比較優位とは|わかりやすい例と、絶対優位とのちがい。自分でもできる作業を、時給2,000円でまかせていた私の計算

比較優位とは|わかりやすい例と、絶対優位とのちがい。自分でもできる作業を、時給2,000円でまかせていた私の計算 経済・経営の用語

比較優位とは、「ほかの仕事とくらべたときに、あきらめるものが、いちばん少ない仕事」を受け持つと、全体の生産がふえる、という考え方です。ポイントは、「相手より、うまくできるか」では、ない、ということです。全部の仕事で相手より下手な人にも、比較優位は、かならず、あります。

先に、書いておきます。私は、中古のブランド品を直して売る仕事を、アルバイトを雇って、回していました。そのとき、自分でもできる作業を、お金を払って、人にまかせていました。逆に、どれだけ時間をかけても、自分でやるべきでない仕事も、ありました。いまは、物を売る側そのものを、やめています。この記事は、その判断を、比較優位という道具で、説明します。

この記事では、意味としくみを先に書いて、そのあとで、計算機、私の例、注意点を書きます。

1. 比較優位とは

1-1. 意味

比較優位は、イギリスの経済学者、デヴィッド・リカードが、1817年の本『経済学および課税の原理』で示した、貿易の考え方です。国どうしの話として生まれましたが、人と人、会社と会社、人とAIのあいだでも、同じ形で、使えます。

言葉 意味
絶対優位 相手より、少ない時間や費用で、作れること
比較優位 その仕事をするために、あきらめるほかの仕事の量(機会費用)が、相手より、小さいこと

機会費用については、機会費用の記事に、書きました。比較優位は、機会費用を、2人のあいだで、くらべたものです。

1-2. 全部で勝っている人も、全部は、やらないほうがいい

Aさんは、1時間に、仕入れの判断が6件、出品が2個、できます。Bさんは、仕入れの判断が1件、出品が1.5個です。Aさんは、どちらも、Bさんより、速い。絶対優位は、両方とも、Aさんです。

仕入れの判断(1時間) 出品(1時間) 出品1個のために、あきらめる仕入れの判断
Aさん 6件 2個 3件
Bさん 1件 1.5個 約0.67件

Aさんが出品を1個やると、仕入れの判断を3件、あきらめることになります。Bさんは、0.67件ですみます。出品の機会費用は、Bさんのほうが、小さい。だから、出品の比較優位は、Bさんにあります。Aさんは、出品もBさんより速いのに、出品を、やらないほうが、いいのです。

2人が、8時間ずつ働くとします。半分ずつ両方をやると、合計は、仕入れの判断28件、出品14個です。Aさんが、6時間を仕入れの判断に、2時間を出品に使い、Bさんが、8時間ぜんぶを出品に使うと、合計は、36件と、16個になります。だれの腕も上がっていないのに、両方が、ふえます。これが、比較優位の、中身です。

2. なぜ、成り立つのか

2-1. 時間が、有限だから

Aさんの1日は、24時間しか、ありません。出品をしている時間は、仕入れの判断が、できません。Aさんの時間がいくらでもあるなら、全部を、Aさんがやれば、すみます。比較優位は、「うまい人の時間が足りない」ときにだけ、意味を持ちます。

2-2. 見るのは、「差」ではなく、「比」だから

Aさんは、仕入れの判断では、Bさんの6倍、速い。出品では、1.33倍です。Aさんは、「いちばん大きく勝っている仕事」に、時間を使います。Bさんは、「いちばん小さく負けている仕事」を、受け持ちます。全部で負けている人にも、「負け方がいちばん小さい仕事」は、かならず1つ、あります。だから、比較優位は、だれにでも、あります。

3. 計算機:どちらが、どちらを、受け持つか

2人(または、自分と外注先、自分とAI)が、1時間にできる量を、入れてください。はじめの数字は、1章の、仮の数字です。

Aさん 仕事X  仕事Y (1時間あたり)

Bさん 仕事X  仕事Y (1時間あたり)

Yを1つ作るために、あきらめるX(A / B):

仕事Yを受け持つべきなのは:

仕事Xを受け持つべきなのは:

はじめの数字だと、あきらめるXは、Aさんが3、Bさんが0.67です。Yは、Bさんが、受け持ちます。2人の「比」が同じとき(たとえば、Aが6と3、Bが2と1)は、分けても、合計は、ふえません。比較優位は、2人の得意のかたむきが、ちがうときにだけ、はたらきます。

4. 私の例:まかせた仕事、やめた仕事

4-1. 自分でもできる作業を、まかせた

私は、2019年から2022年ごろまで、中古のブランド品を、業者向けの市場で仕入れて、直して、売っていました。売る数は、週に50点から150点。仕入れに使うお金は、月に600万円以上でした。

1点にかかる作業の時間は、撮影が20分、出品が15分、梱包が10分。合わせて、45分です。週に100点なら、75時間。これに、直す時間が、のります。財布の引手の交換なら、部品代は200円ぐらいで、ゆっくりやっても、10分から15分です。

