研究に向いてない?修士で博士に進むのは1割、研究を離れる理由と研究以外の進路(計算機つき)

研究に向いてない?修士修了者の進路(令和7年3月、学校基本調査から計算):博士課程等へ進学10.7%、就職78.2%、うち研究者6.4%、うち製造技術者(開発)24.2%(うちは就職者に占める割合)。就職を選んだ理由の1位は経済的に自立したい66.2%(NISTEP 修士の調査、2022年)。向き不向きを判定する公的基準はなし 生き方・キャリア

「研究 向いてない」「研究 向いてない 修士」「実験 失敗」「研究 進まない」「研究 やめたい」「理系 向いてない」「研究者に向いている人」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。

研究に向いているかどうかを判定する公的な基準や統計はありません。公的な統計で確かめられるのは、修士・博士を出た人の進路の数です。令和7年3月に修士課程を修了した77,633人のうち、博士課程等へ進学したのは8,279人(10.7%)で、就職したのは60,674人(78.2%)でした。博士課程等へ進まない人が約9割で、就職する人が多数派です。就職した人のうち、職業が「研究者」の人は3,905人で、就職者の6.4%です(学校基本調査、割合は計算)。ただし、製造技術者(開発)(就職者の24.2%)など、企業で研究開発に携わる人は「研究者」に入らないので、研究活動を離れた人の割合は、この統計からは分かりません。

博士課程に進まずに就職を選んだ修士の学生に理由を聞いた国の調査(NISTEP、2022年1〜3月)では、多い順に「経済的に自立したい」66.2%、「社会に出て仕事がしたい」59.9%、「博士課程に進学すると生活の経済的見通しが立たない」38.4%でした。「博士論文に値する研究テーマが見つけられない」を挙げたのは16.2%、「研究室環境が好ましくない」は15.4%です。博士課程に進まず就職を選んだ修士学生の理由の上位は、経済的な自立・社会に出て仕事をすること・進学後の生活の見通しでした。能力の向き不向きを直接尋ねた設問ではありません。

この記事は、在学中の修士・博士の学生が、研究を続けるか離れるかを決めるための材料をまとめたものです。研究室で自分だけできない・実験で失敗ばかりで「無能だ」とつらい気持ちは研究室で「無能だ」と感じてつらい人へに、研究職に就いたあとの向き不向きは研究職はやめとけ?に分けて書きました。性格の特徴から「向いている人・向いていない人」を当てるような一覧は、公的な根拠がないので作っていません。

知りたいこと 答え 章
研究に向いてないか 判定する公的な基準・統計はない。確かめられるのは修士・博士を出た人の進路の数と、博士に進まず就職を選んだ理由 2章・3章
修士で博士に進む人 令和7年3月の修了者の10.7%が博士課程等へ進学(分野で理学21.4%〜芸術5.7%)。進まない人が約9割で、就職78.2%が多数派。企業で研究開発に携わる人もいるので、研究を離れた人の割合は分からない 2章
研究を離れる理由(博士に進まない理由) 博士に進まず就職を選んだ修士の理由(NISTEP)は、経済的に自立したい66.2%、社会に出て仕事がしたい59.9%、経済的見通しが立たない38.4%が上位。研究テーマが見つけられない16.2%、研究室環境15.4%。向き不向きを尋ねた設問ではない 3章
研究が進まない・実験で失敗する 大学院生の7〜8割が「勉学・研究」全般に不安・悩みがある(修士71.6%・博士79.4%。進み具合や失敗そのものの割合ではない)。失敗の回数と向き不向きを結びつけた公的統計はない 3章
研究をやめたい 修士の人は修士で就職・博士に進む・中退、博士の人は続ける・満期退学・中退を、年齢・就職の統計で並べる。中退は1年に修士・専門職学位課程で2.22%、博士課程で2.94% 5章
研究者に向いている人 公的な条件はない。job tag で今回選んだ研究者6職業の単純平均で値が高いスキルは読解力・文章力・説明力・論理と推論(計算) 6章
研究で身につく力の行き先 弁理士(資格が必要)・データサイエンティスト・知的財産コーディネーターなども、論理と推論・文章力などの値が比較的高い(job tag。今回選んだ職業どうしの比較) 6章
自分の場合 分野別の統計、理由ごとの調査の数字と次の一手、進路の比較、使った力と職種の対応を計算機で 8章

