「家賃がもったいないとか言って家を購入するバカって頭悪いよね」|持ち家に42年住んだ側の答え

「家賃がもったいないとか言って家を購入するバカって頭悪いよね」|持ち家に42年住んだ側の答え 資産運用

「家賃がもったいないとか言って家を購入するバカって頭悪いよね」——この言い方で検索する人が、たくさんいます。

そして検索して出てくる記事を並べると、あることに気づきます。

答えているのが、ほぼ全部、家を売る側の会社です。

それが悪いという話ではありません。ただ、売る側の答えしか並んでいない場所で判断するのは、しんどいと思います。

私は家を売っていません。そして、この記事では投資商品も勧めません。

先に、立場を書きます

持ち家に住んだ経験 あります。42年です(親が買った家に、20年と22年)
その2軒の売却結果 見ています。そして結果が正反対でした
自分で家を買った経験 ありません
買うために見た物件 新築のモデルルームを20件以上、中古を5件、賃貸を5部屋
住宅ローンを組んだ経験 ありません
賃貸 3か所。うち1か所は1年で出ました
投資の助言 しません。私は登録した業者ではありません

買っていませんが、見てはいます。新築のモデルルームは20件以上、中古も5件、賃貸も5部屋回りました。そのうえで、いまは借りています。その理由をこれから書きます。

この記事の前の版には、株式のインデックスや年利の話が書いてありました。「家を買わずに株を買え」という趣旨のことも書いてありました。全部消しました。私は投資助言・代理業の登録をしていないので、書いてはいけないことでした。

この記事で扱うのは、住む場所の話だけです。

1. 私は、順番が逆です

ふつうは賃貸から始めて、持ち家に移ります。私は逆でした。

場所 住み方 期間
北柏 親が新築で購入した家 20年
月島 親が新築で購入した家 22年
東戸塚 賃貸(民間の収益物件) 1年で出ました
海浜幕張 賃貸(住宅供給公社) 現在

持ち家に42年住んでから、賃貸に出ています。だから、持ち家を知らないまま賃貸を勧めているわけではありません。むしろ持ち家のほうが、体に入っています。

その上で書きます。

2. 親は同じことを2回やって、結果が正反対でした

ここが、この記事でいちばん言いたいところです。

親は2回、新築を買って、20年以上住んで、売っています。やったことは同じです。

やったこと 売った結果
北柏 新築で購入。20年住んで売却 買った値段と、ほぼ同じ値段でした
月島 新築で購入。22年住んで売却 大幅なプラスでした

北柏はバブル崩壊後に買っているので、そこから下がらなかったこと自体は悪い結果ではありません。ただ、同じ行為で、これだけ差が出ます。

差を作ったのは、買い方ではありません。街です。

2-1. 「持ち家は資産になる」は、街の話です

持ち家が資産になるかどうかは、買った人の努力ではほとんど決まりません。その街が20年後どうなっているかで決まります。

そして、ここが問題です。

その街が20年後どうなるかは、買うときには分かりません。

私は北柏に20年住みました。その20年で、駅前に増えたのはコンビニとマクドナルドだけでした。街は進化しませんでした。

これは誰かの失敗ではありません。1970年代から80年代に開発され、計画なく作られた街に起きたことです。道は1車線で、歩道は狭いままでした。

3. 街の当たり外れは、運ではなく構造の問題です

「うちの親は運が悪かった」で終わらせると、判断に使えません。公的な数字を置きます。

空き家数は900万2千戸と過去最多、空き家率も13.8%と過去最高
「空き家数の推移をみると、これまで一貫して増加が続いており、1993年から2023年までの30年間で約2倍となっている。」
(総務省 令和5年住宅・土地統計調査)

2018年 2023年
空き家数 848万9千戸 900万2千戸
空き家率 13.6% 13.8%
賃貸・売却用や別荘などを除く空き家 — 385万6千戸

住宅は増え続けています。そして人は減っています。「どの街の家も、いずれ値上がりする」という前提が成り立つ状況ではありません。

ここで「だから買うな」とは言いません。言いたいのは、これだけです。

家を買うというのは、その街に賭けるということです。

賭けが悪いわけではありません。ただ、賭けていることを知らずに賭けているなら、それは別の問題です。「家賃がもったいないから買う」という理由の中に、街への賭けは入っていません。

