会社都合退職と自己都合退職の違い|失業保険の差、会社都合になる条件(残業・賃金・ハラスメント)、履歴書の書き方、国保の軽減(判定の計算機つき)

会社都合と自己都合 失業保険の差と決まり方 生き方・キャリア

「会社都合退職」「自己都合退職」「会社都合退職 失業保険」「会社都合退職 条件」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。

ふだん「会社都合」と呼ぶ辞め方と、雇用保険の区分は一致しません。失業保険で差がつくのは雇用保険の区分で、一般に会社都合と呼ばれるのは主に特定受給資格者(倒産・解雇・退職勧奨のほか、残業が多い・賃金が下がった・ハラスメントなどで辞めた人)です。自己都合(正当な理由のない自己都合)との違いは、失業保険の受給資格(離職前1年に6か月以上でよい)、給付制限(なし。自己都合は原則1か月で、一定の教育訓練を受けると解除)、所定給付日数(年齢と加入期間で最長330日。自己都合は90〜150日)、国民健康保険料の軽減(前の年の給与所得を30/100として計算)の4つです。自分から辞めた形でも、離職前6か月のうち連続3か月以上の残業が毎月45時間を超えた、賃金が85%未満に下がったなどの事実を資料で示せれば、会社都合と判定されることがあります。病気・介護・配偶者の転勤などで辞めた人は「正当な理由のある自己都合」(特定理由離職者)で、給付制限はありませんが、日数は自己都合と同じです。区分を最後に決めるのはハローワークで、会社と本人が話し合っても、事実と違う理由にはできません。事実と違う離職理由で不正に失業保険を受けると、受けた額の返還に加えて、その2倍以下の納付(いわゆる3倍返し)を命じられることがあり、悪質なら刑事罰もありえます。会社の側は、助成金の種類と、離職の理由・人数・割合・基準期間によって、助成金を受けられなくなる場合があります。失業保険は、すぐに働ける状態で仕事を探していることが前提です。42歳・加入12年・月給30万円なら、自己都合は120日で756,840円、会社都合は240日で1,513,680円で、差は756,840円です。辞め方と離職の事情から、会社都合に当たるか、失業保険の差、履歴書の一行と面接の説明、国民健康保険の軽減を出す計算機を11章に置きました。

知りたいこと 答え 章
何が違うか 受給資格・給付制限(自己都合は原則1か月、一定の教育訓練で解除)・所定給付日数・国保の軽減。日額の計算は同じ 2章
会社都合になる条件 倒産・解雇・退職勧奨・雇止め(3年以上など)のほか、残業・賃金の低下や未払い・ハラスメント・事業所の移転など 3章
正当な理由のある自己都合 病気・介護・妊娠出産・配偶者の転勤などで通勤困難。給付制限なし、日数は自己都合と同じ 4章
失業保険の差 月給30万円・42歳・加入15年なら120日分(756,840円)の差 5章
誰が決めるか ハローワーク。離職票-2の本人の欄で異議を出し、資料を持っていく 6章
会社都合にしてもらえるか 事実と違う理由にはできない。事実と違う理由で不正に受けると、返還に加えて2倍以下の納付(いわゆる3倍返し)、悪質なら刑事罰もありうる 7章
会社側のデメリット 助成金の種類と、離職の理由・人数・割合・基準期間によって、助成金を受けられなくなる場合がある 7章
退職金 差があるかは会社の規程しだい。統計の平均は大卒で会社都合1,738万円・自己都合1,441万円 8章
国保の軽減 会社都合・特定理由離職者で65歳未満なら、給与所得を30/100として計算。届出が要る 9章
履歴書 実際の退職の経緯から「会社都合により退職」「一身上の都合により退職」などのように簡潔に 10章
自分の場合 区分のチェック・失業保険の差・履歴書と面接の文面・国保の軽減を計算 11章

