「大学院 中退」「大学院 中退 就職」「大学院 辞めたい」「大学院 中退 人生終了」「大学院 中退 新卒扱い」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。
大学院を中退しても、学部の卒業で授与された学士の学位はそのままで、最終学歴は「大学卒」です(学校教育法104条1項・学位規則2条。賃金構造基本統計調査も、中途退学した人をそれ以前に卒業した課程の学歴で数えます)。新卒の採用枠については、厚生労働省の指針が事業主に「卒業後少なくとも三年間は応募できるもの」とするよう求めていますが、大学院を中退した人にどう当てはめるかを書いた公式の記載は見つかりませんでした。学部の卒業日から数える解釈と、大学院を中退した日を基準にする扱い(過去の助成金・一部のハローワーク)の両方があり、応募条件は企業に直接確かめる必要があります。令和7年度に新卒の採用枠で正社員を募集した事業所のうち、既卒者が応募できたのは73%、応募できなかったのは24%です(事業所の割合で、採用される確率ではありません)。令和7年度に大学院を中退したのは6,652人で、学生数の2.42%(修士課程・専門職学位課程2.22%、博士課程2.94%)でした(文部科学省)。退学は、退学願を出して研究科長などの許可を受ける手続きで、学期の途中で辞めてもその学期の授業料は月割にならない大学があります(名古屋大学・九州大学・北海道大学)。大学が定める退学日・申請期限・承認の条件(その学期の授業料を納めることなど)を満たせば、次の学期以降の授業料が要らない例があります。JASSOの貸与奨学金の返還は、貸与が終わった月の翌月から数えて7か月目に始まります。体調が理由なら、退学の前に休学も並べてください。休学期間の授業料を免除する定めや、休学期間を在学年数に入れない定めのある大学があります(休学の上限・修了要件・奨学金・学振DCの扱いは別に確かめる必要があります)。中退・休学・修了まで続けるの比較、新卒枠に入れるか、退学の手続きと日程、理由の統計と履歴書・面接の文面を出す計算機を9章に置きました。
| 知りたいこと | 答え | 章 |
|---|---|---|
| 大学院を中退したら最終学歴は何になるか | 大学卒。学士の学位は学部の卒業で授与済み。統計でも学歴は「大学」で数える | 3章 |
| 大学院の中退率 | 令和7年度 大学院2.42%(修士課程・専門職学位課程2.22%、博士課程2.94%)。博士課程の満期退学は含まない | 2章 |
| 中退する理由 | 大学・短大・大学院・高専の合計で、転学・進路変更等22.5%、学生生活不適応・修学意欲低下15.3%、就職・起業等14.8%、経済的困窮13.7%。大学院だけの内訳は公表資料に見当たらない | 2章 |
| 中退後、新卒の採用枠に入れるか | 指針は「卒業後少なくとも三年間」。大学院中退者への当てはめの公式記載はなく、学部の卒業日から数える解釈と中退日を基準にする扱いがある。応募条件は企業に確認。新卒枠で既卒者が応募できた事業所は73%、応募不可24% | 4章 |
| 退学の手続きと授業料 | 退学願を出し、研究科長など(大学による)の許可を受ける。学期の途中で辞めてもその学期の分を納める例(名古屋大学・九州大学・北海道大学)。大阪大学は期限内に願い出れば月割 | 5章 |
| 奨学金と学振DC | JASSOの貸与奨学金は貸与終了の翌月から数えて7か月目に返還開始。学振DCは退学で中途辞退 | 5章 |
| 中退か休学か | 休学期間を在学年数に入れない大学がある(名古屋大学・九州大学・北海道大学など)。休学期間の授業料を免除する定めのある国立大学があり、私立は在籍料などの例。休学の上限は修士2年(京都大学は通算3年)・博士後期3年の例。奨学金・学振DCの扱いは別に確認 | 6章 |
| 自分の場合 | 中退・休学・修了の比較、新卒枠に入れるか、退学の日程とお金、理由の統計と履歴書・面接の文面を計算機で | 9章 |
1. 先に、この記事の数字と、書いている人について
私は大学院に行っておらず、中退もしていません。学部では卒業研究が必修ではなかったので、研究室にも所属しませんでした。大学院を続けるか辞めるかの中のことを経験から書くことはできないので、この記事の決まりと数字は公式の資料から取り、私の経験と見方は8章に分けて書きました。
決まりは、学校教育法・学位規則・学校教育法施行規則の条文(e-Gov法令検索、2026年10月24日時点の現行版)と、厚生労働省の「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」(以下 指針)から取りました。退学・休学の手続きと授業料は、名古屋大学・九州大学・北海道大学・東京大学・京都大学・大阪大学の学則と案内、早稲田大学 理工学術院・慶應義塾大学の案内です。奨学金と研究奨励金は、日本学生支援機構(JASSO)と日本学術振興会(学振)の公式ページと募集要項・手引から取りました。統計は、文部科学省の「令和7年度 学生の中途退学者・休学者数の調査結果について」(令和8年10月16日公表。以下 中退調査)、「令和7年度学校基本統計」、中央教育審議会 大学院部会の「大学院関連参考資料集」(令和8年5月11日時点。以下 院資料集)、厚生労働省の「労働経済動向調査(令和8(2026)年8月)」と「令和7年賃金構造基本統計調査」、労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査シリーズNo.138、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の博士人材追跡調査です。中退調査の表と理由の円グラフ、院資料集の図、労働経済動向調査の表の数字は、PDFを見て確かめました。
数字の書き方:原文にある数字はそのまま、出典の数字を割ったり足したりしただけの値は「計算」、条文や資料を組み合わせた読み取りは「当てはめ」と書きます。確かめられなかったものは「見つからなかった」「確かめられなかった」と書きました。
2. 大学院の中退は何%か(統計)
2-1. 令和7年度の中退者・休学者
中退調査は、全国の国公私立の大学・短期大学・大学院・高等専門学校(回答率91.3%)について、令和7年4月1日から令和8年3月31日までの中退者と休学者を数えています。
