毎日同じことの繰り返しで、生きている意味が分からない。会社に向いていないのかもしれない。そう思って検索した人に、先に私の立場を書いておきます。
私は、会社員として働いたことがありません。大学生のころから古本の転売を始めて、そのまま20年近く、自宅で1人で働いてきました。上司も、通勤も、月曜の朝礼もありません。仕事の中身も時間も、全部自分で決めてきました。
それでも私は、同じ場所に落ちました。古本の転売がいちばん回っていた時期に、約2年、ベッドから起き上がれなくなりました。お金は入ってきていました。それでも楽しくなく、「自分は社会の誰の役にも立っていない」という感覚だけが残りました。梱包と発送が遅れ、お客さんからクレームが来ても、体が動きませんでした。
この経験から言えることを、先に書きます。毎日同じことの繰り返しがつらいのは、会社にいるからとは限りません。会社に入らなかった私にも起きました。原因は「会社」ではなく、繰り返している仕事から、何かが抜け落ちていることです。抜け落ちているものが分かれば、会社を辞めなくても変えられることがありますし、辞めても変わらないことも分かります。
この記事では、私の2年間を材料に、繰り返しがつらくなる理由を3つに分け、あなたのつらさがどれに当たるかを判定します。そのうえで、「会社員に向いていないのか」を、会社員をしたことがない側から判定します。
1. 結論:つらさの正体は「繰り返し」ではなく、抜け落ちた1つ
同じことを繰り返すこと自体は、悪いことではありません。私は古本の転売を、「同じことを繰り返せる」と気づいて始めました。就活の帰りに入った古本屋で、数日前にAmazonで買った本が100円で売られていて、買って出品したら30分で売れた。これを繰り返せばいい、と思ったのが始まりです。繰り返せることは、最初は魅力でした。
その同じ繰り返しが、数年後には苦痛になりました。変わったのは、繰り返しの中身ではなく、そこから抜け落ちたものです。人が自分から動き続けるために必要なものを、心理学の自己決定理論は3つに分けています。自分で決めていること(自律性)、できている・上達していること(有能感)、誰かとつながっていること(関係性)の3つです(理論の説明は自己決定理論とはに書きました)。
| 抜け落ちたもの | 感じ方 | 私の2年間 |
|---|---|---|
| 自律性(自分で決めている) | やらされている。自分で選んだ気がしない | 満点だった。何をいつやるか、全部自分で決めていた |
| 有能感(上達している) | もう新しくできるようになることがない。ただこなしている | 抜けていた。仕入れも出品も、もう考えずにできていた |
| 関係性(誰かとつながっている) | 誰の役にも立っていない。やってもやらなくても同じ | 抜けていた。いちばん重かったのはここだった |
会社を辞めたいと思うとき、多くの人は1行目の「自律性」を取り戻そうとします。上司に決められない働き方をすれば、楽になると考えます。私はその1行目が最初から満点でした。それでも壊れたので、自律性だけでは足りないということは、身をもって言えます。
2. 私の例:稼げていたのに、2年起き上がれなかった
もう少し具体的に書きます。
古本の転売が一番回っていた時期、仕事はほとんど作業になっていました。本を仕入れて、状態を見て、出品して、売れたら梱包して発送する。どこで何を仕入れればいいかは分かっていて、判断に迷うことはほぼありません。上達が止まった状態です。
同じころ、「自分は社会の誰の役にも立っていない」と感じるようになりました。本を右から左に動かして、差額をもらっているだけです。買った人から感謝されることもありません。入金の通知は来るのに、何も感じませんでした。
それが約2年続きました。ベッドから起き上がれない日が増え、発送が遅れ、クレームが入りました。どれだけ儲かっていても、やる気が起きませんでした。
戻ったきっかけは、ジョギングとウォーキングです。少し良くなり、そのあとジムで筋トレを始めて直りました。ただ、直ったときには、もう古本の転売が嫌になっていて、別の分野を探し始めていました。何年もかけて手法を変えたあと、最終的には物販のプレイヤーをやめ、物販を教える側、コンサルの側に移りました。教えた相手の数字が伸びると、感謝されます。抜けていた関係性が、そこで戻りました。
この2年間については、テレワークで頭おかしくなる原因|20年一人で働いて、壊れたのは1回だけでしたでも、住まいと働き方の側から書いています。同じ仕事が、稼げているのに苦痛になっていった過程は、フロー状態とはで「難しさと技能のつり合い」の表を使って説明しました。
3. 判定:あなたの「繰り返し」から抜け落ちているのはどれか
次の3つの質問に答えると、どれが抜けているかが出ます。正解はありません。いまの仕事を思い浮かべて、近いほうを選んでください。
「繰り返し」から抜け落ちたもの判定
Q1. 仕事の進め方や順番を、自分で決められていますか?