4. 「家賃がもったいない」の計算に、入っていないもの

この言葉が出てくるとき、たいてい比べているのはこの2つです。

比べているもの
毎月の家賃
毎月のローン返済額

この2つは、比べられません。片方には付いていて、もう片方には付いていないものが多すぎるからです。

以下、公的な資料に書いてあるものだけを並べます。

4-1. 買うときにかかるもの

まず仲介手数料です。国土交通省の告示に、上限の計算方法が書いてあります。

「宅地建物取引業者が宅地又は建物…の売買又は交換の媒介に関して依頼者から受けることのできる報酬の額は、依頼者の一方につき…次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる割合を乗じて得た金額を合計した金額以内とする。」

価格の区分 割合
200万円以下の金額 5%
200万円を超え400万円以下の金額 4%
400万円を超える金額 3%

4,000万円の物件なら、上限は126万円です。これに消費税が乗ります。内訳は、200万円分に5%、次の200万円分に4%、残り3,600万円分に3%です。

そのほかに、こういうものがあります。

買うときにかかるもの
仲介手数料(上の計算)
登録免許税(所有権移転登記・抵当権設定登記)
不動産取得税
印紙税(売買契約書・金銭消費貸借契約書)
司法書士への報酬
ローンの事務手数料・保証料
火災保険・地震保険

賃貸の礼金と仲介手数料が「戻らない金」だという話を別の記事に書きました。ここに並んでいるものも、全部戻りません。そして金額の桁が違います。

4-2. 持っている間、ずっとかかるもの

ローンを払い終わっても、これは終わりません。

地方税法 第350条(固定資産税の税率)
「固定資産税の標準税率は、百分の一・四とする。」

地方税法 第702条の4(都市計画税の税率)
「都市計画税の税率は、百分の〇・三を超えることができない。」

これは課税標準額に対する税率で、買った値段に対するものではありません。住宅用地には特例もあります。金額は物件ごとに違うので、ここでは出しません。ただ、毎年かかり続けるものだということは押さえてください。

4-3. 修繕積立金は、あとから上がります

マンションの場合です。ここは国土交通省がガイドラインを出しています。

地上階数・建築延床面積 事例の3分の2が入る幅 平均値
20階未満・5,000㎡未満 235〜430円/㎡・月 335円
20階未満・5,000〜10,000㎡ 170〜320円/㎡・月 252円
20階未満・10,000〜20,000㎡ 200〜330円/㎡・月 271円
20階未満・20,000㎡以上 190〜325円/㎡・月 255円
20階以上 240〜410円/㎡・月 338円

70㎡なら、平均値で月17,640円から23,660円です。これは計画期間全体の平均額の目安で、機械式駐車場の分は含みません。

そして、ガイドライン自身がこう書いています。

「一般に、マンションの分譲段階では、分譲会社が、長期修繕計画と修繕積立金の額をマンション購入者に提示していますが、マンション購入者は、修繕積立金等に関して必ずしも十分な知識を有しているとは限らず、修繕積立金の当初月額が著しく低く設定される等の例も見られます。」

買うときに見せられる金額と、平均額の目安は、別のものです。

国が、自分で注意喚起しています。これは営業の批判ではなく、構造の説明として書かれているものです。

4-4. 売るときにかかるもの

売るときにかかるもの
仲介手数料(4-1と同じ計算式。400万円を超える部分は3%)
譲渡所得への課税(利益が出た場合)
抵当権抹消の登記費用
売れるまでの時間

売却益については、国税庁に3,000万円の特別控除の制度があります。ただし要件があります。

国税庁が示している要件(抜粋)
「売った年の前年および前々年にこの特例…の適用を受けていないこと」
「親子や夫婦など『特別の関係がある人』に対して売ったものでないこと」
「この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋」は対象外
「別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋」は対象外

4-5. 逆に、減るものもあります

公平に書きます。買う側にも制度があります。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除) 国税庁の記載
控除率 年末残高等×0.7%
所得の要件 合計所得金額が2,000万円以下
床面積の要件 床面積が50平方メートル以上

