「退職理由 書き方」「退職理由 伝え方」「退職 引き止め」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。
厚生労働省の令和7年雇用動向調査で、転職した人が前の会社を辞めた理由を見ると、「その他」の2つを除いていちばん多いのは、男が「定年・契約期間の満了」16.1%、次が「給料等収入が少なかった」9.9%、女が「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.9%、次が「職場の人間関係が好ましくなかった」11.5%です。40〜44歳の男では「能力・個性・資格を生かせなかった」11.0%がいちばん多くなります。会社に伝える理由は、自己都合なら退職届に「一身上の都合」と書くのが一般的で、会社側の事情で辞めざるをえない場合は、退職に至った事実を具体的に書くことを福岡県が勧めています。期間の定めのない雇用(正社員など)は、民法627条で申し入れてから2週間で終わり、会社の承諾は要りません。引き止められても、暴行や脅迫などで働かせ続けることは労働基準法5条で禁じられ、辞めたら違約金を払うといった約束も16条で禁じられています。本音の理由がハラスメント、長時間の残業、賃金の未払い、退職勧奨などに当たると、失業保険で会社都合と同じ扱い(特定受給資格者)になりえて、給付制限がなくなり日数も増えます。区分を最後に決めるのはハローワークなので、事実の分かる資料を残しておきます。履歴書は「一身上の都合により退職」などと簡潔に書き、面接では前の会社の悪口を言わず、客観的に短く答えるよう、厚生労働省とハローワークの資料は勧めています。年齢と男女から自分の理由が統計で何番目か、理由で変わる失業保険の区分、会社・退職届・履歴書・面接で使う文面、上司に伝える日を出す計算機を9章に置きました。
| 知りたいこと | 答え | 章 |
|---|---|---|
| 退職理由のランキング | 男は定年・契約満了、給料、人間関係。女は労働条件、人間関係、定年・契約満了(その他を除く) | 2章 |
| 退職届の理由の書き方 | 自己都合なら「一身上の都合」。会社側の事情なら事実を具体的に | 3章 |
| 本音を言うべきか | 民法の申入れに理由は要らない。ただし理由によっては失業保険の区分が変わる | 3章・6章 |
| 伝えるタイミング | 法律は2週間前。就業規則の期限、引き継ぎ、有給、引き止めで延びる日数から逆算する | 4章 |
| 引き止められたとき | 不当な手段で働かせるのは犯罪。違約金の約束は禁止。会社の承諾がなくても2週間で終わる | 5章 |
| 失業保険への影響 | ハラスメント・長時間残業・未払い・退職勧奨などは会社都合と同じ扱いになりうる。病気・介護などは正当な理由のある自己都合 | 6章 |
| 面接・履歴書 | 履歴書は簡潔に。面接は悪口を言わず、客観的に短く、履歴書と食い違わないように | 7章 |
| 精神的に限界・体調不良 | 病気で続けられないなら正当な理由のある自己都合になりうる(医師の診断書など) | 8章 |
| 自分の場合 | 統計の順位・失業保険の区分・文面・伝える日を計算 | 9章 |
1. 先に、この記事の数字について
退職理由の統計は、厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」(2026年8月31日公表)の表5「転職入職者が前職を辞めた理由別割合」から取りました。2025年の1年間に、5人以上の事業所へ転職して入った人(入職前1年間に仕事をしていた人)が、前の会社を辞めた理由を本人が答えたもので、辞めて転職していない人や自営に移った人は入っていません。法律の決まりは民法・労働基準法・雇用保険法などの条文(e-Gov法令検索、2026年10月23日時点)、失業保険の区分はハローワーク・厚生労働省の資料、退職届や履歴書の書き方は福岡県・厚生労働省・ハローワークの資料から取っています。この記事は、筆者の転職や退職の経験ではなく、公式の資料と計算で書いています。
2. 退職理由のランキング(厚生労働省の統計)
2-1. 男女の全体と40代
表5の13の理由を、男女の全体と40代で並べました。各行の合計は理由不詳を含めて100%です。「-」は該当する数値がないことを示します。