| 学校種 | 中退者数 | 中退の割合(前年度) | 休学者数 | 休学の割合(前年度) |
|---|---|---|---|---|
| 大学院 | 6,652人 | 2.42%(2.67%) | 15,139人 | 5.52%(5.86%) |
| 修士課程・専門職学位課程 | 4,333人 | 2.22%(2.38%) | 6,658人 | 3.41%(3.68%) |
| 博士課程 | 2,319人 | 2.94%(3.40%) | 8,481人 | 10.74%(11.31%) |
| 大学 | 51,029人 | 1.97%(2.00%) | 66,634人 | 2.57%(2.70%) |
割合は、令和7年4月1日時点の学生数に対する割合です。修士課程には博士前期課程、博士課程には博士後期課程と医歯学・薬学・獣医学の4年一貫制課程を含みます。留学生を含み、通信制課程の在籍者は含みません。注記には「中退退学者には博士課程満期退学者を含まない。」とあります(2-4)。
修士課程・専門職学位課程の2.22%は、学生およそ45人に1人の割合です(計算:1÷0.0222)。博士課程では中退より休学のほうが多く、在籍者の10.74%が休学しています。
2-2. 中退の理由:大学院だけの内訳は見当たらない
中退調査の理由の内訳は、大学・短大・大学院・高専をすべて合わせた値だけです。1人につき最も中心的な理由を1つ選ぶ形(単一選択)です。
| 中途退学の理由(令和7年度) | 割合 | 休学の理由(令和7年度) | 割合 |
|---|---|---|---|
| 転学・進路変更等 | 22.5% | 精神疾患 | 13.3% |
| 学生生活不適応・修学意欲低下 | 15.3% | 海外留学 | 12.1% |
| 就職・起業等 | 14.8% | 経済的困窮 | 11.7% |
| 経済的困窮 | 13.7% | 転学・進路変更等 | 8.8% |
| 精神疾患 | 7.3% | 病気・けが・行方不明 | 7.4% |
| 学力不振 | 7.1% | 就職・起業等 | 7.1% |
| 病気・けが・死亡 | 3.9% | 学生生活不適応・修学意欲低下 | 5.9% |
| 海外留学 | 0.6% | 学力不振 | 3.1% |
| その他 | 13.7% | その他 | 26.9% |
| 不明 | 1.0% | 不明 | 3.7% |
大学院(修士・博士)だけの理由の内訳は、令和7年度・令和4年度の公表資料にも、e-Statにも見当たりませんでした。学生数で見ると大学が大半なので、この表は「大学院生が辞める理由」としては読めません。
2-3. 大学院中退者に限った統計は、ほとんどない
大学院を中退した人のその後を示す公的な統計で見つかったのは、JILPTの調査シリーズNo.138「大学等中退者の就労と意識に関する研究」(2015年)だけです。全国のハローワークを利用した大学等の中退者(2014年8〜11月、回収1,107票、分析1,095人)の調査で、そのうち大学院中退者は49人でした。報告書は「大学院中退者に関しては、分析には使用しているが、ケース数が少ないため、参考値としてのみ掲載することとした。」と書いています。
その参考値で、正社員になるための求職活動をした人のうち正社員になった割合は、「学校種別ごとには、大学院中退者が 42.1%と最も高く、専門学校中退者が 36.2%と最も低かった。」とされています。ハローワークに来た人の調査で、中退者全体の代表値ではなく、10年以上前の数字です。
2-4. 博士課程の満期退学(単位取得退学)は中退に数えない
博士課程で、所定の年限在学して単位を修得し、博士の学位を取らずに退学することを満期退学(単位取得退学)といいます。学校基本調査は、博士課程の「修了者」について「所定の修業年限以上在学し、所定の単位を修得した後、学位を取得せずに満期退学した者を含む。」としています。一方、中退調査は満期退学者を中退に含みません。統計の上では、満期退学は中退に数えられません。
院資料集によると、令和7年3月の博士課程修了者16,278人のうち、満期退学者は3,299人でした。修了者の約20.3%です(計算)。学校基本調査の博士課程修了者の就職者の割合70.0%も、満期退学者を含んだ値です。
NISTEPの博士人材追跡調査(第4次)は、2018年度に博士課程を修了した人(満期退学者も対象)の修了1.5年後の博士号取得率を、課程博士60.5%・論文博士14.8%としています(回答3,894人、回答率24.9%。回答者の値で、全数ではありません)。
満期退学した後に博士論文を出す道は、大学によって違います。北海道大学の学位規程は、所定の年限在学し単位を修得して退学した人が再入学しないで博士の学位を申請する場合、「退学してから1年以内に学位論文を提出するときは、論文審査手数料を納付することを要しない。」としています。早稲田大学 理工学術院の案内は、研究指導終了以外の理由で退学すると「博士学位論文の退学後3年以内の課程内申請の受理はできなくなります。」と書いています。満期退学を考えるなら、自分の研究科の学位規程を先に読んでください。
3. 中退したら最終学歴はどうなるか
3-1. 学士の学位は、学部の卒業で授与されている
学校教育法104条1項は、大学は「大学を卒業した者に対し、学士の学位を授与するものとする」と定めています。修士・博士は、同じ条の3項で「大学院(…)の課程を修了した者に対し」授与されます。学位規則2条も、学士の学位は「当該大学を卒業した者に対し行うものとする。」としています。
学士の学位は学部を卒業した時点で授与されていて、大学院を中退しても取り消す定めはありません。北海道大学の学位規程で学位を取り消す事由として書かれているのは、「不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明したとき」です。大学院を中退した人の最終学歴は「大学卒」で、学位は学士です(当てはめ)。
3-2. 統計でも学歴は「大学」で数える
賃金構造基本統計調査の用語の説明は、学歴について「現在就学中の者及び中途退学した者は、それ以前に卒業又は修了した課程によることとし、」としています。大学院を中退した人は、この統計では学歴「大学」で数えます。博士後期課程を中退した人で修士課程を修了している人は、学歴「大学院」で数えます(当てはめ)。
3-3. 履歴書の書き方