制度は改正されます。控除期間や借入限度額は住宅の種類と居住開始の年で変わるので、必ず国税庁の最新のページで確認してください。

4-6. だから、比べる表はこうなります

家賃と比べるべきは、ローンの返済額ではありません。下の全部です。

項目 自分の場合
毎月のローン返済額      円
管理費      円
修繕積立金(いまの額)      円
修繕積立金(平均額の目安。専有面積×252〜338円)      円
駐車場      円
固定資産税・都市計画税(年額÷12)      円
火災保険・地震保険(年額÷12)      円
買うときに払った戻らない金(÷住む予定の月数)      円
住宅ローン控除(年額÷12) -    円
合計      円

この合計と、いまの家賃を比べてください。それが「もったいない」かどうかの、最低限の比較です。

そして、この表にもまだ入っていないものが2つあります。次の2つの章がそれです。

5. 建物は、時間とともに「文明」が後退します

4章までは、お金の話でした。ここからは、建物そのものの話です。

建物は劣化します。これは誰でも知っています。ただ、それだけではありません。

建物が同じままでも、周りが進化すると、相対的に後退します。

国土交通省のガイドラインに、こう書いてあります。

「マンションに一般的に使用される材料、設備等は、社会的な環境や生活様式の変化、技術の向上等に伴い、時代とともに変化していきます。」
(国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」)

国が自分で書いています。建物の中身は、時代とともに変わっていきます。ということは、変わらない建物は、置いていかれます。

5-1. 戸建てなら、上げ直せます

ここが分かれ目です。

戸建てで、あとから入れ替えられるもの
水道管の交換
屋根の張替え
窓の交換(防音・断熱の性能が高いものへ)
断熱材の追加
空調のルート変更
間取りの変更

私は東戸塚で、幹線道路沿いの部屋に住んで、車とバイクの音が24時間入ってくる状態を経験しました。築36年でサッシが弱く、閉めても入ってきました。

あれが自分の戸建てなら、窓を替えられます。

防音性能の高い窓に入れ替えれば、かなりの部分が解決します。そして、それを自分の判断で、今日決められます。

5-2. マンションでは、窓は自分のものではありません

同じことをマンションでやろうとすると、話が変わります。国土交通省が示している標準管理規約に、こう書いてあります。

マンション標準管理規約(単棟型)第7条第2項
「三 窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。」

自分の部屋の窓が、自分の専有部分ではありません。

そして、性能を上げる工事についてはこう定められています。

同 第22条(窓ガラス等の改良)第1項
「共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。」

同 第22条第2項
「区分所有者は、管理組合が前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けることにより、当該工事を当該区分所有者の責任と負担において実施することができる。」

ここは正確に読んでください。「禁止されている」わけではありません。

正しくは、「自分の一存では決められない」です。

戸建て マンション
窓を替えたい 自分で決めて、業者を呼びます まず、管理組合が計画修繕としてやるのが原則です
組合がやらない場合 — 理事長に申請して、書面による承認を受けます
いつできるか 今日、決められます 相手の予定に乗ります

24時間音が入っている人にとって、承認を待っている時間は生活時間です。私は東戸塚で、2か月で無理だと判断しました。そのとき窓を替えられるかどうかは、決定的な違いです。

5-3. そもそも、上げ直せないものがあります

窓はまだ、承認を取れば可能性があります。ですが、どうやっても変えられないものもあります。

変えられないもの 起きること
天井の高さ 圧迫感。私は身長175センチで、低い天井の部屋では息苦しさを感じます
二重床・二重天井にすること 音と配管のやり直しができません
空調・配管のルート 結露が出て、部屋にカビが生えることがあります
躯体の断熱 暑さ・寒さ・光熱費が固定されます

天井の高さについては、法律にこう書いてあります。

建築基準法施行令 第21条(居室の天井の高さ)
「居室の天井の高さは、二・一メートル以上でなければならない。」

これは最低基準です。この基準ぎりぎりで作られた建物は、いまも建っています。そして、あとから上げることはできません。

中古で買った場合、ここはどれだけお金をかけても直りません。

5-4. 2025年4月に、線が引かれました

もう1つ、大きな変化がありました。

令和7年(2025年)4月1日から、原則すべての新築住宅・非住宅に、省エネ基準への適合が義務付けられました。(対象外は床面積10平方メートル以下)

