リスクリワードは、1回の取引で、「負けたら、いくら失うか(リスク)」と、「勝ったら、いくら得るか(リワード)」の、比のことです。リスクリワードレシオ、損益比とも呼ばれます。1万円の損を覚悟して、2万円の利益をねらうなら、リスクリワードは、1対2です。
よく似た言葉に、ペイオフレシオがあります。こちらは、実際にやった取引の、「勝ちの平均 ÷ 負けの平均」です。リスクリワードは、取引の前に立てる、計画の数字。ペイオフレシオは、取引のあとに出てくる、結果の数字です。
この2つは、たいてい、ずれます。計画では1対2だったのに、結果は、1対0.8になっている。ずれる理由は、相場ではなく、人の心のほうに、あります。この記事では、計算のしかたを先に書いて、そのあとで、ずれる理由と、私の例を書きます。特定の手法を、すすめる記事では、ありません。
1. リスクリワードとは
リスクリワード = ねらう利益の幅 ÷ 受け入れる損の幅
1-1. 勝率と、セットで見る
リスクリワードだけでは、その取引が良いか悪いかは、分かりません。勝率と組み合わせて、はじめて、意味が出ます。損と得が釣り合う勝率は、次の式で出ます。
釣り合う勝率 = 1 ÷(1 + リスクリワード)
| リスクリワード(損:得) | 釣り合う勝率 | 読み方 |
|---|---|---|
| 1 : 0.5 | 約67% | 3回に2回勝って、やっと、とんとん |
| 1 : 1 | 50% | 半分勝って、とんとん |
| 1 : 2 | 約33% | 3回に1回勝てば、とんとん |
| 1 : 3 | 25% | 4回に1回勝てば、とんとん |
勝率が3割でも、リスクリワードが1対3なら、利益が残ります。勝率が8割でも、1対0.2なら、損が残ります。「勝率の高い手法」と、「もうかる手法」は、別のものです。
1-2. 計算機|手数料を入れると、どこまで変わるか
| 見かけのリスクリワード | 1 : 2 |
| 費用を入れた、本当のリスクリワード | 1 : 1.73 |
| 釣り合う勝率(費用こみ) | 36.7% |
| 1回あたりの期待値 | 1,000円 |
はじめに入っている数字は、説明のための、仮のものです。費用は、勝ったときの利益をへらし、負けたときの損をふやします。両方に効くので、思っているより、大きく、ひびきます。1回の幅が小さい取引ほど、費用の割合が大きくなって、本当のリスクリワードは、悪くなります。
1-3. 近い言葉との違い
| 言葉 | 中身 | いつの数字か |
|---|---|---|
| リスクリワード | ねらう利益 ÷ 受け入れる損 | 取引の前。計画 |
| ペイオフレシオ | 勝ちの平均 ÷ 負けの平均 | 取引のあと。結果 |
| プロフィットファクター | 利益の合計 ÷ 損の合計。勝率も、ふくんだ数字。1をこえていれば、通算でプラス | 取引のあと。結果 |
| 損小利大 | 損は小さく、利益は大きく。リスクリワードを、1対1より良くしよう、という方針 | — |
| 期待値 | 勝率と、リスクリワードを、かけ合わせた、1回あたりの平均の損得 | — |
2. 計画と結果が、ずれる理由
1対2で計画したのに、結果のペイオフレシオが、1を下回る。よくあることです。理由は、2つの心の働きです。
| 場面 | やってしまうこと | 結果 |
|---|---|---|
| 含み益が出ている | 「この利益が消えたら、いやだ」。目標の手前で、売ってしまう | 勝ちの平均が、計画より、小さくなる |
| 含み損が出ている | 「売ったら、損が、確定してしまう」。切る線をこえても、持ちつづける | 負けの平均が、計画より、大きくなる |
人は、同じ金額でも、得する喜びより、損する痛みを、大きく感じます。だから、利益は、早く確定したくなる。損は、確定したくなくなる。これを、行動経済学では、ディスポジション効果(気質効果)と呼びます。何もしなければ、人は、しぜんに、「損大利小」に、なります。リスクリワードを計画どおりに保つのは、相場との戦いではなく、この働きとの戦いです。
3. よくある例
- 「あと少しで目標だったけれど、下がってきたので、利益があるうちに売った」。これが続くと、勝ちの平均が、けずられていく
- 「切る線は、こえた。でも、ここまで下がったら、もう、もどるだろう」。これが1回あると、10回ぶんの利益が、消える
- 「買値にもどったら、売ろう」。市場は、自分の買値を、知りません
- 新しい事業に、予算をつける。うまくいかなかったときに、いくらまで失うかは、決めていない。リスクの側が、決まっていないので、リスクリワードが、計算できない
- 転職や、独立。うまくいったときの話ばかり、くわしい。失うものの上限を、数字にしていない
下の2つが、相場の外での形です。リワードの側は、だれでも、くわしく考えます。リスクの側を、数字で決めている人は、少ない。リスクリワードは、「先に、損の上限を決める」ための道具です。
4. 私の例①|勝率が高くて、リスクリワードが、最悪だった
私が、FXで口座を飛ばした自動売買は、下がるたびに買い増して、もどったところで、小さな利益を取る形でした。勝率は、とても高い。そのかわり、もどらなかった1回で、口座のすべてを、失います。
