カリギュラ効果とは、「見るな」「やるな」と禁止されると、かえって、見たくなる、やりたくなる、という現象です。「絶対に、のぞかないでください」と言われた部屋ほど、のぞきたくなります。広告でよく見る「本気の人以外は、読まないでください」は、これを、ねらった文です。
先に、書いておきます。私も、販売ページやプロフィールに、「こういう人は、買わないでください」と、書いています。ただ、ねらいは、あおることでは、ありません。来てほしくない人に、本当に、帰ってもらうことです。同じ「禁止の文」でも、あおりに使うか、選別に使うかで、結果は、まったく変わります。この記事は、そのちがいを、書きます。
この記事では、意味としくみを先に書いて、そのあとで、計算機、私の例、使うときの注意を書きます。
1. カリギュラ効果とは
1-1. 名前の由来
名前は、1980年の映画『カリギュラ』から、来ています。ローマの皇帝をえがいた映画で、内容が過激だったために、アメリカの一部の地域で、公開が、禁止されました。すると、かえって話題になり、見たい人が、ふえました。ここから、日本で、「カリギュラ効果」と呼ばれるようになった、と言われています。
注意が、1つあります。「カリギュラ効果」は、日本で広まった、通称です。心理学の論文で使われる名前では、ありません。研究の世界で、この現象を説明しているのは、次の「心理的リアクタンス」です。
1-2. しくみ:心理的リアクタンス
1966年に、アメリカの心理学者、ジャック・ブレームが示した考えです。人は、「自分で選べる」という自由を、うばわれたと感じると、その自由を取りもどそうとして、反発します。これが、心理的リアクタンスです。
| 段階 | 心の中で、起きていること |
|---|---|
| 1 | 「見ても、見なくても、いい」と思っていた(自由がある) |
| 2 | 「見るな」と言われる(自由を、うばわれる) |
| 3 | うばわれた自由の値打ちが、急に上がる。取りもどしたくなる |
| 4 | 見る。または、見たい気持ちが、前より強くなる |
大事なのは、禁止される前は、それほど見たくなかった、という点です。ほしくなったのは、中身ではなく、「選ぶ自由」のほうです。
1-3. 近い言葉との、ちがい
| 言葉 | 何が、ほしくさせるか |
|---|---|
| カリギュラ効果 | 「禁止された」こと |
| 希少性の原理 | 「数が少ない、期限がある」こと |
| ストライサンド効果 | 情報を「消そう、かくそう」としたことで、かえって広まること |
| ロミオとジュリエット効果 | まわりに反対されて、恋愛の気持ちが、強くなること |
希少性も、リアクタンスで、説明されることがあります。「もうすぐ買えなくなる」は、「買う自由が、なくなる」だからです。根っこは、同じです。
2. 身近な例
- 昔話:「けっして、のぞかないでください」(鶴の恩返し)。「けっして、あけてはいけません」(浦島太郎の玉手箱)。禁止が、物語を、動かします。
- 広告:「本気でやせたい人以外は、見ないでください」「ここから先は、会員だけ」。
- テレビ:音をかぶせて消した言葉、ぼかした映像。かくされた部分が、いちばん、気になります。
- 子育て、部下:「ゲームは禁止」「その話は、するな」。禁止された行動の値打ちが、上がります。
- ダイエット:「甘いものは、絶対に食べない」と決めたとたんに、甘いものばかり、考えてしまう。
3. 計算機:「買わないでください」で、だれが帰り、だれが残るか
禁止の文を、あおりではなく、選別に使うときの、損得を出します。「こういう人は、買わないでください」と書くと、ふつうのお客も、少し、帰ります。手間のかかるお客は、もっと、帰ります。その差で、利益が、どう変わるかです。
1か月の、買い手の数 人
そのうち、手間のかかる買い手の割合 %
文を読んで、帰る割合:手間のかかる買い手 % ふつうの買い手 %
ふつうの買い手、1人あたりの利益 円
手間のかかる買い手、1人あたりの損(返品、対応の時間を、お金に直して) 円
文を書かないときの利益:
文を書いたときの利益:
差:
はじめの数字は、仮の数字です。書かないときは17万円、書いたときは22万6,500円で、差は、+5万6,500円です。ふつうの買い手を、5%、失っています。それでも、手間のかかる買い手の7割が帰るなら、得になります。逆に、「ふつうの買い手が帰る割合」を20%に上げると、差は、+1万6,000円まで、ちぢみます。禁止の文は、強く書くほどいい、というものでは、ありません。
4. 私の例:あおりではなく、選別に使う
4-1. 「完品を求める人は、店頭で、新品を」