| 前の会社を辞めた理由 | 男 全体 | 女 全体 | 男 40〜44歳 | 男 45〜49歳 | 女 40〜44歳 | 女 45〜49歳 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 仕事の内容に興味を持てなかった | 5.2% | 4.6% | 7.9% | 4.8% | 5.8% | 7.8% |
| 能力・個性・資格を生かせなかった | 5.2% | 3.9% | 11.0% | 6.5% | 4.6% | 3.9% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 8.9% | 11.5% | 7.3% | 13.3% | 15.4% | 11.2% |
| 会社の将来が不安だった | 6.9% | 4.3% | 10.7% | 5.8% | 3.8% | 6.6% |
| 給料等収入が少なかった | 9.9% | 8.6% | 9.5% | 11.5% | 11.4% | 10.1% |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 8.5% | 12.9% | 9.6% | 7.5% | 8.8% | 13.1% |
| 結婚 | 0.5% | 1.4% | 0.2% | 0.1% | 2.2% | – |
| 出産・育児 | 0.5% | 1.6% | 0.5% | 0.7% | 1.9% | 0.6% |
| 介護・看護 | 0.8% | 1.0% | 0.5% | 1.2% | 0.1% | 0.3% |
| その他の個人的理由 | 16.8% | 23.8% | 13.8% | 18.3% | 23.1% | 23.8% |
| 定年・契約期間の満了 | 16.1% | 9.8% | 5.8% | 6.3% | 10.0% | 7.6% |
| 会社都合 | 5.3% | 6.2% | 5.4% | 7.9% | 6.3% | 7.7% |
| その他の理由(出向等を含む) | 12.1% | 7.8% | 11.0% | 15.5% | 5.7% | 6.2% |
厚生労働省の概況は、男は「その他の個人的理由」16.8%と「その他の理由(出向等を含む)」12.1%を除くと「定年・契約期間の満了」16.1%が最も多く、次いで「給料等収入が少なかった」9.9%、女は「その他の個人的理由」23.8%を除くと「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.9%が最も多く、次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」11.5%としています。前の年からいちばん上がったのは、男が「定年・契約期間の満了」(2.0ポイント)、女が「仕事の内容に興味を持てなかった」(1.0ポイント)です。
2-2. 年齢ごとの上位3つ
「その他の個人的理由」「その他の理由(出向等を含む)」を除いて、年齢ごとに多い順に3つ並べました(計算)。
| 年齢 | 男の上位3つ | 女の上位3つ |
|---|---|---|
| 全体 | 定年・契約満了 16.1%、給料 9.9%、人間関係 8.9% | 労働条件 12.9%、人間関係 11.5%、定年・契約満了 9.8% |
| 19歳以下 | 人間関係 16.3%、給料 10.6%、仕事が合わない 8.0% | 労働条件 28.3%、給料 17.1%、人間関係 11.5% |
| 20〜24歳 | 給料 13.8%、労働条件 12.4%、人間関係 10.3% | 労働条件 18.8%、人間関係 10.3%、定年・契約満了 6.5% |
| 25〜29歳 | 給料 13.1%、将来が不安 11.0%、人間関係 10.7% | 労働条件 14.1%、給料 13.4%、人間関係 10.5% |
| 30〜34歳 | 給料 13.4%、労働条件 13.0%、将来が不安 10.0% | 給料 12.2%、人間関係 10.6%、労働条件 10.1% |
| 35〜39歳 | 将来が不安 12.7%、給料 11.2%、労働条件 11.1% | 労働条件 13.7%、給料 8.5%、人間関係 8.3% |
| 40〜44歳 | 能力を生かせない 11.0%、将来が不安 10.7%、労働条件 9.6% | 人間関係 15.4%、給料 11.4%、定年・契約満了 10.0% |
| 45〜49歳 | 人間関係 13.3%、給料 11.5%、会社都合 7.9% | 労働条件 13.1%、人間関係 11.2%、給料 10.1% |