1. 先に、この記事の数字について

この記事の決まりと数字は、雇用保険法・同施行規則・国民健康保険法施行令・労働基準法・刑法の条文(e-Gov法令検索、2026年10月23日時点の現行版)と、厚生労働省・ハローワーク・労働局・区の公式の資料から取り、計算機にしています。会社都合(特定受給資格者)に当たるかの基準の数字は、厚生労働省の「雇用保険に関する業務取扱要領」(2026年4月の版)とハローワークの「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」によります。持っていく資料の例は、厚生労働省の2014年版のパンフレットのものです。最新版のパンフレットは読み取れなかったので、資料の細かい違いはハローワークで確かめてください。基本手当日額は2026年8月1日からの計算式、国民健康保険料は東京23区の2026年度の料率です。

失業保険の日額・日数・振込日の細かい計算は、失業保険はいくらもらえるかの記事に書いています。この記事は、会社都合と自己都合がどう決まり、何が変わるかを中心にしています。

2. 会社都合と自己都合は何が違うか

雇用保険法の条文が使っている区分は、「特定受給資格者」(23条2項)、「特定理由離職者」(13条3項)、「正当な理由がなく自己の都合によつて退職」(33条1項)です。一般にいう会社都合はおおむね特定受給資格者、自己都合は正当な理由のない自己都合を指します。区分ごとの違いは次のとおりです。

区分 離職理由コードの例 受給資格(被保険者期間) 給付制限 所定給付日数 国保の軽減(65歳未満)
特定受給資格者(会社都合) 11・12・21・22・31・32 離職前1年に6か月以上でもよい なし 年齢と加入期間で90〜330日 対象
特定理由離職者(雇止め) 23 同上 なし 離職日が2027年3月31日までなら特定受給資格者と同じ 対象
特定理由離職者(正当な理由のある自己都合) 33・34 同上 なし 90・120・150日(自己都合と同じ) 対象
正当な理由のない自己都合 40・43・45 離職前2年に12か月以上 原則1か月(5年間に2回以上の自己都合で受給資格の決定を受けていれば3か月)。2025年4月以降に受講を始めた一定の教育訓練を離職前1年以内に受けた、または離職後に受けると解除 90・120・150日 対象外
重責解雇 50・55 離職前2年に12か月以上 3か月 90・120・150日 対象外
期間満了(上の雇止め以外)・定年 24・25 離職前2年に12か月以上 なし 90・120・150日 対象外

離職理由コードは、ハローワークが渡す雇用保険受給資格者証の離職理由の欄に入る2桁の数字です。意味は大田区のコード表と鹿児島労働局のしおりで確かめました。コードの全部を1つにまとめた厚生労働省本省の資料は見つからず、34の今の定義や40・43・45の違いは確かめられていません。

障害のある人などの就職困難者には、別の日数の表があります(45歳以上65歳未満で加入1年以上なら360日など)。この記事の表と計算機には入れていません。

また、失業保険は、働く意思と能力があるのに仕事に就けない状態(失業)にある人に出ます(雇用保険法4条3項)。病気・けが・妊娠・出産・育児・介護などですぐに働けない間は、区分が会社都合でも受け取れません。30日以上続けて働けないときは受給期間の延長を申請し、働けるようになってから受給の手続きをします(退職後にやることの記事の5章)。

離職理由で変わらないのは、基本手当日額の計算です。日額は離職前6か月の賃金(賞与を除く)の合計を180で割った賃金日額に、50〜80%(60〜64歳は45〜80%)を掛けて出し、年齢ごとの上限があります(2026年8月1日から、30歳未満7,450円・30〜44歳8,270円・45〜59歳9,110円・60〜64歳7,830円)。変わるのは、受け取れるかどうか、いつから受け取れるか、何日分受け取れるかです。

3. 会社都合(特定受給資格者)になる条件

特定受給資格者には、倒産や解雇のように会社から辞めさせられた場合のほかに、自分から辞めた形でも、会社側の事情で辞めざるを得なかった場合が入ります。主な項目と基準の数字、確かめに使う資料の例は次のとおりです。

