊・飲食、生活関連サービス・娯楽、卸売・小売で330万人程度。10〜12月期には製造業80万人程度、非製造業160万人程度まで減った。社内ニートの数ではない |
ハラスメントの調査の2つの数字を掛けると、調査に答えた働く人(20〜64歳の8,000人)のおよそ4.7%が、過去3年間に受けたパワハラの内容として「過小な要求」を挙げた計算になります。本人の回答による参考値で、法的にパワハラと認められた人の割合ではありません。「過小な要求」には、仕事を与えられないことのほか、程度の低い仕事を命じられることも入ります。窓際族や社内ニートの割合でもありません。
9. 計算機:窓際に居続ける場合の試算
今の年齢と定年を入れると、定年までの年数を出します。年収を入れると、今の年収が定年まで続いた場合の給与の合計を出します。勤務中に仕事がない時間と、勤務時間外に増えた時間を入れると、1年と定年までの合計時間を出します。あわせて、今の年齢層と5歳上の年齢層で、転職した人の賃金が増えた割合・減った割合(令和7年雇用動向調査)を出します。年齢層ごとに別の人を集計した数字で、あなたの5年後の予測ではありません。給与の合計と時間は、今の状態が定年まで変わらないと仮定した単純な掛け算で、役職定年、減給、昇給、賞与の増減、異動、途中の退職は入っていません。勤務中に仕事がない時間は、勤務中の時間で、自由に使える時間ではありません。
窓際に居続ける場合の試算
入力した数字は、このページの中で計算に使うだけで、どこにも送られません。
9-1. 例で計算すると
45歳、定年65歳、年収600万円、勤務中に仕事がない時間が1日4時間、勤務時間外に増えた時間が1日1.5時間、年間の勤務日数が240日の人の場合です。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 定年まで | 20年 |
| 給与の合計 | 12,000万円(年収と雇用が定年まで変わらないと仮定した場合) |
| 勤務中に仕事がない時間 | 1年で960時間、定年までで19,200時間 |
| 勤務時間外に増えた時間 | 1年で360時間、定年までで7,200時間 |
| 転職した人の賃金(45〜49歳) | 増えた41.1%、減った30.1% |
| 転職した人の賃金(5歳上の50〜54歳) | 増えた29.4%、減った42.0% |
勤務時間外に増えた1日1.5時間でも、今の状態が続けば1年で360時間になります。実際に使える時間は、通勤や家庭の事情で変わります。勤務中の時間を何に使えるかは会社の規則しだいですが、勤務時間外の時間は、副業の規則を守れば自分で使い道を決められます。
10. よくある質問
窓際族は、何をしているのですか?
窓際族が何をしているかを調べた公的な調査は、見つかりませんでした。知恵袋では、「一日中座っているだけ」「作業服でどぶさらいをさせられている」という質問がよく読まれています。勤務中は職務に専念するのが原則なので、仕事がないときは上司に仕事を求め、そのやりとりを記録しておくのが基本です。
窓際族と社内ニートの違いは?
どちらも法律の言葉ではありません。この記事では、窓際族を「仕事をほとんど任されない人」、社内ニートを「勤務中に仕事がほとんどない状態」として使っています。窓際族は主に中高年を指して使われてきた言葉で、社内ニートは年齢を問わずに使われます。
窓際族は勝ち組ですか?
私の考えは、「雇用規制が今のまま続き、勉強ができるなら旨味はあるが、相応のリスクがある」です。解雇は労働契約法16条で理由と相当性が求められ、規制の撤廃も決まっていません。一方で、50〜54歳では転職して賃金が減った人(42.0%)が増えた人(29.4%)より多くなります。
窓際族になる理由は?
理由を数えた公的な統計は、見つかりませんでした。考えられるのは、景気や事業の縮小で会社の仕事が減る、役職定年などで役職を外れる、退職させる目的で仕事を外す(パワハラ指針の該当例)、といった場合です。どれが多いかは分かりません。
窓際族や社内ニートになりやすい人は?