1. 先に、この記事の数字と、書いている人について

私は東京電機大学の出身で、研究室には所属しないまま卒業し、大学院には行っていません。研究を何年も続けた経験はないので、この記事の2〜6章は、公的な統計・調査と法令だけで書きます。7章だけが私の見方です。

数字の中心は、文部科学省の学校基本調査 令和7年度の卒業後の状況調査です。表82「修士課程の状況別 卒業者数」、表85「修士課程の職業別 就職者数」、表86「博士課程の状況別 卒業者数」、表87「博士課程の専攻分野別 入学年度別 卒業者数」、表90「博士課程修了者のうちポストドクター等の数」を、政府統計の総合窓口(e-Stat)のファイルから読みました。令和7年3月に修了・卒業した人の、令和7年5月1日の状況です。割合は人数から計算しました。

博士課程に進まず就職を選んだ理由と、大学院生の不安・悩みは、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の「修士課程(6年制学科を含む)在籍者を起点とした追跡調査」(調査資料-323、2022年1〜3月の調査、回答17,525人、回答率14.0%)と、日本学生支援機構の「令和6年度 学生生活調査 大学院各課程(試行)」から取りました。どちらも「研究に向いていない人」を判定した調査ではなく、理由や悩みを尋ねた調査です。

研究で身につく力と職種の対応は、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の数値を使いました。job tag の数値は、その職業に就いている人に「その職業で求められる」程度を尋ねた回答の平均で、個人の適性を測るものではありません(6章)。

2. 修士・博士を出た人の進路:修士で博士に進むのは1割

2-1. 修士課程の修了者の進路(令和7年3月)

令和7年3月に修士課程を修了した77,633人の、5月1日の状況です(学校基本調査 表82、割合は計算)。

  • 博士課程等へ進学:8,279人(10.7%)
  • 就職:60,674人(78.2%)
  • 進学でも就職でもない(左記以外の者):7,818人(10.1%)

この3つで修了者のすべてではありません。ほかに、就職者に入らない有期雇用・臨時労働者、専修学校・外国の学校等への入学(391人)、臨床研修医、不詳・死亡の区分があり、進学者のうち就職している345人は進学と就職の両方に数えられています(表82)。博士課程等へ進学しなかった人は、修了者の89.3%です(計算)。

ここでの「進学」は、博士課程のほか、ほかの修士課程・学部などへの入学も含む数え方です。博士課程だけへの進学者の全国の数は見当たりませんでした。文部科学省の公表資料の「進学者」8,670人(11.2%)は、専修学校・外国の学校等への入学(391人)も含めた数え方で、10.7%と同じ年の別の数え方です。

2-2. 分野別:理学は2割、工学は7%

分野で大きく違います。理学は修了者の21.4%が博士課程等へ進み、就職者のうち研究者は11.9%です。工学は進学が7.0%で、修了者の87.8%が就職し、研究者は5.8%、製造技術者(開発)は36.7%です(表82・表85、計算)。

分野 修士課程の修了者 博士課程等へ進学 就職 就職者のうち研究者 就職者のうち製造技術者(開発)
全体 77,633人 10.7% 78.2% 6.4% 24.2%
人文科学 4,248人 16.2% 56.3% 0.8% 0.2%
社会科学 6,901人 8.4% 67.1% 0.9% 0.9%
理学 6,018人 21.4% 73.2% 11.9% 22.3%
工学 33,567人 7.0% 87.8% 5.8% 36.7%
農学 4,205人 13.4% 80.0% 13.5% 15.5%
保健 5,351人 16.0% 77.3% 8.7% 6.6%
教育 1,810人 11.7% 67.2% 1.1% 0.7%
芸術 2,406人 5.7% 51.2% 0.2% 0.6%
家政 398人 5.3% 81.9% 7.4% 11.7%
その他 12,697人 12.3% 74.5% 7.8% 21.1%

進学・就職は修了者に、研究者・製造技術者(開発)は就職者に占める割合です。進学と就職を足しても100%にはなりません(2-1)。

「研究者」は学校基本調査の職業の区分の名前です。企業の研究所で働く人でも、区分の決め方で技術者に入ることがあります。研究者の割合が小さいことは、研究開発に近い仕事に就く人が少ないという意味ではありません(当てはめ)。研究活動を離れた人の割合は、この統計からは分かりません。