厚生労働省の履歴書の様式例は、学歴と職歴を「学 歴・職 歴(各別にまとめて書く)」の欄に書く形です。ハローワークの「応募書類」(令和8年5月)は、「学歴は、学校への入学及び卒業(修了)の経歴を古い順に記載します。」「学校名・企業名・資格名などの固有名詞は正式な名称・表示で記載します。」と書いています。
中退の書き方を示した公的な記載例は見つかりませんでした。一般的には、学部の入学と卒業のあとに、大学院の入学と「中途退学」を書きます。
| 年月 | 学歴(一般的な書き方の例) |
|---|---|
| 2021年4月 | ○○大学○○学部○○学科 入学 |
| 2025年3月 | ○○大学○○学部○○学科 卒業 |
| 2025年4月 | ○○大学大学院○○研究科○○専攻 修士課程 入学 |
| 2026年9月 | ○○大学大学院○○研究科○○専攻 修士課程 中途退学 |
学部の卒業の行はそのまま残ります。退学する前に応募書類を出すなら「退学予定」と書くのが一般的です。9章の計算機の4は、入力した年と名前でこの形の行を出します。
4. 中退後の就職:新卒の採用枠に入れるか
4-1. 指針の「卒業後少なくとも三年間」
指針(平成27年厚生労働省告示第406号。最終改正は令和8年厚生労働省告示第53号で、令和8年10月1日から適用)は、事業主に対して、「学校等の卒業者についても、学校等の新規卒業予定者の採用枠に応募できるような募集条件を設定すること。」「当該条件の設定に当たっては、学校等の卒業者が卒業後少なくとも三年間は応募できるものとすること。」と書いています。続けて、新卒を募集するときは「できる限り年齢の上限を設けないようにする」ことも求めています。
これは事業主が講ずべき措置として示された指針で、罰則のある義務ではありません(当てはめ)。原文は「新卒として扱う」ではなく、「新規卒業予定者の採用枠に応募できる」です。
4-2. 大学院を中退した人は、いつから3年か
指針の文言は「学校等の卒業者」で、大学院を中退した人にどう当てはめるかを書いた現行の公式の記載は見つかりませんでした。大学院を中退した人も「大学の卒業者」なので、学部の卒業日から少なくとも3年間と数える解釈があります(当てはめ)。この解釈なら、学部を2025年3月に卒業した人は2028年3月までです。
一方、中退から3年と書いた公的な例もあります。厚生労働省の過去の助成金(三年以内既卒者等採用定着コース。平成31年までの制度)は、「少なくとも卒業または中退後3年以内の者が応募可能であることが必要です」としていました。ハローワーク豊橋の案内は、対象を「学校卒業後3年以内・学校中退後3年以内の方」と書いています。指針も、ハローワークなどの職業紹介事業者に向けて、「学校等を中途退学した者」に「個々の事情に配慮しつつ希望に応じた就職支援が必要である。」と書いています。
学部の卒業日から数える解釈と、中退した日を基準にする扱いの両方があり、どちらで受け付けるかは応募する会社が決めます。応募条件は企業に直接確かめてください。募集要項に「既卒可」「卒業後○年以内」とあれば、その書き方で判断できます。学部卒業から3年に近い人は、中退の時期を決める前に、応募したい会社の書き方を確かめてください。新卒応援ハローワークは「卒業後おおむね3年以内の方」の就職を支援しています。
4-3. 新卒の採用枠で、既卒者が応募できた事業所は73%
労働経済動向調査(令和8年8月)は、30人以上の常用労働者を雇用する民営事業所に、令和7年度の新卒の採用枠で正社員を募集したとき、既卒者の応募を受け付けたかを聞いています。
| 令和7年度の新卒の採用枠で正社員を募集した事業所=100 | 割合 |
|---|---|
| 既卒者は応募可能だった | 73%(そのうち「採用にいたった」44%、「採用にいたらなかった」56%) |
| 応募不可だった | 24% |
| 無回答 | 3% |
ここでいう既卒者は「学校卒業後すぐに調査対象事業所に就職する者以外で、35歳未満の者」で、勤務経験の有無は問いません。中退者を分けた数字はありません。前年(令和7年8月の調査)は、応募可能71%・応募不可26%でした。今後の方針は、「応募可能としたい」30%、「年齢によって応募可能としたい」14%、「応募不可としたい」3%、「現在のところ未定」31%です。
これは事業所の割合で、既卒の人が採用される確率ではありません。新卒の採用枠で正社員を募集したのは全有効回答事業所の58%で、全体に対して既卒者が応募できる新卒枠を出した事業所はおよそ42%です(計算:58%×73%)。
4-4. 初任給と就職者の割合
令和7年賃金構造基本統計調査の新規学卒者の賃金(6月分の所定内給与、男女計)は、「大学 262.3 千円、大学院 299.0 千円」です。差は月36.7千円です(計算)。大学院を中退した人は学歴「大学」で数えるので(3-2)、新卒の採用枠で入る場合の比較は大学の側です(当てはめ)。どれも平均で、賞与や手当を含まず、自分の額ではありません。この比較は参考情報で、大学院を中退した人の採用時の賃金や、中退・修了による賃金の差は、この統計からは分かりません。
学校基本統計(令和7年度)の、卒業者・修了者に占める就職者の割合は、学部77.0%、修士課程78.2%、博士課程70.0%です。
4-5. 内定がある人
修了見込みで内定をもらっている場合、内定の条件は会社との書類(内定通知書・誓約書など)に書かれています。修了を条件にした内定なら、中退すると条件を満たしません(当てはめ)。中退や修了の延期が決まりそうな時点で、書類を読み、内定先に先に相談してください。卒業が遅れることが決まって内定を辞退した私の例は8章にあります。
5. 退学の手続きと学費・奨学金
5-1. 退学願を出して、許可を受ける
学校教育法施行規則4条1項は、学則に「入学、退学、転学、休学及び卒業に関する事項」と「授業料、入学料その他の費用徴収に関する事項」を書くよう定めています。退学の手続きと、そのときの授業料は、各大学の学則で決まります。
| 大学 | 退学の定め(原文) |
|---|---|
| 名古屋大学(大学院通則29条) | 「学生が退学しようとするときは,事由を詳記した退学願を研究科長に提出し,その許可を得なければならない。」 |
| 九州大学(大学院通則33条) | 「学生が退学しようとするときは、学府長を経て総長に退学許可願を提出し、その許可を受けなければならない。」 |