Q2. この1年で、前はできなかったのに、できるようになったことはありますか?
Q3. 自分の仕事で、誰かが助かった・喜んだと感じることはありますか?
私の2年間は、Q1が「決められている」、Q2とQ3が「ない」でした。自律性があるのに壊れた、という組み合わせです。
4. 会社員に向いていないのか:会社員をしたことがない側からの判定
「会社員 向いてない」と検索する人は多いと思います。私は会社員になりませんでした。その理由を正直に書くと、向いていないと判定したからではなく、ほかに行ける場所があったからです。
就職が決まりかけていたころ、頼んでインターンをさせてもらいました。ホームページの更新を任されて、3〜4時間かけても全くできませんでした。隣の席では、1年先に入社した年下の先輩が、上司に延々と怒られ続けていました(そのときの席のことは傍観者効果とはに書きました)。社会人になる確信が持てませんでした。
それで内定を辞退し、証券会社を受け直して最終面接で落ち、古本の転売で食べていくと決めました。師匠の指導どおりにやったら収入が月50万円まで上がり、就職する必要がなくなりました。つまり私は、会社員に向いているかどうかを確かめる前に、会社の外に逃げ場ができた人間です。
この経験から、「向いているか」より先に見るべきことが2つあると考えています。
4-1. 向いているかより、逃げ場があるか
同じ会社の中でしんどさが続くとき、それが性格の問題なのか、逃げ場がないことの問題なのかは、外から見ると区別がつきません。私は全寮制の学校でも、仲間と作った会社でも、周りに合わせられずにしんどくなりました。分かったのは、我慢の量ではなく、逃げ場の数で結果が変わるということでした(同調圧力とはに書きました)。
会社以外の収入源、会社以外の居場所が1つでもあると、同じ仕事の見え方が変わります。辞めるかどうかを決める前に、逃げ場を1つ作れるかを先に考えてください。いきなり会社を辞める必要はありません。副業を選ぶときの考え方は地味に儲かる副業の見つけ方に書いています。
4-2. 会社が無料でくれているものを、自分で作れるか
会社を辞めると、上司も朝礼もなくなります。同時に、会社が黙って渡してくれていたものも、なくなります。20年1人で働いてきた側から見ると、それは次の4つです。
| 会社が渡しているもの | なくなると起きること |
|---|---|
| 時間の枠(始業と終業) | いつ始めていつ終えるかを、毎日自分で決め続けることになる |
| 場所の切り替え(通勤) | 仕事と休みの境目が消える |
| 進み具合の確認(上司・同僚) | ずれていても、誰も気づいてくれない |
| 所属(どこかの一員であること) | 「誰の役にも立っていない」に落ちやすくなる |
私が2年間起き上がれなかったのは、4行目がなかったからだと思っています。会社員に向いていないと感じていても、この4つを自分で作り直せないなら、会社の外に出たほうがつらくなることがあります。私が何で置き換えたかは、テレワークで頭おかしくなる原因に全部書きました。
判定をまとめると、こうなります。
| あなたの状態 | 私の見立て |
|---|---|
| 3章でQ1だけが「決められない」。会社の外にも逃げ場がある | 会社員という形が合っていない可能性が高い。外に出る準備をしてよい |
| 3章でQ1だけが「決められない」。逃げ場はまだない | 辞める前に、逃げ場を1つ作るのが先 |
| 3章でQ2かQ3が「ない」 | 会社の外に出ても同じことが起きる可能性がある。私がそうだった。仕事の中身のほうを変える |
5. 繰り返しを変える手順:会社を辞める前にやること
5-1. 有能感が抜けているなら:同じ仕事に、1段むずかしい課題を足す
上達が止まった仕事は、簡単すぎる仕事です。中古品の仕事で言えば、仕入れて売るだけの転売は作業になりやすく、壊れた物を直して売る修理は、直せるかどうかが毎回違うので、考えることが残ります。同じ業界の中でも、難しさの段はこれだけ違います。
