「試用期間 退職」「試用期間 辞めたい」「試用期間 退職 即日」「試用期間 退職 履歴書」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。
試用期間中でも、労働契約はもう成立しています(最高裁・三菱樹脂事件、長野労働局)。正社員など期間の定めのない雇用なら、辞めるときの決まりは試用期間の後と同じで、民法627条により申し入れてから2週間で雇用が終わり、会社の承諾は要りません。就業規則の「1か月前」などは、会社の承諾を得て辞める合意退職では当てはまりえますが、一方的に辞める辞職なら原則2週間で辞められ、厚生労働省はこの2週間を就業規則で延ばすことはできないとしています。即日で辞めるのは、会社が合意した場合か、やむを得ない事由がある場合(民法628条)、明示された労働条件が事実と違った場合(労働基準法15条2項)です。失業保険は、離職前2年に被保険者期間が12か月(本採用拒否などの解雇や、労働条件が事実と違った場合などは1年に6か月)要るので、試用期間だけでは足りないことが多く、前の会社の期間を合わせられるかが大きく関わります。期間を満たしても、実際に受けられるかは、働く意思と能力があるのに仕事に就けない失業の状態にあるかや、離職理由の判定などでハローワークが決めます。前の会社を辞めたときに受給資格の決定を受けていた人は、その期間を新しい受給資格には数えませんが、前の受給資格の受給期間(前の離職日の翌日から原則1年)の中なら残りの日数を受けられます。会社から辞めさせる本採用拒否は解雇にあたり、入社から14日を超えていれば30日前の予告か予告手当が要り、理由も客観的に合理的で社会通念上相当でなければなりません。短い職歴を履歴書に書く義務を定めた公式の資料は見つかりませんでした。入社日・就業規則・前の会社の期間・解雇の日から、辞められる日、失業保険がもらえるか、履歴書の書き方、解雇予告手当の目安を出す計算機を10章に置きました。
| 知りたいこと | 答え | 章 |
|---|---|---|
| 試用期間中に辞められるか | 辞められる。正社員なら一方的な辞職の申し入れから原則2週間(民法627条)。就業規則の「1か月前」は、会社の承諾を得て辞める合意退職では当てはまりうる | 3章 |
| 即日で辞めたい | 会社が合意すれば話し合いで決められる。一方的には、やむを得ない事由(民法628条)や労働条件の相違(労働基準法15条2項)の場合 | 3章 |
| 損害賠償・研修費 | 違約金や賠償額を前もって決めることは禁止(労働基準法16条)。研修費の返還は、純然たる貸付けかなどで個別に判断 | 3章 |
| 給料・社会保険・有給 | 試用期間中も加入・付与の対象。ただし社会保険・雇用保険はそれぞれの加入の要件、有給は6か月の継続勤務と出勤率8割などの条件を満たす必要がある(週の所定労働日数が少ない人は比例付与)。最低賃金を下回れるのは労働局長の許可がある場合だけ | 4章 |
| 失業保険 | 離職前2年に12か月(解雇などは1年に6か月)。前の会社の期間を合わせられるか、前の受給資格の残りが関わる。期間を満たしても、失業の状態や離職理由の判定でハローワークが決める | 5章 |
| 会社から辞めさせられたら | 本採用拒否は解雇。14日を超えたら30日前の予告か予告手当。理由は客観的に合理的・社会通念上相当であることが必要 | 6章 |
| 履歴書 | 短い職歴を書く義務を定めた公式の資料はない。重要な経歴の詐称はモデル就業規則で懲戒の事由の例 | 7章 |
| 早く辞める人の数 | 令和5年3月卒で、就職1年目に辞めた人は大学11.0%・高校17.4% | 8章 |
| 自分の場合 | 辞められる日・失業保険・履歴書の文面・予告手当の目安を計算 | 10章 |
1. 先に、この記事の数字について
この記事の決まりと数字は、民法・労働基準法・労働契約法・雇用保険法・最低賃金法・健康保険法の条文(e-Gov法令検索、2026年10月23日時点の現行版)と、最高裁判所の判決、厚生労働省・労働局・ハローワーク・日本年金機構・協会けんぽの公式の資料から取り、計算機にしています。「試用期間中も同じ」と名指しした公式の文がなく、条文や公式の説明を当てはめて書いたところは、そう書いています。失業保険の区分や受給資格を最後に決めるのはハローワーク、解雇が有効かどうかを最後に決めるのは裁判所です。
2. 試用期間とは:もう労働契約は成立している