2-3. 進学する割合の推移

中央教育審議会 大学院部会の資料集(令和8年5月11日時点、p.14)の図に、修士課程修了者の進学率の推移があります。令和7年の全体10.7%と令和6年の10.4%は、表82の「進学者」(専修学校・外国の学校等への入学を含まない)から計算した値と一致するので、この図の系列は2-1の10.7%と同じ数え方です。図から読んだ値では、全体の進学率は平成12年3月の16.7%から下がり、平成29年・令和元年の9.2%を底に、令和7年は10.7%です。途中の年は図から読んだ値です。文部科学省の公表資料の「進学者」8,670人(11.2%)は、専修学校・外国の学校等への入学を含む別の数え方で、この図の系列とは並べられません。文部科学省の「博士人材活躍プラン」(令和6年3月)は、修士課程から直接進学する学生数について「2003年から約4割減少」と書いています。

2-4. 就職した人のうち「研究者」は6.4%

修士課程を修了して就職した60,674人のうち、職業が研究者の人は3,905人(6.4%)でした。多いのは、製造技術者(開発)14,694人(24.2%)、情報処理・通信技術者9,553人(15.7%)です(表85、計算)。研究者・技術者を含む「専門的・技術的職業従事者」は47,624人(78.5%)です。

2-5. 博士課程を出た人の進路

令和7年3月に博士課程を出た16,278人(満期退学を含む)のうち、満期退学は3,299人(20.3%)、就職者は11,388人(70.0%)、ポストドクター等は1,898人(11.7%)でした(表86・表90、計算)。就職者には、無期雇用7,873人と、有期雇用のうち一定の条件を満たす人が入っています。就職者のうち大学教員は2,325人(就職者の20.4%)です(表89)。

分野 博士課程の卒業者(満期退学を含む) 満期退学 就職者(一定の有期雇用を含む) ポストドクター等 3年制の後期課程を3年で出た人
全体 16,278人 20.3% 70.0% 11.7% 37.2%
人文科学 872人 46.4% 43.9% 12.3% 18.3%
社会科学 874人 34.6% 52.9% 5.6% 22.5%
理学 1,225人 18.0% 69.9% 25.8% 54.9%
工学 3,646人 15.4% 69.8% 16.2% 38.9%
農学 812人 17.0% 64.3% 13.3% 44.7%
保健 5,831人 16.6% 82.3% 4.8% 42.2%
教育 431人 39.2% 65.2% 6.0% 33.9%
芸術 171人 16.4% 47.4% 0.6% 38.0%
家政 40人 20.0% 85.0% 2.5% 32.5%
その他 2,376人 21.0% 60.0% 17.6% 34.5%

満期退学などの割合は、その年に博士課程を出た人の内訳です。いま在学している人が満期退学する確率ではありません(人文科学の満期退学46.4%も、卒業者に占める割合です)。3年制の博士後期課程を出た人のうち最短の3年で出た人の割合も、その年の卒業者の内訳です。3年で満期退学した人も含み、入学した人が3年で修了する確率ではありません。満期退学と学位の期限は博士課程は人生終了?に、博士のあとのポストドクターの統計はポスドクの末路はやばい?にまとめました。

3. 「向いてない」と感じる理由:公的な調査で多いのは何か

3-1. 博士に進まずに就職を選んだ理由(NISTEP)

NISTEP の修士課程在籍者調査で、「就職先が決定している」「就職活動中」と答えた人に、進学ではなく就職を選んだ理由を尋ねた結果です(概要図表10、複数回答)。

理由 割合
経済的に自立したい 66.2%
社会に出て仕事がしたい 59.9%
博士課程に進学すると生活の経済的見通しが立たない 38.4%
博士課程に進学すると修了後の就職が心配である 31.1%
博士課程の進学のコストに対して生涯賃金などのパフォーマンスが悪い 30.4%
大学教員などの仕事に魅力を感じない 27.0%
博士論文に値する研究テーマが見つけられない 16.2%
研究室環境が好ましくない(競争が激しい、ストレスが多い、過酷等) 15.4%
現在の成績では博士課程への編入学・進学は難しい 13.6%
社会人入学制度を利用すればいつでも博士課程に進学できる 11.0%
大学より企業の研究環境の方がよい 6.5%
その他 4.9%

