ランダムウォークとは|意味と具体例。理論を信じた積立だけが勝って、逆らった20年が全部負けた成績表

ランダムウォークとは|意味と具体例。理論を信じた積立だけが勝って、逆らった20年が全部負けた成績表 資産運用

ランダムウォークは、次の一歩が、上か下か、まったくの偶然で決まる動きのことです。日本語では、「千鳥足」と訳されます。酔った人の足どりのように、次にどちらへ動くかが、これまでの動きから、読めません。

株の世界でいう「ランダムウォーク理論」は、株価の短い期間の動きは、この千鳥足に近い、という考え方です。だから、過去のチャートの形から、明日の値段を当てることは、できない。プロが選んだ銘柄も、長い目では、市場の平均に、なかなか勝てない。

私は、学生のころに、この考え方を書いた本、『ウォール街のランダム・ウォーカー』を読みました。納得して、サブプライムショックの直後から、積立を始めました。そして、そのあとの20年ちかく、この理論に、さからいつづけました。FXの自動売買を100個以上ためし、AIで個別株を選び、レバレッジをかけました。この記事では、理論の中身を先に書いて、そのあとで、さからった結果の、成績表を書きます。特定の商品を、すすめる記事では、ありません。

1. ランダムウォークとは

はじめに株価に当てはめたのは、フランスの数学者、ルイ・バシュリエです。1900年の論文でした。1960年代に、経済学者のユージン・ファーマが、「効率的市場仮説」として、まとめます。値段には、その時点で分かっている情報が、もう、おりこまれている。値段を動かすのは、まだだれも知らない、新しい情報だけ。新しい情報は、良いか悪いか、予想できない。だから、値動きも、予想できない。

これを、ふつうの人に向けて書いたのが、経済学者のバートン・マルキールです。1973年に出た本の中で、こう書きました。目かくしをしたサルが、新聞の株式欄にダーツを投げて選んだ銘柄でも、専門家が選んだ銘柄と、同じくらいの成績になる、と。

1-1. コインで作ったチャートにも、「形」が見える

下のグラフは、コインを250回投げて、表なら1つ上、裏なら1つ下、と線を引いたものです。ボタンを押すたびに、新しく、作りなおします。

何回か、押してみてください。上昇トレンド、下降トレンド、もみ合い、急落からの反発。相場の本に出てくる形が、ひととおり、出てきます。中身は、コイン投げです。次の一歩が上か下かは、どの時点でも、半々です。

マルキールは、同じことを、学生にやらせています。コイン投げで作ったチャートを、チャート分析の専門家に見せたところ、「すぐに買うべきだ」と言われた、という話です。人の頭は、でたらめな並びの中に、形を見つけてしまいます。この働きは、代表性ヒューリスティックの記事に書きました。

1-2. 「読めない」と、「上がらない」は、別

まちがえやすいところです。ランダムウォーク理論は、「株は、上がらない」とは、言っていません。

短い期間(日、週、月) 長い期間(10年、20年)
値動き ほぼ、千鳥足。上か下かは、読めない 千鳥足に、ゆるやかな上向きの傾きが、乗っている
理由 新しい情報は、予想できない 会社が、全体として、利益をふやしてきたから
できること 当てようと、しない 市場の全体を、安く、長く、持つ

短い期間は読めない。長い期間の傾きは、市場の全体を持っていれば、受け取れる。だから、この理論から出てくる答えは、「売り買いのうまさで勝とうとせず、指数に連動する商品を、手数料を安くして、持ちつづける」です。

1-3. 近い言葉との違い

言葉 中身
ランダムウォーク 次の一歩が、これまでの動きと関係なく、偶然で決まる動き
効率的市場仮説 値段には、分かっている情報が、もう、おりこまれている。ランダムウォークになる理由の説明
テクニカル分析 過去の値動きの形から、先を読もうとする。ランダムウォーク理論とは、正面から、ぶつかる
ギャンブラーの誤謬 下がりつづけたから、そろそろ上がる、と考える。ランダムウォークなら、まちがい
平均への回帰 極端な結果のあとは、ふつうの結果が来やすい。値段そのものが「もどる」という話では、ない

2. この理論は、どこまで本当か

正直に書きます。値動きが、完全な千鳥足だと考えている研究者は、いまは、ほとんど、いません。

  • 上がった銘柄が、しばらく上がりつづける傾向(モメンタム)が、多くの市場で、見つかっている
  • 大きな暴落は、コイン投げの計算で出てくる回数より、ずっと多く、起きている
  • バブルと、その崩壊は、「値段はいつも正しい」では、説明しにくい

それでも、この理論の結論のほうは、いまも、強いままです。アメリカの調査会社が、毎年、出している集計では、株を選んで運用するファンドの8割をこえる数が、15年の長さで見ると、指数に負けています。市場に、くせは、あります。でも、手数料と、税金と、自分のまちがいを引いたあとで、そのくせから利益を取りつづけるのは、プロでも、むずかしい。「完全にでたらめ」では、ない。でも、「ふつうの人が勝てるほど、読みやすくも、ない」。私は、そう受けとっています。

3. よくある例

  • 「3日続けて下がったから、明日は上がる」。コインに、記憶は、ありません
  • 過去のチャートに、線を引いて、「ここで買えば、もうかった」。線は、あとからなら、いくらでも、引けます
  • 去年、成績がいちばん良かったファンドを、買う。翌年は、ふつうの成績になる
  • 会社の売上の予測。来月の数字を、先月までのグラフの形から、のばして出す。当たったときだけ、おぼえている
  • 「相場が落ち着いたら、始めます」。落ち着いたかどうかは、あとにならないと、分かりません

