トレードオフとは、何かを得ようとすると、別の何かを手ばなさなければならない関係のことです。時間とお金、速さと質、自由と収入。両方を、同時に、最大にはできません。どちらを、どこまで取るかを、決めることになります。
この記事では、まず、意味と、機会費用との関係を、説明します。次に、計算機で、「働く時間をへらすと、1時間の自由を、いくらで買ったことになるか」を、出します。最後に、利益が出ていた商売を、自分の自由と引きかえに、やめた私の例を、書きます。
1. トレードオフとは
1-1. 意味
もとは英語の trade-off で、「取引して、手ばなす」という意味です。お金も、時間も、体力も、かぎりがあります。かぎりがあるものを、1つの使い道に使えば、ほかの使い道には、使えません。この関係が、トレードオフです。
1-2. 身近な例
| 得るもの | 手ばなすもの |
|---|---|
| 安い値段 | 質、または、利益 |
| 速い納品 | ていねいさ |
| 多くの商品を持つ | 手元のお金、置き場所 |
| 高い収入 | 自由な時間 |
| 広げる(規模) | 自分で全部を見る、目の届きやすさ |
1-3. 機会費用との、関係
トレードオフで、えらばなかったほうから得られたはずのものを、機会費用と、言います。1時間を仕事に使えば、その1時間で休めたはずの分が、機会費用です(機会費用の記事に、書きました)。トレードオフは「どちらかしか取れない」という関係、機会費用は「取らなかったほうの値段」です。
1-4. トレードオフが、ないように見えるとき
「安くて、速くて、質もよい」と言われたら、どこかに、見えていない手ばなしが、あります。売り手の利益がけずられているか、客からは見えない部分の質が落ちているか、あとで追加の費用が来るか、です。トレードオフが見えないときは、「何が、見えていないか」を、さがします。
2. 計算機:1時間の自由を、いくらで買ったことになるか
いまのやり方(A)と、時間をへらしたやり方(B)を、くらべます。
Aの時給 / Bの時給:
Bにすると、へる利益 / ふえる時間(月):
1時間の自由の値段:
はじめに入っている数字は、例です。私の実際の数字では、ありません。Aは月100万円・200時間、Bは月30万円・60時間です。答えは、時給がAは5,000円、Bも5,000円。Bにすると、利益は70万円へり、時間は140時間ふえます。1時間の自由の値段は、5,000円です。
時給が同じでも、どちらをえらぶかは、人によって、ちがいます。自分の1時間を、5,000円より高いと思う人は、Bを、えらびます。この計算は、答えを出すものではなく、手ばなすものを、数字で見るためのものです。
3. 私の例:利益が出ていた商売を、やめた
3-1. 利益と、自分の給料と、自宅
中古のブランド品を売っていたころ、利益は、人件費を引く前で、月に80万円から200万円と、大きく、ゆれていました。人件費は、月に45万円から50万円。そこに、私自身の給料として100万円をのせると、逆ざやです。200万円以上出る月なら、残らなくは、ありません。けれど、いつも出るわけでは、ありません。数字に追われるのが、強いストレスでした(営業利益の記事に、くわしく書きました)。
作業の場所は、自宅でした。在庫が、家を、うめていきました。広げるには、倉庫か事務所がいり、月に30万円から50万円以上、かかります。私は、広げるのを、やめました。
3-2. 手ばなしたもの、得たもの
いま、私は、在庫を持って売る仕事を、していません。売っているのは、知識と、個別の指導です。個別の指導は、月に2人、1年に24人までと、上限を決めています。
| 手ばなしたもの | 得たもの |
|---|---|
| 在庫を回して、月に80万〜200万円の利益を出す形 | 在庫のない家、固定費の少ない形 |
| 人を雇って、広げる道 | 自分で全部を見られること |
| 教える人数をふやして、売上をふやす道 | 1人ずつに、時間をかけられること |
私がこの形をえらんだ理由は、いくつかあります。在庫のある商売は、限界利益が浅い。労働集約で、やればやるほど、余暇がなくなる。自由になれない。同じことのくり返しで、いやになる。人を雇って広げようとすると、相手にも完璧をもとめてしまい、育てられない。
3-3. 会場の古物市場:体力との、トレードオフ
会場に通う形の古物市場は、何度も通って、顔がきくようになれば、買いつけが、できるようになります。けれど、パイプいすに、何時間も、すわることになります。私は、年を取ったら続けられないと判断して、やめました。続けている人も、多くいます。同じ仕入れ先でも、何を手ばなせるかは、人によって、ちがいます。
3-4. 携帯の乗りかえ:手間と、通信費
私は、携帯の乗りかえで、特典を受け取ることを、続けています。1年の期待値は、おそらく10万円を割ります。それでも、続けています。契約は半年に1回で、たいへんではなく、通信費が0円になることに、価値を感じているからです(携帯の乗りかえの記事)。
逆に、やめたものも、あります。セールで仕入れた品を、買い取りの店に売って、ポイント分を利益にする方法です。利益は、出ていました。けれど、利益がポイントで残る。セールのたびに、下調べがいる。黒字がつみ上がらず、毎回、作り直しになる。手間とのトレードオフで、やめました。
4. トレードオフを、決めるときの手順
- 「両方取れる」を、まず、うたがう。1-4のとおり、見えていない手ばなしを、さがします。
- 手ばなすものを、数字にする。お金、時間、置き場所。2章の計算機で、時間の値段を、出します。
- 数字にならないものは、言葉で、書き出す。ストレス、自由、体力。私の場合、ここが、決め手でした。
- 「一生」ではなく、「いま」で、決める。体力も、家族の形も、変わります。条件が変われば、決め直します。
- 何を捨てて、どこに集めるかの考え方は、選択と集中の記事に、書きました。
5. まとめ
- トレードオフは、何かを得ると、別の何かを手ばなす関係。時間とお金、速さと質、自由と収入。
- えらばなかったほうの値段が、機会費用。
- 働く時間をへらすなら、「へる利益 ÷ ふえる時間」で、1時間の自由の値段が出る。
- 私は、利益の出ていた在庫の商売を、自由と固定費の少なさと引きかえに、手ばなした。
- 「両方取れる」を、うたがい、手ばなすものを数字と言葉で書いてから、決める。

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