博士課程に進まず就職を選んだ修士学生では、経済的に自立したい・社会に出て仕事がしたい・進学後の生活の経済的見通しが上位でした。この設問は、博士課程ではなく就職を選んだ理由を尋ねたもので、能力の向き不向きを直接尋ねた設問ではありません。「博士論文に値する研究テーマが見つけられない」16.2%は、就職を選んだ人のうちこの理由を挙げた割合で、いまの研究テーマに興味が持てるかどうかを尋ねた設問とは別です。研究室の環境、成績を挙げた人もそれぞれ1〜2割でした。この調査では、修了予定者の進路予定は博士課程への進学が9.6%、進学の準備が1.7%でした。2022年1〜3月の調査(第2回)の値で、2026年8月に公表された第3回の割合は、この記事では確かめられていません。

3-2. 大学院生の不安・悩み(日本学生支援機構)

日本学生支援機構の令和6年度 学生生活調査 大学院各課程(試行。回収率は修士22.4%・博士23.5%)で、不安・悩みが「大いにある」「少しある」と答えた割合です(足し算は計算)。

項目 修士課程 博士課程
勉学・研究 71.6% 79.4%
将来の収入や生活 71.3% 69.7%
現在の自分の経済状況 62.2% 59.7%
自分の体調・健康 45.6% 51.4%
教職員との関係 25.0% 30.5%

調査は「すべての課程において『勉学・研究』が最も高くなっており」と書いています。研究のことで不安を抱えていること自体は、大学院生の多数派の状態です。ただし、この割合は勉学・研究全般の不安・悩みで、研究の進み具合や実験の失敗そのものを測った割合ではありません(参考値)。「研究に関する指導・相談」に「やや不満」「不満」と答えたのは、修士15.3%・博士18.8%でした(計算。「利用したことがない」を含む分母)。

3-3. 研究が進まない・実験で失敗する:向き不向きと結びつけた統計はない

実験の失敗の回数や研究の進み具合を、研究の向き不向きと結びつけた公的な統計は見当たりませんでした。NISTEP の修士調査では、修士課程在籍時の平日1日の平均研究時間は「5時間以上8時間未満」が29.0%で最も多く、「3時間未満」も25.4%(計算)いました。理学・農学では8時間以上が3割を超え、人文・社会では1割に届かず、分野で大きく違います。研究の進み具合を、違う分野・違う研究室の人と比べても判断の材料になりにくい、ということです(当てはめ)。

自分だけ遅い・失敗ばかりで「無能だ」と感じてつらいときの切り分けは研究室で「無能だ」と感じてつらい人へに、進捗が出ない週の報告の仕方は研究室の発表がつらいに書きました。成果が出ないまま修士論文を書くときの審査の基準は修論がゴミ・成果なしでも修了できる?にまとめています。

3-4. 体調・気分がすぐれない日が続くとき

同じ学生生活調査で、「自分の体調・健康」に不安・悩みがあるのは修士45.6%・博士51.4%でした。一方で、大学の相談体制(カウンセリング等)を「利用したことがない」は修士61.3%・博士66.3%です。令和7年度に休学した人は、修士課程・専門職学位課程で4月1日の学生数の3.41%、博士課程で10.74%でした(文部科学省 中途退学者・休学者数の調査)。

「研究に向いていない」と感じる理由が体調にあるなら、向き不向きの話にする前に、学生相談室・保健管理センターなど大学の窓口に相談してください。この記事と計算機は、体調を判断しません。休学・留年したときの学費と期間は研究室に行きたくない・つらいに書きました。