最高裁は三菱樹脂事件(昭和48年12月12日大法廷判決)で、試用期間つきの雇用を「解約権留保付の雇傭契約」と認めました。会社は、試用期間中の勤務ぶりなどを見て本採用するかを最後に決める権利を残していますが、雇用そのものは始まっています。長野労働局も「試用期間といえども労働契約は成立している」と説明しています。
試用期間の長さを決めた法律の条文はありません。厚生労働省のモデル就業規則の解説は、長さの定めは労働基準法にないとしたうえで、あまりに長い試用期間は好ましくないとしています。必要な期間を超える試用期間を公序良俗に反するとした裁判例もあります(ブラザー工業事件、名古屋地裁昭和59年3月23日)。試用期間の有無と、その間の労働条件は、求人や募集のときに示すことになっています(厚生労働省「知って役立つ労働法」)。
3. 試用期間中に自分から辞める
3-1. 正社員など:申し入れから2週間
期間の定めのない雇用は、いつでも辞めると申し入れることができ、申し入れた日から2週間たつと雇用が終わります(民法627条1項)。会社の承諾は要りません。申し入れた日は数えないので、10月1日に申し入れたら10月15日の終わりで終わります。試用期間中も労働契約は成立しているので、この決まりがそのまま当てはまります(試用期間を名指しした公式の文はなく、当てはめです)。辞めると伝えるときの文面と書き方は、退職届の書き方の記事と退職理由の書き方と伝え方の記事に書いています。
3-2. 就業規則の「1か月前」
就業規則で「退職は1か月前までに申し出る」などと決めている会社もあります。ここは、辞め方を2つに分けて考えます。会社の承諾を得て辞める合意退職(退職願はその申込み)なら、就業規則の「1か月前」は日程を話し合うときに当てはまりえます。一方、期間の定めのない雇用で、会社の承諾がなくても一方的に辞める辞職なら、民法627条1項により申し入れから原則2週間で辞められます。厚生労働省の「スタートアップ労働条件」は「2週間の予告期間を置いた辞職は可能です」とし、裁判例を挙げて、この予告期間を「就業規則等で延長することはできません」としています。ただ、「原則として就業規則の規定が適用されます」と書く労働局もあり(鹿児島労働局)、公式の説明はそろっていません。また、辞職か合意退職の申込みか区別がつかないときは、合意退職の申込みと考えられる、とされています(スタートアップ労働条件)。一方的に辞めるなら、辞める意思と日付をはっきり伝えます。話し合える日程なら就業規則に合わせるともめにくくなります。
3-3. 即日で辞めたい
会社が合意すれば、退職日は話し合いで決められます。厚生労働省は、労使が合意して雇用を終える合意退職には「解雇の場合に要求されるような制限はありません」としています(合意すれば当日でもよい、と名指しした文はありません)。一方的にすぐ辞められるのは、やむを得ない事由があるとき(民法628条)と、入社のときに示された労働条件が事実と違うとき(労働基準法15条2項。就業のために引っ越した人が14日以内に帰郷するなら、旅費は会社が負担)です。何が「やむを得ない事由」に当たるかの例を挙げた公式の資料は見つかりませんでした。
3-4. 契約社員など期間の定めがある場合
契約に期間の定めがある場合は、途中で一方的に辞めるには原則としてやむを得ない事由が要ります(民法628条)。会社が合意すれば途中でも辞められます。やむを得ない事由があるとき(民法628条)や、明示された労働条件が事実と違うとき(労働基準法15条2項)は、期間の途中でも直ちに解除できます。契約や就業規則に途中で辞めるときの決まりがあるときは、その内容とこれらの法律の関係を確かめます(契約の決まりでこれらの解除をできなくしてよいかを書いた公式の資料は確かめていません)。1年を超える契約なら、契約の初日から1年たてばいつでも辞められます(労働基準法137条。高度の専門的知識等を持つ人や満60歳以上の人の契約などは除く)。採用のときに期間を決めていても、その目的が適性を見るためなら、その期間は試用期間とみるとした最高裁判決があります(神戸弘陵学園事件、平成2年6月5日)。
3-5. 損害賠償・研修費を言われたら
「途中で辞めたら違約金」「賠償額は〇円」と前もって決めることは、労働基準法16条で禁止されています。実際に労働者の責任で生じた損害の賠償を請求することまでは禁じていない、と栃木労働局は説明しています。研修や資格の費用を返させる約束は、純然たる貸付けで一定期間勤めれば返さなくてよい形なら16条違反にならないとされますが、業務命令による研修か、返し方を決めているかなどで個別に判断されます(厚生労働省「スタートアップ労働条件」)。期間の定めがない雇用なら、予告期間を守って辞めることで法的な責任が生じることはない、と東京都は説明しています。