4. 私の成績表|信じた側と、さからった側

私は、この理論を学生のころに読んで、納得しました。それなのに、半分は信じて、半分は、さからいました。結果を、並べます。

やったこと 理論に対して 結果
指数に連動する商品の積立。サブプライムショックの直後から 信じた 年ごとの損は、ある。通算で、マイナスになったことは、ない
FXの自動売買。市販のものを100個以上、過去の値動きで検証 さからった 買った代金だけで50万円以上。損失は200万円以上。いまも、通算でマイナス
AIに、自動売買のプログラムを作らせる さからった 過去の値動きでの検証で、プラスに、できなかった
AIを使った、個別株の売り買い。半年ほど さからった プラスには、なった。指数には、勝てなかった
有名な人が手がけた仮想通貨 さからった 30万円以上の損

勝っているのは、1行目だけです。何も、当てようとしなかった行だけが、残りました。

4行目が、いちばん、こたえました。半年、手間をかけて、プラスには、なっています。でも、同じ期間、何もせずに指数を持っていたほうが、上でした。手間をかけて、指数に負けるなら、やる理由が、ありません。いま持っているのは、投資信託とETFだけです。経緯は、株で人生終わった人の記事と、FXで人生終わった人の記事に書きました。

4-1. 100個ためせば、「勝てるプログラム」は、かならず見つかる

FXの自動売買を、100個以上ためして、成績の良いものを選ぶ。当時は、これを、研究だと思っていました。

1章のコインのグラフを、100回、作りなおしてみてください。きれいな右肩上がりが、何本か、出ます。それを選んで、「このコインは、上がるコインだ」と言っているのと、私がやっていたことは、同じ形でした。優位性のないプログラムでも、100個あれば、約3個は、5年続けてプラスになります。選んだあとは、ただのコインに、もどります。計算は、期待値の記事と、平均への回帰の記事に書きました。

4-2. 始めた時期が良かったのは、運

1行目にも、ただし書きが、あります。私が積立を始めたのは、たまたま、大きな暴落の直後でした。安いところから、始められた。これは、私の判断の良さでは、ありません。運です。そして、マイナスの年に、売らずにすんだのは、生活費を、株から出す必要が、なかったからです。持ちつづけられるかどうかは、性格ではなく、そのお金を引き出さずに、暮らせるかどうかで、決まります。

4-3. それでも、いま、レバレッジをかけている

正直に書きます。私は、いまも、この理論に、半分、さからっています。指数の2倍や3倍で動く商品を、積立で買っています。「これからの10年も、テックは伸びる」という、自分の見立てに、賭けています。

ランダムウォーク理論から見れば、これは、よけいなことです。指数をそのまま持つのが、答えだからです。自分のサイトでやった計算でも、3倍にすると、まん中の結果は下がって、上と下が広がるだけでした。分かったうえで、やっています。くわしくは、TQQQはやめとけ、は本当かの記事と、ケリー基準の記事に書きました。人には、すすめていません。

5. 仕事では、逆のことが言える

ここまでは、株や為替のように、世界中の人が、同じ値段を見ている市場の話です。中古品の売り買いは、ちがいました。

株や為替 中古品
値段を見ている人 世界中。プロが、機械で、一瞬で反応する 少ない。1点ごとに、状態がちがう
情報の差 すぐに、消える 長く、残る。こわれた物を直せる人と、直せない人では、同じ物の値打ちが、ちがう
手間をかける意味 ほとんどの人には、ない ある。手間そのものが、利益のもとになる

みんなが同じ情報を見て、同じ速さで動ける場所では、値段の差は、残りません。見ている人が少なくて、物が1点ずつちがって、直す技術が要る場所では、残ります。私が、相場では負けて、中古品では20年食べてこられた理由は、腕の差では、ありません。場所の差です。情報の差が利益になる話は、レモン市場の記事に書きました。

自分の時間を、どこに使うか。値段が読めない場所で、読もうとがんばるより、手間が利益に変わる場所で、手間をかける。私が、20年かけて、お金を払って学んだことは、これです。

まとめ

  • ランダムウォークは、次の一歩が、偶然で決まる動き。株価の短い期間の動きは、これに近い、というのが、ランダムウォーク理論
  • コイン投げで作ったグラフにも、トレンドや、もみ合いの「形」が見える。人の頭は、でたらめの中に、形を見つけてしまう
  • 「読めない」と、「上がらない」は、別。長い期間では、ゆるやかな上向きの傾きがある
  • 値動きは、完全なでたらめでは、ない。それでも、株を選ぶファンドの8割をこえる数が、長い期間では、指数に負けている
  • 私の成績表では、勝っているのは、何も当てようとしなかった積立だけ。さからった側は、ぜんぶ、負けか、指数以下
  • みんなが同じ値段を見ている市場では、手間は、利益にならない。1点ずつちがう中古品では、なる。時間は、手間が利益に変わる場所に、使う

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【免責と、利益相反の開示】この記事は、公表されている研究と、筆者自身の取引の記録にもとづく、情報の整理です。特定の金融商品の取得を、すすめるものでは、ありません。筆者は、金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録も、受けていません。筆者は、指数に連動する投資信託とETF(レバレッジ型をふくむ)を、自分の口座で保有しています。過去の成績は、将来の結果を、保証しません。投資の判断は、ご自身の責任で行ってください。

 

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