私は、フリマやオークションのプロフィールに、こう書いています。完品を求める人には、新品か、店頭での購入を、すすめます。少しでも納得できない点があれば、購入や入札を、ひかえてください。値段の交渉と、取り置きは、ことわります。
これは、形の上では、「買わないでください」です。けれど、カリギュラ効果を、ねらっては、いません。ねらいは、その逆です。読んだ人に、本当に、帰ってほしい。プロフィールを整えてから、めんどうな相手は、激減しました。
オークションの説明に書く「ノークレーム・ノーリターン」も、同じです。私は、この言葉が強い理由は、責任をのがれられるからでは、ないと考えています。完璧を求める人が、入札しなくなるからです。選別の道具です。
4-2. なぜ、あおりに、ならないのか
1章のしくみに、もどります。リアクタンスが起きるのは、「自由を、うばわれた」と、感じたときです。「あなたには、見せません」は、自由を、うばいます。「こういう条件なので、合わない人は、やめてください」は、うばいません。条件を見せて、選ぶのは、相手です。
| あおりの禁止 | 選別の禁止 | |
|---|---|---|
| 文の例 | 「本気の人以外は、見ないでください」 | 「返品は受けません。完品がほしい人は、新品を買ってください」 |
| 理由を、書いているか | 書いていない | 書いている |
| 本当に帰られたら | こまる | こまらない。それが、目的 |
| 読んだ人の中で、起きること | 反発して、見たくなる | 自分に合うかを、考える |
見分け方は、3行目です。「本当に帰られたら、こまるか」。こまるなら、それは、あおりです。
4-3. 制限をかけた売り方で、起きたこと
以前、私は、期日を決めて、目標を達成しなければ、先の教材をわたさない、という売り方を、していました。販売ページにも、書いていました。達成する人は、たくさん出ました。「先を見られない」という制限が、人を動かしたのだと、私は、見ています。
けれど、達成できなかった1人から、弁護士を通して、返金を求められました。私は、返金して、この売り方を、やめました(くわしくは、グッドハートの法則の記事に、書いています)。
制限は、人を、強く動かします。そして、制限の外に取りのこされた人の反発も、同じ強さで、起こします。リアクタンスは、「ほしくなる」と「腹が立つ」の、両方の顔を、持っています。片方だけを、取り出すことは、できません。
4-4. 「もうけ話は、人に言わない」も、同じ形
「本当にもうかる話は、人に言わない」と、よく言われます。だから、「ここだけの話」「表では言えない」と書かれた情報は、値打ちがあるように、見えます。これも、カリギュラ効果の、仲間です。かくされているから、ほしくなる。中身がいいから、では、ありません。この話は、「儲け話は人に言わない」は半分正しいに、書きました。
5. 使うとき、使われるときの、注意
5-1. 使う側
- 理由を、書く:理由のない禁止は、あおりに見えます。見ぬかれたら、信用を、失います。
- 中身が、期待をこえること:禁止で上がった期待に、中身がとどかないと、がっかりは、ふつうより、大きくなります。
- うそは、書かない:「会員だけ」と書いて、だれでも見られる。「残りわずか」と書いて、いくらでもある。これは、景品表示法の、問題になります。
- 人に対しては、禁止より、条件:子どもや部下には、「禁止」ではなく、「ここまでは、自由。ここからは、相談」と、選べる形で、わたします。自由をうばわなければ、リアクタンスは、起きにくくなります。
5-2. 使われる側
- 「禁止される前に、これが、ほしかったか」と、自分に聞く:1章のとおり、ほしくなったのは、中身ではなく、自由のほうかもしれません。
- かくされた部分の値打ちを、0と置いてみる:見えている部分だけで、買うかどうかを、決めます。
- 第三者の声を、さがす:売り手の「見ないでください」より、買った人の声のほうが、あてになります(ウィンザー効果)。
6. まとめ
- カリギュラ効果とは、禁止されると、かえって、やりたくなる現象です。1980年の映画から来た、日本での通称です。
- しくみは、心理的リアクタンス(ブレーム、1966年)。うばわれた「選ぶ自由」を、取りもどそうとする反発です。
- 同じ「買わないでください」でも、あおりと、選別は、別のものです。見分け方は、「本当に帰られたら、こまるか」。
- 私は、プロフィールと説明文の禁止を、選別に使っています。整えてから、めんどうな相手は、激減しました。
- 制限は、人を動かす力と、同じ強さの反発を、いっしょに、生みます。

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