| 50〜54歳 | 給料 11.6%、将来が不安 9.2%、人間関係 7.9% | 労働条件 13.2%、会社都合 9.0%、人間関係 8.9% |
| 55〜59歳 | 人間関係 14.4%、定年・契約満了 9.5%、労働条件 7.0% | 人間関係 16.5%、労働条件 13.5%、会社都合 10.9% |
| 60〜64歳 | 定年・契約満了 57.8%、人間関係 7.2%、会社都合 6.0% | 定年・契約満了 34.7%、人間関係 11.9%、会社都合 8.3% |
| 65歳以上 | 定年・契約満了 52.5%、会社都合 7.9%、労働条件 4.1% | 定年・契約満了 28.5%、人間関係 14.8%、会社都合 10.3% |
20代・30代の男は「給料」が上位に来て、40〜44歳では「能力・個性・資格を生かせなかった」が1位、45〜49歳では「人間関係」が1位です。60歳以上は男女とも「定年・契約期間の満了」が1位で、男は過半数(60〜64歳57.8%、65歳以上52.5%)、女は3割前後(34.7%、28.5%)です。女は多くの年齢で「労働条件」と「人間関係」が上位です。40代で辞めた人の理由と、辞めた後に貯金が何か月もつかは40代で仕事を辞めたいときの記事に書いています。
2-3. この統計の読み方の注意
- 答えているのは転職した本人で、会社が書いた離職理由ではありません。
- どの年齢でも「その他の個人的理由」がいちばん多い行が多く、中身は分かりません。厚生労働省の概況も、これを除いて「最も多い」理由を挙げています。
- 統計の区分(「給料等収入が少なかった」など)と、失業保険の区分(自己都合・会社都合など、6章)は別のものです。統計の区分から失業保険の区分は決まりません。
労働時間や残業代への不満が理由なら、辞める前に払われるべき残業代を計算しておくと、未払いがあるかが分かります。計算方法と未払い分の時効(3年)は残業代の計算方法の記事にまとめました。
3. 会社に伝える退職理由と、退職届の書き方
3-1. 退職届の理由は「一身上の都合」が一般的
福岡県の「仕事を辞めるときには」は、自己都合の場合は退職届に「一身上の都合のため」と書くのが一般的とし、自己都合以外の事情で退職に追い込まれた場合は、退職に至った事実を具体的に書くことを勧めています。同じページは、退職届に「特に定められた様式はありません」とも書いています。会社に書式があればそれに従います。退職届の書き方の全体は退職届の書き方と出す時期の記事に書いています。
3-2. 口頭でもよいが、書面が望ましい
東京都の『ポケット労働法2026』は、労働者からの辞める意思表示は口頭で足り、使用者の承諾がなくても労働契約は終了するとしたうえで、書面で退職届を出すなどの手続きを踏むほうが望ましいとしています。
3-3. 本音の理由を言う必要はあるか
民法627条1項は、期間の定めのない雇用について、当事者は「いつでも」解約の申入れができ、申入れの日から2週間で終わると定めていて、理由を条件にしていません。一方で、本音の理由がハラスメントや長時間の残業、賃金の未払いなどに当たると、失業保険の区分が変わることがあります(6章)。その場合は、福岡県の勧めのとおり事実を具体的に書き、事実の分かる資料を手元に残しておくと、ハローワークでの説明に使えます。
3-4. 「辞めます」と「辞めたいのですが」は意味が違う
「2026年12月31日をもって退職いたします」のように辞めることを確定して伝えるのは、辞職の意思表示です。会社に届いた後は撤回できず、期間の定めのない雇用なら申し入れから2週間で終わります。「退職させていただきたく、ご相談させてください」のように日にちを相談する伝え方は、合意退職の申込み(退職願)と受け取られることがあり、会社が承諾するまでは撤回できる一方、退職日は会社との話し合いで決まります。どちらに当たるかは言葉だけでなく中身と事情で判断されます。違いは退職届と退職願の違いの章にも書いています。
4. 伝えるタイミング:何日前に言うか
期間の定めのない雇用は、申し入れてから2週間で終わります(民法627条1項。申し入れた日は数えないので、退職日の14日前までに会社に届けば足ります)。就業規則で「1か月前」などと決めている会社もあり、民法と就業規則のどちらが優先するかは労働局の説明でも分かれています。もめずに辞めるなら、就業規則の期限が目安です。