リスクリワードで書くと、損が口座ぜんぶ、得が、そのごく一部です。1対0.01のような形です。釣り合う勝率は、99%をこえます。100回に1回、負けただけで、赤字です。私は、この計算を、していませんでした。見ていたのは、毎日のように利益が積み上がっていく、成績のグラフだけでした。くわしくは、破産確率の記事と、ギャンブラーの誤謬の記事に書きました。
5. 私の例②|中古品の仕入れは、リスクリワードが、はじめから良い
こわれた機械を仕入れて、直して売る仕事は、相場とは、形が逆でした。
1,000円のジャンク品を仕入れる。直せなければ、失うのは、1,000円と、送料と、自分の時間です。直せれば、数千円から、1万円をこえる利益になります。損の上限が、仕入れ値で、はじめから、決まっています。得の側は、その何倍も、あります。リスクリワードが、1対5や、1対10の勝負を、くり返していることになります。
この形なら、直せる確率が、3割でも、利益が残ります。だから、「かならず直せる物」だけを、さがす必要が、ありません。釣り合う確率より上かどうか、だけを見ます。仕入れに使う計算機は、期待値の記事と、修理転売の4台目の記事に置いています。ただし、この計算には、自分の時間が入っていません。時間を入れると、話が変わる場合があります。機会費用の記事に書きました。
6. 私の例③|損は、24時間で切る
売る側では、私は、損を、早く切ります。出品して、最初の24時間の反応が悪ければ、すぐに、1円スタートのオークションに出しなおして、現金に、もどします。値段を少しずつ下げて、少しでも利益を残そう、という売り方は、しません。
2章のディスポジション効果に、逆らうための決まりです。「もう少し待てば、この値段で売れるかもしれない」は、含み損を持ちつづける人の言葉と、同じ形です。待っているあいだ、お金は、在庫の形で、寝ています。小さく負けて、その現金で、次の勝負をする。負けの平均を、小さく保つことが、ペイオフレシオを守る、いちばん確実な方法です。考え方は、価格弾力性の記事に書きました。
7. 私の例④|それでも、自分の買値に、しばられている
正直に書きます。中古品では、24時間で切れる私が、株の口座では、切れていません。
いま、元本に対して、大きくマイナスになっている商品が、あります。その1つを、私は、「元本まで、もどったら、ぜんぶ売る」つもりで、持っています。3章に書いた、「買値にもどったら、売ろう」そのものです。市場は、私の買値を、知りません。私が買った値段は、その商品のこれからの値動きに、何の関係も、ありません。それでも、買値を、基準にしてしまっています。
中古品で切れるのは、同じ判断を、何千回も、くり返してきたからです。1回1回が小さくて、切っても、痛くない。株の口座は、回数が少なくて、1回が大きい。だから、痛みのほうが、勝ちます。決まりを先に書いておく必要があるのは、こういう場面です。後知恵バイアスの記事と、コンコルド効果の記事に、やり方を書きました。
8. 使い方
- 先に、損の上限を、数字で決める。リワードから考えると、リスクの側が、あいまいなまま、始めてしまいます
- 費用を入れて、計算する。手数料、スプレッド、送料、税金。1回の幅が小さい取引ほど、効きます
- 勝率と、セットで見る。釣り合う勝率を出して、自分の勝率が、それを上回っているかを、確かめます
- 計画ではなく、結果のペイオフレシオを、記録する。計画が1対2でも、結果が1対0.8なら、直すのは、手法ではなく、利益を早く確定してしまうくせ、損を切れないくせのほうです
- 切る決まりは、取引の前に、書く。含み損を見てから考えると、かならず、甘くなります
- 1回を、小さくする。1回が小さければ、切る痛みも、小さい。決まりを、守りやすくなります
まとめ
- リスクリワードは、受け入れる損と、ねらう利益の比。取引の前に立てる、計画の数字
- ペイオフレシオは、勝ちの平均 ÷ 負けの平均。取引のあとに出る、結果の数字
- 釣り合う勝率は、1 ÷(1 + リスクリワード)。1対2なら、約33%。勝率の高さと、もうかるかどうかは、別
- 計画と結果が、ずれるのは、利益を早く確定したくなり、損を確定したくなくなる、心の働きのせい
- 中古品の仕入れは、損の上限が仕入れ値で決まっていて、はじめから、リスクリワードが良い
- 先に、損の上限を決める。費用を入れる。結果のペイオフレシオを、記録する
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【免責】この記事は、計算のしかたと、筆者自身の取引の記録にもとづく、情報の整理です。特定の金融商品や手法を、すすめるものでは、ありません。筆者は、金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業の登録も、受けていません。計算機の数字は、入力した前提にもとづく計算で、実際の結果を、保証するものでは、ありません。投資の判断は、ご自身の責任で行ってください。

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