4. 理由ごとの次の一手

3章の調査の項目に合わせて、理由ごとに確かめることを並べました。どれもこの記事の当てはめで、向き不向きを判定するものではありません。

いちばん近い理由 調査で近い項目 次の一手
研究テーマに興味が持てない・見つからない 研究テーマが見つけられない 16.2%(NISTEP。博士に進まず就職を選んだ修士の理由) テーマの範囲を狭める・変えることを指導教員に相談する。テーマ・研究室の変更の手続きは大学ごとに違う
指導教員・研究室の環境が合わない 研究室環境が好ましくない 15.4%(NISTEP)、教職員との関係の不安 修士25.0%・博士30.5%(JASSO) 指導の範囲かハラスメントに当たりうるかを分け、大学の相談窓口と変更の手続きを確かめる
研究が進まない・実験がうまくいかない 勉学・研究全般の不安 修士71.6%・博士79.4%(JASSO。参考値) 判定の材料を増やす。進捗が出ない週の報告の仕方を決める
お金と将来が不安 経済的に自立したい 66.2%、経済的見通しが立たない 38.4%(NISTEP) 博士課程の学費と支援を並べる。学振DCの採用率(令和8年度の申請者に占める割合で DC1 11.2%・DC2 11.9%、計算)を前提にしない
研究より、社会に出て仕事がしたい 社会に出て仕事がしたい 59.9%(NISTEP) 研究で使った力が求められる仕事を見る(6章)。修士1年からの就活の逆算を決める
体調・気分がすぐれない 体調・健康の不安 修士45.6%・博士51.4%(JASSO) 大学の学生相談・保健管理センターへ。休学の制度を確かめる

指導教員と合わないときの切り分けと相談先は教授・指導教員と合わないに、研究室・指導教員を変える手続きの例は研究室配属に落ちたら?に、博士課程の学費と支援は大学院の学費はいくら?にまとめました。

5. 研究以外の進路の比較:修士で就職・博士に進む・中退

5-1. 修士で修了して就職する

令和7年3月の修士修了者の就職は78.2%で、分野で人文科学56.3%〜工学87.8%の差があります(表82、計算)。就職者の職業は、製造技術者(開発)24.2%、情報処理・通信技術者15.7%、研究者6.4%などでした(表85)。修士1年からの就活の逆算と研究との両立は大学院生の就活はいつから?に書きました。

5-2. 博士課程に進む

令和7年3月の博士課程の卒業者のうち、満期退学20.3%、就職者70.0%(一定の有期雇用を含む)、ポストドクター等11.7%でした(2-5)。博士課程を出るのは最短でも修士修了の3年後です。学振 特別研究員DCの令和8年度の採用は、DC1が5,637人中634人(11.2%)、DC2が8,609人中1,026人(11.9%)でした(計算)。申請者に占める採用者の割合で、博士課程の在籍者全体が採用される確率ではありません。

5-3. 中退する

令和7年度の中退は、修士課程・専門職学位課程で4,333人(4月1日の学生数の2.22%)、博士課程で2,319人(2.94%。満期退学は含まない)でした(文部科学省 中途退学者・休学者数の調査、回答率91.3%)。修士課程を中退したときの最終学歴は学部卒、修士を修了してから博士後期課程に入った人なら修士修了です(当てはめ)。新卒の採用枠に入れるかや退学の手続きは大学院を辞めたい・中退したら就職は?にまとめました。

5-4. 賃金:大学院卒と大学卒(因果ではない)

厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)では、所定内給与(月額、男女計)の年齢計は大学卒396.3千円、大学院卒517.4千円です。25〜29歳では大学卒296.4千円・大学院卒335.0千円、30〜34歳では340.3千円・406.1千円でした(第3表)。大学院卒は修士と博士を分けていない値で、職種や会社が違う人を比べた平均です。大学院に進んだことで賃金が上がるという因果を示すものではありません。博士修了直後の給与や、進学の損得を予測する数字でもありません(修士と博士の合計で、職種・会社の規模が混ざっています)。

6. 研究で身につく力と職種:job tag で見る

6-1. 法令と国の資料の書き方

大学院設置基準3条は、修士課程の目的を「専攻分野における研究能力又はこれに加えて高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力を培うこと」と定め、4条は博士課程の目的を「研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力」を養うこととしています。どちらも、研究者になることだけを目的にした書き方ではありません(当てはめ)。

中央教育審議会の「2040年を見据えた大学院教育のあるべき姿」(平成31年1月)は、大学院の教育研究で身につくことが期待される力として「自ら課題を発見し設定する力」「自ら仮説を構築し、検証する力」などを挙げ、「様々な場面で通用するようなトランスファラブルな力」と書いています。文部科学省の「博士人材活躍プラン」も、「論理的思考力などの汎用的な能力」と書いています。