実際に上司に伝える日は、この期限だけでなく、残っている有給を使い切る日数、引き継ぎに要る出勤日、引き止めの話し合いなどに見込む余裕の日数を足して、さかのぼって決めます。余裕の日数は法律で決まった期間ではありません。有給は、原則として取る日を前もって指定して請求します。会社は退職日より後に時季を変えられないので、退職日までの日を請求すれば、変えられる他の日がない限り請求どおりになります。退職日までに他の日があれば、事業の正常な運営を妨げる場合に時季を変えられることもあります(有給消化の記事)。9章の計算機の初期値(12月31日に退職、就業規則1か月前、有給10日、引き継ぎ10日、余裕14日)では、上司に伝える日の推奨の目安は11月16日です。法的な申出の期限は、民法なら12月17日、就業規則なら11月30日のほうです。
期間の定めのある契約(契約社員など)の途中で辞めるには、原則として「やむを得ない事由」が要ります(民法628条)。1年を超える契約で1年たっていれば、労働基準法137条でいつでも辞められます(高度の専門的知識等を持つ人や満60歳以上の人の契約など、14条1項各号の契約は除きます)。
5. 引き止められたとき・言い出せないとき
5-1. 法律の決まり
- 労働基準法5条:暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段で、労働者の意思に反して労働を強制してはならない(罰則は1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金、117条)。
- 労働基準法16条:労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしてはならない(罰則は119条)。
- 民法627条1項:期間の定めのない雇用は、申入れから2週間で終わる。
- 労働基準法15条2項:明示された労働条件が事実と違う場合、労働者は即時に労働契約を解除できる。
5-2. 公式の説明
東京都の資料「仕事を辞めさせてもらえない」は、不当な手段・方法で働かせ続けることは犯罪であり、根拠のない損害賠償や告訴をほのめかすことも不当な引き止めだとしています。期間の定めのない雇用なら、予告期間を守って辞めることで法的な責任が生じることはない、とも書いています。茨城労働局は、後任が決まるまで退職を認めないということはできないとしています。広島県の労働相談Q&Aは、会社が退職届を受け取らない場合に内容証明郵便で送る方法もあるが、最後の手段と考えたほうがよい、としています。
損害賠償については、栃木労働局の解説が、16条が禁じているのは金額を前もって決めることで、実際に労働者の責任で生じた損害の賠償を請求することまでは禁じていない、としています。東京都の資料は、期間の定めのある契約の途中で一方的に辞めた場合に賠償の責任が生じることはあるが、その額は実際に会社が失った利益にとどまるとしています。
5-3. 自己都合退職に関する相談は延べ3.8万件
都道府県労働局の総合労働相談のうち、民事上の個別労働紛争の相談の内容(延べ件数。1回の相談が複数の内容にまたがれば内容ごとに数える)は次のとおりです(厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」、2026年7月7日公表)。
| 相談の内容 | 令和6年度 | 令和7年度 |
|---|---|---|
| その他の労働条件 | 54,481件 | 59,647件 |
| いじめ・嫌がらせ | 54,987件 | 55,614件 |
| 自己都合退職 | 41,502件 | 38,386件 |
| その他 | 32,166件 | 34,209件 |
| 労働条件の引き下げ | 30,833件 | 33,368件 |
| 解雇 | 32,059件 | 32,651件 |
| 退職勧奨 | 25,604件 | 26,022件 |
| 雇止め | 15,602件 | 15,775件 |
厚生労働省は「いじめ・嫌がらせ」を14年連続の最多としています。「その他の労働条件」「その他」を除いて並べると、自己都合退職に関する相談は2番目に多い内容です(計算)。この件数には、引き止め以外の自己都合退職の相談も含まれます。辞めさせてもらえない、退職届を受け取ってもらえないといったときは、各労働局の総合労働相談コーナーなどに相談できます。退職を勧められて辞める場合は退職勧奨の記事に書いています。