項目 当たる条件 持っていく資料の例(2014年版)
倒産・事業所の廃止 破産などの申立て・不渡手形、解散の議決、事業活動の停止で再開の見込みがない 申立てを受理した証明書類、解散の議決の議事録の写しなど
人員整理による大量の離職 1か月に30人以上の離職の予定の届出(大量雇用変動の届出)が出された場合と、被保険者の3分の1を超える人が離職した場合(離職日の1年前の日と比べる)の、どちらか ―
解雇 自分の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)を除く 解雇予告通知書、退職証明書、就業規則など
退職勧奨・希望退職 直接・間接に退職を勧められた。希望退職は、人員整理が目的で導入が離職前1年以内・募集期間3か月以内のもの。いつでもある早期退職優遇制度への応募は除く 希望退職募集要綱、応募したことが分かる資料など
長時間労働 離職前6か月のうち、時間外労働が連続3か月以上で毎月45時間を超える、どれか1か月で100時間以上、連続2か月以上の平均で80時間を超える タイムカード、賃金台帳、給与明細書など
賃金の低下 85%未満に下がった(下がることになった)。予見できなかった場合に限る 労働契約書、就業規則、賃金規定、賃金が下がった通知書など
賃金の未払い 賃金(退職金を除く)の3分の1を超える額が支払期日までに払われなかった。その月から1年以内の離職。何か月続いたかなどの期間の条件は今の資料で確かめられなかったので、金額だけで当たるとは限らない 賃金台帳、給与明細書、預金通帳など
ハラスメント 故意の排斥・著しい冷遇・嫌がらせ。事業主に相談して概ね1か月たっても改善されないなど 配置転換の辞令の写し、就業規則、労働契約書など
事業所の移転・遠い所への転勤 通勤が往復概ね4時間以上になる 移転の通知、通勤経路の時刻表、辞令の写しなど
労働条件が契約と違った 明示された労働条件が事実と著しく違った 労働契約書、就業規則など
休業が続いた 会社の都合の休業が引き続き3か月以上 賃金台帳、給与明細書など
有期契約の雇止め(3年以上) 1回以上更新され、続けて3年以上雇われ、本人は更新を希望していた 労働契約書、雇入通知書、契約更新の通知書など
有期契約の雇止め(更新の確約あり) 雇入通知書などで更新すると明示され、本人は更新を希望していた 労働契約書、雇入通知書など
事業所の業務の法令違反 違反の事実を知ってから3か月以内に離職 違反の事実が分かる資料

長時間労働は、ハローワークの「範囲の概要」の書き方に合わせて時間外労働としています。休日労働を含めるかなどの数え方と、45時間・80時間は「超える」、100時間は「以上」という境目(業務取扱要領の書き方。ハローワークのページは100時間に「以上」とも「超」とも付けていない)は、ハローワークで確かめてください。賃金の未払いは、2014年版のパンフレットでは「2か月連続、または離職前6か月のうち3か月」という期間が付いていますが、今の業務取扱要領の該当部分からは確かめられませんでした。計算機では、賃金の未払いを当たりうる項目として出しますが、期間の条件は判定に使っていません。退職勧奨で辞めた場合の考え方は退職勧奨の記事に書いています。

解雇(重責解雇を除く)は会社都合(特定受給資格者)に当たります。解雇予告手当の計算、不当解雇かのチェック、解雇理由証明書の請求、雇い止めの扱いは解雇・雇い止めされたときの記事にまとめました。

離職の直前の時間外・休日労働がこの章の基準を超えていたかとあわせて、残業代が正しく払われていたかは残業代の計算方法の記事の計算機で確かめられます。

4. 正当な理由のある自己都合(特定理由離職者)

特定理由離職者には2つの種類があります。

  • 雇止め(範囲1):有期契約が満了し、本人は更新を希望したのに合意に至らなかった場合。「更新する場合がある」のように明示はあるが確約がない場合が当たります。契約で「更新しない」と明示されていた場合は、原則として当たりません。離職日が2027年3月31日までなら、所定給付日数は特定受給資格者と同じになる特例があります(雇用保険法附則4条)。
  • 正当な理由のある自己都合(範囲2):体力の不足・心身の障害・病気・けがなどで仕事を続けるのが難しい(医師の診断書など)、親などの看護の期間がおおむね30日を超える見込み、妊娠・出産・育児で30日以上働けず受給期間の延長を受けた、結婚や配偶者の転勤などで通勤が往復概ね4時間以上になった、などです。

