ドルコスト平均法は、「同じ金額を、決まった間隔で、買いつづける」方法です。毎月1万円、のように決めます。値段が高い月は、少ししか買えません。安い月は、たくさん買えます。その結果、平均の買値が、値段の単純な平均よりも、低くなります。
私は、学生のころに、この方法で積立をはじめました。年単位でマイナスになった年は、何度もあります。それでも、長い目で見ているので、通算でマイナスになったことは、ありません。ただし、これは、ドルコスト平均法が「もうかる方法」だからでは、ありません。この方法が解決するのは、別の問題です。
この記事では、しくみと計算を先に書いて、そのあとで、一括投資との比較、私の例、向かない場面を書きます。
| この記事に書くこと | この記事に書かないこと |
|---|---|
| ドルコスト平均法のしくみ、計算、長所と短所、限界 | どの商品を買うべきか、いつ始めるべきか |
1. ドルコスト平均法とは
英語では、Dollar-Cost Averaging。定額購入法とも、呼ばれます。「ドル」は、もとの言葉がアメリカで生まれたからで、円で買う場合も、同じ名前を使います。投資信託の積立は、ほぼ、この方法です。
くらべる相手は、2つあります。
| 方法 | やり方 | 平均の買値 |
|---|---|---|
| 定額購入(ドルコスト平均法) | 毎回、同じ金額を買う。 | 値段の単純な平均より、低くなる。 |
| 定量購入 | 毎回、同じ口数を買う。 | 値段の単純な平均と、同じ。 |
| 一括投資 | はじめに、ぜんぶ買う。 | はじめの値段。 |
2. 計算:なぜ、平均の買値が下がるのか
毎月1万円ずつ、5か月、買います。値段(1口あたり)は、1万円から5,000円まで下がって、また1万円に、もどったとします。
| 月 | 値段 | 買えた口数(1万円ぶん) |
|---|---|---|
| 1か月目 | 10,000円 | 1.00口 |
| 2か月目 | 8,000円 | 1.25口 |
| 3か月目 | 5,000円 | 2.00口 |
| 4か月目 | 8,000円 | 1.25口 |
| 5か月目 | 10,000円 | 1.00口 |
| 合計 | 単純な平均 8,200円 | 6.50口 |
- 払ったお金は、5万円。買えたのは、6.5口。平均の買値は、5万 ÷ 6.5 ≒ 7,692円です。値段の単純な平均(8,200円)より、低くなりました。
- 5か月目の値段は、1万円です。6.5口の評価額は、6万5,000円。値段は、はじめと同じところに、もどっただけなのに、1万5,000円のプラスです。
- はじめに5万円を一括で買った人は、5口のままです。評価額は、5万円。プラスマイナス、ゼロです。
理由は、「安いときに、口数を多く買っている」からです。数学の言葉では、定額購入の平均の買値は、値段の「調和平均」になります。調和平均は、いつも、単純な平均(算術平均)以下です。値段の揺れが大きいほど、この差は、大きくなります。
2-1. 計算機
値段の単純な平均:—
定額購入の、平均の買値:—
定額購入の、最後の評価額:—
同じ合計額を、はじめに一括で買った場合の評価額:—
値段の列を、「10000,11000,12000,13000,14000」のような、上がりつづける形に、変えてみてください。こんどは、一括のほうが、大きく勝ちます。はじめの数字は、説明のための仮の値です。予想では、ありません。手数料と税金は、ふくみません。
3. 一括投資と、どちらが有利か
手もとに、まとまったお金が、すでにある場合の話です。
アメリカの運用会社バンガードが、2012年に出した調査があります。アメリカ、イギリス、オーストラリアの、過去の長い期間のデータで、「一括で入れた場合」と「12か月に分けて入れた場合」を、くらべました。結果は、およそ3回に2回は、一括のほうが、成績が良かった、というものでした。
理由は、かんたんです。株の市場は、長い目で見ると、上がってきました。上がる市場では、早く、多く入れた人が、有利です。分けて入れると、待っているあいだのお金が、増える機会を、のがします。
つまり、ドルコスト平均法は、期待できる成績を、上げる方法では、ありません。では、何のための方法なのか。