6-2. job tag の数値で比べる

job tag は、職業ごとに、その職業で求められるスキルの程度を就業者に尋ねた回答の平均を載せています(スキルは0〜7の目盛り)。この記事では、研究者の職業6つ(医学・薬学・バイオテクノロジー・情報工学・土木・建築工学・社会学の研究者)と、研究の経験と重なる職業12(この記事が選んだもの)を取りました。主なスキルの値です。

スキル(0〜7) 研究者6職業の平均(計算) データサイエンティスト 弁理士 知的財産コーディネーター 分析化学技術者 生産・品質管理技術者 臨床開発モニター(CRA) マーケティング・リサーチャー
論理と推論(批判的思考) 5.2 5.0 5.1 5.0 4.2 3.8 4.2 3.4
科学的素養 4.6 3.6 4.4 3.8 4.6 3.3 2.6 2.6
数学的素養 4.0 5.1 3.9 3.8 3.7 3.3 2.7 3.2
複雑な問題解決 4.6 4.5 4.4 4.4 3.7 3.7 3.9 4.0
文章力 5.5 4.9 5.9 5.4 4.5 4.1 4.8 4.5
説明力 5.5 4.8 5.5 5.1 4.5 4.1 4.9 4.5
外国語を読む 4.9 4.4 5.0 4.1 3.1 2.5 4.0 2.8
プログラミング 3.3 4.8 1.8 2.4 2.1 2.2 1.6 2.7

今回選んだ研究者6職業の単純平均では、文章力5.5・説明力5.5・論理と推論5.2などの値が比較的高くなっています(比較対象は今回選んだ12職業)。ただし、どの項目でも研究者が一番高いわけではありません。弁理士の文章力5.9は研究者6職業の平均5.5を上回り、データサイエンティストの数学的素養5.1・プログラミング4.8も研究者6職業の平均(4.0・3.3)を上回ります(計算)。研究で使った力が、研究以外の仕事でも求められていることの目安になります(当てはめ)。弁理士は資格が必要な職業です。

job tag の厚生労働省の説明では、数値は「それぞれの職業に就かれている方の一部にアンケート調査を行い、回答の平均値や比率をまとめたもの」で、職業全体を正確に反映しているとは限りません。年収などの統計データは職業分類の値で、その職業だけの値ではありません。この記事では、職業どうしの差を見ることにだけ使いました。

6-3. 「研究者に向いている人」の公的な条件はない

研究者に向いている人の条件を定めた公的な資料は見当たりませんでした。参考になるのは、研究者の職業で求められるスキルの程度です。今回選んだ研究者6職業の単純平均で数値が高いのは、読解力5.6、文章力5.5、説明力5.5、論理と推論5.2でした(job tag、計算)。どれも、職業に就いている人が「求められる」と答えた程度で、生まれつきの性格を測ったものではありません。

7. 研究室に入らなかった私の見方

ここからは私の見方です。2〜6章の統計とは分けて読んでください。

私は理系の学部を出ましたが、卒業研究が必修ではない大学で、行きたい研究室もなかったので、研究室に所属しないまま卒業しました。経緯はゼミ・研究室に入らないとどうなる?に書いています。研究を何年も続けた人の実感は、私にはありません。

そのうえで、研究に向いているかどうかと、その後の仕事がうまくいくかどうかは、別の話だと私は見ています。大学で専攻したことを、そのまま仕事で使わない人のほうが多いと感じてきました。一方で、理系で身につけた仮説を立てて検証する力や、筋道を立てて考える力は、研究の外でも十分に使えると思っています。研究とキャリアを、深く考えずに一本の線で結びつけてしまうのは、機会損失だというのが私の考えです。

研究職に就いている人のことは尊敬しています。研究を続けると決めた人の選択を否定するつもりはありません。研究職が誰にとっても正解だとも思っていない、というだけです。研究に向いてないと感じたら、気持ちだけで決めずに、3章の理由のどれに近いかと、5章の進路の数字を並べてから決めてください。

