学習曲線とは、同じ作業を、くり返すほど、1回にかかる時間や、費用が、決まった割合で、へっていく関係を、線であらわしたものです。ラーニングカーブとも、言います。はじめての1個は、おそい。100個めは、速い。その「速くなり方」に、決まりがある、という考え方です。
この記事では、まず、意味と、式を、説明します。次に、計算機で、「何個めに、どのくらい速くなるか」を、出します。最後に、パソコンを何台もこわして、作れるようになった、私の例を、書きます。
1. 学習曲線とは
1-1. 意味と、由来
この考え方は、1936年に、アメリカの技術者、T・P・ライトが、飛行機の工場で、見つけました。作った飛行機の数が、2倍になるたびに、1機にかかる作業時間が、ほぼ同じ割合で、へっていたのです。
たとえば、「80%の学習曲線」は、こういう意味です。
| 何個めか | 1個めを60分としたときの、かかる時間 |
|---|---|
| 1個め | 60分 |
| 2個め | 48分(60分の80%) |
| 4個め | 38.4分(48分の80%) |
| 8個め | 30.7分 |
| 16個め | 24.6分 |
数が2倍になるたびに、80%になります。はじめは、大きく、へります。あとになるほど、へり方は、小さくなります。
1-2. 式
n個めの時間 = 1個めの時間 × n の(log₂ 習熟率)乗
習熟率が80%なら、log₂ 0.8 は、およそ −0.322 です。むずかしく見えますが、意味は、「2倍やるごとに、80%になる」だけです。計算は、2章の計算機が、やります。
1-3. 経験曲線との、ちがい
1960年代に、ボストン・コンサルティング・グループが、この考え方を、会社全体の費用に、広げました。これが、経験曲線です。作業の時間だけでなく、仕入れ、設備、売り方まで、ふくめた費用が、作った数の合計が2倍になるたびに、一定の割合で、下がる。だから、先にたくさん作った会社が、費用で、有利になります(たくさん作ると安くなる仕組みは、規模の経済の記事にも、書きました。規模の経済は「いま、どれだけ作っているか」、経験曲線は「これまでに、どれだけ作ってきたか」の話です)。
1-4. 「学習曲線が急」の、2つの意味
英語の steep learning curve は、日常では、「おぼえるのが、たいへん」という意味で、使われます。もとの図では、逆です。線が急なのは、速く上達している、ということです。この記事では、もとの意味で、使います。
2. 計算機:何個めに、どのくらい、速くなるか
その1個にかかる時間:
1個めの、何%か:
時間が、1個めの半分になるのは:
はじめに入っている数字は、60分、80%、100個めです。例の数字です。答えは、13.6分、1個めの23%、半分になるのは9個めです。
習熟率を、90%に、変えてみてください。100個めは、29.8分で、1個めの50%です。半分になるのは、96個めです。同じ100個でも、習熟率で、結果は、大きく変わります。
3. 私の例:何台も、こわして、作れるようになった
3-1. 高校生のとき、パソコンを、何台も、こわした
私は、高校生のときに、パソコンの自作を、はじめました。何台も、こわしました。こわして、作れるように、なりました。すると、まわりから、「作ってくれ」「構成を、考えてくれ」と、たのまれるように、なりました。中古品の修理や、部品の入れかえは、その先に、ありました。
学習曲線の、左はしは、時間がかかるだけでは、ありません。物が、こわれます。お金が、出ていきます。私の場合、それは、こわしたパソコンの台数でした。
3-2. 直せずに、あきらめた修理の、金額
修理して売る仕事でも、直せずに、あきらめた物が、何個も、あります。
- スマホ:通信会社の利用制限がかかっていて、そもそも、売ってはいけない品でした。説明文を、読み落としていました。返品は、受けてもらえませんでした。損は、5万円ほどです。
- スマホ:液晶と、バッテリーを交換しても、動きませんでした。2万円から3万円の品でしたが、買った値段と同じくらいで、売れました。損は、数千円です。
