「人生諦める」と検索してここに来た人へ。この記事は励ましません。名言も出しません。
代わりに、私が20年のあいだに実際に諦めてきたものを、金額と期間つきで並べます。古本せどり、ブランド品転売の会社化、中国輸入OEM、Amazonの新品販売、気に入らなかった部屋、そして関東に住むこと。数えると7回は撤退しています。それでも人生は諦めていません。理由は単純で、「人生」は諦める単位として大きすぎて、実行できないからです。
諦めるという行為は、事業でいえば撤退です。撤退は「何を、いつ、いくらで切るか」が決まっていないと実行できません。「人生」という主語で諦めようとすると、切る対象が決まらないので、実際には何も起きず、ただ気力だけが削れていきます。検索窓に「人生諦める」と打っている状態は、私の見立てでは、諦めたいのではなく、何を諦めればいいのか分からない状態です。
この記事でやることは一つです。「人生」を分解して、諦めていい部分と、諦めると買い戻せなくなる部分に分けます。判断の材料は私の実測だけで、統計や心理学は使いません。
私が20年で諦めてきたもの一覧
先に全部出します。数字は当時の私の条件下のもので、他人に当てはまる保証はありません。
| 諦めたもの | 続けた期間 | 諦めた直接の理由 | 諦めなかった(残った)もの |
|---|---|---|---|
| 古本せどりを主軸にすること | 主軸として数年(うち約2年は不調) | 稼げていたが、ベッドから起き上がれず発送が遅れ、クレームが出た | 相場を見る目、Amazonの回転の相場感 |
| ブランド品転売を会社組織で回すこと | 2019〜2022年頃 | 人件費を引いて自分の給与を乗せると逆ザヤ。倉庫を借りると月30〜50万以上の固定費が追加 | 仕入先3市場との取引実績、真贋と相場の目、この経験を売る側の立ち位置 |
| 中国輸入OEM | ロゴ変更型で数ヶ月、機能追加型で半年以上 | キャッシュフローで国内せどりに負けた。返品と模倣で普通のせどりと大差がなかった | 部品仕入先としての中国(修理転売で現在も稼働) |
| Amazonでの新品販売の拡大 | — | 出品許可の取得に金と時間がかかり、取れても仕入れられる保証がない | 中古と修理の販路としてのAmazon |
| 東戸塚の部屋 | 1年 | 家賃・管理費・駐車場で月15万払って、得るものがなかった | 「住居は満足度ではなく差引で決める」という基準 |
| 関東に住み続けること | 東京20年+千葉 | 働き方が場所に縛られていないと気づくのに20年かかった | 仕事そのもの(場所を変えても収入が下がらない構造) |
| 人を雇ってスケールすること | ブランド転売期 | 親族雇用の体制が崩れ、雇っても自分の余暇が減るだけだった | 一人で回す設計、外注する部分の切り分け |
表を見て気づいてほしいのは右端の列です。7回諦めて、7回とも何かが残っています。諦めたのはいつも「やり方」か「場所」か「規模」であって、「私」ではありませんでした。人生を諦めるという言い方は、この右端の列まで一緒に捨てる宣言です。捨てる必要はありません。
諦めるを計算に変える3つの問い
私は事業の撤退を決めるとき、いつも同じ3つの問いを使っています。この問いは人生の他の部分にもそのまま使えます。
問い1:続けたら、増えるのは金か、拘束か
ブランド転売を続けていれば、月の利益は増えたかもしれません。しかし増えるのは金だけではなく、在庫が占拠する部屋、パイプ椅子に座る時間、数字に追われる日数も増えます。増えるものの内訳を書き出して、金以外の項目が増えるなら、それは「うまくいっているのに苦しい」状態です。この状態は、稼げているせいで撤退の判断が遅れます。
問い2:やめたら、戻ってくるのは何か
撤退の見返りは、現金化できる在庫と、空く時間と、戻ってくる部屋です。中国輸入OEMをやめたとき、資金拘束されていた金が戻り、その金は回転の速い国内せどりに回せました。やめて戻ってくるものが何もないなら、それは諦めではなく放棄です。放棄はしないでください。放棄には見返りがありません。
問い3:あとで買い戻せるか