| 北海道大学(大学院通則19条) | 「学生が疾病その他の事由により退学しようとするときは、詳細な事由を記した退学願を当該研究科等の長に提出し、その許可を受けなければならない。」 |
退学は本人が願い出て許可を受けるものです。これとは別に、在学年限を超えたときや、授業料を督促されても納めないときに大学が学籍を除く「除籍」があります(名古屋大学 大学院通則36条、九州大学 大学院通則38条・39条、北海道大学 大学院通則20条)。どちらも学位は出ません。
九州大学 経済学部・大学院経済学府の案内は、退学に「退学願(保証人、指導教員の署名必要)」と「学生証」を出すとしています。早稲田大学 理工学術院の案内は、保護者と連署で願い出ること、教員と面談して教員から報告してもらうことを求めています。手続きの細かいところは研究科ごとに違うので、まず研究科の教務に聞いてください。
5-2. 学期の途中で辞めたときの授業料
国立大学の授業料は、前期(4〜9月)と後期(10〜3月)に分けて、年額の2分の1ずつ納めます。学期の途中で退学したときの扱いは、大学で違います。
| 大学 | 学期の途中で退学したときの授業料 |
|---|---|
| 名古屋大学(大学院通則43条) | 「学生が,前期末までに転学,退学又は除籍の場合,納入すべき授業料の額は,授業料の年額の2分の1に相当する額とする。」 |
| 九州大学(授業料その他の費用に関する規程7条1項) | 前期の途中の退学は「授業料の年額の2分の1に相当する額とし」、後期の途中の退学は「授業料の年額とする。」 |
| 北海道大学(大学院通則30条1項) | 前期・後期の途中で退学したときは「これらの場合のいずれかに該当することとなった日の属する期に係る授業料を納付しなければならない。」 |
| 大阪大学(学生向けハンドブックの案内) | 「休学や退学に伴う授業料の月割免除は、前期は4月末日までに、後期は10月末日までに願い出ることにより、在籍(在学)月数の授業料納入をもって行われます。」 |
| 早稲田大学 理工学術院(案内) | 「任意退学、在学年数(未進級期間)満了による措置退学の場合は、当該学期分までの学費の納入が必要です。」承認された退学日の翌学期以降の学費は後日返金 |
名古屋大学・九州大学・北海道大学の定めでは、学期の途中で辞めても、その学期の分は月割になりません。大学が定める退学日・申請期限・承認の条件(その学期の授業料を納めることなど)を満たせば、次の学期以降の授業料が要らない例があります。退学日は大学が定めるもので、早稲田大学 理工学術院の春学期末の退学日付は9月20日です(5-3)。九州大学は「既納の授業料、入学料及び検定料は返還しない。」としつつ、前期に後期分まで納めて9月30日までに退学した人には後期分を返すとしています。
授業料を納めていないと、退学願が受け付けられない例があります。名古屋大学の文系教務課は「授業料が未納の場合、休学願、退学願は受理されませんので、ご注意ください。」、九州大学 経済学府は「授業料未納の学生は、休学、退学が認められません。」と書いています。
5-3. 提出の締切の例
| 大学・研究科 | 締切の例(原文) |
|---|---|
| 名古屋大学 文系教務課 | 「退学を希望する前月の末日までに退学願を提出すること。」「※3月末退学であれば2月末までに、9月末退学であれば8月末までに提出すること。」 |
| 九州大学 経済学府 | 2025年9月30日付けの退学は「8月22日(金)までに学務課(経済担当)へ書類を提出してください。」「期限を過ぎると翌学期の授業料を支払うことになります。」 |
| 大阪大学 | 「休学や退学等の学生としての身分の異動を願い出る者は、必ず異動日の1カ月前(ただし、2カ月前から受付を行います)までに手続きを行ってください。」 |
| 早稲田大学 理工学術院 | 春学期末の退学は退学日付「9 月 20 日」・申請期限「9 月 30 日」、秋学期末は「3 月 31 日」・「4 月 14 日」。期限内なら退学日付に遡って承認 |
締切を過ぎると、次の学期の授業料がかかる例があります。辞めると決めたら、まず締切の日を確かめてください。
5-4. JASSOの奨学金
JASSOの案内は、退学したときの手続きとして「奨学金の振込を止めてもらう。」「『貸与奨学金返還確認票』を学校から受け取り、内容を確認する。」「口座振替(リレー口座)加入手続を行う。」を挙げ、「退学した場合、奨学生としての資格はなくなります。」と書いています。資格がなくなった後に振り込まれた奨学金は、機構に返金します。届け出は学校の奨学金窓口に「異動願(届)」を出す形です。
返還は「貸与終了の翌月から数えて7か月目に始まります。」とされています。9月末に退学して9月で貸与が終われば、翌年4月から返還が始まります(計算)。学部で借りた奨学金を大学院の在学中に「在学猶予」で止めている人は、退学したら「在学猶予期間短縮の届出が必要です。」とされ、返還は在学猶予が終わった翌月から数えて7か月目に始まります。
すぐに返すのが難しいときは、返還期限猶予(一般猶予)があります。猶予は「一定期間返還期限を先送りする制度であり、返還すべき元金や利子が免除されるものではありません。」とされ、適用は通算10年(120か月)が限度です。令和7年12月から令和8年11月までに卒業・退学した人は「新卒等」の事由で申請でき、その期間は収入証明書などが要りません。それ以外は「経済困難」などの事由で、給与所得者なら年間収入300万円以下などの基準があります。
修士課程で「授業料後払い制度」を使っている人は、返還は所得連動返還方式だけで、前年の課税総所得(子ども1人につき33万円を差し引く)の9%を12で割った額、最低2,000円です。授業料後払い制度のしおり(2025年度)は、「貸与の途中で奨学金を辞退したり、退学したりした場合は、貸与の終期は早まります。」とし、返還は「貸与終了の翌月から数えて7か月目から返還が始まります」と書いています(3月に貸与が終わった場合は10月27日が初回の振替日)。授業料後払い制度も、退学で貸与が終わり、その翌月から数えて7か月目に返還が始まります。返還初年度は月2,000円です。また、「本人が在籍していた年度中に生じた授業料に関する「授業料支援金」が,保証料が差し引かれたうえで学校又は本人に振り込まれることがあります。」とされています。大学院の学費と奨学金の全体は大学院の学費はいくら?にまとめました。
