現在バイアスとは、「いま」の得や楽を、少し先の、もっと大きい得より、重く見てしまう心の動きです。あとで1万1,000円もらえるのに、いまの1万円を選ぶ。ダイエットは明日から、と決める。そして、明日になると、また明日から、になる。双曲割引(そうきょくわりびき)は、この動きを、数字で表したときの形の名前です。
この記事では、まず、現在バイアスと双曲割引の関係を、例で説明します。次に、計算機で、「いまの小さい得を選ぶと、待つことを年何%で割り引いていることになるか」を、出します。最後に、ポイント案件を「1か月あたり」で選んでいる私のやり方と、引っ越しを先延ばしにしている、私自身の例を、書きます。
1. 現在バイアスとは
1-1. 意味
人は、先の得を、いまの得より、少し安く見ます。これ自体は、ふつうのことです。先のことは、確実ではないし、お金なら、いま持っていれば、そのあいだ使えます。問題は、その割り引き方が、「いま」にだけ、極端に強くなることです。これを、現在バイアスと言います。
1-2. 双曲割引:割り引き方が、ゆれる
よく使われる例です。
| 選ぶ場面 | A | B | 多くの人が選ぶほう |
|---|---|---|---|
| いまの話 | 今日、1万円 | 1か月後に、1万1,000円 | A(今日) |
| 先の話 | 12か月後に、1万円 | 13か月後に、1万1,000円 | B(待つ) |
どちらも、「1か月待てば、1,000円ふえる」という、同じ条件です。それなのに、「今日」がからむと、待てなくなる。先の話なら、落ち着いて待つほうを選べます。
割り引き方が、いつでも一定なら、こうはなりません。どちらもAか、どちらもBになるはずです。近いほど急に、遠いほどゆるやかに割り引くので、グラフにすると、双曲線に近い形になります。だから、双曲割引と呼びます。
1-3. 困るのは、「先の自分」との約束が、守れないこと
先の話なら、正しいほうを選べます。だから、「来月から貯金する」「来年、引っ越す」と、先の自分に約束します。ところが、その日が来ると、それは「いまの話」に変わり、また、いまの楽を選んでしまいます。先延ばしが、くり返される仕組みです(先延ばしの記事)。
2. 計算機:いまを選ぶと、年何%で割り引いていることになるか
「いまの小さい額」と「先の大きい額」から、待つことを、1か月あたり、1年あたり、何%で割り引いているかを、出します。いまの額を選ぶ人は、この%以上で、待つことを、きらっていることになります。
1か月あたりの割引率:
1年あたりにすると:
はじめの数字は、1章の表の「いまの話」です。1か月で1万円が1万1,000円になるのは、1か月あたり10%。1年に直すと、約214%です。今日の1万円を選ぶ人は、待つことを、年に200%以上の重さで、きらっていることになります。
同じ数字のまま、1章の「先の話」を選ぶ人は、同じ条件で、待てています。つまり、割り引き方が、いまと先で、別人のように、ちがう。これが、双曲割引です。
待つ期間を、12か月にしてみてください。1年で1,000円ふえるだけなら、年10%です。これなら、今日の1万円を選んでも、おかしくありません。いまを選ぶのが、いつもまちがいなのでは、ありません。まちがいは、割り引き方が、そのときの気分で、ゆれることです。
3. 私の例
3-1. ポイント案件は、「1か月あたり」で、選ぶ
私は、電気の会社を乗りかえて、ポイントサイトのポイントをもらう、ということを、続けています。ポイントは、申し込んでから、承認されるまで、数週間から数か月かかります。だから、私は、案件を、「ポイント ÷ 承認までの月数」の、1か月あたりの額で、選んでいます。月1万円をこえる案件がよく、こえなくても、月5,000円はほしい。承認まで長い会社は、蹴ってもいい、という基準です。
2025年に、実際に回した5社です(日数は、ポイントサイトの通帳の、記載日から確定日まで。月数は、日数 ÷ 30 で出しています)。
| 会社 | ポイント | 承認までの日数 | 1か月あたり |