これが一番重要です。私は即金の記事でも同じ軸を使いましたが、判断の軸は「いま何が手に入るか」ではなく「あとで買い戻せるか」です。ブランド転売は、やめても仕入先との取引実績と目利きが残るので、副業サイズなら買い戻せます。関東に住むことも、やめても引っ越せば買い戻せます。一方で、買い戻せないものがあります。それは次の章で書きます。
諦める期限を先に決める:せどりの損切りルールをそのまま使う
3つの問いに答えられても、実際に手放せない人が多い。理由は、諦める判断を「その場」でやろうとするからです。私は在庫についてはこの問題を、判断を事前に決めておくことで解決しています。人生の他の部分でも同じ方法が使えます。
私のせどりの損切りルールは単純です。仕入れた商品は、一定期間売れなければ赤字でも現金化する。評価するのは見込み利益ではなく実現利益で、「いつか売れるはず」は在庫の言い分として認めない。数値の反応の強弱は数日で分かるので、判断は速く、1週間以内に現金化することもあります。ブランド転売の頃は仕入れから1週間以内の売り切りを標準にしていました。
このルールの要点は、期限を仕入れる前に決めていることです。売れていない商品を目の前にして「まだ待つか」を考えると、人は必ず待つ。仕入れた金額(サンクコスト)が判断を歪めるからです。先に期限を決めておけば、期限が来た日に「ルールどおり切る」だけで済み、その日の気分は関係なくなります。
人生の諦めも同じ構造です。「この職場を辞めるか」「この街を出るか」を、辛くなった日に考えると、これまで注いだ年数が判断を歪めます。だから決めるべきなのは「辞めるかどうか」ではなく、「いつまでに何がどうなっていなければ辞めるか」という期限と条件です。私が東戸塚を1年で出られたのは、住む前から「差引で得るものがなければ出る」という基準があったからで、住み始めてから悩んだわけではありません。
もう一つ、続けているだけで出ていく金にも目を向けてください。Amazonのせどりは、キーパや価格改定ソフトなどの固定費で、何もしなくても月1万円近くが出ていきます。中国輸入OEMの機能追加型は、納品までの半年以上、サンプル作成やテストで金が出ていき、その間ずっと資金が拘束されました。「まだ諦めていない」状態は無料ではなく、維持費がかかっています。人生の場合の維持費は、金だけでなく時間と気力です。それを毎月払い続けている自覚があると、期限を決めやすくなります。
稼げているのに諦めた:ブランド転売の撤退計算
「儲かっていないから諦める」は誰でもできます。難しいのは「儲かっているのに諦める」です。私の実例を数字で出します。
2019〜2022年頃、CHANELとルイ・ヴィトンのバッグを主力に、エコリング・オークネット・スターバイヤーオークションの3市場とヤフオクから仕入れ、メルカリとヤフオクで売っていました。単価は3万〜15万円のものが中心。週に50〜150点を売り、仕入れに使う金は月600万円以上、仕入れから1週間以内に大半を売り切る回転でした。
人件費を引く前の月利は80〜200万円前後で、月による変動が大きかった。ここから人件費を引きます。社員(当時は妻を親族雇用)に月35万、アルバイトに月10〜15万(時給2,000円、週3日・1日3時間程度)。合計45〜50万です。
ここに私自身の給与として100万を乗せると、月利が200万を超えた月でなければ残りません。そして200万を超える月は常には来ません。つまり、売上も利益も出ているのに、経営者の給与を正当に計上した瞬間に逆ザヤになる事業でした。
さらに規模を追うなら、自宅を占拠していた在庫を倉庫か事務所に出す必要があり、それには月30〜50万以上の固定費が追加でかかります。人件費とあわせると、月利の下限80万をまるごと食う金額です。ここで私は「拡大しても給与は出ない」と結論を出しました。
付け加えると、数字以外の理由も二つありました。一つは、離婚で親族雇用の体制が崩れたこと。もう一つは、教える側に回ろうとしたとき、自分の仕入れの優位性を全部バラさないと顧客が稼げず、バラすと自分の利益が守れないという利害相反が嫌だったことです。この二つは数字に出ませんが、撤退を早めました。