5-5. 学振の特別研究員(DC)
特別研究員-DCの募集要項は、「大学院博士課程を退学、停学、休学(出産・育児に係る採用中断又は傷病を理由とする採用中断の扱いを受ける期間を除く。)する場合は、特別研究員の身分を継続することができず、採用を中途辞退する必要があります。」と書いています。手引は、満期退学する場合も「分野を問わず特別研究員の採用を辞退する必要があります」としています。
研究奨励金は、月の途中で採用が終わると減額されます。手引の基準は「月の1日から 15 日までの採用終了の場合 当該月分の全ての額を減額する」「月の 16 日以降の採用終了の場合 当該月分の2分の1の額を減額する」です。月末の終了が「月の途中」に当たらないかは、手引の文では確かめていません。退学日を決める前に、学振マイページと受入研究機関の事務局で確かめてください。
6. 中退か、休学か、修了まで続けるか
6-1. 休学:在学年数に入れず、授業料を免除する大学がある
休学期間を在学年数に入れない定めのある大学があります。名古屋大学は「休学期間は,在学年数に算入しない。」(大学院通則27条7項)、九州大学は「休学した期間は、在学期間に算入しない。」(大学院通則35条5項)、北海道大学は「休学期間は、在学期間に算入しない。」(大学院通則18条)としています。この定めの大学では、休学すると修了はその分だけ遅れます。休学の上限・修了要件・奨学金・学振DCの扱いは、これとは別に確かめてください。
休学できる期間と、在籍できる年数(在学年限)には上限があります。
| 名古屋 | 九州 | 北海道 | 東京 | 京都 | 大阪 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 修士(博士前期)の在学年限 | 4年 | 4年 | 4年 | 3年 | 4年 | 4年 |
| 博士後期の在学年限 | 6年 | 6年 | 6年 | 5年 | 6年 | 5年 |
| 修士の休学の上限 | 2年 | 2年 | 2年 | 2年 | 通算3年 | 2年 |
| 博士後期の休学の上限 | 3年 | 3年 | 3年 | 3年 | 通算3年 | 3年 |
(各大学の大学院の学則・通則から。医学・歯学・薬学・獣医学などの課程は別の年数です。)在学年限を超えると、除籍や「学生の身分を失う」と定めている大学があります。
休学中の授業料は、京都大学が「休学中は、別に定める免除等規程により授業料を免除する。」(通則52条)とし、免除は月割で、前期は4月末、後期は10月末までの申し出などの条件があります。大阪大学も休学した月の翌月から復学の前月まで月割で免除し(学部学則48条を大学院学則36条2項で準用)、同じように4月末・10月末の期限があります。東京大学の学部通則54条は「休学し、又は休学を命ぜられた者の休学期間中の授業料は、これを免除する。」としています(大学院学則は休学について学部通則を準用)。私立では、早稲田大学 理工学術院が休学中に在籍料50,000円と学生健康互助会費1,500円(4月30日・10月31日までに申請した場合)、慶應義塾大学は休学中も在籍基本料などを納める、としています。
JASSOの貸与奨学金は、休学すると振込が止まります(休止)。「「休止期間が連続して2年を超える」場合は貸与奨学生としての資格を失います(大学院の奨学生で特に機構が認めたときは3年を超える場合)」とされています。研究室に行けない理由の切り分けと、休学・留年の学費は研究室に行きたくない・つらいに詳しく書きました。
6-2. 3つの道を並べる
国立大学の修士課程1年生が、後期(10〜3月)の途中で考えている場合を例に並べます(授業料は標準額の年535,800円、今の学期の授業料は未納、休学は2学期で休学中の授業料は免除とした例)。
| A. 今の学期の末日で中退 | B. 2学期休学してから修了 | C. 修了まで続ける | |
|---|---|---|---|
| 支払見込額(授業料と学期数からの試算) | 267,900円(今の学期の分) | 803,700円(休学中は免除の例) | 803,700円 |
| 在学の終わり | 今の学期の末日(3月31日) | Cより1年後 | 翌年度の3月 |
| 最終学歴 | 大学卒(学士) | 修士(審査と試験に合格した場合) | 修士(審査と試験に合格した場合) |
| JASSOの返還の始まり | 退学の月の翌月から数えて7か月目 | 休学中は休止。復学後の貸与と返還の始まりはJASSOと学校に個別に確認 | 修了の月の翌月から数えて7か月目 |
| 学振DC(博士の場合) | 中途辞退 | 休学でも中途辞退(出産・育児・傷病の採用中断を除く) | 続けられる |
支払見込額の差は、Cを選ぶとAより535,800円(2学期分)多く、働き始めが1年遅くなります(計算)。Bは支払見込額がCと同じでも、在学の終わりがさらに1年遅れます。この表は学費と期間だけの条件付き試算で、退学・休学の承認や授業料の免除を保証するものではなく、生活費や、その間に働いた場合の収入も入れていません。博士課程では、標準修業年限が過ぎても学位が取れるとは限らず、博士の学位を取って修了するか、満期退学か、在学を延長するかは審査で決まります。9章の計算機の1は、課程・学年・授業料・休学の学期数・休学中の費用・奨学金の月額・DCを入れると、自分の場合で3つを並べます。
6-3. 別の大学院に入り直す・博士なら満期退学も
今の研究室や研究科が合わないだけなら、研究室(指導教員)を変える、別の大学院を受け直す、という道もあります。別の大学院を受けるときの日程とお金は院試に落ちたら人生終わり?に書きました。博士後期課程なら、所定の年限在学して単位を修得していれば満期退学という選び方もあります(2-4)。どちらも、中退より先に並べて比べてから決めてください。
7. 体調が理由のとき
休学の理由で最も多いのは「精神疾患」13.3%でした(2-2。大学・短大・大学院・高専の合計)。中退の理由では「精神疾患」7.3%、「病気・けが・死亡」3.9%です。この記事は病状を判断しません。体の不調が続いているなら、退学の手続きより先に、相談を優先してください。退学の締切や学費の確認は、教務へのメールなどで並行してできます。