どちらも給付制限はなく、受給資格は離職前1年に6か月以上でもよく、国保の軽減の対象です。ただし範囲2の所定給付日数は、正当な理由のない自己都合と同じ90・120・150日です。介護で辞める場合の手当は介護休業給付金の記事、病気で働けないまま辞める場合は傷病手当金の記事に書いています。

5. 失業保険の差:日数・給付制限・最初の振込

月給30万円(離職前6か月とも同じ、賞与を除く)の人で、正当な理由のない自己都合と会社都合(特定受給資格者)の所定給付日数と総額を比べると、次のとおりです(計算。2026年8月1日からの計算式)。

離職日の年齢 加入期間(算定基礎期間) 基本手当日額 正当な理由のない自己都合 会社都合(特定受給資格者) 差
28歳 3年 6,307円 90日・567,630円(給付制限1か月) 90日・567,630円(給付制限なし) 0日・0円
28歳 8年 6,307円 90日・567,630円(給付制限1か月) 120日・756,840円(給付制限なし) 30日・189,210円
33歳 8年 6,307円 90日・567,630円(給付制限1か月) 180日・1,135,260円(給付制限なし) 90日・567,630円
42歳 8年 6,307円 90日・567,630円(給付制限1か月) 180日・1,135,260円(給付制限なし) 90日・567,630円
42歳 15年 6,307円 120日・756,840円(給付制限1か月) 240日・1,513,680円(給付制限なし) 120日・756,840円
50歳 15年 6,307円 120日・756,840円(給付制限1か月) 270日・1,702,890円(給付制限なし) 150日・946,050円
50歳 25年 6,307円 150日・946,050円(給付制限1か月) 330日・2,081,310円(給付制限なし) 180日・1,135,260円
62歳 25年 5,348円 150日・802,200円(給付制限1か月) 240日・1,283,520円(給付制限なし) 90日・481,320円

所定給付日数を決める加入期間(算定基礎期間)は、同じ会社で被保険者だった期間です。前の会社の期間も、前の会社を辞めてから1年以内に今の会社で加入し、その間に失業保険(基本手当)を受けていなければ通算します(雇用保険法22条3項)。受給資格(離職前2年に12か月以上など)を数える被保険者期間とは別のものです。

差が出るのは、加入期間が長く年齢が高いほどです。30歳未満で加入5年未満なら、どちらも90日で差はありません。自己都合は給付制限が原則1か月あるので、最初に受け取れるのも遅くなります。受け取りまでの流れは、求職の申込み(受給資格の決定)→待期7日→(自己都合なら)給付制限→失業の認定→振込です。認定日はハローワークが指定します。ハローワークの案内では、給付制限がない人の最初の振込は、求職の申込みから約1か月後(初回の認定日の約1週間後)です。給付制限がある人は、給付制限が終わった後の認定日から支給され、その日数を全国一律に書いた国の資料は見つかりませんでした。計算機が出す日付は、この流れに置いた参考の日程です。

全日数を受けるには、離職日の翌日から1年の受給期間の中に収まる必要があります(所定給付日数330日の人は1年と30日)。日額の出し方と振込日の詳しい計算は失業保険の記事、離職票が届くまでは離職票の記事に書いています。

6. 区分の決まり方:離職票-2と、最後に決めるハローワーク

会社は、雇用保険の資格喪失届に離職証明書を添えてハローワークに出します。離職証明書の離職理由の欄では、会社が「倒産等」「定年による離職」「契約期間満了等」「解雇・重責解雇・希望退職の募集又は退職勧奨」「労働者の判断(職場の事情)」「労働者の個人的な事情による退職(一身上の都合、転職希望等)」「その他」から1つを選び、具体的な事情を書きます。辞めた本人は、その記載を確かめて、離職者本人の判断の欄で「異議 有り・無し」に○をつけます。これが離職票-2として本人に届きます。

離職理由を決めるのはハローワークです。ハローワークは、「事業主一方の主張のみで判定することはありません。」としていて、会社と本人の主張を客観的な資料で確かめて判定します。会社が「一身上の都合」と書いていても、3章の事実を資料で示せれば、会社都合と判定されることがあります。異議があるときは、離職票-2の本人の欄で「異議有り」に○をつけ、受給手続きのときに離職票と、離職の理由を証明できる資料をハローワークに出します(雇用保険法施行規則19条)。

