価格弾力性は、「値段を変えたときに、売れる数が、どれだけ変わるか」を表す数字です。正しくは「需要の価格弾力性」と言います。値段を10%下げて、売れる数が20%増えるなら、弾力性は2。5%しか増えないなら、0.5です。
需要の価格弾力性 = 売れる数の変化率 ÷ 値段の変化率
1より大きければ、「弾力的」。値段に敏感な商品です。1より小さければ、「非弾力的」。値段を動かしても、売れる数は、あまり変わりません。
私は、中古品を20年、売ってきました。その経験から言うと、新品と中古品では、この数字が、まるで、ちがいます。そして、ちがうから、値下げのやり方も、ちがいます。私は、値段を少しずつ下げて、利益を残そうとするやり方を、取りません。反応が悪ければ、すぐに、1円スタートのオークションに出します。この記事では、その理由を書きます。
1. 価格弾力性とは
| 弾力的(1より大きい) | 非弾力的(1より小さい) | |
|---|---|---|
| 値下げしたとき | 売れる数が、大きく増える。売上は、増える | 売れる数は、あまり増えない。売上は、へる |
| 値上げしたとき | 売れる数が、大きくへる。売上は、へる | 売れる数は、あまりへらない。売上は、増える |
| どんな商品か | 代わりが、たくさんある。くらべて買える | 代わりが、ない。それでなければ、だめ |
弾力性を決めるのは、おもに、次の4つです。
- 代わりになる物が、あるか。いちばん大きいのは、これです。同じ物がどこでも買えるなら、人は、安いほうで買います
- なくては困る物か。薬や、塩は、値段が上がっても、買います
- 財布にしめる割合。100円の物が110円になっても、気にしません。100万円の物が110万円になると、考えます
- 時間。すぐには、買い方を変えられなくても、長い目では、代わりを見つけます
2. 新品は、弾力的。中古のニッチな物は、非弾力的
2-1. 新品
新品は、同じ型番の物が、いくつもの店で、売られています。買う人は、値段を、かんたんに、くらべられます。Amazonなら、同じ商品のページに、売り手が、値段の順に、並びます。
ここでは、弾力性は、とても大きくなります。ほかの売り手より10円高いだけで、売れる数が、ゼロになることが、あります。逆に、いちばん安くすれば、注文が、集中します。だから、新品を売る人たちは、値段を自動で下げる道具を使って、1円きざみの競争をします。ツールの話は、Amazonの価格改定ツールは要るのかに書きました。
弾力性が大きい市場では、値段を決めているのは、自分では、ありません。いちばん安い売り手です。限界利益は、競争でけずられ続けます。
2-2. 中古の、ニッチな物
私が売ってきたのは、こちらです。ランキングのつかない古書。直したブランド品の財布。古いゲーム機。
こういう物は、そもそも、探している人が、少ないです。そして、同じ状態の、同じ物は、ほかに、ありません。買う人は、くらべる相手が、いません。
ここでは、弾力性は、小さくなります。欲しい人は、少し高くても、買います。欲しくない人は、半額にしても、買いません。値段を10%下げても、売れる数は、ほとんど変わりません。探している人の数が、値段では、増えないからです。
| 新品 | 中古のニッチな物 | |
|---|---|---|
| 代わりになる物 | 同じ型番が、いくらでもある | 同じ状態の同じ物は、ない |
| 買う人の数 | 多い | 少ない |
| 弾力性 | 大きい | 小さい |
| 値下げの効き目 | すぐ効く | ほとんど効かない |
| 値段を決めているのは | いちばん安い売り手 | 自分と、その物を探している、数少ない買い手 |
3. だから私は、値段を、少しずつは、下げない
売れ残った商品を、どうするか。よく言われるやり方は、こうです。1週間ごとに、5%ずつ、値段を下げていく。どこかで、買い手がつく。少しでも、利益を残せる。
これは、弾力性が大きい商品の、やり方です。値下げに、買う人が反応するから、成り立ちます。