会社員なら、同じ部署の中で、まだやったことのない種類の仕事を1つ引き受けるだけでも、この行が変わることがあります。仕事そのものを変えるより、難しさの段を1つ上げるほうが先です。
飽きること自体は、悪いことではありません。私は飽きっぽい人間ですが、飽きたというのは「その仕事の検証が終わった」という合図だと考えています。その考え方は飽き性は天才なのかに書きました。
5-2. 関係性が抜けているなら:仕事の結果が届く相手を見えるようにする
私に戻ってきたのは、コンサルで相手の数字が伸びて、感謝されたときでした。自分の仕事の先に人がいる、と分かる形に変えたわけです。
会社の仕事でも、自分の作業の先に誰がいるかが見えない部署はたくさんあります。見えないなら、見える場所に行く。社内の異動でも、社外の副業でもかまいません。お金の額より、「誰かが助かった」と分かる回数のほうが、私には効きました。
5-3. 撤退するなら:人生ではなく、単位を小さくして撤退する
それでも今の仕事から離れるなら、全部を一度に捨てないでください。私は20年で7回撤退していますが、毎回、撤退する単位を小さくして決めてきました。何をいつまでに諦めるかの計算は、人生を諦める前に、諦める単位を小さくするに書いています。
5-4. 3つとも足りているのにつらいなら:体を先に動かす
私が戻ったきっかけは、仕事の工夫ではなく、ジョギングとウォーキング、そのあとの筋トレでした。これは医学的な話ではなく、私の場合はそうだった、という話です。考えても動けないときは、考えるのをやめて体を動かすほうが先でした。
6. 受診を考える目安
私は結果的に戻りましたが、2年は長すぎたと思っています。
気分の落ち込みや、眠れない・起き上がれない状態が長く続き、仕事や生活に支障が出ているなら、自分で工夫する段階を過ぎているかもしれません。心療内科や精神科、かかりつけ医に相談してください。
「生きている意味が分からない」が、「消えてしまいたい」に近づいていると感じるときは、1人で抱えないでください。厚生労働省のまもろうよ こころに、電話やSNSで相談できる窓口がまとめられています。
7. よくある質問
毎日同じことの繰り返しで、生きる意味が分かりません。
繰り返しそのものより、繰り返しの中から「上達している感覚」か「誰かの役に立っている感覚」が抜けていることが多い、というのが私の経験です。3章の判定で、どれが抜けているかを確かめてください。つらさが長く続いているなら、6章を先に読んでください。
会社員に向いていないか、どうすれば分かりますか?
会社員をしたことがない私からの答えは、「向いているか」より「逃げ場があるか」と「会社がくれている4つを自分で作れるか」を先に見る、です(4章)。会社の外でも同じつらさが起きるかどうかは、3章のQ2とQ3で見当がつきます。
会社を辞めれば、繰り返しから解放されますか?
解放されるのは、上司に決められる部分だけです。私は会社に入らず、全部を自分で決めていましたが、それでも繰り返しがつらくなりました。辞めて変わるのは自律性だけで、有能感と関係性は、仕事の中身を変えないと戻りません。
同じことの繰り返しが好きな人もいますか?
います。そして、その人は間違っていません。上達が続いていて、誰かの役に立っている実感があるなら、繰り返しは安定そのものです。私も古本の転売を始めた最初の数年は、繰り返せることが楽しかったです。
8. まとめ
- 会社員をしたことがない私も、稼げていたのに、繰り返しがつらくて2年起き上がれなかった。原因は会社ではなかった
- つらさの正体は、繰り返しから抜け落ちたもの。自律性・有能感・関係性のどれが抜けているかで、打つ手が変わる
- 会社を辞めて戻るのは自律性だけ。有能感と関係性は、仕事の中身を変えないと戻らない
- 会社員に向いているかより先に、逃げ場があるかと、会社がくれている4つを自分で作れるかを見る
- 考えても動けないときは、体を先に動かす。長く続くなら、1人で抱えずに相談する

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