先に結論を書きます。修理転売を続けた先にあるのは、在庫を増やすことではなく、頼まれてから直す形に移ることです。相手の物を預かり、前払いで代金を受け取り、直して返す。売れるかどうか分からない物を先に買わないので、部屋も資金も圧迫しません。
そして、この形に移れるかどうかは、修理転売をしている間に決まります。いろいろな物を1台ずつ直して売った人には、受注できる物が残りません。同じ物を繰り返し直して「これなら確実に直せる」という鉄板を1つ作った人だけが、受ける側に回れます。
この記事は初心者の館のSTEP4にあたります。まだ1台も直したことがない人は、修理転売の始め方が先です。
1. 在庫を持つ商売は、どこかで上限に当たる
仕入れて、直して、売る。この形には、続けるほど重くなるものが3つあります。
- 場所:在庫は家の中を圧迫します。全員が自分の部屋から始めて、どこかで置き場所が足りなくなります(せどり部屋の話)
- 家族:中古品は、臭い・汚いと家族に嫌がられることがあります。本人が平気でも、同じ家に住む人は別です
- 資金:買える量は手元の現金で決まります。利益が出ていても、在庫に変わっている間は次が買えません
在庫を持つこと自体が、そもそも合理的ではありません。売れるかどうかが確定する前にお金を払っているからです。
2. 無在庫転売という答えと、その行き止まり
この問題に対して昔からある答えが、無在庫転売です。先に出品しておき、売れてから仕入れて、買った人に届ける。在庫を持たないので、場所も資金も要りません。
私はこれを実際にやっていました。そしてYahoo!オークションとメルカリの両方で、利用の制限や停止を受けています。手元にない物を出品することは、主なプラットフォームの規約で禁止されているからです(規約の中身は無在庫転売の規約の記事にまとめました)。いまは検知の精度も上がっていて、これから入る人に勧められる方法ではありません。
「在庫を持たない」という考え方は正しい。ただ、他人の場所で、他人の商品を使ってそれをやろうとすると、その場所のルールに負けます。
3. 受注は、自分のスキルを使った無在庫です
だから、売る物を他人の商品から自分の作業に替えます。
| 仕入れて直して売る | 無在庫転売 | 修理の受注 | |
|---|---|---|---|
| 先に払うお金 | 仕入れ代+部品代 | なし | なし(部品代は前払いの中から出す) |
| 置き場所 | 売れるまで要る | 要らない | 預かっている間だけ |
| 売れ残り | ある | ない | ない(依頼が先にある) |
| 規約 | 問題なし | 主なプラットフォームで禁止 | 自分の窓口で受けるので、縛られない |
| 必要なもの | 現金と場所 | なし。だから誰でも入れて、すぐ埋まる | 「これは直せる」と言い切れる鉄板 |
最後の行が要点です。無在庫転売が続かなかったもう1つの理由は、誰でもできたことです。受注は、直せる人にしか依頼が来ません。
4. 私の場合:自作パソコン
私がパソコンを自分で組み始めたのは高校生のときです。何台も壊しました。壊しているうちに組めるようになり、組めるようになると、周りから「1台作ってくれ」「構成を考えてくれ」と頼まれるようになりました。こちらから売り込んだことはありません。できる人が近くにいると分かれば、頼みたい人は出てきます。
いまなら、構成を考える部分はAIでできます。組み立ては、本や動画を見ながらやれば、何台かは壊すかもしれませんが、できるようになります。中古パソコンの修理や性能の引き上げ(SSDへの交換、メモリの増設)も、同じ延長にあります。そこまで来た時点で、受注の窓口を開けます。
別の例では、電池が切れたスーパーファミコンのカセットの電池を交換して、自分のネットショップで売っていたことがあります。これは受注ではなく販売でしたが、「同じ作業を繰り返せる物を、自分の場所で扱う」という点では同じ考え方です。
5. 始める順番
5-1. 鉄板を1つ作る
受注を始めてよい目安は、同じ型番・同じ症状を自分の物で繰り返し直して、かかる時間と部品代が毎回ほぼ同じになったことです。自分の在庫で失敗するのは部品代の損で済みますが、人の物で失敗すると弁償と信用の両方を失います。
だから、修理転売の段階での仕入れの選び方が変わります。利益だけを見れば毎回違う物を買っても構いませんが、受注を見据えるなら、同じ型番を繰り返すほうに寄せます(最初の1台の選び方は4台目は何を買うか)。1台ごとに付けた記録(症状、原因、部品、時間)が、そのまま「この症状なら、この料金で、この日数で直せます」という受注のメニューになります。記録は修理転売の記録シート(Excel・登録不要)で付けられます。「型番別」のシートに出る平均の作業時間と平均の部品代が、料金と日数の根拠です。
5-2. 窓口を作る
SNSのアカウントか、ホームページです。ホームページは、HTMLやWordPressが分からなくても、いまはAIに作らせることができます。載せるのは次のことです。
- 受ける物(型番と症状を具体的に)と、受けない物
- 料金、日数、送り方
- 直らなかったときの扱いと、保証の内容
- これまでに直した実例(写真と、何をしたか)
インターネットで申し込みを受けてサービスを提供する場合、特定商取引法の通信販売にあたり、事業者の氏名・住所・電話番号、料金、支払いの時期と方法、提供の時期などを表示する義務があります。前払いで受ける場合の通知の決まりもあります。始める前に、消費者庁の特定商取引法ガイド(通信販売)を一度読んでください。
5-3. 人を集める
方法は3つです。
| 方法 | 中身 | 速さ |
|---|---|---|