ハローワークの処分に不服なときは、処分を知った日の翌日から3か月以内に、都道府県労働局の雇用保険審査官に審査請求ができます(雇用保険法69条)。決定に不服なら、決定書が届いた日の翌日から2か月以内に労働保険審査会へ再審査請求ができます。

7. 「会社都合にしてもらう」ことはできるか:不正と会社側への影響

7-1. 事実と違う理由は不正になる

会社と本人が「会社都合ということにしよう」と合意しても、それだけでは区分は決まりません(6章)。厚生労働省は、会社が離職理由に虚偽の記載をした場合、「偽りその他不正の行為」として、その理由で不正に受給した人と連帯して返還・納付命令(いわゆる3倍返し)の対象になり、詐欺罪などで処罰される場合があるとしています。本人が離職票の離職理由について虚偽の申告をすることも不正行為です。

事実と違う離職理由で不正に失業保険を受けると、その日以後の基本手当が支給されず(雇用保険法34条)、受けた額の返還に加えて、その2倍以下の納付(いわゆる3倍返し)を命じられることがあり(同法10条の4)、悪質なら刑事罰もありえます。会社都合にしたいときにできるのは、3章の事実があるなら、その資料をそろえてハローワークに出すことです。

7-2. 会社側のデメリット:助成金

会社にとっての影響は、助成金です。助成金の種類と、離職の理由・人数・割合・基準期間によって、受けられなくなる場合があります。厚生労働省の離職証明書の注意書きは、1人以上の被保険者を事業主の都合で解雇(退職勧奨・解雇予告を含む)した事業主や、一定の割合以上の特定受給資格者を出した事業主には、雇い入れ関係の助成金が支給されないとしています。例えば、特定求職者雇用開発助成金とキャリアアップ助成金(正社員化コース)は、雇い入れ(正社員への転換)の日の前日から6か月前の日から1年を経過する日までの間に事業主の都合で離職させた事業主を対象外とし、特定受給資格者が3人を超え、かつ被保険者の6%を超える事業主も対象外です。

離職理由によって会社の雇用保険料が変わる仕組みがあるかは、公式の資料で確かめられませんでした。

退職代行を使って辞めたことで離職理由の区分が変わると書いた公式の資料は見つかりませんでした。区分は、この記事の基準でハローワークが判断します。退職代行の運営元ごとの違いは退職代行の記事にまとめました。

8. 退職金:差があるかは会社の規程しだい

退職金は法律で必ず設けるものではなく、設ける場合は就業規則に、適用される人の範囲、決め方・計算・支払の方法と時期を書く決まりです(労働基準法89条)。厚生労働省のモデル就業規則は、支給率を「各企業の実情に応じて決めてください。」としています。会社都合と自己都合で支給率が違うかは、自分の会社の退職金規程で確かめます。

厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」で、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者の1人平均の退職給付額(万円)を退職の理由ごとに見ると、次のとおりです。

退職の理由 大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 高校卒(管理・事務・技術職) 高校卒(現業職)
定年 1,896万円 1,682万円 1,183万円
会社都合 1,738万円 1,385万円 737万円
自己都合 1,441万円 1,280万円 921万円
早期優遇 2,266万円 2,432万円 2,146万円

平均の値で、退職の理由ごとに勤続年数・年齢・会社の規模の構成が違うので、「同じ人が会社都合で辞めるといくら増える」とは読めません(高校卒の現業職は会社都合のほうが低くなっています)。前回(平成30年)の調査では、大卒の会社都合は2,156万円で定年(1,983万円)より高く、今回とは順番が逆です。退職金の税金と手取りは退職金の平均の記事に書いています。

9. 国民健康保険の軽減:給与所得を30/100として計算

特定受給資格者と特定理由離職者は、国民健康保険に入ると、前の年の給与所得を30/100として保険料を計算する軽減を受けられます(国民健康保険法施行令29条の7の2)。区の案内では、対象は受給資格者証の離職理由コードが11・12・21・22・31・32・23・33・34で、離職日に65歳未満の人です。期間は、離職日の翌日の月から、その翌年度の末までです。軽減されるのは給与所得だけで、ほかの所得はそのまま計算します。