言い出せないまま退職代行を考えている場合の、自分で辞められるか(民法627条の2週間)と、民間会社・労働組合・弁護士でできることの違いは退職代行の記事にまとめました。
6. 退職理由で変わる失業保険の区分
6-1. 区分の決まり方
会社は離職票-2の離職理由の欄で主な理由を選び、本人は会社が書いた理由を確かめて、異議があるかを示します。ハローワークは、会社の主張だけで判定することはなく、最後はハローワークが判定します。異議があるときは、離職の理由が分かる資料を持っていきます。判定に不服なら、知った日の翌日から3か月以内に雇用保険審査官に審査請求ができます。離職票の受け取り方と確かめ方は離職票の記事に書いています。
6-2. 会社都合と同じ扱いになる理由(特定受給資格者)
| 本人の退職理由 | 基準(要旨) | 持っていく資料の例 |
|---|---|---|
| ハラスメント | 上司、同僚等からの故意の排斥または著しい冷遇もしくは嫌がらせを受けた。または、セクハラなどを会社が知りながら必要な措置を講じなかった。業務上の注意や叱責だけでは当たらない。細かい運用(会社に相談してからの期間など)はハローワークで確かめる | 配置転換の辞令(写)、就業規則、労働契約書、賃金台帳など |
| 長時間の残業 | 離職の直前6か月のうち、時間外労働と休日労働が45時間を超えた月が連続3か月、100時間以上の月がある、連続2か月以上の平均が80時間を超える | タイムカード、賃金台帳、給与明細書など |
| 賃金の低下 | 85%未満に下がった(予見できなかった場合) | 労働契約書、就業規則、賃金規定、賃金低下の通知書など |
| 賃金の未払い | 賃金の3分の1を超える額が支払期日までに払われなかった | 労働契約書、就業規則、賃金規定、賃金台帳、給与明細書、預金通帳など |
| 労働条件が違った | 採用時に明示された労働条件が事実と著しく違った(就職後1年以内) | 労働契約書、就業規則など |
| 退職勧奨 | 事業主から直接・間接に退職を勧められた(いつでも使える早期退職優遇制度への応募は除く) | 希望退職の募集なら希望退職募集要綱など |
| 3年以上の雇止め | 期間の定めのある契約が1回以上更新され、続けて3年以上雇われていて、本人が更新を希望したのに更新されなかった | 労働契約書、雇入通知書、就業規則、契約更新の通知書、タイムカードなど |
| 更新が明示されていた雇止め | 雇入通知書などで更新・延長が明示されていて、本人が更新を希望したのに更新されなかった(3年以上の雇止めを除く) | 労働契約書、雇入通知書、就業規則など |
基準はハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」と厚生労働省の業務取扱要領(R8.4)から、資料の例は厚生労働省のパンフレット(2014年4月版)から取りました。今の版のパンフレットは見つけられず、資料の一覧が今も同じかは確かめられていません。賃金の未払いが続いた月数などの細かい条件も、今の要領の中では確かめられませんでした。
6-3. 正当な理由のある自己都合(特定理由離職者)
| 本人の退職理由 | 基準(要旨) | 持っていく資料の例 |
|---|---|---|
| 病気・けが・心身の障害 | 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退などで、今の業務(通勤を含む)を続けるのが難しい | 医師の診断書など |
| 家族の介護・看護 | 家庭の事情が急変した(看護がおおむね30日を超える見込み) | 扶養控除等申告書、健康保険証、医師の診断書など |
| 妊娠・出産・育児 | 妊娠・出産・育児などで離職し、受給期間の延長を受けた | 受給期間延長通知書など |
| 通勤が難しくなった | 結婚に伴う転居、配偶者の転勤、事業所の移転などで通勤が不可能か困難に(往復の所要時間が概ね4時間以上など) | 通勤経路の時刻表など。住民票の写し、保育園の入園許可書、転勤辞令など |
| 雇止め(更新の確約なし) | 有期の契約が満了し、本人は更新を望んだが更新されなかった(3年以上の雇止めや、更新が明示されていた雇止めは6-2の特定受給資格者) | ハローワークで確かめる |
6-4. 区分で変わること
| 区分 | 給付制限 | 受給資格 | 所定給付日数 |
|---|---|---|---|