8. 計算機:修士・博士を出た人の進路の統計/向いてないと感じる理由の切り分け/研究以外の進路の比較/研究で身につく力と職種の対応

4つは別々に使えます。

  • 1. 修士・博士を出た人の進路の統計:分野を選ぶと、修士修了者の博士課程等への進学・就職・研究者として就職した割合と、博士課程の卒業者の満期退学・就職者・ポストドクター等の割合を出します(学校基本調査 令和7年度、計算)
  • 2. 向いてないと感じる理由の切り分け:いちばん近い理由と課程を選ぶと、公的な調査で近い項目の割合(NISTEP・日本学生支援機構)と、次の一手を出します。体調は判断しません
  • 3. 研究以外の進路の比較:いまの学年・年齢・分野から、修士の学生なら「修士で就職・博士に進む・中退」を、博士の学生なら「博士課程を続ける・満期退学・中退」を、最短の年齢・分野の統計で並べます。賃金は一般の参考として別に出します
  • 4. 研究で身につく力と職種の対応:研究で使った力を選ぶと、この記事が対応させた job tag の項目の単純平均が高い職業を研究者以外から並べ、研究者6職業の平均と比べます。参考の並びで、適職・転職のしやすさ・資格の取りやすさは示しません

結果は、入れた値と、この記事で見た公的な統計・調査の値だけによる目安です。あなたが研究に向いているかどうかを判定するものではなく、進路の結果を保証するものでもありません。

修士・博士を出た人の進路の統計/向いてないと感じる理由の切り分け/研究以外の進路の比較/研究で身につく力と職種の対応

入れた値は、このページの中で使うだけで、どこにも送られません。初めから入っている値は入力の例です。4つは別々に使えます。

1. 修士・博士を出た人の進路の統計

2. 向いてないと感じる理由の切り分け

3. 研究以外の進路の比較

修士の学年を選ぶと「修士で修了して就職する・博士課程に進む・中退する」を、博士の学年を選ぶと「博士課程を続ける・満期退学する・中退する」を並べます。

4. 研究で身につく力と職種の対応

研究で使った力を選んでください。力と job tag のスキル項目の対応は、この記事の当てはめです。

初めから入っている例は、修士1年・23歳・全体の分野で、理由は「研究テーマに興味が持てない」、研究で使った力は「仮説を立てて確かめる」「データを分析する」「論文・報告書を書く」「発表する」です。3の年齢は「いまの年齢+最短で終わるまでの年数」で、誕生日で1歳ずれます。

9. よくある質問

研究に向いてないと感じたら、研究をやめるべきですか?

やめるべきかを決める公的な基準はありません。令和7年3月の修士修了者で博士課程等に進んだのは10.7%で、進まない人が約9割、就職が78.2%と多数派です(計算)。ただ、企業で研究開発に携わる人もいるので、研究を離れた人の割合はこの統計からは分かりません。続けるか離れるかは、3章の理由のどれに近いかと、5章の進路の数字を並べて決めてください。

修士で博士に進む人はどれくらいですか?

令和7年3月の修士修了者77,633人のうち、博士課程等へ進学したのは8,279人(10.7%)です。理学21.4%、人文科学16.2%、保健16.0%、農学13.4%、社会科学8.4%、工学7.0%でした(表82、計算)。他の修士課程・学部などへの入学も含む数え方です。

実験で失敗ばかりなのは向いてないからですか?

実験の失敗の回数と向き不向きを結びつけた公的な統計は見当たりません。大学院生の不安・悩みでは「勉学・研究」が最も多く、修士71.6%・博士79.4%が不安・悩みがあると答えています(日本学生支援機構、計算)。勉学・研究全般の割合で、失敗そのものの割合ではありません。自分だけ遅いと感じるときの切り分けは研究室で「無能だ」と感じてつらい人へに書きました。

研究が進まないのは自分だけですか?

研究の進み具合を全国で比べた公的な統計はありません。修士課程在籍時の平日1日の平均研究時間は、5〜8時間が29.0%で最も多く、3時間未満も25.4%いて(NISTEP、計算)、分野でも大きく違います。違う分野・研究室の人と比べるより、指導教員と次の一歩を決めるほうが材料になります(当てはめ)。

研究者に向いている人の特徴は?

公的な条件はありません。job tag で今回選んだ研究者の職業6つの単純平均を取ると、数値が高いスキルは読解力5.6、文章力5.5、説明力5.5、論理と推論5.2でした(計算)。就業者が「求められる」と答えた程度で、性格の診断ではありません(6章)。

理系はやめとけと言われるのは本当ですか?