自分で伝えにくいときに使われる退職代行の、民間会社・労働組合・弁護士でできることの違いと、損害賠償と言われたときの決まりは退職代行の記事にまとめました。
4. 試用期間中の給料・社会保険・有給
- 健康保険・厚生年金:試用期間中でも報酬が払われれば使用関係があるとされ、被保険者になります(日本年金機構)。
- 雇用保険:本採用前の試用期間中でも、週20時間以上などの要件を満たせば被保険者で、資格を得る日は試用期間も含めた在籍の初日です(雇用保険事務手続きの手引き 令和8年8月版、東京ハローワーク)。
- 最低賃金:試用期間中でも最低賃金を下回ることはできません。例外は、会社が都道府県労働局長の許可を受けた場合で、減らせるのは20%まで、許可される試用期間は最長6か月です(最低賃金法7条・施行規則5条、通達)。東京都の最低賃金(2026年10月1日から1,280円)なら、許可を受けて20%減らしても1,024円が下限です(計算)。
- 有給休暇:入社日から6か月続けて勤め、8割以上出勤すると10日つきます(労働基準法39条)。週の所定労働時間が30時間未満で、週の所定労働日数が4日以下などの人は、日数が少ない比例付与です(39条3項)。試用期間も入社日から数える期間に入るので、6か月より前に辞めると、この会社の有給は0日です(会社が独自に早く与えている場合を除く)。有給と退職日の関係は有給の記事に書いています。
- 入社した月に辞めた場合:同じ月に資格を得て失うと、その月の健康保険の保険料は1か月分かかります。厚生年金は、その月に次の会社の厚生年金か国民年金(第1号)に入れば、その月の分はかからない扱いで、本人負担分は会社から返されます。
パート・アルバイトで、そもそも健康保険・厚生年金に入る働き方かどうかは社会保険の加入条件と扶養の記事で判定できます。
5. 失業保険:試用期間で辞めてももらえるか
5-1. 受給資格:離職前2年に12か月
失業保険(基本手当)を受けるには、離職の日以前2年に、被保険者期間が通算12か月以上要ります。解雇(本採用拒否を含む)・倒産などの特定受給資格者や、病気・介護などの正当な理由のある自己都合の特定理由離職者は、離職の日以前1年に6か月以上でもかまいません(雇用保険法13条)。被保険者期間は、離職日から1か月ずつさかのぼって区切り、賃金の支払の基礎になった日が11日以上ある区切りを1か月と数えます(11日以上の月で足りないときは80時間以上で数える)。入社日(資格を得た日)から最初の区切りまでの半端な期間は、15日以上あり、賃金の支払の基礎になった日が11日以上あれば2分の1か月と数えます(雇用保険法14条1項ただし書)。試用期間の3か月だけでは、どちらにも届きません。期間を満たしても、実際に受けられるかは、求職の申込みをして、働く意思と能力があるのに仕事に就けない失業の状態にあるかや、離職理由の判定などでハローワークが決めます。
5-2. 前の会社の期間を合わせられるか
前の会社の期間を合わせられるかは、受給資格と日数で条件が違います。
- 受給資格(12か月・6か月):離職の日以前2年(1年)の中にある前の会社の期間も数えます。ただし、前の会社を辞めたときにハローワークで受給資格の決定を受けていたら、その前の期間は数えません(雇用保険法14条2項1号)。
- 所定給付日数を決める算定基礎期間:前の会社で資格を失った日から1年以内に今の会社で加入し、前に基本手当などを受けていなければ、前の会社の期間を足します(雇用保険法22条3項)。
厚生労働省のQ&Aは、この2つをまとめて「1年以内に次の就職先に就職し雇用保険に加入した場合」は通算すると書いていますが、条文では「1年以内」は日数を決める期間の条件です。前の会社の期間を合わせるかは、離職前の対象期間に入るか、前に受給資格の決定を受けたか、雇用保険の加入(資格取得)が確認されているかなどで変わり、最後はハローワークが決めます。なお、条文(14条2項1号)は受給資格を「取得したことがある」場合の期間を除くと書き、業務取扱要領は「受給資格の決定を受けたことがある」場合と書いています。この2つの関係(受給の手続きをしなかった場合の扱い)を説明した公式の文は確かめていません。日額と日数の計算は失業保険の計算の記事に書いています。
5-3. 前の会社で受給資格の決定を受けていた場合