国土交通省の資料には、こう書かれています。

「基準適合義務の対象が、小規模非住宅、住宅にも拡大されます」
「2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%削減の実現に向け…」

これは劣化の話ではありません。基準が上がったという話です。

建物そのもの 相対的な位置
建てたとき その時代の基準を満たしています 標準です
基準が上がったあと 何も変わっていません 下がります

自分は何もしていないのに、位置が下がります。

これが、この記事で「文明の後退」と呼んでいるものです。そして、この線は今後も引かれ続けます。2025年4月が最後の1本だと考える理由はありません。

5-5. だから「ずっと家賃より安い」は起こりません

「家賃がもったいない」と言うとき、比べているのはいまの家賃といまの返済額です。

ところが、この2つは時間の経ち方が違います。

10年後、20年後
その建物の家賃 築年数が上がるので、同じ建物なら下がっていきます
ローンの返済額 変わりません
修繕積立金 上がっていきます(4-3参照)

買った瞬間に「家賃より安い」でも、10年後の同じ比較は違う結果になります。

ここは公平に書いておきます。市場全体の家賃は、下がってはいません。

「借家(専用住宅)の1か月当たり家賃は59,656円となっており、2018年と比べ、7.1%の増加となっている。」
(総務省 令和5年住宅・土地統計調査)

賃貸には、家賃相場が上がっていくリスクがあります。これは事実です。ただし、賃貸なら「上がったら、別のところに移る」という選択肢が残ります。建物と一緒に沈むことはありません。

5-6. 有利なゾーンは、限られていると思っています

ここからは私の見立てで、検証したわけではありません。

買うのが有意に有利なのは、築6年から15年あたりだと思っています。

理由は2つです。新築のプレミアムが抜けたあとで、なおかつ、大がかりな修繕が始まる前だからです。

後半については、ガイドラインにこう書かれています。

「既存のマンションでは、経年とともに給排水管、エレベーター、機械式駐車場等の大がかりな修繕工事が増加する一方、2回目・3回目の大規模修繕に向けた適切な長期修繕計画の見直しが行われていない等の例も見られます。その結果、必要な修繕積立金が十分に積み立てられず、修繕工事費が不足するといった問題が生じているとの指摘もあります。」

そして20年を超えると、新築との差がはっきりしてきます。断熱、気密、天井高、設備、共用部の作り。少なからずの不便を受け入れながら暮らすことになります。

5-7. そして、文明は不可逆です

最後に、これは数字にできない話です。私の経験としてだけ書きます。

住んだ場所 浴室のサイズ
月島(親が買った分譲。かなりのグレードでした) 1600以上
東戸塚 1450
いまの家 1350。足が伸ばせません

月島にいたときは、それがすごいことだと分かっていませんでした。出てから分かりました。

一度、文明レベルの高い部屋に住むと、もう戻れません。

これは我慢が足りないという話ではありません。基準がずれてしまうということです。そして、ずれた基準は戻りません。

ここが、買うことのいちばん怖いところだと思っています。

買うというのは、いまの自分の基準に合わせて、数十年ぶん固定することです。

ところが基準のほうは、上がり続けます。建物の基準も、自分の基準も。固定されているのは、買った建物だけです。

5-8. 後退するなら、やることは2つしかありません

ここまでを認めると、対策は2通りしかありません。

やり方 成立する条件
①買い替え続ける 6年から15年で売って、次の物件に移ります(いわゆる住宅すごろく) 売れること。そして売値が読めること
②借り替え続ける 古くなったら、新しい物件に移ります ありません

①も、成立すれば強い戦略です。文明の後退を、住み替えで打ち消せます。ただし2つの条件が付きます。売れること、そして売値が読めること。

②には、その条件が付きません。出るときに売る必要がないからです。

借りている限り、常に新しい建物に移り続けられます。

私はいま、築6年の分譲マンションを賃貸で借りようとしています。短く見て2年から4年、うまくいけば15年は住めると思っています。そして15年後には、さらに新しい建物が建っている可能性があります。