軽減を受けるには、区市町村への届出が要ります。雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)を使うので、ハローワークで受給手続きをした後に届けます。世田谷区は離職票では受け付けないとしていて、練馬区と世田谷区は、届出が離職日から1年以上遅れるとさかのぼって軽減できない場合があるとしています。

国保料は、その年度の前の年の所得で決まります。例えば2026年12月31日に辞めた人は、2026年度(2027年1〜3月分)は2025年の所得、2027年度は2026年の所得で計算します。東京23区の統一保険料方式(2026年度の料率)で、単身・給与所得350万円(ほかの所得なし)の1年分を計算すると、次のとおりです(計算。限度額・端数の処理は考えない)。2027年度の料率はまだ決まっていないので、2027年度分は2026年度の料率で計算した参考になります。

年齢 軽減なし 軽減あり(給与所得105万円として) 差
40歳未満 391,879円 132,669円 259,210円
40〜64歳(介護分を含む) 484,280円 165,535円 318,745円

料率は23区の多くの区のもので、江戸川区のように料率が違う区があります。退職後の健康保険を任意継続と国保で比べるときは退職後の健康保険の記事、届出の期限は退職後にやることの記事に書いています。

10. 履歴書と面接での書き方

厚生労働省・労働局・ハローワークの「応募書類の作り方」は、履歴書の退職の理由を「一身上の都合により退職」「出産のため退職」「帰郷のため退職」「定年退職」「会社都合により退職」などのように簡潔に書く、としています。記載例には「会社業績不振により希望退職」「派遣期間満了につき退職」もあり、岡山労働局の手引きには「雇用期間満了により退職」があります。

履歴書の一行は、実際の退職の経緯から書きます。自分から辞めた形で、ハローワークが会社都合(特定受給資格者)と判定した場合に、履歴書をどう書くかを決めた公式の資料は見つからなかったので、計算機は判定だけで「会社都合により退職」に書き換えない形にしています。面接での答え方について、国の資料は見つからず、ハローワーク川崎の面接対策の資料が、前の会社の悪口やネガティブなことは極力言わない、人間関係や労働条件が理由なら客観的に短く、履歴書などに書いた内容と食い違わないように、としています。

11. 計算機:会社都合に当たるか・失業保険の差・履歴書と面接・国保の軽減

離職日、年齢、辞め方、離職の事情(残業・賃金・ハラスメント・通勤・労働条件・休業・病気や介護)、雇用保険の加入期間(前の会社の通算できる期間を含む)、すぐに働けるか、月給、前の会社の名前、国保の計算に使う2つの年の給与所得と家族の人数を入れると、次を出します。

  • 会社都合(特定受給資格者)・正当な理由のある自己都合に当たりうる項目と、基準の数字、持っていく資料
  • 自己都合と会社都合の、受給資格・給付制限・所定給付日数・総額と、待期・給付制限・認定・振込の参考の日程(すぐに働けない人は日数の目安だけ)
  • 履歴書の退職の一行と、面接での説明の型
  • 東京23区の料率での国民健康保険料の軽減の額と期間

会社都合に当たるかのチェック、自己都合と会社都合の失業保険の差、履歴書の一行と面接の説明、国民健康保険の軽減

入れた数字や名前は、このページの中で計算に使うだけで、どこにも送られません。初めから入っている数字は入力の例です。自分の数字に置き換えてください。

辞め方と離職の事情

失業保険

履歴書と面接

国民健康保険の軽減

初めから入っている例は、雇用保険に12年入っていた42歳・月給30万円の人が、2026年12月31日に自分から辞め、離職前6か月のうち連続3か月以上の残業が毎月45時間を超えていた場合です。会社都合(特定受給資格者)に当たりうる項目として長時間労働が出て、持っていく資料はタイムカード・賃金台帳・給与明細書などです。2027年1月15日に求職の申込みをしたとした参考の日程では、正当な理由のない自己都合なら120日で756,840円(給付制限1か月、最初の振込は3月12日ごろ)、会社都合なら240日で1,513,680円(最初の振込は2月12日ごろ)で、差は756,840円です。国民健康保険料(単身、2025年と2026年の給与所得がどちらも350万円)は、軽減なしで年484,280円、軽減ありで年165,535円になり、2026年度の3か月分(2027年1〜3月)と2027年度分(2026年度の料率で計算した参考)で約398,431円下がる計算です。

12. よくある質問

会社都合と自己都合では、どちらが得ですか?