前の会社を辞めて受給資格の決定を受け、受給中に再就職してから試用期間中に辞めた場合、今の会社の期間だけで新しい受給資格に届かなければ、前の受給資格の受給期間(前の離職日の翌日から原則1年)の中で、残りの日数分を受けられます(ハローワーク札幌、厚生労働省Q&A)。新しい受給資格を得たら、前の受給資格の基本手当は受けられなくなります(雇用保険法20条3項)。
再就職手当を受けて入社していた場合は、再就職手当の額を基本手当日額で割った日数分の基本手当を受けたものとみなすので(雇用保険法56条の3第4項)、その日数を残りから引きます。引く日数は、実際に支給された再就職手当の額から出すので、支給額を確かめて計算します。「残り×給付率(70%・60%)」は参考の値です。再就職手当の計算に使う日額には上限(60歳未満6,745円、60〜64歳5,454円。令和9年7月31日までの額)があり、基本手当日額がこれより高い人は、引く日数が少なくなります。試用期間中に辞めたら再就職手当を返す、という決まりは公式の資料で見つかりませんでした。再就職先を6か月未満で辞めると、就業促進定着手当の対象にはなりません。再就職手当の条件は再就職手当の記事に書いています。この再離職が正当な理由のない自己都合のとき、前の受給資格の残りに新たな給付制限がかかるかは、公式の資料で確かめられませんでした。
5-4. 3つの例
どの月も11日以上働いた前提の計算です。例Cは、再就職手当の要件(1年を超えて勤務することが確実と認められること、給付制限がある人は待期が終わってから1か月はハローワークか職業紹介事業者の紹介で就職したこと、など)をすべて満たし、日額の上限にかからない場合です。
| 例 | 経歴 | 受給資格 | 受けられるもの |
|---|---|---|---|
| A 新卒 | 2026年4月1日入社、6月30日に退職(雇用保険の加入歴なし) | 被保険者期間3か月。自己都合の12か月にも、本採用拒否の6か月にも届かない | 受けられない |
| B 転職(前の会社で手続きをしていない) | 前の会社 2023年4月1日〜2026年3月31日、今の会社 2026年5月1日入社・7月31日に自己都合で退職 | 離職前2年の中に、前の会社20か月+今の会社3か月=23か月。受給資格あり | 前の会社の期間を足して算定基礎期間は約3年3か月なので90日。給付制限は原則1か月 |
| C 受給中に再就職 | 前の会社を2026年3月31日に自己都合で退職し、90日で受給資格の決定。1日も受けずに、ハローワークの紹介で5月1日に入社して再就職手当(残り90日の70%=63日分)を受け、7月31日に退職 | 前の会社の期間は数えないので3か月。新しい受給資格はない | 前の受給資格の残り27日分(90日から63日を引いた分)を、2027年3月31日までの受給期間の中で |
5-5. 給付制限と区分
正当な理由のない自己都合で辞めた場合は、待期7日のあとに原則1か月の給付制限があります(2025年4月1日以降の離職。過去5年に2回以上、自己都合で受給資格の決定を受けていれば3か月。一定の教育訓練を受けると解除)。本採用拒否は解雇なので、自分に重大な責任がある解雇でなければ特定受給資格者に当たると読めます(試用期間を名指しした公式の文はありません)。入社前に示された労働条件が事実と著しく違ったために辞めた場合も、特定受給資格者です。区分の決まり方は会社都合と自己都合の違いの記事に、離職票が届くまでの流れは離職票の記事に書いています。
6. 試用期間中の解雇・本採用拒否
6-1. 入社から14日以内は予告が要らない
会社が解雇するときは、30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払わなければなりません(労働基準法20条)。試用期間中の人はこの決まりの例外ですが、14日を超えて引き続き使われたら例外ではなくなります(21条)。つまり、入社から14日以内の解雇なら予告も予告手当も要らず、14日を超えていれば試用期間中でも30日前の予告か予告手当が要ります。長野労働局は「採用から14日以内(暦日)」と説明していますが、入社日を1日目に数えるかを書いた公式の日付の例は見つかりませんでした。21条は予告の手続きの決まりで、理由なく解雇できるという意味ではありません。
6-2. 本採用拒否が認められる範囲