そのときは、そちらに移ればいいだけです。その街を気に入っていれば、街を変える必要すらありません。

5-9. ①が成立するかどうかは、予測です

ここは、私の意見ではなく数字を並べます。

公表されている数字
人口 2020年の1億2,615万人が、2070年には8,700万人に。「総人口は50年後に現在の7割に減少」(国立社会保障・人口問題研究所)
空き家 900万2千戸・13.8%。どちらも過去最高(総務省)
マンションの価格 219.0(2010年平均=100、令和7年7月・季節調整値)。前年同月は201.6で、上がっています(国土交通省 不動産価格指数)

3行目を見てください。

人は減ることが分かっていて、住宅は増え続けていて、それでも価格は上がっています。

つまり、価格は人口では説明できていません。だから、次の2つはどちらも予測です。

よく聞く話 実際は
人口が減るから、いずれ下がる 予測です。いまは上がっています
ここまで上がってきたから、これからも上がる 予測です

①の道を選ぶというのは、この予測に数千万円を賭けるということです。

私は、その予測を当てられる自信がありません。だから②にしています。「賃貸のほうが得だから」ではなく、「予測が要らないから」です。

公平のために、自分に不利なことも書いておきます。私が住んでいるエリアの人口は、直近の国勢調査では5.0%増えています(千葉市美浜区・令和7年速報)。減ってはいません。

それでも私は、新築マンションの建設ラッシュが終われば、いずれ減ると見ています。ただしこれは私の予測で、根拠はありません。5-9でいま書いたことが、そのまま自分にも当てはまります。

6. 30年後を、実際に見てきました

ここまでは理屈でした。実際にどうなるのかを、自分の目で見てきました。

6-1. 内見で見たもの

私は買うつもりで、新築のモデルルームを20件以上、中古を5件、賃貸を5部屋回っています。そのうち、いま住んでいるエリアの築30年前後の物件で見たものを書きます。

見たもの
築30年経っているのに、エレベーターが交換されていません
地下駐車場のシャッターが壊れたまま。直せないので、鎖が前後するだけのゲートに交換されていました
駐車場の機械式パレットが、壊れたまま放置されています
共用の廊下が汚れています(清掃の頻度が低いのだと思います)
排水まわりの鉄の部品が錆びて、抜け落ちていました

2行目について補足します。交換後のゲートは、私がいま12万円で借りている賃貸マンションと同じレベルの設備です。

5,000万円を超える値段がついている部屋の共用部が、12万円の賃貸と同じ設備に落ちていました。

沿岸のエリアなので、潮の影響で傷みが早いという事情はあります。それを差し引いても、私は「これは管理が回っていない」と感じました。

6-2. なぜこうなるのか

ここからは私の推測です。確かめたわけではありません。

私の推測
修繕積立金が、物価の上昇を織り込んで設定されていない
積み立てたお金を現金のまま置いているので、目減りしている

これは4-3で書いたことと、つながります。国土交通省のガイドライン自身が「修繕積立金の当初月額が著しく低く設定される等の例も見られます」と書いていて、さらにこう続けています。

「既存のマンションでは、経年とともに給排水管、エレベーター、機械式駐車場等の大がかりな修繕工事が増加する一方…」

エレベーターと機械式駐車場は、名指しで挙がっています。そして私が見たのは、まさにその2つが放置されている状態でした。

お金が足りないときに借りる道は、制度としてはあります。標準管理規約にこう書かれています。

マンション標準管理規約 第28条第3項
「管理組合は、第1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、修繕積立金をもってその償還に充てることができる。」

制度はあります。ですが、使うには合意が要ります。そして合意を取るのは、住んでいる人たちです。

6-3. そして、土地が自分のものではない場合があります

もう1つ、見落としやすいものがあります。借地権です。

私が見た物件には、借地権が設定されていて、その更新の1回目を迎えていました。

法律にはこう書かれています。

借地借家法 第3条(借地権の存続期間)
「借地権の存続期間は、三十年とする。」

同 第4条(借地権の更新後の期間)
「当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から十年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、二十年)とする。」

