コンコルド効果は、すでに使ってしまったお金や時間がもったいなくて、続けても損だと分かっていることを、やめられなくなる心の働きです。経済学や心理学では「サンクコスト効果」「埋没費用の誤り」と呼ばれます。同じものです。
この記事では、名前の由来と中身を説明したあとで、私自身の実例を3つ書きます。切れたものが2つ、いまも切れていないものが1つです。切れていないのは、FXの自動売買です。やる価値がない、という結論は、自分の中でとっくに出ています。それでも、まだ続けています。この効果を説明する記事を書いている本人が、いま、この効果の中にいます。
1. コンコルド効果とは
名前のもとは、イギリスとフランスが共同で作った、超音速の旅客機コンコルドです。開発の途中で、完成しても採算が取れないことは、分かっていました。それでも、すでにつぎこんだ開発費が大きすぎて、やめる決断ができず、開発は続けられました。
戻ってこないお金のことを、埋没費用(サンクコスト)と言います。これから先の判断に、埋没費用は関係がありません。見るべきなのは、これから使うお金と時間に対して、これから何が返ってくるかだけです。頭では、だれでも分かります。分かっていても、できません。
心理学の実験でも、同じことが確かめられています。劇場の年間チケットを、定価で買った人と、割引で買った人をくらべると、定価で買った人のほうが、多く劇場に通いました。高く払ったぶん、「元を取らなければ」と感じるからです。見たい芝居かどうかは、値段と関係がないはずなのに、です。
2. 切れた例①|直らない機械に使う時間
壊れた機械を仕入れて、直して売る仕事で、いちばん高くつくのは、安い仕入れに失敗したときではありません。「直せるはずだ」と思って、6時間、10時間と使ってしまったときです。仕入れた。分解した。部品を注文した。ここまでやったのだから。1つ進むごとに、やめにくくなります。
私は、始める前に、やめる条件を決めています。
- 事前の調査に30分かけて、修理の記録が見つからなければ、手をつけない
- 手をつけて2時間で原因が分からなければ、部品取りに切り替える
- 部品代が、売れる見込みの金額の15%を超えるなら、やめる
売るほうも同じです。出品して最初の24時間の反応を見て、だめだと思ったら、損が出ても値段を下げて現金にします。その現金で次を仕入れて、取り返します。売れない在庫を「いつか売れる」と持ち続けるのは、コンコルドの開発を続けるのと、同じ形です。仕入れの前の関門は4台目の選び方に書きました。
3. 切れた例②|月に20万〜30万円の、記事の外注
このサイトの記事を、ライティングの会社に外注していた時期があります。支払いは、月に20万円から30万円。半年ほど続けました。合計で、百数十万円です。
納品される記事は、当時の水準で言えば、ふつうでした。悪くはありません。ただ、メール講座に登録される記事には、なりませんでした。自分で書いた記事のほうが、はっきり登録されます。けれど、自分で書くと、時間がかかりすぎます。自分で雇った人が書いた記事は、その基準を満たしてくれました。ただ、その人が動ける時間には、限りがあります。
質を落とさずに、量を増やす。その限界が見えたところで、外注はやめました。
半年が長かったのか、短かったのかは、いまでも分かりません。ただ、やめられた理由は、はっきりしています。「メール講座に登録される記事になっているか」という、数字で見える物差しを持っていたからです。数字の物差しが壊れる場合と、壊れにくい場合の差は、グッドハートの法則の記事に書きました。物差しがなければ、「もう少し続ければ、書き手が慣れるかもしれない」と、払い続けていたかもしれません。
いまは、文章を組み立てる部分を、AIに任せています。材料は私が出し、事実との突き合わせも私がやります。やり方はコンテンツの作り方に書きました。
4. 切れていない例|FXの自動売買
ここからが、この記事でいちばん書きにくい部分です。
私は2010年から2014年ごろ、FXの自動売買に、本気で取り組みました。売られている自動売買のしくみを、100個以上、検証しました。買ったものだけで50万円以上。取り引きの損失は、200万円以上です。検証したもののうち、いまも残っているものは、ほとんどありません。くわしい経緯はFXで人生終わった人と、終わらなかった私の差に書きました。