本採用の拒否は、雇った後の解雇にあたります(三菱樹脂事件)。最高裁は、試用期間中の解約権の行使は通常の解雇より広い範囲で認められるが、解約権を残した趣旨・目的に照らして「客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」としました。採用のときには知ることができず、知ることも期待できなかった事実が試用期間中に分かった場合などです。東京都も、正式に採用しないことは「不採用」ではなく「解雇」になる、と説明しています。厚生労働省の雇用指針は、新卒で採用された人について、本採用拒否となることは少ないとしています。
6-3. 試用期間の延長
試用期間の延長を決めた法律の規定はありません。厚生労働省の委託事業のテキストは、延長には客観的な合理性が必要で、繰り返し延長することは認められないとし、東京都は、当初の試用期間を正当な理由なく延長することはできないとしています。厚生労働省の雇用指針は、即戦力の管理職などの例として、本人の同意を得て6か月まで延長できるとする規定の例を挙げています。延長できる場合の一般的な基準(就業規則の定め、本人の同意、延長の必要性や長さ)を書いた厚生労働省の公式の文は見つかりませんでした。延長されたあとに本採用を拒否される場合も、6-2の基準で見られると考えられます(当てはめ)。
6-4. 解雇予告手当と平均賃金
平均賃金は、原則として解雇を告げた日の前の3か月の賃金の総額を、その期間の暦日数で割った額です(労働基準法12条。賃金の締切日があれば直前の締切日から数える)。試用期間中に告げられた場合は、試用期間中の日数と賃金で計算します(労働基準法施行規則3条)。たとえば月給25万円・月末締めで4月1日に入社し、6月10日に解雇を告げられて6月30日に解雇される場合、平均賃金は4月・5月の賃金50万円÷61日=8,196円72銭、予告は20日なので足りない10日分の予告手当は約81,967円です(計算)。
6-5. 解雇・本採用拒否されたらすること
- 解雇の理由の証明書を請求する:予告の期間中(告げられた日から退職日まで)は解雇の理由の証明書(労働基準法22条2項)、退職した後は退職証明書で、退職の事由として解雇の理由を書くよう求められます(22条1項)。請求のしかたは退職証明書の記事に書いています。
- 相談する:総合労働相談コーナー(各労働局・労働基準監督署の中。無料・予約不要)。
- 失業保険:本採用拒否なら特定受給資格者に当たりうるので、受給資格は1年に6か月で足ります(5章)。
解雇予告手当の計算、解雇理由証明書の請求、不当解雇かのチェックは解雇・雇い止めされたときの記事にまとめました。
7. 履歴書:短い職歴を書くか
厚生労働省「応募書類の作り方」は、職歴は入社と退社を古い順に書くのが基本としています。退職の理由は「一身上の都合により退職」「会社都合により退職」のように簡潔に書きます。短い職歴を書くべきか、省いてよいかを書いた公式の資料は見つかりませんでした。一方で、重要な経歴を偽って雇われることは、厚生労働省のモデル就業規則で懲戒の事由の例に挙がっています。
次の会社に短い職歴が分かる場合があります。たとえば、雇用保険の資格取得の手続きでは過去に加入したことがあるか(再取得)を書き、同じ年のうちに入社すれば、年末調整のために前の会社の源泉徴収票(前の会社の名前と給与の額が載る)を出します。必ず伝わるわけではありません。面接では、履歴書と矛盾しないように、いつ入って、いつ辞め、理由は事実で短く、次の仕事でどうするかを話します。
8. 入社して早く辞める人はどれくらいいるか
厚生労働省が2026年10月23日に公表した新規学卒就職者の離職状況(表)では、令和5年3月に卒業して就職した人のうち、3年以内に辞めた人は大学で31.2%、高校で36.9%、1年目に辞めた人は大学で11.0%、高校で17.4%でした。
| 学歴・卒業 | 就職者数 | 3年以内の離職率 | 1年目 | 2年目 | 3年目 |
|---|---|---|---|---|---|
| 大学 令和5年3月卒 | 456,908人 | 31.2% | 11.0% | 10.9% | 9.3% |
| 大学 令和4年3月卒 | 449,012人 | 33.8% | 12.1% | 11.9% | 9.9% |
| 短大等 令和5年3月卒 | 141,735人 | 43.1% | 18.4% | 13.2% | 11.5% |
| 高校 令和5年3月卒 | 130,090人 | 36.9% | 17.4% | 11.0% | 8.5% |
| 高校 令和4年3月卒 | 137,458人 | 37.9% | 17.9% | 11.5% | 8.5% |
