研究室で「無能だ」と感じてつらい人へ|無能の判定は能力ではなく、評価者の数で決まる

研究室で「無能だ」と感じてつらい人へ|無能の判定は能力ではなく、評価者の数で決まる QOL

「研究室 無能 つらい」「研究室 進捗報告 つらい」「研究室 精神的にしんどい」。この記事に来る検索語は、この三つに集中しています。

先に断っておきます。私は研究室にいたことがありません。研究室の中で何が起きているかは書けません。私に書けるのは、「一人の評価者から無能だと判定された側」の話です。就職活動で、志望していた証券会社の最終面接まで行って落とされました。同じ時期に、私は古本の転売で学費と教科書代と定期代と就活のスーツ代を全部自分で払っていました。同じ人間が、片方の評価者からは無能と判定され、もう片方の買い手からは金を払う価値があると判定されていた。この記事はその二つの判定がなぜ同時に成立するのかを、判定を受けた側から書きます。

「無能」の判定を下しているのは誰か

研究室で自分を無能だと感じるとき、その判定は誰が下しているか。多くの場合、教授一人です。そして判定の場は、進捗報告という一つの場面です。

評価者が一人、評価の場が一つ。判定の母数が一つしかない状態です。母数が一つの判定は、正しいか間違っているか以前に、統計として何も言っていません。理系の人なら、n=1のデータから結論を出す人間を研究室で見たら、どう思うか分かるはずです。それでも自分に対する判定だけは、n=1で「無能」と結論してしまう。これは能力の問題ではなく、判定の母数の問題です。

会社員に置き換えると、「買い手が一社しかいない」状態です。売り手(あなた)が一人で、買い手(評価者)が一者しかいない市場では、価格はその買い手の内部規則で決まります。教授の評価軸が、あなたの価値の全部になる。研究室を変えても、買い手が別の一人に変わるだけで、構造は変わりません。

私が受けた無能判定と、同時に受けていた別の判定

大学生のときの話です。私の大学は卒業研究が必修ではなく、行きたい研究室もなかったので、研究室に所属しませんでした。世の中の定義で言えば、卒業研究すらやらせてもらえなかった落ちこぼれです。

就職活動では証券会社を志望していました。最終面接まで進んで、落とされました。就職市場という評価者からの判定は「不要」です。ここまでが、一つ目の判定です。

同じ時期に、大学3年から始めた古本の転売で、学費、教科書代、定期代、就活のスーツ代、学生団体の勉強会に通う交通費、全部を自分で払っていました。アルバイトはしていません。古本を買った人たちは、私の目利きと判断に金を払っていた。ここが二つ目の判定で、評価者は不特定多数の買い手です。

同じ人間に、同じ時期に、「落ちこぼれ」と「早い段階で経済的に自立した若者」という二つの定義が成立していました。どちらが本当かは、能力では決まりません。評価者の数で決まります。就職市場の判定はn=1でした。買い手の判定はnが数百ありました。私はnが大きいほうを信じて、就職への未練を捨て、転売の師匠を見つけて弟子入りしました。その判断が、いまも続いている仕事の起点です。

研究室であなたが受けている判定は、私が証券会社から受けた判定と同じ構造です。一人の評価者が、一つの軸で、不要と言っている。それは事実ですが、それがあなたの全部だと結論するには、母数が足りません。

進捗報告がつらいのは、評価の場がそこにしかないから

「研究室 進捗報告 つらい」で来た人へ。私は20年、進捗を誰にも報告していません。雇われていないので報告の義務がなく、進捗を確認してくる人間もいない。その代わりに、自分の数字を前月と比べています。メルマガの登録数と売上。伸びていなければ何かがズレている可能性を疑う。人間の評価の代わりに、数字の前月比を置いている。

進捗報告がつらい構造は、はっきりしています。週に一度、一人の評価者に、一つの軸で、見られる。その週に成果がなければ、報告することがない。「進捗なし」と口にした瞬間、無能の判定が一つ積み上がる。評価の場がそこにしかないので、逃げ場がない。

私が転売でやっていたことを、そのまま置き換えると、こうなります。出品した商品が売れなかったとき、私はそれを失敗として数えます。数日で反応の強弱を見極め、駄目なら赤字でも現金化して次に回す。売れなかったことは損ですが、「この商品はこの価格では動かない」という判定が一つ手に入っている。仮説を一つ潰した回数が、私にとっての進捗です。