| 正当な理由のない自己都合(給料・人間関係・仕事が合わないなど、6-2・6-3に当たらないもの) | 待期7日の後に原則1か月(2025年4月1日以降の離職。5年間に2回以上、自己都合で受給資格の決定を受けていた人は3か月)。一定の教育訓練等を離職日前1年以内に受けたか離職後に受けると解除される制度がある(2025年4月から) | 離職前2年に12か月以上 | 90〜150日 |
| 正当な理由のある自己都合(病気・介護など) | なし | 離職前1年に6か月以上でもよい | 90〜150日(雇止めの特例や就職困難者に当たらなければ一般の日数) |
| 雇止め(更新の確約なし) | なし | 離職前1年に6か月以上でもよい | 離職日が2027年3月31日までなら特定受給資格者と同じ |
| 特定受給資格者(ハラスメント・長時間残業・退職勧奨・倒産・解雇・3年以上や更新明示の雇止めなど) | なし | 離職前1年に6か月以上でもよい | 90〜330日(年齢と加入期間) |
たとえば42歳で雇用保険に12年入っていた人は、自己都合なら120日、特定受給資格者なら240日です(計算)。受給資格の「被保険者期間」(離職前2年または1年の中で、賃金の支払の基礎になった日が11日以上の月などを数える)と、日数を決める「算定基礎期間」は別に数え、どちらもハローワークが確かめます。前の会社の期間も、空白が1年以内で前回の基本手当を受けていなければ算定基礎期間に通算されます(雇用保険法22条3項)。給付制限を解除する教育訓練については教育訓練給付金の記事に書いています。日額と振込日の計算は失業保険の記事に書いています。
離職理由を偽って給付を受けると、受け取った額の返還に加えて最大2倍の納付を命じられます(雇用保険法10条の4)。会社が離職理由を偽って書いた場合も、会社が不正受給者と連帯して返還などの対象になり、厚生労働省は詐欺罪などで刑罰を受ける場合があるとしています。
転職したばかりの会社を辞めて再転職する場合の失業保険(前の会社の期間を足せる条件)と、出戻り・とどまるとの比較は転職の失敗の記事にまとめました。
7. 面接・履歴書での退職理由
7-1. 履歴書は簡潔に
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークの「応募書類の作り方」(令和8年5月)は、退職の理由を「一身上の都合により退職」「出産のため退職」「帰郷のため退職」「定年退職」「会社都合により退職」などのように簡潔に書くとしています。前向きな理由は、退職理由の欄ではなく志望動機やアピールポイントの欄でていねいに書く、としています。ほかに「会社業績不振により希望退職」「派遣期間満了につき退職」の記入例も載っています。履歴書の退職理由は、実際の退職の経緯から選びます。ハローワークの特定受給資格者などの判定は雇用保険の上の区分で、履歴書に書く退職の経緯とは別のものです。
7-2. 面接は悪口を言わず、客観的に短く
ハローワーク川崎の「面接対策」の資料は、前の会社の悪口やネガティブなことは極力言わない、人間関係や労働条件を理由にする場合は客観的に短く、履歴書等に書いた内容と食い違いが出ないように、退職理由は前向きに、としています。国(厚生労働省本省)として面接での答え方を示した資料は見つかりませんでした。
7-3. 面接で退職理由を聞かれることについて
厚生労働省の「公正な採用選考」で、採用選考のときに配慮すべきとされる14の事項に、退職理由は入っていません。一方で、合理的・客観的に必要な場合を除き、応募者の既往歴や健康状態を確かめることはしないよう求めています。
7-4. 嘘の退職理由について
退職理由を面接で偽ることや、今の会社に本当と違う理由を伝えることについて書いた公式の説明は見つかりませんでした。厚生労働省のモデル就業規則(旧版)には、懲戒の事由の例として「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」があり、懲戒が客観的に合理的な理由を欠く場合は無効になります(労働契約法15条)。履歴書と面接の答えを食い違わせないことは、7-2のとおりハローワークの資料も勧めています。転職の進め方は45歳の転職の記事に書いています。
試用期間中や入社してすぐに辞めた場合に、短い職歴を履歴書に書くかどうかと書き方は試用期間中の退職の記事にまとめました。
8. 精神的に限界・体調不良で辞めるとき