一方で、いちばんもうけを左右する仕入れは、市場の競りです。ねらった品を確実に落とすには、パソコンの前に、はりついて、競りに参加しなければ、なりません。競りの時間に、梱包は、できません。梱包を1個やるたびに、私は、競りを、あきらめていたことに、なります。

私は、時給2,000円で、アルバイトを雇って、直す作業を、手伝ってもらっていました。週に3日、1日に3時間ぐらいです。比較優位で見ると、ここで大事なのは、私とアルバイトの、どちらの手が速いかでは、ありません。計算機で言えば、私の時間は、仕事X(競り)に、大きくかたむいていた。それだけです。

4-2. 時間をかけても、自分でやるべきでない仕事も、あった

逆の例です。革の染め直しは、原料は、1回あたり200円ぐらいです。けれど、作業は、2時間以上、かかりました。色が、作れない。調整に、時間がかかる。エアスプレーも、いる。専門の工房を作らないとむりだ、と思いました。修理に、工業用のミシンがいる品も、ありました。外注すると、赤字です。こういう品は、損を切って、直さずに、そのまま、売りました。

ここで大事なのは、「自分にも、まかせる相手にも、比較優位がない仕事」がある、ということです。比較優位は、2人のあいだで、どちらがやるかを決める道具です。その仕事を、そもそもやるべきかは、決めてくれません。それは、限界利益の、仕事です。

4-3. まかせる費用は、時給だけでは、ない

1章の計算には、入っていないものが、あります。教える時間、管理する時間、気持ちの費用です。私は、家族を社員として雇っていた時期も、あります。やる気があるときは、4時間でも5時間でも、動いてくれました。けれど、動き出すまでに時間がかかって、安定しませんでした。アルバイトとのあいだでも、時給の数字には出てこない、まさつが、ありました(この記事に、書いています)。

まかせて得をするのは、「比較優位でふえる量」が、「まかせるための費用」より、大きいときだけです。私は、自分とアルバイトだけの小さな形なら、続けられたと、考えています。会社の形にしようとすると、私の場合は、むりでした。

4-4. いまは、AIに、まかせている

いまの私は、商品の説明文は、AIに書かせたほうがいい、という立場です。人が書くと、トラブルの火種に、なりやすい。AIは、伝えたい内容を変えずに、買いたくなる文に、直します。

AIが相手だと、2章の1つ目の前提が、変わります。AIの時間は、ほとんど、有限では、ありません。「うまいほうの時間が足りない」が、成り立たない。だから、AIのほうがうまい仕事は、全部、AIにまかせて、かまいません。すると、人に残るのは、「AIに、そもそもできない仕事」だけに、なります。私の場合、それは、自分の実体験と、その文脈です。AIで、何か月ぶんの作業が1日で終わるのは、材料になる体験を、私のほうが、持っているからです。持っていない人が、AIだけで、強い物語を作ることは、できません。

4-5. 物を売る側を、やめた理由

私は、いまは、物を売る側には、いません。理由は、いくつもあります。その1つが、比較優位です。私は、手先が、器用では、ありません。人を育てようとすると、相手にも、完璧を求めてしまいます。社員やアルバイトを、うまく育てられませんでした。一方で、相手も経営者で、結果が自分の収入に直結している人を、伸ばすことには、適性があると、判断しました。

直して売る仕事で、私が、だれかに、絶対優位で負けていたわけでは、ありません。それでも、やめました。比較優位は、「何が得意か」ではなく、「何をあきらめているか」で、決まります。物を売っている時間に、私があきらめていたものが、大きすぎた。それが、計算の、答えでした。

5. 注意点

  • かたむきすぎると、こわれやすい:1つの仕事だけに特化すると、その仕事の需要がなくなったときに、行き場が、なくなります。私と同じ世代で、大学の専攻にしがみついた人たちは、会社の業績が悪くなって、部署がなくなり、配置を変えられて、いまは、しんどそうです。比較優位は、「いまの条件での、最適」です。条件は、変わります。
  • 比較優位は、動く:Bさんが上達すれば、比は、変わります。AIが出てくれば、もっと大きく、変わります。1回決めた分担を、そのままにしないでください。
  • まかせる費用を、入れる:4章の3つ目です。教える時間、管理の時間、まさつ。これが大きいと、分けないほうが、得になります。
  • 「やらなくていい仕事」は、先に、消す:4章の2つ目です。だれがやるかの前に、やるべきかを、決めます。

6. まとめ

  • 比較優位とは、あきらめるもの(機会費用)が相手より小さい仕事を受け持つと、全体がふえる、という考え方です。リカードが、1817年に示しました。
  • 絶対優位(相手よりうまい)とは、別のものです。全部で負けている人にも、比較優位は、かならずあります。
  • 成り立つ条件は、うまい人の時間が有限であることと、2人の得意のかたむきが、ちがうことです。
  • 私は、時給2,000円で、直す作業を、まかせていました。競りにはりつく時間と、作業の時間は、同時には、取れないからです。染め直しのように、だれにも比較優位がない仕事は、やめました。
  • AIは、時間がほぼ有限でないので、AIのほうがうまい仕事は、全部まかせられます。人に残るのは、体験と、文脈です。

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