弾力性が小さい商品では、成り立ちません。5%下げても、買う人は、増えません。また5%下げても、増えません。そのあいだ、時間だけが、すぎていきます。仕入れに使ったお金は、在庫の形で、止まったままです。
私のやり方は、こうです。
- 出品して、最初の反応を、数字で見る。見られた回数、「いいね」の数、質問
- 反応が悪ければ、「この値段で、この物を探している人は、いま、いない」と判断する
- 値段を少しずつ下げることは、しない。すぐに、1円スタートのオークションに出す
- 赤字でも、現金にもどす。そのお金で、次を仕入れる
なぜ、1円スタートなのか。弾力性が小さい商品は、「いくらなら売れるか」が、売る側には、分かりません。くらべる相手がいないので、相場が、ないからです。オークションは、その値段を、買う人たちに、決めてもらう仕組みです。探している人が2人いれば、競り合って、値段は上がります。1人なら、安く終わります。どちらにしても、その日に、決着がつきます。
少しずつ下げて、少しでも利益を残そうとするのは、気持ちとしては、分かります。でも、それで守ろうとしているのは、もう払ってしまった仕入れ値です。考え方は、コンコルド効果と、せどりの損切りに書きました。止まったお金と時間で、できたはずのことについては、機会費用の記事にあります。
4. 値上げが、買う人を増やすこともある
弾力性は、ふつう、マイナスの向きに働きます。値段が上がれば、売れる数は、へる。ところが、ブランド品では、反対のことが、起きました。
私がブランド品を扱っていたころ、シャネルは、定価の値上げを、くり返していました。すると、中古の相場が、毎週のように、動きました。上に、です。
起きていたことは、2つあります。1つは、新品が高くなったぶん、中古に、買う人が流れたこと。新品の値段が上がると、代わりになる中古の需要が、増える。これを、「交差弾力性」と言います。もう1つは、値段が高いこと自体が、欲しさを強くしたこと。こちらは、ヴェブレン効果の記事に、くわしく書きました。
相場が上に動いているときは、値下げどころか、先に相場を読んで、高く出しても、売れました。弾力性は、商品ごとに、時期ごとに、ちがいます。「値下げすれば売れる」は、いつも正しいわけでは、ありません。
5. 自分の商品の弾力性を、見分ける
- 同じ物を、ほかで、すぐ買えるか。買えるなら、弾力的です。値段の競争に、なります
- 買う人は、値段で、くらべているか。それとも、物を、探しているか。探している人は、見つけたときに、買います
- 値下げしたとき、見られる回数は、増えたか。増えないなら、値段が原因では、ありません。探している人が、いないだけです
- 値下げで反応が変わらないなら、少しずつ下げ続けない。写真、説明、売る場所を変えるか、オークションで、決着をつけます
そして、これから何を売るかを選べるなら、弾力性の小さいほうを、選びます。値段の競争から、はなれられるからです。代わりがきく物は、値段が下がります。代わりがきかない物を、作るか、見つけるか、直して生み出すか。私が、物をそのまま流す売り方から、直して売る売り方に移ったのは、このためです。だれでも行ける場所が、やせていく話は、共有地の悲劇に書きました。
6. まとめ
- 価格弾力性は、値段を変えたときに売れる数がどれだけ変わるか。売れる数の変化率 ÷ 値段の変化率。1より大きければ弾力的、小さければ非弾力的
- いちばん効くのは、代わりになる物があるかどうか
- 新品は、同じ型番がどこでも買えるので、弾力的。10円の差で、売れる数がゼロになる。値段を決めているのは、いちばん安い売り手
- 中古のニッチな物は、非弾力的。欲しい人は少し高くても買い、欲しくない人は半額でも買わない。値下げは、ほとんど効かない
- だから私は、値段を少しずつは下げない。最初の反応が悪ければ、すぐに1円スタートのオークションに出して、値段を買う人たちに決めてもらい、現金にもどす
- シャネルの値上げでは、中古の相場が上に動いた。新品の値上げが、代わりになる中古の需要を増やした
- 選べるなら、弾力性の小さい商品を扱う。値段の競争から、はなれられる

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