| 役に立つ記事を増やして検索から | 「型番+症状」で、自分が直した記録を記事にする。困っている人は、その言葉で検索します | 遅い。ただし積み上がる |
| 広告 | 同じ「型番+症状」の検索に広告を出す | いちばん速い |
| SNS | 直す前と直した後を出し続ける | 中間。合う人と合わない人がいる |
どれを選んでも、材料は5-1の記録です。広く「修理します」と言うのではなく、「この型番のこの症状を直します」と狭く言うほうが、探している人に見つかります。買取の集客でも同じことが言えて、地域や商材を絞ると全国の大手と戦わずに済みます(買取ビジネスの記事の集客の章)。
5-4. 料金は前払い。書面を作る
代金は、作業の前に受け取ります。後払いにすると、直したあとで連絡が取れなくなる人が出ます。前払いなら、部品代も自分の財布から出さずに済みます。
あわせて、依頼のたびに同じ形式の書面(受付票)を作って、相手に同意してもらいます。契約書のような書類が1枚あるだけで、あとの揉めごとの大半は防げます。書いておくのは次の項目です。
- 預かった物の型番・シリアル・外観の状態(傷の写真)
- 依頼された症状と、作業の範囲(頼まれていない箇所は触らない)
- 直らなかった場合の扱い(診断料だけ受け取って返す、返送料はどちらが持つか)
- 中のデータは保証しないこと。送る前に相手側でバックアップを取ってもらうこと
- 交換して外した部品の扱い
- 保証の期間と、保証の対象にならない場合(落下、水濡れ、別の箇所の故障)
- 修理後に引き取りがない場合の保管期限
文面の下書きはAIで作れます。内容に不安が残るなら、最初の1回だけ専門家に見てもらってください。
5-5. 送ってもらい、直して、返す
- 相手が申し込み、前払いする
- 相手が荷物を送る。届いたら、箱を開けるところから動画か写真で記録する(輸送中の破損と、最初からあった傷を区別するため)
- 症状を確認する。申告と違う場合は、作業に入る前に連絡する
- 直す。作業前と作業後の写真、動作確認の動画を残す
- 追跡のある方法で返送し、写真と動画を相手に送る
5-6. 保証を付ける
直した箇所について、2週間から1か月の初期不良の保証を付けます。同じ症状が出たら無償でやり直す。保証があるから、前払いに応じてもらえます。そして保証を付けられるのは、鉄板の修理だけです。再発の割合を自分の記録で知らない修理に保証を付けると、やり直しの時間で利益が消えます。
6. 受けないもの
- スマートフォン・携帯電話:総務省の登録修理業者制度の対象です。登録を受けていない者が修理すると、修理ではなく改造の扱いになり、技適の表示を除去しなければならない、と説明されています。表示の除去を怠ると罰則があります。登録なしで受けてよい仕事ではありません
- 自分の物で直したことがない症状:人の物で練習しない
- データを取り出すことが目的の依頼:失敗したときに取り返しがつかない
- 相手の言い値に合わせないと成立しない依頼:料金表を先に出しておき、交渉は受けない
「直らなかったので、このまま買い取ってほしい」と言われることがあります。預かって直して返すだけなら買い取りではありませんが、買い取るなら古物商の許可と、相手の本人確認、帳簿への記録が要ります(古物商許可の記事)。許可があれば、これはそのまま仕入れの入口になります。判断に迷う形があれば、所轄の警察署に確認してください。
7. 計算機:その料金で成り立つか
受注は在庫の損がない代わりに、やり直しと送料で利益が削られます。料金を決める前に入れてみてください。初期値は入力例です。
| やり直しがない場合の利益 | — |
|---|---|
| やり直しを見込んだ1件あたりの利益 | — |
| やり直しを見込んだ時給 | — |
やり直し1回の費用は「部品代+往復の送料(返送料の2倍)+同じ作業時間」で計算しています。やり直しの割合は、自分の在庫で同じ修理を繰り返した記録から入れてください。記録がない修理は、まだ受ける段階にありません。
8. 受注を見据えると、修理転売の見え方が変わります
プラットフォームの中で修理転売をしている間の目的は、もちろん稼ぐことです。ただ、その先に受注があると分かっていると、同じ作業の意味が変わります。
- 仕入れは「今回いくら儲かるか」だけでなく「この型番を自分の鉄板にできるか」で選ぶようになる
- 1台ごとの記録は、帳簿ではなく将来の料金表と記事の材料になる
- 出品ページの「何を直したか」の説明は、そのまま実績の見本になる
そして鉄板が1つできると、周りに足せるものが出てきます。たとえば腕時計なら、修理の受注に、周辺の道具の販売、直せない物の買取が足せます。1つの得意を中心に、受注・販売・買取が同じ客層の上に重なります。在庫を積み増すのとは別の伸ばし方です。買取の側の考え方は買取ビジネスは儲からないのかに書きました。
9. まとめ
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 修理転売をしながら、同じ型番・同じ症状を繰り返して鉄板を1つ作る。記録を付ける |
| 2 | 窓口を作る(SNSかホームページ。受ける物・受けない物・料金・保証を明記) |
| 3 | 「型番+症状」で人を集める(記事・広告・SNS) |
| 4 | 前払いで受け、書面を交わし、届いた時点から記録する |
| 5 | 直して返し、2週間〜1か月の保証を付ける |
在庫を持たない形に移れるのは、直せる物がある人だけです。だから始める場所は、いまやっている修理転売の、次の1台の選び方です。

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