数字は、会社がハローワークに新規学卒者として雇用保険の加入届を出した人で数えたものです。合計は四捨五入の関係で、1〜3年目の和と合わないことがあります。
試用期間に限らず、転職してすぐ辞める場合の失業保険(前の会社の期間を足せる条件)と社会保険の期限、出戻り・再転職・とどまるの比較は転職の失敗の記事にまとめました。
9. 辞めた後の健康保険・年金
- 任意継続:資格を失う日の前日までに、健康保険に続けて2か月以上入っていた人だけが入れます(健康保険法3条4項)。入社から2か月たたずに辞めると原則入れませんが、前の会社から1日も空けずに入社していれば、協会けんぽ・健康保険組合の期間と合わせられます(任意継続の期間と共済組合の期間は合わせられない=協会けんぽ)。申出は資格を失った日(退職日の翌日)から20日以内、必着で、20日目が土日・祝日なら翌営業日です(協会けんぽ)。
- 国民健康保険・国民年金:退職日の翌日から14日以内に区市町村で手続きします。法令で決まった届出の期限が区市町村の休日に当たれば、休日の翌日(翌開庁日)が期限になります(地方自治法4条の2第4項)。保険料の比べ方は退職後の健康保険の記事に書いています。
- すぐ次の会社に入る場合:退職日の翌日に入社するなら、区市町村の手続きは要りません。1日でも間があけば、同じ月のうちに入社しても国民年金の加入の届出は要ります(千葉市。その月の国民年金の保険料はかからない)。
手続きの順番と期限は退職後にやることの記事にまとめています。
10. 計算機:辞められる日・失業保険・履歴書・解雇予告手当
入社日、今日の日付、試用期間の長さ、契約の期間、就業規則の申出の期間、辞めたい日、辞め方、年齢、前の会社の期間、前の受給資格、再就職手当の額、会社の名前、解雇の日、月給を入れると、次を出します。
- 民法と就業規則それぞれで辞められる日、有給がつくか、任意継続に入れるか
- 失業保険の新しい受給資格に届くか、届かないときは前の受給資格の残りを受けられるか、所定給付日数と給付制限
- 履歴書の職歴欄の書き方と、面接での説明の型
- 入社から14日目の日付、解雇予告手当が要るか、平均賃金と予告手当の目安
試用期間中に辞める日の逆算、失業保険がもらえるか、履歴書の書き方、試用期間中の解雇・本採用拒否
入れた数字や名前は、このページの中で計算に使うだけで、どこにも送られません。初めから入っている数字は入力の例です。自分の数字に置き換えてください。
入社日と辞める日
失業保険
履歴書
解雇・本採用拒否(告げられた人だけ)
初めから入っている例は、2023年10月から3年働いた会社を2026年9月30日に辞め(ハローワークで受給の手続きはしていない)、翌日の10月1日に入社した28歳の人が、試用期間(3か月)の中で自分から辞める場合です(今日を2026年10月23日として)。今日申し入れると、民法では11月6日の終わりで辞められ、就業規則の「1か月前」に合わせると11月23日です。有給は2027年4月1日につくので、0日です。失業保険は、今の会社の1か月と、離職前2年の中にある前の会社の22か月を合わせて受給資格に届く見込みで、前の会社の期間を足した算定基礎期間(約3.1年)から所定給付日数は90日、給付制限は原則1か月です。健康保険は今の会社だけでは2か月に届きませんが、前の会社から1日も空けずに入社しているので、前の会社の期間と合わせて任意継続に入れ、申出の期限は11月26日(必着)です。
11. よくある質問
試用期間中に辞めるのは、何日前に言えばいいですか?
正社員など期間の定めのない雇用で一方的に辞める(辞職)なら、法律上は2週間前(申し入れた日を数えずに14日)です(民法627条)。就業規則で1か月前などと決めている場合は、話し合える日程ならそれに合わせるともめにくくなります(3章)。
試用期間中に即日で辞められますか?
会社が合意すれば、退職日は話し合いで決められます。一方的にすぐ辞められるのは、やむを得ない事由があるときや、示された労働条件が事実と違うときです(3-3)。
試用期間中に辞めたら、失業保険はもらえますか?
試用期間だけでは被保険者期間が足りないことが多いです。離職前2年の中に前の会社の期間があり、前の会社で受給資格の決定を受けていなければ合わせて数えます。前の会社で受給資格の決定を受けていた人は、前の受給資格の受給期間の中なら残りの日数を受けられます。期間を満たしても、受けられるかは失業の状態や離職理由の判定でハローワークが決めます(5章)。
試用期間で辞めた会社は、履歴書に書かないといけませんか?