厚生労働省の若者向けサイト「こころもメンテしよう」は、うつ病について「次のうち5つ以上(1か2を含む)が2週間以上続いていたら、専門家に相談することをお勧めします。」としています。
| 相談先 | 内容 |
|---|---|
| 学内の学生相談室・保健管理センター | 大学ごとに名前と予約の方法が違う |
| 精神保健福祉センター(都道府県・政令指定都市) | 「こころの健康相談から精神医療に関わる相談、アルコール・薬物乱用、思春期・青年期の相談などに応じています。」「医療が必要かどうかも相談できます。」 |
| こころの健康相談統一ダイヤル | 0570-064-556。かけた所在地の公的な相談機関につながる。相談の曜日・時間は都道府県・政令指定都市によって異なる |
| SNS相談(まもろうよ こころ) | あなたのいばしょチャット相談(24時間365日)、こころのほっとチャット(毎日7時〜23時50分、23時まで受付)など。年齢・性別を問わない |
JASSOの令和6年度学生生活調査(大学院各課程、試行。回収率は2割台)では、カウンセリングなどの相談の仕組みを「利用したことがない」大学院生は修士61.3%、博士66.3%でした。研究室での評価がつらいときの話は研究室で「無能だ」と感じてつらい人へ、進捗報告やゼミの発表がつらいときの話は研究室の発表がつらいに書いています。
8. 研究室に入らなかった私の見方
ここからは、大学院に行っていない私の経験と見方です。2〜7章の決まりや数字とは分けて読んでください。
私の大学は卒業研究が必修ではなく、行きたい研究室もなかったので、研究室に所属しないで卒業しました。大学3年のころには古本の転売を始めていて、学費や教科書代は自分で払っていました。
就職活動では面接で落ち続けました。内定は取れましたが、留年が決まり、辞退しました。そのあと証券会社を志望して受け直し、最終面接で落ちたところで、就職をやめました。行きたい会社がないなら自分で作るしかないと考えて、古本の転売を仕事にしました。大学院の中退とは違いますが、「予定していた卒業ができない」「内定をどうするか」「次に何を選ぶか」を順に決めた経験です。
私は、研究室は卒業の条件を満たすための必修科目と割り切ってよいと考えています。大学で専攻したことをそのまま仕事にしない人は多く、理系で身につく、仮説を立てて確かめる考え方のほうが、いろいろな仕事で使えると思っているからです。研究とキャリアを盲目的に結びつけるのは機会損失だ、とも考えています。一方で、研究経験や学位が要る進路(研究職・専門職・博士号が応募条件の職など)もあるので、どちらが合うかは本人の目標で変わります。研究室が自由すぎて何も身につかないと感じている人に向けた話は放置系研究室で「何も身につかない」と感じたらに書きました。
ただ、これは中退を勧める話ではありません。続ければ修士・博士の学位が取れ、初任給の平均も大学院のほうが高い(4-4)。辞めれば学費は止まり、早く働き始められますが、最終学歴は大学卒で、新卒枠をいつまで使えるかは応募先の規定によります。どちらを選ぶかは、気持ちの強さではなく、最終学歴・新卒枠に入れる期間・この先の学費・修了までの年数を並べてから決めてください。9章の計算機は、そのための道具です。
9. 計算機:中退・休学・修了の比較/新卒枠に入れるか/退学の日程とお金/理由の統計と履歴書・面接の文面
4つは別々に使えます。
- 1. 中退・休学・修了まで続けるの比較:課程、いまの学年、修了までに残る学期数、年間の授業料、今の学期の授業料を納めたか、休学する学期数と休学できる残りの上限、休学中の費用、奨学金の月額、学振DCかどうかを入れると、3つの道の「支払見込額」「在学の終わりと働き始められる時期」「最終学歴」「奨学金の借りる額と返還の始まり」を並べ、休学と在学年限の上限の注意を出します
- 2. 中退後の就職:学部を卒業した年月、大学院を退学する年月、年齢を入れると、指針の「卒業後少なくとも三年間」を学部の卒業から数えた場合と中退から数えた場合の期限と、4章の事業所の割合を出します
- 3. 退学の手続きと日程:退学したい日、学期の途中で退学したときの授業料の決まり、提出期限の決め方、奨学金、学振DCを入れると、提出期限の目安と今日からの日数、その学期に納める授業料、JASSOの返還の始まり、DCの減額を出します
- 4. 理由の統計と文面:理由の型、課程、学部と大学院の名前と年を入れると、中退調査の近い区分の割合、履歴書の学歴欄の例、面接での答え方の型を出します
在学年限・休学の上限・授業料・締切は大学ごとに違うので、初めの値は例です。自分の大学の学則と研究科の案内の値に置き換えてください。出てくる日付と金額は条件付き試算で、退学・休学の承認や授業料の減免を保証するものではありません。理由の型と統計の区分の対応は、この記事の独自の参考分類です。
中退・休学・修了の比較/新卒枠に入れるか/退学の手続きと日程/理由の統計と履歴書・面接の文面
入れた数字や文字は、このページの中で使うだけで、どこにも送られません。初めから入っている値は入力の例です(授業料は国立大学の標準額)。4つは別々に使えます。
1. 中退・休学・修了まで続けるの比較
2. 中退後の就職:新卒枠に入れるか
3. 退学の手続きと日程
4. 中退理由の統計と、履歴書・面接の文面
初めから入っている例は、国立大学の修士課程1年生が、今の学期の授業料を納める前に3つの道を比べる場合です。2026年10月24日に使うと、今の学期の末日(2027年3月31日を例とする)で中退すれば支払見込額は267,900円、休まずに修了まで続ければ803,700円で、働き始めは中退が2027年4月、修了が2028年4月からです。2学期休学すると、休学中の授業料が免除なら支払見込額は修了と同じ803,700円で、働き始めは2029年4月からになります。
10. よくある質問
大学院の中退率はどれくらいですか?
令和7年度は、大学院全体で2.42%、修士課程・専門職学位課程で2.22%、博士課程で2.94%でした(文部科学省の中退調査)。博士課程の満期退学は含みません(2章)。
大学院を中退したら、最終学歴は何になりますか?
大学卒です。学士の学位は学部を卒業したときに授与されていて、大学院を中退しても取り消す定めはありません。賃金構造基本統計調査も、中途退学した人を「それ以前に卒業又は修了した課程」の学歴で数えます(3章)。
大学院を中退しても、新卒扱いになりますか?