失業保険と国民健康保険料では、会社都合(特定受給資格者)のほうが有利です。給付制限がなく、加入期間が長いほど所定給付日数が多くなり、国保の軽減もあります。自己都合でも、一定の教育訓練を受けると給付制限は解除されます。ただし、区分は得かどうかで選ぶものではなく、離職の事実でハローワークが決めます(6章)。

会社都合退職の条件は何ですか?

倒産・解雇・退職勧奨・3年以上の雇止めなどのほか、自分から辞めた形でも、残業(連続3か月以上で毎月45時間超など)、賃金の85%未満への低下、賃金の3分の1を超える未払い、ハラスメント、事業所の移転で通勤が往復概ね4時間以上、などが当たります(3章)。

会社都合にしてもらうことはできますか?

事実と違う理由にはできません。事実と違う離職理由で不正に失業保険を受けると、受けた額の返還に加えて、その2倍以下の納付(いわゆる3倍返し)を命じられることがあり、悪質なら刑事罰もありえます。会社が偽った場合は受けた人と連帯して返還などを命じられ、本人の虚偽の申告も不正行為です。3章の事実があるなら、その資料をそろえてハローワークに出します(7章)。

離職票の理由が「一身上の都合」になっていました。どうすればいいですか?

事実が違うなら、離職票-2の離職者本人の判断の欄で「異議有り」に○をつけ、受給手続きのときに離職の理由を証明できる資料(タイムカード、給与明細書、退職勧奨の記録など)を持っていきます。ハローワークが会社と本人の両方から確かめて判定します(6章)。

会社都合退職は会社側にデメリットがありますか?

助成金の種類と、離職の理由・人数・割合・基準期間によって、助成金を受けられなくなる場合があります。例えば特定求職者雇用開発助成金やキャリアアップ助成金は、雇い入れなどの前後の一定期間に事業主の都合で離職させた事業主を対象外にしています(7-2)。

会社都合退職だと、失業保険はいつから、いくらもらえますか?

すぐに働ける状態で仕事を探していれば、給付制限がないので待期7日の後から支給の対象になり、ハローワークの案内では最初の振込は求職の申込みから約1か月後です(認定日はハローワークが指定)。日額は離職前6か月の賃金で決まり、自己都合と同じです。日数は年齢と加入期間で90〜330日です(5章)。病気などですぐに働けないときは、受給期間の延長を申請します。

履歴書には何と書けばいいですか?

実際の退職の経緯から、公式の手引きの例のように「会社都合により退職」「一身上の都合により退職」「雇用期間満了により退職」「定年退職」などと簡潔に書きます(10章)。

13. まとめ

  • ふだんの「会社都合」と雇用保険の区分は一致しない。失業保険で差がつくのは特定受給資格者かどうか。自己都合(正当な理由なし)との違いは、受給資格・給付制限(一定の教育訓練で解除)・所定給付日数・国保の軽減
  • 自分から辞めても、残業・賃金の低下や未払い・ハラスメント・事業所の移転などの事実を資料で示せれば、会社都合と判定されることがある
  • 病気・介護・配偶者の転勤などは正当な理由のある自己都合。給付制限はないが、日数は自己都合と同じ
  • 区分を最後に決めるのはハローワーク。異議は離職票-2の本人の欄と資料で。事実と違う離職理由で不正に受けると、返還に加えて2倍以下の納付(いわゆる3倍返し)、悪質なら刑事罰もありうる
  • 会社側は、助成金の種類と、離職の理由・人数・割合・基準期間によって、助成金を受けられなくなる場合がある。退職金の差は会社の規程しだい
  • 失業保険は、すぐに働ける状態で仕事を探していることが前提。国保の軽減は届出が要る。履歴書は実際の経緯から、手引きの例のように簡潔に

14. 出典

15. あわせて読む

 

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