この撤退で何が残ったか。仕入先との取引実績、真贋と相場の目、そして「余っている枠を売る」という今の立ち位置です。事業を諦めた結果、在庫を持たずに経験だけを売る側に回れました。ブランド品の仕入れルートの記事は、この撤退がなければ書けていません。
諦めるのが遅すぎた実例:古本せどりの2年
逆の失敗も書きます。諦めるのが遅すぎた例です。
古本せどりが主軸だった頃、私は約2年間、不調でした。金は入ってきていました。しかし「自分は社会の誰の役にも立っていない」という感覚があり、ベッドから起き上がれない。起き上がれないので梱包と発送が遅れ、顧客からクレームが入る。それでもやる気が出ず、発送はまた遅れる。この状態が2年続きました。
いま振り返ると、撤退のサインは1年目に全部出ていました。売上は問題なかったので、私は「数字が良いのだから続けるべき」と判断していたのです。ブランド転売のときは数字で撤退できたのに、古本のときは数字が良いことが撤退を遅らせた。数字は撤退の条件の一つであって、唯一の条件ではないということを、この2年で覚えました。
結果的に回復のきっかけになったのは事業判断ではなく、ジョギングとウォーキングを始めたこと、その後ジムで筋トレをやりだしたことでした。ただし体が戻った頃には、せどりそのものが嫌になっていて、別の分野を探し始めていました。もし1年目に「発送が遅れている」という事実を撤退のサインとして扱っていれば、1年早く次に移れたはずです。
「人生諦める」と検索している人の中には、この2年目の私と同じ状態の人がいると思います。稼げているかどうかに関係なく、起き上がれない。その状態で「人生」を主語にすると、諦める対象が「全部」になってしまう。私の場合、実際に諦めるべきだったのは「古本を主軸にすること」だけでした。
諦める順序:金、場所、職、人
「人生」を分解すると、私の経験ではおおむね4層になります。上から順に諦めやすく、下に行くほど買い戻しにくい。
| 層 | 諦めていいか | 私の場合 | 買い戻せるか |
|---|---|---|---|
| 金(借金・事業) | いい | 事業を4回撤退。借金は法的手続きで処理できる領域 | 買い戻せる。事業は再開できるし、借金は手続きの後にゼロから積み直せる |
| 場所(住居・地域) | いい | 東戸塚を1年で退去、関東を出る決断 | 買い戻せる。引っ越しの費用はかかるが不可逆ではない |
| 職(やり方・業種) | いい | 古本→修理→ブランド→情報発信と移動 | おおむね買い戻せる。ただし技術と信用は積み直しに時間がかかる |
| 人(自分の体・時間の使い方) | だめ | 2年の不調で発送が遅れ、信用を削った | 買い戻しにくい。体は戻るが、削った時間と信用は戻らない |
金は諦めていい
借金がある人は、借金を「人生」と混同しやすい。しかし借金は法的な手続きが用意されている領域で、人生の中で最も諦め方が整備されている部分です。手続きの種類と条件は40代のどん底の記事に条文つきで書いたので、ここでは繰り返しません。ここで言いたいのは、借金を諦める(=手続きで処理する)ことと人生を諦めることは別の行為だということです。
場所は諦めていい
私は東戸塚の部屋を、家賃13万+管理費6千+駐車場1.4万=月15万払って1年で出ました。違約金も払いました。得るものがなかったからです。次の海浜幕張は家賃11.8万+管理費6千+駐車場1.1万=月13.5万で、不満はあっても差引でプラスなので出ていません。住居は満足度ではなく差引で決める。これは家賃の記事で詳しく書きました。
もっと大きい話では、私は関東そのものを諦める途中です。自分の働き方が場所に縛られていないことに気づくまで20年かかりました。関東にいる理由が「仕事があるから」なら、その仕事が本当に場所を要求しているのか、一度計算してみる価値があります。
職は諦めていい
職歴がない、業種を変えたい、という悩みは「人生」ではなく「職」の層の話です。私は業種を何度も変えていますが、変えるたびに前の業種の目利きが次の業種で使えました。職歴がない状態からの経路は別の記事に書いています。
人は諦めてはいけない