指針は、新卒の採用枠に「卒業後少なくとも三年間は応募できるもの」とするよう事業主に求めています。大学院中退者への当てはめを書いた公式の記載はなく、学部の卒業日から数える解釈と、大学院を中退した日を基準にする扱い(過去の助成金・一部のハローワーク)の両方があります。応募条件は企業に直接確かめてください。新卒の採用枠で正社員を募集した事業所のうち、既卒者が応募できたのは73%、応募不可は24%でした(4章)。
大学院を中退したら、内定はどうなりますか?
修了を条件にした内定なら、中退すると条件を満たしません(当てはめ)。内定の条件は内定通知書や誓約書に書かれているので、それを読み、中退が決まりそうな時点で内定先に相談してください(4-5)。
大学院を中退する理由で多いのは何ですか?
大学・短大・大学院・高専を合わせた令和7年度の値では、転学・進路変更等22.5%、学生生活不適応・修学意欲低下15.3%、就職・起業等14.8%、経済的困窮13.7%の順です。大学院だけの内訳は公表資料に見当たりませんでした(2-2)。
大学院を中退したら人生終了ですか?逃げですか?
数字で言えるのは、最終学歴は大学卒のまま残ること、新卒の採用枠は指針で「卒業後少なくとも三年間」とされていること(大学院中退者の数え方は応募先しだい)、令和7年度の新卒の採用枠で既卒者が応募できた事業所は73%だったことです。JILPTの古い調査の参考値(ハローワークを利用した大学院中退者49人)では、正社員になるための求職活動をした人のうち正社員になった割合は42.1%でした(2-3)。逃げかどうかは統計では決まりません。決める材料は、学費・期間・最終学歴・新卒枠です(6章・9章)。
大学院を中退したら幸せになれますか?
中退した人の満足度を示す公的な統計は見つかりませんでした。変わるのは、この先払う学費、働き始める時期、最終学歴、新卒枠に入れる期間で、これらは9章の計算機で自分の場合の条件付き試算を出せます。
学期の途中で退学すると、授業料はどうなりますか?
名古屋大学・九州大学・北海道大学の定めでは、学期の途中で退学しても、その学期の分(年額の2分の1)を納めます。九州大学は後期の途中の退学で年額です。大阪大学は前期は4月末、後期は10月末までに願い出れば月割です。大学が定める退学日・申請期限・承認の条件(その学期の授業料を納めることなど)を満たせば、次の学期以降の授業料が要らない例があります(5章)。
中退したら、奨学金の返還はいつから始まりますか?
JASSOの貸与奨学金は、貸与が終わった月の翌月から数えて7か月目から返還が始まります。9月末に退学して9月で貸与が終われば翌年4月からです。授業料後払い制度も同じく7か月目からで、返還初年度は月2,000円です。収入が少ないときは返還期限猶予(通算10年まで)を申請できます(5-4)。
博士課程の中退と満期退学(単位取得退学)は何が違いますか?
満期退学は、所定の年限在学して単位を修得したうえで、学位を取らずに退学することです。学校基本調査では博士課程の「修了者」に数え、中退調査では中退に数えません。令和7年3月の博士課程修了者16,278人のうち3,299人が満期退学者でした。満期退学後に博士論文を出せる期間や手数料は大学の学位規程で違います(2-4)。
11. まとめ
- 令和7年度の大学院の中退は6,652人、学生数の2.42%(修士課程・専門職学位課程2.22%、博士課程2.94%)。博士課程の満期退学は中退に数えない
- 中退の理由の内訳は大学・短大・大学院・高専の合計しかなく、転学・進路変更等22.5%が最多。大学院だけの内訳は公表資料に見当たらない
- 大学院を中退しても学士の学位はそのままで、最終学歴は大学卒。統計でも学歴「大学」で数える。履歴書の中退の書き方に公的な定めはない
- 新卒の採用枠は、指針で「卒業後少なくとも三年間」。大学院中退者への当てはめの公式記載はなく、学部の卒業日から数える解釈と中退日を基準にする扱いの両方がある。応募条件は企業に直接確かめる。新卒枠で既卒者が応募できた事業所は73%(事業所の割合)
- 退学は退学願を出して研究科長などの許可を受ける。学期の途中で辞めてもその学期の分を納める大学がある。大学が定める退学日・申請期限(例:前月末、1か月前)・承認の条件を満たせば、次の学期以降の授業料が要らない例がある。授業料が未納だと受理されない例がある
- JASSOの返還は貸与終了の翌月から数えて7か月目に始まる(授業料後払い制度も同じ。返還初年度は月2,000円)。学振DCは退学(満期退学を含む)で中途辞退
- 休学期間を在学年数に入れない大学がある(名古屋大学・九州大学・北海道大学など)。休学期間の授業料を免除する国立大学があり、私立は在籍料の例。休学の上限は修士2年(京都大学は通算3年)・博士後期3年の例。休学の上限・修了要件・奨学金・学振DCの扱いは別に確かめる
- 体の不調が続いているなら、退学の手続きより先に、学内の学生相談室・保健管理センター、精神保健福祉センター、こころの健康相談統一ダイヤルへの相談を優先する
12. 出典
- e-Gov法令検索「学校教育法」(104条)https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000026
- e-Gov法令検索「学位規則」(2条)https://laws.e-gov.go.jp/law/328M50000080009
- e-Gov法令検索「学校教育法施行規則」(4条)https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000080011
- e-Gov法令検索「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」(2条)https://laws.e-gov.go.jp/law/416M60000080016
- 文部科学省「令和7年度 学生の中途退学者・休学者数の調査結果について」(令和8年10月16日公表)https://www.mext.go.jp/content/20261016-mxt_gakushi01-000013028_1.pdf
- 文部科学省「令和7年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値について」https://www.mext.go.jp/content/20260327-mxt_chousa01-000048552_10.pdf
- 中央教育審議会 大学分科会 大学院部会 参考資料「大学院関連参考資料集」(令和8年5月11日時点)https://www.mext.go.jp/content/20260511_mxt_daigakuc01_000049753_7.pdf
- 科学技術・学術政策研究所「博士人材追跡調査」第4次報告書 概要https://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-RM317-SummaryJ.pdf
- 労働政策研究・研修機構 調査シリーズNo.138「大学等中退者の就労と意識に関する研究」(2015年)https://www.jil.go.jp/institute/research/2015/138.html
- 厚生労働省「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000922209.pdf
- 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(三年以内既卒者等採用定着コース)」(過去の制度)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158397.html
- ハローワーク豊橋「学生・卒業または中退後3年以内で就職活動中の方へ」https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-hellowork/list/toyohashi/kyushokusha/gakusotu.html
- 厚生労働省「新卒応援ハローワークを利用しませんか」https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000913644.pdf
- 厚生労働省「労働経済動向調査(令和8(2026)年8月)の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keizai/2608/dl/7roudoukeizaidouko.pdf
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」新規学卒者https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/dl/10.pdf
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査で使用されている主な用語の説明」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/yougo-01.html