|---|---|---|---|
| オクトパスエナジー | 8,000 | 52日 | 約4,600 |
| Looopでんき | 15,000 | 98日 | 約4,600 |
| 楽天でんき | 20,000 | 24日 | 約25,000 |
| Ribbon Energy | 8,000 | 27日 | 約8,900 |
| エネワンでんき | 15,000 | 35日 | 約12,900 |
ポイントの額だけで見ると、Looopの1万5,000と、エネワンの1万5,000は、同じです。1か月あたりで見ると、3倍ちかく、ちがいます。額だけで選ぶと、承認まで長い案件に、時間をしばられます。表を作って見直すと、最初の2社は、私の基準の月5,000円に、届いていませんでした。
ここからは、私の整理です。待つことを、割り引くのは、正しい。大事なのは、その割り引き方を、1つの基準に固定することです。「1か月あたりいくら」と決めておけば、いまの案件も、先の案件も、同じものさしで比べられます。気分で、割り引き方がゆれる、双曲割引の反対です。くわしいやり方は、電気の乗りかえの記事に書きました。
3-2. 積み立ては、自動にした
私は、サブプライムショックの直後に、積み立ての投資を始めました。年単位では損が出た年もありますが、長く持っているので、通算でマイナスになったことは、ありません。借金をして投資をしたことも、一度もありません。
積み立ては、毎月、自動で引き落とされます。いまの自分に、「今月は、やめておこうか」と、決めさせない仕組みです。現在バイアスは、決める回数がふえるほど、顔を出します。決める回数を、最初の1回にしてしまえば、先の自分との約束を、守れます。
3-3. 引っ越しは、まだ、先延ばしにしている
守れていない例も、書きます。私は、いま住んでいる千葉から、名古屋に移ることを、考えています。AIに何度、分析させても、名古屋のほうがよい、と出ます。それでも、「収入が上がってから」と自分に言って、動いていません。
引っ越しの手間とお金は、いま、かかります。住みやすさの得は、先に来ます。いまの負担を重く見て、先の得を軽く見る、現在バイアスの形そのものです。事業を立て直してから、胸を張って移りたい、という気持ちもあります。けれど、私自身、半分は、今のままでいたい言い訳だと、自覚しています(慣れた場所にとどまる心の動きは、コンフォートゾーンの記事に書きました)。
4. 現在バイアスに、負けない手順
- いまと先を、同じものさしに、そろえる。「1か月あたりいくら」「1年あたり何%」に直してから、比べます。2章の計算機が、そのためのものです。
- 決める回数を、へらす。積み立てや、固定費の引き落としのように、最初の1回で、決めきる仕組みにします。
- 先の話のうちに、決めておく。先の話なら、正しいほうを選べます。そのときに、変えにくい形で、約束しておきます。
- 「いまを選ぶ」こと自体は、責めない。割引率が年10%程度なら、いまを選ぶのは、ふつうです。責めるべきは、年200%のような、ゆれた割り引き方です。
- 待つことで失うものも、数える。待つあいだに、お金や時間でできたはずのことは、機会費用として、数えます。
5. まとめ
- 現在バイアスは、いまの得や楽を、少し先のもっと大きい得より、重く見てしまう心の動き。
- 双曲割引は、その割り引き方が、近いほど急に、遠いほどゆるやかになる形。今日の1万円は選ぶのに、12か月後の1万円より13か月後の1万1,000円は待てる。
- 1か月で1万円が1万1,000円なら、年に直すと約214%。今日を選ぶ人は、待つことを、それだけ重く割り引いている。
- 私は、ポイント案件を「ポイント ÷ 承認までの月数」で選んでいる。割り引き方を1つの基準に固定すれば、ゆれない。
- 積み立ては自動にして、決める回数をへらした。引っ越しは、まだ、先延ばしにしている。

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