この記事の統計からは、そうは言えません。令和7年3月の修士修了者の就職は、理学73.2%、工学87.8%、農学80.0%で、人文科学56.3%、社会科学67.1%より高い値でした(表82、計算)。就職後の職業は技術者が多く、研究者は一部です(2章)。

研究をやめたい・大学院を辞めたいときは?

修士で修了して就職する、博士課程の途中で満期退学する、中退する、の道があります。令和7年度の中退は修士課程・専門職学位課程で2.22%、博士課程で2.94%でした(5章)。手続きと就職は大学院を辞めたい・中退したら就職は?にまとめました。

研究で身につく力は研究以外で使えますか?

大学院設置基準は、修士課程の目的に「高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力」を含めています。job tag では、弁理士(資格が必要)・データサイエンティスト・知的財産コーディネーターなども、論理と推論・文章力などの値が比較的高くなっています(6章、今回選んだ職業どうしの比較)。研究者以外の職業で使えるかの目安になりますが、個人の適性を測るものではありません。

10. まとめ

  • 研究に向いているかを判定する公的な基準・統計はない。確かめられるのは修士・博士を出た人の進路の数と、博士に進まず就職を選んだ理由
  • 令和7年3月の修士修了者77,633人のうち、博士課程等への進学は10.7%、就職は78.2%で、進まない人が約9割。就職者のうち研究者は6.4%(計算)。ただし企業で研究開発に携わる技術職は「研究者」に入らず、研究を離れた人の割合はこの統計からは分からない
  • 博士に進まず就職を選んだ修士の理由は、経済的に自立したい66.2%、社会に出て仕事がしたい59.9%、経済的見通しが立たない38.4%が上位。研究テーマが見つけられない16.2%、研究室環境15.4%(NISTEP、2022年1〜3月)。向き不向きを尋ねた設問ではない
  • 大学院生の7〜8割が勉学・研究全般に不安・悩みがある(修士71.6%・博士79.4%)。実験の失敗と向き不向きを結びつけた公的統計はない
  • 博士課程の卒業者では、満期退学20.3%、就職者70.0%(一定の有期雇用を含む)、ポストドクター等11.7%。中退は1年に修士・専門職2.22%、博士2.94%
  • 研究で使った力に近いスキルは、弁理士(資格が必要)・データサイエンティストなど研究以外の職業でも値が比較的高い(job tag、今回選んだ職業どうしの比較の目安)
  • 体調が理由なら、向き不向きの前に大学の相談窓口へ

11. 出典

12. あわせて読む

 

── 無料メール講座(全6章・14通)──
真面目に働いても給料が上がらないのは、
あなたの能力ではなく
買い手が一社しかいないからです。
売り手が多数いて、買い手が一者しかいない市場では、
価格は買い手の内部規則で決まります。
転職しても、買い手が別の一社に変わるだけ。
構造は変わりません。
必要なのは努力の量でも我慢でもなく、
会社以外に
「自分の判断にお金を払う相手」
を一つ持つこと。
月3万円で構いません。
それだけで、組織との距離の取り方が変わります。
動かない録画機器を1,000円以下で仕入れ、
中古ドライブ(部品代2,000円)に交換。
ついでに容量を増やして15,000円で販売。
── 20年の現場から、実例の一部
この無料講座で扱う内容
  • 壊れた商品のどこに価格差が眠るのか
    「歪みの4類型」
  • 手数料・送料・作業時間まで含めた
    「1件の利益計算式」
  • 絶対に手を出してはいけない
    「除外リスト7項目」
  • 6日目には、元手ゼロで
    今週できる実践ワーク(約70分)
※手を動かさずに稼ぐ方法をお探しの方には向きません。
そのことも講座内で明記しています。
20年
現場での実践
全14通・2週間。
1通3〜5分で、通勤中にも読み切れる分量です。
まずは14通の無料講座で、
「第二の買い手」という考え方を確認してください。
登録30秒・無料・いつでも解除できます


「第二の買い手」を作る14通を無料で読む →

※後半に有料商品のご案内があります。
第1通の冒頭で明記します。

にほんブログ村の「せどり」ランキングに参加しています

にほんブログ村 小遣いブログ せどりへ PVアクセスランキング にほんブログ村
生き方・キャリア