なりやすい人を示す公的な統計は、見つかりませんでした。令和5年度の厚生労働省の調査では、パワハラを受けた人のうち「過小な要求」を挙げた割合は、男性のほうが女性より高い結果でした。
社内ニートの時間の潰し方は?
勤務中は職務に専念するのが原則なので、時間を潰すより、仕事を求めて記録を残すほうが、あとで相談するときに役立ちます。仕事に関係する勉強を業務として認めてもらえるかを、上司に相談する方法もあります。勤務時間外は基本的に自由なので、外の買い手づくりに使えます(7章)。
窓際族・社内ニートは何割いますか?
公的な統計はありません。令和5年度の調査では、過去3年間にパワハラを受けた人が19.3%で、そのうち「過小な要求」を挙げた人が24.5%でした。これは窓際族の割合ではありません。
窓際族は、クビになりますか?
窓際にいるからといって、会社が自由に解雇できるわけではありません。解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でなければ無効です(労働契約法16条)。退職勧奨は拒否できます。ただし、解雇が有効かどうかは事案ごとに判断されます。
11. まとめ
- 窓際族・社内ニート・追い出し部屋は、どれも法律の言葉ではない。窓際族と社内ニートは「仕事がない」ことを、追い出し部屋は「辞めさせる目的」があることを指して使われる。
- 私の考えは、窓際族は「雇用規制が今のまま続き、勉強ができるなら旨味はあるが、相応のリスクがある」。解雇には理由と相当性が要り、規制の撤廃は決まっていない。50代では、転職して賃金が減った人のほうが多い。
- 仕事を与えないことは、業務上の合理性がなければパワハラの「過小な要求」に当たり得る。意に沿わない人の仕事を外して長期間別室に隔離することは「人間関係からの切り離し」の例。能力に応じた一定程度の軽減は当たらない。記録を残し、社内の窓口か労働局に相談できる。
- 退職勧奨は拒否できる。多数回・長期にわたる執拗な勧奨で、損害の賠償が命じられた事件がある。再就職支援事業者が退職強要を促すようなマニュアルを提供することなどは、2016年の指針改正で許されない、または適当でないとされた。
- 追い出し部屋が「かなりある」かは、公的な統計がなく確かめられない。大臣は2013年に、報道された事案についての省の調査では極端に不当な行為は認められなかったと答えている。
- 勤務中は職務に専念が原則で、会社の外に向けた活動は勤務時間外に。勤務時間外は基本的に自由で、副業は会社の規則に沿って。空いた時間を、外の買い手づくりに。
12. 出典
- e-Gov法令検索「労働契約法」16条
- 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和8年10月1日適用】」
- 厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」
- 厚生労働省「「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します」(令和5年度、報告書の図表137・140、結果概要)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」退職勧奨(裁判例)(下関商業高校事件、最高裁第一小法廷 昭和55年7月10日判決)
- 最高裁判所 昭和61年7月14日 第二小法廷判決(昭和59(オ)1318、東亜ペイント事件)「裁判例結果詳細」
- 厚生労働省「職業紹介事業者による再就職支援を受けている労働者の皆さまへ ~厚生労働大臣の定める指針が改正されました~」
- 国会会議録検索システム「第185回国会 衆議院 厚生労働委員会 第1号(2013年10月30日)」発言180〜185(政府参考人と田村国務大臣の答弁)
- 厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」
- 厚生労働省「モデル就業規則について」(モデル就業規則 令和7年12月版、遵守事項、第70条とその解説)
- 厚生労働省「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」(報告書 2022年4月12日)、「第205回労働政策審議会労働条件分科会(資料)」(2025年11月18日)、「上野大臣会見概要(令和7年12月16日)」
- 厚生労働省「令和7(2025)年雇用動向調査結果の概況」表6
- 内閣府「日本経済2020-2021 第2章第3節 雇用確保に向けた取組と課題」
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
- Yahoo!知恵袋(閲覧数は2026年10月14日時点、3章の表の各質問)

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