病気やけが、心身の障害などで今の業務を続けるのが難しくて辞める場合は、正当な理由のある自己都合(特定理由離職者)に当たることがあり、給付制限がなくなります。確かめるために医師の診断書などを使います。
すぐに働けない間は、失業保険は受けられません。30日以上続けて働けない場合は、受給期間(原則1年)を延ばす申請ができます(退職後の手続きの記事)。健康保険の傷病手当金は、条件を満たせば退職後も受け取れることがあります(傷病手当金の記事)。家族の介護で辞めるかを考えている場合は介護休業給付金の記事に、休んで続ける方法を書いています。
退職届の理由は「一身上の都合」でもかまいません(3-1)。区分は退職届の言葉ではなく、ハローワークが資料で判定します。
辞める前に、会社の休職制度を使う選択肢もあります。休職中の給料・傷病手当金・社会保険料と、休職期間が満了したときの扱いは休職中の給料と手当の記事にまとめました。
9. 計算機:統計の順位・失業保険の区分・文面・伝える日
性別、年齢、本音の退職理由、当てはまる事実、雇用保険に入っていた期間、辞めたい日、就業規則の申出の期間、残っている有給、引き継ぎに要る日数、引き止めの話し合いなどに見込む余裕の日数を入れると、次を出します。
- 自分の理由が、同じ年齢・男女の中で統計の何番目か、何%か(「その他の個人的理由」「その他の理由」は中身が分からないので順位から外し、同じ値は同じ順位にします)
- 理由で変わる失業保険の区分の見込み、給付制限・受給資格・所定給付日数、持っていく資料の例
- 辞めることを確定して伝える文と日にちを相談する文(意味の違いつき)、退職届の理由欄、履歴書の職歴欄、面接での答えの型
- 民法・就業規則の期限、最終出社日、引き継ぎを始める日から逆算した、上司に伝える日の推奨の目安(法的な期限とは別)
退職理由が統計で何番目か、理由で変わる離職票の区分と失業保険、会社・退職届・履歴書・面接で使う文面、上司に伝える日の逆算
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あなたと本音の理由
辞める日と伝える日
初めから入っている例は、42歳の男が、給料が少ないことを理由に、雇用保険に12年入っていた会社を2026年12月31日に辞める場合です(今日を2026年10月23日として)。統計では、男・40〜44歳で「給料等収入が少なかった」は9.5%で、その他の2区分を除いた11の理由の中で4番目です(1位は「能力・個性・資格を生かせなかった」11.0%)。ハラスメントなどの事実に当たらなければ正当な理由のない自己都合で、給付制限は原則1か月、所定給付日数は120日です。民法の期限は12月17日、就業規則の1か月前なら11月30日、有給10日を使い切ると最終出社日は12月14日、引き継ぎ10日を始めるのは12月1日で、余裕を14日見るなら、上司に伝える日の推奨の目安は11月16日です(法的な申出の期限は、民法の12月17日と就業規則の11月30日のほう)。
10. よくある質問
退職理由は正直に言わないといけませんか?
民法627条1項は、期間の定めのない雇用はいつでも解約の申入れができると定めていて、理由を条件にしていません。自己都合なら退職届に「一身上の都合」と書くのが一般的です。ただ、ハラスメントや長時間の残業など会社側の事情で辞める場合は、事実を具体的に書くことを福岡県が勧めていて、失業保険の区分にもかかわります(3章・6章)。
退職理由で一番多いのは何ですか?
令和7年雇用動向調査で、転職した人が前の会社を辞めた理由は、「その他」の2つを除くと、男は「定年・契約期間の満了」16.1%、女は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.9%が最も多くなっています。年齢で順位は変わります(2章)。
面接で退職理由を聞かれたら、どう答えればいいですか?
ハローワーク川崎の資料は、前の会社の悪口を言わない、人間関係や労働条件が理由なら客観的に短く、履歴書と食い違わないように、前向きに、としています。履歴書は「一身上の都合により退職」などと簡潔に書き、前向きな理由は志望動機の欄で書きます(7章)。
退職理由の嘘はばれますか?
ばれるかどうかを書いた公式の資料はありません。面接で退職理由を偽ることの扱いを書いた公式の説明も見つかりませんでした。離職票の離職理由を偽って失業保険を受けると、返還に加えて最大2倍の納付を命じられます(6章)。
引き止められて辞めさせてもらえないときはどうしますか?