- 厚生労働省「新たな履歴書の様式例の作成について」https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/04.pdf
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「応募書類」(令和8年5月)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001710225.pdf
- 名古屋大学「名古屋大学大学院通則」https://en.nagoya-u.ac.jp/assets/pdf/pages/about/regulations/rules/about_regulations_rules_2.pdf
- 名古屋大学 文系教務課「休学・復学・退学を考えています。どのような手続きが必要ですか。」https://mado.adm.nagoya-u.ac.jp/faq/faq1/item180
- 九州大学「九州大学大学院通則」https://www.kyushu-u.ac.jp/f/58793/2004kisoku003.pdf
- 九州大学「国立大学法人九州大学における授業料その他の費用に関する規程」https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/university/information/rule/rulebook/pdf/2653/1/2004kaiki012.pdf
- 九州大学 経済学部・大学院経済学府「学籍異動の手続きについて(休学・休学延長・退学等)」https://www.econ.kyushu-u.ac.jp/2025/06/12/
- 北海道大学「北海道大学大学院通則」https://www.hokudai.ac.jp/jimuk/reiki/reiki_honbun/u010RG00000002.html
- 北海道大学「北海道大学学位規程」https://www.hokudai.ac.jp/jimuk/reiki/reiki_honbun/u010RG00000072.html
- 東京大学「東京大学学部通則」https://www.u-tokyo.ac.jp/gen01/reiki_int/reiki_pdf/s38121701.pdf
- 東京大学「東京大学大学院学則」https://www.u-tokyo.ac.jp/gen01/reiki_int/reiki_pdf/s28031701.pdf
- 京都大学「京都大学通則」https://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/kitei/reiki_honbun/w002RG00000001.html
- 大阪大学「大阪大学学部学則」https://www.osaka-u.ac.jp/kitei/reiki_honbun/u035RG00000001.html
- 大阪大学「大阪大学大学院学則」https://www.osaka-u.ac.jp/kitei/reiki_honbun/u035RG00000002.html
- 大阪大学 学生向けハンドブック「授業料の納入について」https://www.hus.osaka-u.ac.jp/ja/students/handbook/2024/handbook_common.pdf
- 早稲田大学 理工学術院「退学手続きについて」https://www.waseda.jp/fsci/assets/uploads/2025/06/0f88bd54826e67b0e856e4e9a97147cb.pdf
- 早稲田大学 理工学術院「休学手続きについて」https://www.waseda.jp/fsci/assets/uploads/2026/02/7e9bcc1ca1f32dccd86383d302eddceb.pdf
- 慶應義塾大学 塾生サイト「休学における授業料等の減免について」https://www.students.keio.ac.jp/com/procedure/status/tuition-reductions.html
- 日本学生支援機構「退学」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/saiyochu/todokede/taigaku.html
- 日本学生支援機構「在学猶予」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan/houhou/zaigaku_yuyo.html
- 日本学生支援機構「返還を待ってもらう(返還期限猶予)」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/index.html
- 日本学生支援機構「新卒等(一般猶予の申請事由)」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/ippan/teishutusyo/shinsotsu.html
- 日本学生支援機構「経済困難(一般猶予の申請事由)」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/ippan/teishutusyo/keikon/
- 日本学生支援機構「授業料後払い制度の返還方式」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/taiyo/atobarai/henkan.html
- 日本学生支援機構「2025年度 貸与奨学生のしおり【授業料後払い制度】」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/saiyochu/siori/__icsFiles/afieldfile/2025/04/04/2025_atobaraishiori.pdf
- 日本学生支援機構「奨学金の休止・復活(休学・復学)」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/saiyochu/todokede/kyushi.html
- 日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査 大学院各課程(試行)調査結果の概要等」https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_chosa/__icsFiles/afieldfile/2026/03/24/daiin24_1.pdf
- 日本学術振興会「令和9(2027)年度 特別研究員-DC 募集要項」https://www.jsps.go.jp/file/storage/j-pd/data/recruiting/2_dc_yoko.pdf
- 日本学術振興会「特別研究員 遵守事項および諸手続の手引 令和7(2025)年度版」https://www.jsps.go.jp/file/storage/j-pd/3/r7/pddc/r7_1_tebiki.pdf
- 厚生労働省「こころもメンテしよう」うつ病https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html
- 厚生労働省「こころもメンテしよう」身近にある地域の相談窓口https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/window/window_01.html
- 厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/kokoro_dial.html
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」SNS相談https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/sns/
13. あわせて読む
- 研究室に行きたくない・つらい|行かないと留年するか、休学・留年の学費、理由の切り分けと相談先(計算機つき)(辞める前に、行きたくない理由の切り分けと、休学・留年の学費を比べる)
- 大学院の学費はいくら?修士・博士の総額、奨学金の返済と免除、博士課程の給料(学振・SPRING)と院卒の生涯賃金(計算機つき)(続けた場合の学費・奨学金の返済・博士の生活費)
- 院試に落ちたら人生終わり?二次募集・研究生・卒業延期・就職のお金と日程、落ちる割合(計算機つき)(別の大学院に入り直すときの日程とお金)
- 研究室で「無能だ」と感じてつらい人へ|実験で失敗ばかり・自分だけ遅いのは能力か経験か。一人の反応で全部を決めない(計算機つき)(研究室での評価がつらいとき)
- 研究室の発表がつらい(進捗報告・ゼミ・学会発表)|進捗ゼロの週の報告、質問に答えられないとき、学会発表を取り消したらどうなるか(計算機つき)(進捗報告・ゼミの発表がつらいとき)
- 放置系研究室で「何も身につかない」と感じたら|指導なしで20年働いた側から見た、自由すぎる環境の使い方(指導がなく、何も身につかないと感じるとき)
