フロー状態は、目の前の作業に完全に入りこんで、時間の感覚がなくなる状態です。「ゾーンに入る」とも言われます。気合や才能の話では、ありません。課題のむずかしさと、自分の技能が、つり合ったときに、起きます。
私は、20年ちかく、同じ転売の仕事をしてきて、あるときから、かせげているのに、つづけるのが苦痛になりました。当時は、「飽きた」としか、言えませんでした。この理論の図に当てはめると、理由は、1行で書けます。技能が上がって、課題が、かんたんになりすぎたのです。
この記事では、意味と条件を先に書いて、そのあとで、8つの状態の図、判定の道具、私の例、入り方、注意点を書きます。
1. フロー状態とは
ハンガリー出身の心理学者、ミハイ・チクセントミハイが、1970年代に名づけました。画家、チェスの選手、ロッククライマー、外科医などに、「いちばん充実しているとき、どんな感じか」を聞きとったところ、多くの人が、「流れ(フロー)に運ばれているようだ」と答えたことが、名前の由来です。
フローの最中に起きることは、次のように整理されています。
- いまやっていることに、注意がぜんぶ向いている。
- 考えることと、やることが、1つになっている。
- 自分がどう見られているか、という意識が、消える。
- 時間の感覚が、変わる。数時間が、数分に感じられる。
- 自分で状況を動かせている、という感覚がある。
- 報酬がなくても、その活動自体が、やりがいになる。
1-1. フローに入る、3つの条件
| 条件 | 意味 | 欠けると |
|---|---|---|
| 目標が、はっきりしている | 次に何をすればいいかが、1手ごとに分かる。 | 「何をすればいいのか」を考えるたびに、集中が切れる。 |
| 結果が、すぐ返ってくる | うまくいったか、いかなかったかが、その場で分かる。 | 手ごたえがなく、調整ができない。 |
| むずかしさと技能が、つり合っている | いまの自分の力を、少しだけ上回る課題。 | むずかしすぎれば不安、かんたんすぎれば退屈になる。 |
2. 8つの状態:フローは、右上にしかない
チクセントミハイたちは、課題のむずかしさと、技能の高さの組み合わせで、心の状態を、8つに分けました。
| 技能:低い | 技能:中くらい | 技能:高い | |
|---|---|---|---|
| 課題:むずかしい | 不安 | 覚醒(学んでいる状態) | フロー |
| 課題:中くらい | 心配 | (中間) | コントロール(余裕がある状態) |
| 課題:かんたん | 無気力 | 退屈 | くつろぎ |
大事な点は、2つです。
- フローは、「むずかしい課題」と「高い技能」が、両方そろった場所にしか、ありません。かんたんな課題と、低い技能がつり合っても、出てくるのは、無気力です。
- 技能は、やっていれば、上がります。ですので、同じ課題をつづけていると、人は、この表を、右へ、右へと動きます。フローにいた人は、コントロールへ、そして、くつろぎや退屈へ、移ります。フローにいつづけるには、課題を、上げつづける必要があるのです。
2-1. 判定の道具:いまの自分は、どこにいるか
いまの仕事(または練習)について、0〜10で入れてください。
いまの状態:—
フローに近づくには:—
これは、上の表をそのまま道具にしたものです。0〜3を低い、4〜6を中くらい、7〜10を高い、としています。この区切りは、説明のための仮のもので、研究で決まった数字では、ありません。
3. 私の例
3-1. かせげているのに、苦痛だった理由
私は、転売について、思いつくかぎりの手法と、販売の場所を、ぜんぶ検証しました。検証しているあいだは、おもしろかったのです。新しい場所には、新しいルールがあります。仮説を立てて、出品して、数日で、結果が返ってきます。3つの条件が、そろっていました。
検証が終わって、「あとは、同じことをくり返せば、かせげる」という段階に入ると、苦痛になりました。お金は、入ってきます。でも、つづけられません。上の表で言えば、技能が「高い」のまま、課題が「かんたん」に下がりました。くつろぎと、退屈の場所です。