書く義務を定めた公式の資料は見つかりませんでした。重要な経歴を偽ることはモデル就業規則で懲戒の事由の例に挙がっていて、雇用保険の加入歴や源泉徴収票から次の会社に分かることがあります(7章)。
試用期間中に辞めたら、損害賠償を請求されますか?
違約金や賠償額を前もって決めることは禁止されています(労働基準法16条)。期間の定めがない雇用なら、予告期間を守って辞めることで法的な責任が生じることはない、と東京都は説明しています(3-5)。
試用期間中にクビ(本採用拒否)になることはありますか?
あります。ただし本採用拒否は解雇にあたり、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当な場合に限られます。入社から14日を超えていれば、30日前の予告か予告手当が要ります(6章)。
試用期間中に辞めたら、有給は使えますか?
有給は入社日から6か月続けて勤めるとつくので、6か月より前に辞めると、この会社の有給は0日です(会社が独自に早く与えている場合を除く)(4章)。
12. まとめ
- 試用期間中も労働契約は成立している。正社員なら一方的な辞職の申し入れから原則2週間で辞められ、会社の承諾は要らない
- 就業規則の「1か月前」は合意退職では当てはまりうる。一方的な辞職なら原則2週間で、厚生労働省は就業規則で延ばせないとする。話し合えるなら合わせる
- 即日は合意か、やむを得ない事由・労働条件の相違のとき。違約金の約束は禁止
- 失業保険は離職前2年に12か月(解雇などは1年に6か月)。前の会社の期間を合わせられるか、前の受給資格の残りが関わる。受けられるかは失業の状態や離職理由の判定でハローワークが決める
- 本採用拒否は解雇。14日を超えたら予告か予告手当、理由は客観的に合理的・社会通念上相当であることが必要
- 短い職歴を書く義務を定めた公式の資料はない。重要な経歴の詐称は懲戒の事由の例
13. 出典
- 民法(e-Gov法令検索)第140条・第627条・第628条https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 労働基準法(e-Gov法令検索)第12条・第15条・第16条・第20条〜第22条・第39条・第137条https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働基準法施行規則(e-Gov法令検索)第3条https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
- 労働契約法(e-Gov法令検索)第15条・第16条https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128
- 雇用保険法(e-Gov法令検索)第13条・第14条・第20条・第22条・第56条の3https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116
- 最低賃金法(e-Gov法令検索)第7条https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000137
- 健康保険法(e-Gov法令検索)第3条https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070
- 地方自治法(e-Gov法令検索)第4条の2https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000067
- 裁判所 三菱樹脂事件(最高裁大法廷 昭和48年12月12日判決)https://www.courts.go.jp/hanrei/51931/detail2/index.html
- 厚生労働省「雇用指針」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000042685.pdf
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「試用期間」(裁判例)https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/hanrei/shogu/shiyou.html
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_taisyoku.html
- 厚生労働省 確かめよう労働条件 Q5(解雇の理由の証明書)https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/kaiko/q5.html
- 厚生労働省 スタートアップ労働条件「解雇と合意退職・辞職の違いについて教えてください。」https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/qa/zigyonushi/kaiko/q7.html
- 厚生労働省 スタートアップ労働条件 Q9(合意退職の申込みと辞職)https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/qa/zigyonushi/kaiko/q9.html
- 鹿児島労働局 よくあるご質問(退職の申出)https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/qa07/0701.html
- 厚生労働省 スタートアップ労働条件(解雇予告)https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/qa/zigyonushi/kaiko/q1.html
- 厚生労働省 スタートアップ労働条件(受講費用の返還)https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/qa/zigyonushi/sonota/q7.html
- 厚生労働省「モデル就業規則」令和7年12月版https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf
- 厚生労働省委託事業「学生のための労働条件セミナー」テキストhttps://www.check-roudou.mhlw.go.jp/pdf/seminar_text_for_students.pdf
- 厚生労働省「知って役立つ労働法」(兵庫労働局掲載)https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/content/contents/001838757.pdf