研究室に置き換えると、「今週は成果がなかった」ではなく、「今週は仮説を二つ試して、二つとも成立しなかった」が進捗です。試した回数と潰した仮説の数は、成果が出ていない週にも積み上がります。それを数えているかどうかで、同じ一週間の報告が変わります。教授がそれを評価するかどうかは、教授の内部規則の話であって、あなたが数えるかどうかとは別の話です。まず、自分の数字を一つ持ってから報告に行ってください。持っていないから、報告の場で判定を受けるだけの側に立たされます。

精神的にしんどいのは、評価の入力が止まっているから

私にも、動けなくなった時期があります。古本の転売を主な仕事にしていた頃で、約2年、金は入ってきていたのにベッドから起き上がれず、梱包と発送が遅れてクレームが入り、それでも動けませんでした。買い手の顔が見えない仕事で、「自分は誰の役にも立っていない」という感覚だけが残っていた時期です。

この話は放置系研究室で「何も身につかない」と感じたらに詳しく書いたので繰り返しませんが、構造だけ言うと、評価者からの入力が止まったとき、人は「自分に価値がない」と結論します。研究室で教授が何も言わないのも、進捗報告で否定だけが返ってくるのも、入力の質は違いますが、「役に立っている」という入力がゼロである点は同じです。

自分では判断がつかないほど落ちていると感じるなら、大学の相談窓口を使ってください。ここから先に書くことは、動ける状態に戻ってからで構いません。

やること:判定の母数を増やす

ここまでの話をまとめると、やることは一つです。評価者を一人から二人に増やす。研究室の外に、あなたの判断に金を払う相手を一つ作る。金額はどうでもよく、「自分の判断で何かを動かし、それに対価を払う人間がいる」という事実が一つあれば、教授一人の沈黙や否定があなたの価値を決める構造が壊れます。

私が大学3年で始めたのは古本でしたが、いま研究室にいる人には、もっと近くに材料があります。研究室で更新されて廃棄されるパソコンやモニター、寮で退去のたびに捨てられるゲーム機や家電。時間があり、金がなく、捨てられる物のすぐ近くにいる。修理して売る側から見ると、条件が揃っている環境です。備品の所有権と廃棄手続きの確認を先に置くこと、1件の計算式、友人が寮で実際にやっていた例は、上の放置系研究室の記事の「金がないなら、研究室と寮に落ちているものを直す」の章にまとめています。修理のどこを見るかはスマホの修理転売で分解しています。

研究室を変える・休学する・中退する、について

この記事の旧版には、研究室の変更、休学、中退という三つの選択肢が、手続きと例文つきで書いてありました。消しました。間違っているからではなく、順番が違うからです。

研究室を変えるというのは、買い手を別の一社に替える行為です。評価者は一人のままで、その一人が別の人間になるだけです。相性が良くなる可能性はありますが、n=1の判定に人生を預けている構造は変わりません。休学も中退も同じで、評価者との関係を切ることはできますが、評価者を増やすことにはなりません。

順番としては、先に評価者を一人増やしてから、研究室をどうするか決めるほうが合理的です。評価者が二人いる状態で下す「研究室を変える」という判断と、一人しかいない状態で下す判断は、同じ結論でも質が違います。前者は選択で、後者は逃避に近い。私が証券会社に落ちたあと就職をやめたのは、転売の買い手という別の評価者がすでにいたからで、面接に落ちたから逃げたのではありません。評価者が一人しかいない状態で研究室を辞めると、辞めた後も判定の母数は一つのままです。

まとめ

研究室で無能だと感じているとき、その判定を下しているのは教授一人で、判定の場は進捗報告一つです。母数が一つしかない判定は、正しいか間違っているか以前に、何も言っていません。

私は就職市場という一人の評価者から不要と判定された同じ時期に、古本の買い手という不特定多数の評価者から対価をもらっていました。同じ人間に「落ちこぼれ」と「経済的に自立した若者」の二つの定義が同時に成立していて、どちらが残るかは能力ではなく評価者の数で決まりました。

やることは、研究室の外に、自分の判断に金を払う相手を一つ作ること。進捗報告には、教授の評価とは別に、自分で数えた数字を一つ持って行くこと。研究室を変えるか辞めるかは、評価者を増やした後で決めること。動けないほど落ちているなら、先に大学の窓口を使うこと。

あなたが無能かどうかは、いまのところ、誰にも分かっていません。判定の母数が足りないからです。母数を増やすのは、教授ではなく、あなたにしかできません。

 

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