先行者利益とは、ある市場に、ほかより先に入ったことで得られる利益のことです。競争相手がいないうちに客をつかむ。安く仕入れられる相手を先に押さえる。検索で先に上に出る。後から来た人が、同じことをしても、同じ利益は、もう残っていません。
この記事では、まず、意味と、先行者利益が生まれる理由と消える理由を、説明します。次に、計算機で、「先に入った人と、半年遅れて入った人で、1年の利益がどれだけちがうか」を、出します。最後に、先に入って取れたもの、先に入っても消えたもの、という私の例を、書きます。
1. 先行者利益とは
1-1. 生まれる理由
- 競争相手がいない。値下げをしなくても、売れます。
- よい取引先や、場所を、先に押さえられる。仕入れ先、売り場、検索の上の位置。
- 客が、乗りかえにくくなる。先に使い始めた客は、手間をきらって、そのまま使い続けます(スイッチングコストの記事)。
- 経験が、先にたまる。先に数をこなした分だけ、速く、安くなります(学習曲線の記事)。
1-2. 消える理由
- まねされる。もうかると知られると、人が入ってきます。
- ルールが変わる。売り場の規約、法律、検索の仕組み。先に入った人の優位が、ルール1つで消えます。
- 後から来た人が、先の人の失敗を見て、安く、早く、追いつく。これを、後発の利益と、言います。
研究でも、先に入った会社が、長く一番でいられるとはかぎらない、と言われています。先行者利益は、「ずっと続くもの」ではなく、「いつか消えるもの」として、見るのが安全です。
2. 計算機:先に入った人と、遅れて入った人
人が入ってくるたびに、1か月の利益が、決まった割合で減っていくと、します。
先に入った人の、期間中の利益の合計:
遅れて入った人の、期間中の利益の合計:
1か月の利益が、はじめの半分になるのは:
はじめに入っている数字は、例です。私の実際の数字では、ありません。始めた月に30万円、毎月10%ずつ減る市場なら、先に入った人の1年の合計は、約215万円です。半年遅れて入った人は、同じ12か月やっても、約114万円で、先の人の53%です。1か月の利益が半分を切るのは、8か月めです。
同じ努力、同じ期間でも、入った時期だけで、半分ちかい差がつきます。そして、先に入った人も、1年たてば、はじめの3分の1ほどの利益に、なっています。
3. 私の例
3-1. 先に入って、取れたもの
海外から仕入れて、在庫を持たずに売る方法をやっていた初めのころ、オークションの売り場では、1つのアカウントで200〜300品を出品しても止められず、1日に10〜20個以上、売れていました。短い期間で、大きく、かせげました。
ネットショップを始めたときも、同じでした。当時は、そのサービスでネットショップを作る人が少なく、出品すると、検索ですぐに上に出ました。「これはいける」と判断して、自分のサイトの店に、移しました。
3-2. 先に入っても、消えたもの
- 在庫を持たずに売る方法。その後、売り場の検知が強くなり、クレームもふえました。私も、利用の制限を受けました。規約に反するので、いまは、やっていません。今から入っても、止められると、私は見ています。
- 中国からの輸入。以前は、中国から安く買えることを知っている人が少なく、それだけで売れました。いまは、だれでも直接買えるので、転売の人から買う理由が、ありません(中国輸入の記事)。
- フリマの通知アプリ。いくつものフリマをまとめて見張れるアプリは、使う人に優位がありました。公式が規制して、アプリは消えました。
- 携帯の乗りかえの特典。2015年から2017年は、まかせていても利益が出ました。規制で収益が落ちて、一度、手を引きました(携帯の乗りかえの記事)。
ここからは、私の整理です。消えたものの多くは、「知っている人が少ない」か、「売り場のルールが、まだ追いついていない」ことが、利益の出どころでした。どちらも、時間がたてば、うまります。
3-3. 後から入るのは、不利だと見て、やめた
2015年に、私は、卸の会社を1週間で100社、開拓しました。ほぼすべての会社が、返事をくれました。けれど、後から入る人ほど不利になる、と見て、卸から仕入れて売ることは、やめました。先行者利益の裏返し、「後から入る不利」を、先に見て、引いた形です。
3-4. 時間がたっても、消えにくいもの
いっぽうで、私は、いまも、修理に使う部品は、中国から、仕入れています。これは、続いています。個人が「部品は、中国から買える」と知っても、直す技術がなければ、使えないからです。知る人がふえても、うまらない優位です(参入障壁の記事)。
先に入ったことだけが理由の優位は、消えます。先に入ったあいだに、技術や、信用や、名指しでさがされる入口を作れた場合だけ、あとまで残ります。
4. 先行者利益と、つきあう方法
- 「なぜ、いま、もうかっているのか」を、1行で書く。「知っている人が少ない」「ルールが追いついていない」なら、期限つきです。
- 期限つきの利益は、短く取って、次に移す。2章の計算機で、半分になる月を、出しておきます。
- 先に入ったあいだに、消えないものを作る。技術、信用、自分の売り場。
- 後から入るなら、先の人の失敗を、使う。後発の利益です。先の人が止められた理由、売れ残った理由を、先に調べます。
- 知られるほど、1人あたりが減る仕組みは、合成の誤謬の記事に、書きました。
5. まとめ
- 先行者利益は、ほかより先に市場に入ったことで得られる利益。競争相手がいない、取引先や位置を押さえられる、客が乗りかえにくい、経験が先にたまる。
- まねされる、ルールが変わる、後から来た人が追いつく、で消える。
- 例の数字では、半年遅れると、1年の利益は、先の人の53%になる。
- 私が先に入って取れたものの多くは、知る人の少なさと、ルールの遅れが出どころで、いまは消えた。直す技術のように、知られても、うまらないものだけが残った。

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