当時の私は、これを、「自分は飽きっぽい」と説明していました。いまは、「課題を上げる先が、その仕事の中に、もう、なかった」と説明できます。この話は、飽き性は天才なのかに、くわしく書きました。
3-2. いまの仕事で、課題を上げつづける方法
いまは、文章と、教材と、販売ページを作っています。ここでは、課題を、自分で上げられます。「昨日より、読みやすく」「前の版より、数字がよく」。基準を、自分で動かせるからです。道具とAIを組み合わせて、直す回数をふやせるようになってからは、自分の求める水準まで、妥協せずに上げられるようになりました。やり方は、マルチタスクとはに書きました。
結果は、メルマガの登録数と、売上で、返ってきます。前の月とくらべます。「結果がすぐ返ってくる」とまでは言えませんが、自分で成績表を作ることで、2つ目の条件を、おぎなっています。
3-3. 環境:集中が切れたら、やめる
私は、仕事の終わりの時間を、決めていません。集中が落ちたら休み、もどったら、再開します。仕事の部屋と、寝室は、分けています。作りこんだのは、椅子と、机と、空気清浄機の、3つだけです。どれも、「途中で、別のことが気になる原因」を、へらすためのものです。この話は、テレワークで頭おかしくなる原因に書きました。
4. フローへの入り方
- 次の1手を、はっきりさせる:「記事を書く」ではなく、「2章の表を作る」。目標を、15〜30分で終わる大きさに、切ります。
- 結果が、すぐ見える形にする:書いたら、すぐ読む。作ったら、すぐ動かす。数字を、毎日見る。
- むずかしさを、調整する:不安なら、課題を小さく切るか、先に調べます。退屈なら、時間を区切る、基準を上げる、やり方を変える、のどれかで、課題を上げます。
- 割りこみを、消す:通知を切ります。フローに入るまでには、時間がかかります。1回の割りこみで、はじめからに、なります。
- まず、始める:フローは、始める前には、来ません。始め方は、作業興奮とはに書きました。
5. 注意点:フローは、「良いこと」の保証ではない
5-1. 没頭できることと、成果が出ることは、別
私は、FXの自動売買のプログラムを、100個以上、検証したことがあります。毎日、10個単位で、過去のデータで試していました。目標は、はっきりしています。結果は、数分で返ってきます。少しずつ、むずかしい設定に、進めます。フローの3つの条件が、きれいに、そろっています。
それでも、通算の結果は、250万円以上の損失でした。条件がそろえば、人は、没頭できます。没頭している対象が、自分のためになるかどうかは、フローは、教えてくれません。この話は、FXで人生終わった人と終わらなかった私の差に書きました。
5-2. 没頭させるように、作られたものがある
ゲームや、ギャンブルの機械は、目標が明確で、結果がすぐ返り、むずかしさが少しずつ上がるように、設計されています。時間の感覚がなくなる点は、同じです。研究者の中には、スロットマシンへの没入を、フローの暗い面として、区別して論じている人もいます。「時間をわすれた」だけでは、良い時間だったかどうかは、分かりません。
5-3. いつも入れるものでは、ない
フローは、条件を整えても、入れない日があります。入れない日に、「自分はだめだ」と考える必要は、ありません。ふつうの集中で、じゅうぶん、仕事は進みます。やる気の土台については、自己決定理論とはに書きました。
6. まとめ
- フロー状態は、作業に完全に入りこんで、時間の感覚がなくなる状態です。チクセントミハイが名づけました。
- 条件は、目標がはっきりしている、結果がすぐ返る、むずかしさと技能がつり合っている、の3つです。
- フローは、「むずかしい課題」と「高い技能」がそろった場所にしか、ありません。
- 技能は上がるので、同じ課題をつづけると、退屈のほうへ動きます。フローにいつづけるには、課題を上げつづけます。
- 私が、かせげているのに転売が苦痛になったのは、課題を上げる先が、なくなったからでした。
- 没頭できることと、成果が出ることは、別です。

コメント