唯一、諦めると買い戻せないのがこの層です。ここで言う「人」とは、自分の体と、時間の使い方です。私が古本せどりの2年で削ったのは、金ではなく、発送を遅らせて失った顧客の信用と、起き上がれないまま過ぎた時間でした。金は後から稼げましたが、この2年は戻っていません。
だから順序は、金、場所、職を先に諦めてください。この3層を諦めると、人の層に回す余力が戻ってきます。逆に人の層から諦めると、上の3層を立て直す力そのものがなくなります。「人生諦める」と検索した人がやりがちなのは、この順序の逆です。
「人生消化試合」との違い
このサイトには人生消化試合の記事があり、そこから来た人もいると思います。消化試合と諦めるは似ていますが、私の整理では一つ違いがあります。
消化試合は「勝敗が決まったあとの残り時間をどう過ごすか」という感覚で、行動の対象は時間の使い方です。諦めるは「今抱えているものを手放すかどうか」という判断で、行動の対象は手放す対象そのものです。消化試合感がある人はまず時間の記事を、何かを手放したい人はこの記事を、という分担で書いています。
両方に共通するのは、「人生」を主語にした瞬間に手が止まるという点です。主語を小さくすれば、どちらも行動に変わります。
やってはいけない諦め方
撤退の経験から、失敗しやすい諦め方を3つ挙げます。
一括で諦める。金も場所も職も人も、一度に全部手放す。これは撤退ではなく放棄で、見返りがありません。私が7回の撤退で一度に手放したのは、いつも1層だけでした。
数字だけで判断する。ブランド転売は数字で正しく撤退できましたが、古本は数字が良かったせいで2年遅れました。数字の他に「発送が遅れている」「起き上がれない」といった行動の指標を撤退条件に入れておかないと、稼げているものをやめられません。
見返りを数えずに諦める。やめたら何が戻ってくるか(現金、時間、部屋、余力)を書き出さないまま諦めると、諦めた実感だけが残って次に進めません。撤退は、戻ってくるものを次に投入するための行為です。
今日やること
最後に、この記事を読んだあとにできることを一つだけ書きます。紙でもスマホのメモでもいいので、いま「諦めたい」と思っているものを、金、場所、職、人の4層に振り分けてください。たいていの場合、人の層に入るものは一つもないか、あっても「疲れている」という状態だけです。残りの3層は、全部買い戻せます。
私は20年で7回諦めました。人生は一度も諦めていません。対象を小さく切れば、諦めることは撤退であり、撤退は次の仕入れの資金になります。
よくある質問
諦めたら楽になりますか
対象を正しく切れば楽になります。私はブランド転売をやめて在庫が部屋から消えたとき、明確に楽になりました。ただし「人生」を主語にした諦めは楽になりません。手放す対象が決まらないので、何も変わらないからです。
何を諦めればいいか分かりません
金、場所、職、人の4層に振り分けてください。振り分けた時点で「人」の層に入らないものは全部、諦めても買い戻せます。迷うなら、一番固定費が大きいものから検討するのが私の順序です。
借金があって諦めたいです
借金は4層のうち最も諦め方が整備された層です。法的手続きの種類と条件は40代のどん底の記事にまとめています。借金を処理することと人生を諦めることは別の行為です。投資の損失で「終わった」と感じている場合は、損失を月の余剰で割って何か月分かを出す計算を「株で人生終わった人と、終わらなかった私の差」に、FXの自動売買で250万円以上失った記録を「FXで人生終わった人と、終わらなかった私の差」に書きました。
稼げているのにやめるのは間違いですか
間違いではありません。私は月利80〜200万円のブランド転売を、自分の給与を乗せると逆ザヤになるという計算でやめました。稼げているかどうかは撤退条件の一つで、拘束の増え方と、やめたときに戻ってくるものも同じ重みで見るべきです。
諦めたあとに何をすればいいですか
戻ってきたもの(現金、時間、部屋、余力)を次に投入します。私の場合、在庫ビジネスを諦めて戻ってきた時間を、この記事を含む情報発信に回しました。何に投入するかは利益率の記事など、事業側の記事を参照してください。

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