期間の定めのない雇用なら、会社の承諾がなくても申入れから2週間で終わります。不当な手段で働かせ続けることは労働基準法5条で禁じられ、辞めたら違約金を払うという約束は16条で禁じられています。退職届を受け取ってもらえないときは、届いたことと日付を後から示せる方法で出し、各労働局の総合労働相談コーナーなどに相談できます(5章)。
精神的に限界のとき、退職理由は何と書けばいいですか?
退職届は「一身上の都合」でもかまいません。病気などで今の仕事を続けるのが難しい場合は、医師の診断書などでハローワークに説明すると、正当な理由のある自己都合として給付制限がなくなることがあります(8章)。
退職をいつ言い出せばいいですか?
法律上は退職日の2週間前までに届けば足ります。就業規則の期限、有給を使い切る日数、引き継ぎの日数、引き止めで延びる日数を足して逆算します。9章の計算機の初期値では、12月31日に辞めるなら11月16日が推奨の目安です。法的な期限は民法なら12月17日、就業規則の1か月前なら11月30日です(4章)。
11. まとめ
- 転職した人の退職理由は、男は定年・契約満了、給料、人間関係、女は労働条件、人間関係、定年・契約満了が上位(その他を除く)。40〜44歳の男は「能力・個性・資格を生かせなかった」が1位
- 退職届は自己都合なら「一身上の都合」。会社側の事情なら事実を具体的に書く
- 期間の定めのない雇用は申入れから2週間で終わり、会社の承諾は要らない。伝える日は就業規則・引き継ぎ・有給・引き止めから逆算する
- 不当な手段での引き止めは犯罪、違約金の約束は禁止。困ったら総合労働相談コーナーへ
- ハラスメント・長時間残業・未払い・退職勧奨などは会社都合と同じ扱いに、病気・介護などは正当な理由のある自己都合になりうる。最後に決めるのはハローワーク
- 履歴書は簡潔に、面接は悪口を言わず客観的に短く、履歴書と食い違わないように
12. 出典
- 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/index.html
- 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」本文(表5 転職入職者が前職を辞めた理由別割合)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/dl/gaikyou.pdf
- 民法(e-Gov法令検索)第627条・第628条https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 労働基準法(e-Gov法令検索)第5条・第15条・第16条・第117条・第119条・第137条https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 雇用保険法(e-Gov法令検索)第10条の4・第13条・第22条・第23条・第33条https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116
- 労働契約法(e-Gov法令検索)第15条https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128
- 福岡県「仕事を辞めるときには」https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/2024shigotoyameru.html
- 東京都 TOKYOはたらくネット『ポケット労働法2026』第9章https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/shiryo/pokerou2026_9.pdf
- 東京都 TOKYOはたらくネット「仕事を辞めさせてもらえない」https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/shiryo/4-10_syokumukikantyu.pdf
- 広島県 労働相談Q&A「会社を辞めたいのに辞めさせてくれない」https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/work2/wn500104.html
- 広島県 労働相談Q&A「退職する場合には損害を賠償せよと言われた」https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/work2/wn500048.html
- 栃木労働局 労働基準法第16条の解説https://jsite.mhlw.go.jp/tochigi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/roukijou/roukihou_point/kijunhou_kaisetsu/article16.html
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「アルバイト先でのトラブル」https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_parttime.html
- 厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00235.html
- ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html
- 厚生労働省 雇用保険に関する業務取扱要領 第4(R8.4)https://www.mhlw.go.jp/content/001689748.pdf
- 厚生労働省「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」(2014年4月版)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000147318.pdf
- ハローワーク「基本手当の所定給付日数」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
- 厚生労働省「自己都合離職者の給付制限」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00045.html
- 厚生労働省 確かめよう労働条件 Q&A(退職勧奨後、離職票に自己都合退職と記載された)https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/kaiko/q6.html
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「応募書類の作り方」(令和8年5月)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001710225.pdf
- ハローワーク川崎「面接対策」https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-hellowork/content/contents/002604524.pdf
- 厚生労働省 公正採用選考特設サイト「採用選考時に配慮すべき事項」https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html
- 厚生労働省 公正採用選考特設サイト「よくある質問」https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/question.html
- 厚生労働省「モデル就業規則」第11章 表彰及び制裁(旧版)https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/model/dl/11.pdf
13. あわせて読む
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