- ブランド品:直すには、工業用のミシンが、必要でした。外にたのむと、赤字になります。そのまま、ジャンクとして売って、損は、数千円です。
3-3. 私の結論:曲線の左はしを、安く、通る
この経験から、私が出した結論は、こうです。もともと、ジャンクとして、安く買っていれば、直せなくても、同じくらいの値段で、売れます。損は、そこまで、出ません。即決の値段で買っていると、損が、出やすい。だから、仕入れは、オークションの形で、買います(くわしくは、修理転売の4台めの記事に、書きました)。
学習曲線の言葉で言いかえると、こうなります。上達するには、回数が、いります。回数をかせぐあいだは、失敗します。だから、「1回の失敗で、いくら、なくなるか」を、先に、小さくしておく。5万円の失敗は、何回も、できません。数千円の失敗なら、何回も、できます。回数を止めないことが、曲線を、右に進む条件です。
3-4. 速い人に、回数で、ならぶ
私は、自分よりあとに始めたのに、短い期間で、結果を出す人を、何人も、見てきました。同じ人から教わって、相手は結果が出て、自分は出ない、ということも、ありました。劣等感を、感じてきました(センスがいい人の記事に、書きました)。
計算機で、たしかめます。例の数字です。上達の速い人(習熟率80%)が、10個でやめると、10個めは、1個めの48%です。上達のおそい人(習熟率90%)が、100個つづけると、100個めは、1個めの50%です。ほぼ、ならびます。10倍の回数が、いります。けれど、ならびます。
結果を速く出した人の多くは、いま、活動が、止まっています。私は、つづいています。速さで負けても、回数で、ならべる場合がある。私は、つづけることも、才能の1つだと、考えています(グリットの記事に、書きました)。
3-5. いまは、AIで、習熟率そのものが、変わる
中古品の修理では、型番がわからない、直し方がわからない、合う部品がわからない、で、あきらめることが、多い。私は、これを、AIに聞いて解決できた経験が、何度も、あります。CDプレイヤーは、ふたを開けて写真をとり、どの部品がだめかを、特定させました。ゴムのベルトが原因で、合うサイズを教えてもらって、直りました。
以前は、自分でこわして、おぼえるしか、ありませんでした。いまは、1個めから、くわしい相手に、聞けます。計算機でいえば、習熟率の数字が、小さくなる(上達が、速くなる)変化です。
4. 学習曲線を、仕事で使う
- 1個めの時間で、判断しない。1個めが60分でも、80%の曲線なら、9個めには、半分です。「時給に、合わない」と決めるのは、10個やってからで、おそくありません。
- 同じ作業を、まとめて、くり返す。10種類を1個ずつより、1種類を10個のほうが、曲線を、速く進みます。得意な修理を、1つ作ることが、先です。
- 失敗の値段を、先に、下げる。3-3の話です。安く買う。小さく試す。
- いちばん時間がかかっている工程から、回数をかける。全体の速さは、いちばんおそい工程で、決まります(ボトルネックの記事に、書きました)。
- 曲線は、いつか、ねてくる。100個めから200個めでへる時間は、1個めから2個めでへる時間より、ずっと小さい。のびが止まったら、作業のやり方そのものを、変える時期です。
5. まとめ
- 学習曲線は、くり返すほど、1回の時間や費用が、決まった割合で、へる関係。1936年に、飛行機の工場で、見つかった。
- 80%の曲線なら、数が2倍になるたびに、80%になる。60分の作業は、100個めに、13.6分になる。
- 会社全体の費用に広げたものが、経験曲線。
- 私は、パソコンを何台もこわして、作れるようになった。修理では、5万円の損も、数千円の損も、あった。
- 曲線の左はしは、失敗の多い場所。失敗の値段を、先に下げて、回数を、止めない。

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