- 最悪のタイミングを、さける:一括で入れた直後に、大きく下がる。3回に1回のほうに当たったときの、傷を、小さくします。
- 判断の回数を、ゼロにする:「いまは高いか、安いか」を、考えなくて済みます。値動きの予想がむずかしい理由は、ランダムウォーク理論とはに書きました。
- 後悔を、小さくする:下がったら、「安く買える」と思えます。上がったら、「もう持っているぶんが、増えた」と思えます。あとから自分を責める心のくせについては、後知恵バイアスとはに書きました。
なお、毎月の給料から積み立てる人は、そもそも、一括で入れるお金が、手もとにありません。この場合、「入ったお金を、すぐ入れる」積立は、一括投資を、毎月やっているのと、同じです。上の比較で、まようのは、まとまったお金を持っている人だけです。
4. 私の例
4-1. つづいた理由は、「考えなくて済んだ」から
私が積立をはじめたのは、学生のころです。そこから、大きな下落を、何度か、くぐっています。年単位でマイナスの年も、ありました。それでも、やめませんでした。根性があったからでは、ありません。長い目で見る、と先に決めて、積立を、つづけただけです。積立は、買うたびに「いまは高いか、安いか」を、判断しなくて済みます。
逆に、自分で売り買いを判断した、FXと、仮想通貨では、通算で、300万円以上を、失っています。同じ人間がやって、この差です。私にとって、ドルコスト平均法のいちばんの効果は、買値が下がることよりも、私自身の判断を、外に出してくれたことでした。失った側の話は、株で人生終わった人と終わらなかった人の差に書きました。
4-2. レバレッジ型を積立で買うときに、分かっておくこと
私は、いま、値動きが指数の2倍や3倍になる商品も、積立で買っています。ここで、よくある考えちがいが、あります。「積立なら、値動きが荒くても、安全になる」という考えです。
2章で見たとおり、値動きが荒いほど、定額購入の買値は、有利になります。これは、本当です。でも、ドルコスト平均法がならしてくれるのは、買値のばらつきだけです。商品そのものの性質は、変えません。レバレッジ型は、値段が揺れるだけで、少しずつ目減りする性質を、持っています。これは、積立でも、消えません。くわしくは、ボラティリティとはと、TQQQはやめとけ、は本当かに書きました。
5. 向かない場面と、限界
- 下がりつづける商品:買値は下がりますが、値段が、もどらなければ、損がふえるだけです。「長い目で見て、上がる」と考える理由がある対象にしか、使えません。
- 終わりに近い時期の、大きな下落:積立の後半は、持っている金額が、大きくなっています。その時期の下落は、毎月の1万円では、ならせません。ならしてくれるのは、入口だけで、出口は、別に考える必要があります。
- 手数料が、買うたびにかかる商品:回数を分けるほど、不利です。
- 生活費まで入れている場合:下がったときに、やめないことが、この方法の前提です。お金が必要になって、安いときに売ると、しくみが、逆に働きます。金額の決め方は、破産確率とはに書きました。
6. まとめ
- ドルコスト平均法は、同じ金額を、決まった間隔で買いつづける方法です。
- 安いときに多く買うので、平均の買値が、値段の単純な平均より、低くなります(調和平均)。
- まとまったお金がある場合、過去のデータでは、およそ3回に2回は、一括投資のほうが、成績が良かった、という調査があります。
- この方法が解決するのは、成績ではなく、タイミングの悪さと、判断の回数と、後悔です。
- 私が長くつづけられたのは、売り買いの判断を、自分でしなくて済んだからでした。
- ならしてくれるのは、買値だけです。商品の性質と、出口のリスクは、変わりません。
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【免責と、利益相反の開示】この記事は、用語と計算方法の説明を目的としたもので、特定の金融商品の購入や売却を、すすめるものではありません。筆者は、指数連動型とレバレッジ型の投資信託・ETFを、積立で、自分のお金で保有しています。記事の中の数字は、計算の例と、過去の調査の紹介で、将来の成果を約束するものではありません。投資の判断は、ご自身の責任でお願いします。

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