結論は、ずっと前に出ています。私にとって、これは、やる価値がありません。同じお金と時間を、指数に連動する投資信託やETFに入れて、何もせずに放っておいたほうが、ずっと増えていました。計算するまでもなく、分かっています。
AIが使えるようになってから、もう一度だけ、確かめました。AIに、MT5で動く自動売買のプログラム(EA)を書かせて、過去のデータで検証しました。試したロジックは、2種類です。私が「これなら行ける」と思っていたもの。そして、「作るなら、どんなロジックに期待が持てるか」をAI自身に考えさせたもの。使ったAIは、Cursorです。どちらも、過去のデータの検証で、プラスにできませんでした。道具が新しくなっても、結論は変わりませんでした。当時、自動売買で口座を1つ破綻させた話は、ギャンブラーの誤謬の記事に書きました。
それでも、私はいまも、小さな口座で続けています。
理由を正直に書くと、中途半端に、本気でやってしまったからです。100個以上を検証して、身につけた知識がある。それを「全部、むだだった」と認めて終わりにするのが、嫌なのです。失ったお金より、使った時間と、身につけた知識のほうが、手放しにくい。コンコルド効果は、お金だけの話ではありません。
歯止めになっているのは、1つだけです。いま動かしているのは、5万円の小さな口座だけです。やめられないなら、せめて、続けても傷が広がらない大きさに閉じこめる。ほめられた解決ではありませんが、「自分はいつでもやめられる」と思いこむよりは、ましだと考えています。
これは、投資の勧めでも、FXをやめろという話でもありません。私の場合はこうだった、という記録です。
5. 3つの例から分かること
| 直らない機械 | 記事の外注 | FXの自動売買 | |
|---|---|---|---|
| 切れたか | 切れる | 半年で切れた | 切れていない |
| やめる条件を、先に決めていたか | 決めていた(30分・2時間・15%) | 物差しがあった(登録される記事か) | 決めていなかった |
| つぎこんだもの | 数時間と、数千円 | 百数十万円 | 250万円以上と、数年分の時間と、知識 |
| いまの歯止め | — | — | 5万円の小さな口座だけで動かす |
切れたものと、切れていないものの差は、意志の強さではありません。熱くなる前に、やめる条件を決めていたかどうかです。熱くなってから考えた条件は、続ける理由にしかなりません。
もう1つ。つぎこんだものが、お金だけのときは、まだ切れます。時間と、知識と、「自分はこれにくわしい」という気持ちまでつぎこむと、切るのが急にむずかしくなります。
6. 守り方
- 始める前に、やめる条件を、数字で書く。いくら使ったら。何時間使ったら。いつまでに何が起きなかったら
- 「いま、ゼロから始めるとしたら、これを選ぶか」と聞く。選ばないなら、これまでに使ったものは、続ける理由になりません
- やめられないなら、大きさに上限をつける。やめる、続ける、の2つだけで考えると、続けるほうが勝ちます。「続けるが、ここまで」という3つ目を作ります
- 使ったお金を、授業料と呼ばない。そう呼ぶと、「まだ学ぶことがある」と、続ける理由になります。使ったお金は、ただの、使ったお金です
同じ形のくせについては、一貫性の原理とはにも書きました。過去に払ったものではなく、これから失うものがこわくて動けない場合は、現状維持バイアスのほうです。
7. まとめ
- コンコルド効果(サンクコスト効果)は、すでに使ったお金や時間がもったいなくて、損だと分かっていることをやめられなくなる働き
- 判断に使うのは、これから使うものと、これから返ってくるものだけ
- 私が切れたのは、直らない機械(30分・2時間・15%の条件)と、月20万〜30万円の記事の外注(登録される記事か、という物差し)
- 切れていないのは、FXの自動売買。やる価値がないと結論が出ているのに、身につけた知識を手放せずに続けている。歯止めは、小さな口座でしか動かさないことだけ
- 差を作るのは、意志ではなく、熱くなる前にやめる条件を決めていたかどうか
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