そして、更新のない形もあります。

同 第22条(定期借地権)
「存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては…契約の更新…及び建物の築造による存続期間の延長がなく…とする旨を定めることができる。」

期間 終わったら
所有権 — 土地は自分のものです
借地権(更新あり) 30年。最初の更新で20年、以後10年 更新の交渉になります
定期借地権 50年以上 更新がありません

買う前に、契約の形を確認してください。「マンションを買う」と言っても、土地の権利が所有権とは限りません。

6-4. 「あと何年もつのか」について

ここは、私が間違えていたところなので、書き直します。

マンションの寿命を「46年」や「47年」と説明されることがあります。これは建物の寿命ではありません。

47年という数字の正体
正しくは 減価償却の耐用年数です(鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の「住宅用のもの」=47年)
これは何を決めるか 税金の計算です
建物が使えなくなる年数か 違います

だから「47年でダメになる」とは書けません。手を入れ続ければ、もっと長く使えます。

問題は年数ではなく、手が入っているかどうかです。

私が見たのは、築30年で手が入っていない建物でした。年数の問題ではありません。そして、手を入れるかどうかを決めるのは、自分ひとりではありません。

6-5. 数字を2つ並べて、終わります

私は「バブルだ」とは書きません。5-9に書いたとおり、価格がこれからどちらに動くかは予測だからです。

ただ、自分が見たものは書けます。

いま住んでいるエリアの中古 名古屋で私が借りようとしている部屋
築年数 築30年前後 築6年
共用部 エレベーター未交換、シャッター故障、パレット放置 —
土地 借地権つき(更新1回目) —
売値 5,000万円超 4,000万円台
私の選択 買いませんでした 借ります

これをどう読むかは、読む人が決めてください。私はこの2つを並べて見て、買うのをやめました。

誤解のないように書いておきますが、これはエリアの評価ではありません。私が実際に内見した数件で見たことです。同じエリアにも、きちんと管理されている建物はあります。

言えるのは1つだけです。管理が回っているかどうかは、内見で見えます。

そして、それは築年数や価格には表示されていません。エレベーター、駐車場、廊下、排水まわり。買う前に、部屋ではなく共用部を見てください。

7. いちばん大きいものが、まだ入っていません

動けなくなることです。

実例を書きます。私が人生で初めて自分で借りた部屋の話です。

条件
物件 築36年・3LDK・83㎡
立地 坂の多い地形。幹線道路沿い。駅から徒歩20分
起きたこと 車とバイクの音が24時間入ってきて、眠れなくなりました

入居して2か月で、無理だと判断しました。

それでも1年住みました。出るのに違約金がかかり、入るときに払った礼金と仲介手数料が戻らないからです。結局、1年待ってから違約金を払って出ました。

間違いを認めるのに、10か月かかりました。

7-1. あれが、持ち家だったら

ここが、この記事の核心です。

間違えたと分かったあと 賃貸だった場合 持ち家だった場合
出るまでにかかる時間 解約の予告期間(1〜2か月が一般的) 売れるまで。読めません
出るときに払うもの 違約金・原状回復・引っ越し代 仲介手数料(400万円超の部分は3%)・登記費用・引っ越し代
売値が買値を下回ったら — ローン残債との差額を、自分で埋めます
買い手がつかなかったら — 出られません

私は10か月で済みました。持ち家だったら、何年だったか分かりません。

当サイトはどの記事でも利益 ÷ 拘束日数で判断しています。住居も同じ形をしています。

住居の拘束日数とは、間違えたと分かってから、実際に出られるまでの日数です。

「家賃がもったいない」という言い方には、この分母が入っていません。分子(毎月いくら)だけを見ています。

8. 自分に効く変数は、住む前には分かりません

もう1つ、実例を書きます。情けない話ですが、これがいちばん効いています。

住んだ場所 浴室のサイズ
月島(親が買った家。かなりのグレードでした) 1600以上
東戸塚 1450
いまの家 1350。足が伸ばせません

私は、風呂が嫌いでした。だから部屋を探すとき、浴室を見ていませんでした。

一人暮らしをするようになって初めて、風呂が大事だと分かりました。

そして月島の浴室がどれだけすごいものだったかも、出てから分かりました。比べる相手がいないと、それがすごいことに気づけません。

8-1. 学習が終わる前に、答えを固定すること

私は5回住み替えて、ようやく自分に効く変数が見えました。

住んで初めて分かったこと
街には、20年経っても進化しない街がある
坂は、毎日効いてくる。そして年を取ると詰む
計画して開発された街は、移動効率がまったく違う
音は築年数で決まる。物件の種類ではない
自分は風呂を大事に思っていた