- 長野労働局 労働条件ハンドブック(解雇)https://jsite.mhlw.go.jp/nagano-roudoukyoku/content/contents/roudoujyouken_handbook202602-19.pdf
- 東京都 TOKYOはたらくネット「3.就職後編 1 試用期間について」https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/shiryo/hikkei0302_3.pdf
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html
- 雇用保険事務手続きの手引き【第2編】令和8年8月版(秋田労働局掲載)https://jsite.mhlw.go.jp/akita-roudoukyoku/content/contents/002766820.pdf
- 東京ハローワーク 被保険者に関するQ&Ahttps://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/kakushu_jouhou/koyouhoken/koyouhoken/QA/hihokensya_qa.html
- 福岡労働局「最低賃金の減額の特例許可申請について(試の使用期間中の者)」https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/content/contents/000822926.pdf
- 東京労働局 東京都最低賃金(令和8年10月1日から)https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/houdou/20260930chinginka_00001.html
- ハローワーク「基本手当について」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
- 厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領」(一般被保険者の求職者給付)https://www.mhlw.go.jp/content/001730827.pdf
- 厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領」(就職促進給付)https://www.mhlw.go.jp/content/001730830.pdf
- 厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html
- 北海道労働局(ハローワーク札幌)「受給中に就職して受給期間内に再び離職したときは」https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-hellowork/list/sapporo/kyusyokusya/hokenzyukyu/ippan/4-4.html
- ハローワーク 再就職手当のリーフレットhttps://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/saishuushokuteate.pdf
- 厚生労働省「応募書類の作り方」令和8年5月https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001710225.pdf
- 厚生労働省「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001318985.pdf
- 協会けんぽ よくある質問(任意継続の加入条件)https://www.kyoukaikenpo.or.jp/faq/voluntary_continuation/002/index.html
- 千葉市 よくある質問(退職して国民年金への加入手続きをし、同月中に就職した時の保険料)https://www.city.chiba.jp/faq/hokenfukushi/iryoeisei/hoken/768.html
14. あわせて読む
- 転職に失敗・後悔したら?賃金が下がる割合(年齢別の統計)、すぐ辞める場合の失業保険、出戻り・再転職・とどまるの比較、求人と違うとき(計算機つき)(転職後に賃金が下がる割合とすぐ辞める場合)
- 退職代行とは?自分で辞められるかの判定、民間・労働組合・弁護士でできることの違い、使ったときの日程とお金、損害賠償と言われたとき(計算機つき)(退職代行の運営元ごとの違いと日程)
- 社会保険の加入条件は?パート・アルバイトは週20時間から(2026年10月に賃金要件撤廃)、扶養から外れる年収と手取りの比較(判定の計算機つき)(社会保険の加入条件と扶養)
- 解雇・雇い止めされたら?解雇予告手当の計算、不当解雇かのチェック、解雇理由証明書、失業保険(計算機つき)(解雇予告手当と不当解雇のチェック)
- 退職届の書き方と出す時期|何日前に出すか、退職願との違い、退職日の決め方(月末か前日か・賞与・失業保険)(文面を作る計算機つき)(退職日の決め方と退職届の文面)
- 退職理由の書き方と伝え方|本音のランキング(厚労省の統計)、面接・履歴書・退職届の文面、引き止められたとき(計算機つき)(短く辞めた理由の伝え方)
- 会社都合退職と自己都合退職の違い|失業保険の差、会社都合になる条件(残業・賃金・ハラスメント)、履歴書の書き方、国保の軽減(判定の計算機つき)(本採用拒否や労働条件の違いで辞めたとき)
- 退職証明書とは?離職票との違い、いつもらえるか、請求のしかたと期限(2年)、会社が出さないとき(請求文を作る計算機つき)(解雇の理由を書面でもらう)
- 失業保険はいくらもらえる?計算方法と、自己都合・会社都合・特定理由離職者の日額・日数・振込日(計算機つき)(失業保険の日額と日数)
- 再就職手当はいくらもらえる?条件8つと計算方法、いつ振り込まれるか、満額とどちらが得か(計算機つき)(前の受給資格の残りと再就職手当)
- 離職票はいつ届く?届かないときの対処とマイナポータル、離職理由の確かめ方、失業保険の振込までの日程(計算機つき)(離職票の離職理由の確かめ方)
- 退職後にやること・手続きの順番|14日・20日の期限一覧、市役所・ハローワークの持ち物、過ぎたらどうなるか(日付を出す計算機つき)(辞めた後の手続きの順番)
- 退職後の健康保険は任意継続と国保どっちが得?保険料の計算と、家族の扶養に入る条件(計算機つき)(国保と任意継続の比べ方)
- 退職後の国民年金はいくら?14日以内の切り替え、失業の特例で免除・猶予、将来の年金の減り方と追納、扶養していた配偶者の手続き(計算機つき)(国民年金の切り替え)
- 有給は何日もらえる?日数の計算と、退職前の有給消化・最終出社日・買い取り・時効(計算機つき)(6か月で有給が付くか)