どれも、住む前には分かりませんでした。そして、20年近くかかりました。

家を買うというのは、この学習が終わる前に、答えを固定することです。

25歳で買った人が、45歳の自分に何が効くかを知っているとは限りません。私は45歳を過ぎてから、風呂が大事だと知りました。

9. 仕事が住む場所を決めていた、という前提

「家賃がもったいない」という話の下には、たいてい隠れた前提があります。

この街に、これからも住み続ける。

そしてその前提の下には、さらにもう1つあります。

仕事が、住む場所を決めている。

会社に通う人は、住む場所を職場との距離で決めています。選べないので、場所は変数になりません。だから「どこに住むか」を考えても仕方がない。考えないほうが健全ですらあります。

9-1. 私は20年、その前提に気づきませんでした

これは他人の話ではありません。私の話です。

私は正社員として働いたことがなく、最初から自宅で仕事をしています。つまり最初から、住む場所を自由に選べる立場でした。

それなのに、関東から出ようと考えたことがありませんでした。

自分の働き方が住む場所に縛られていないと気づくのに、20年近くかかりました。

だから「関東にしがみついている人はおかしい」とは書けません。誰よりも長くしがみついていたのが私です。

9-2. 東京も、観光で行けばいい

「田舎は観光で行けばいい」という言い方があります。都会に住むことを正当化するときに使われます。

いまの私は、こう思っています。

東京も、観光で行けばいい。

私が東京に出るのは、通院のときだけです。頻度は低いです。そして行くときは、駅前の駐車場に車を止めて電車に乗ります。そのルートには海が見える場所があって、私はそれが好きです。

これは「東京に住むのは無駄だ」という主張ではありません。東京にいる理由がある人はたくさんいます。私に、その理由がなかったというだけです。

ただ、1つだけ聞いてみる価値はあると思います。

その街にいる理由は、まだ有効ですか。

学校を出たとき、就職したとき、結婚したときの理由が、そのまま残っていることがあります。そして、家を買うというのは、その理由を数十年ぶん固定する行為です。

10. 「地方は不便」は、どこまで本当か

関東を出ることの反対理由は、たいていこれです。不便になる。

私はいま、名古屋市港区への移転を検討しています。まだ住んでいません。ただ、調べられることは調べました。

10-1. 選択肢の中で最適化するのを、やめました

名古屋を見ることになった経緯を書きます。

いまの家には不満があります。上の階の音、浴室、駅から徒歩15分。だから最初は、同じエリアでもっといい部屋を探しました。

探した結果 分かったこと
同じエリアで条件を上げる 出せる金額を上げても、返ってくるものが増えません
駐車場 空いていません
駐車場が空いている物件 築20年以上。そこに20万円以上は払えません

金を積んでも、返ってくるものが増えなくなりました。

ここで手が止まりました。そして、質問のほうを変えました。

そもそも、関東の住み心地が本質的に悪いのではないか。

選択肢の中で最適化するのをやめて、選択肢の集合ごと変えました。海浜幕張に引っ越すときに候補に挙がっていた名古屋を、ゼロベースで調べ直しました。

出てきたのが、港区の物件です。分譲マンションが、賃貸で16万円でした。

同じ予算の使い方で、関東では出てこなかった選択肢です。

探し方を変えたのではありません。探す範囲を変えました。そして、範囲を変えるという発想が出るまでに、20年かかっています。

10-2. 調べれば消える不安と、住まないと分からない不安

この2つは、別々に扱ったほうがいいです。混ぜると、調べれば済むことまで「行ってみないと分からない」で止まります。

例 いつ分かるか
調べれば消えるもの 病院・歯科・クリニックがあるか。いま通っているところが進出しているか。スーパー、ホームセンター、いつも使っているチェーンがあるか 今日、家で分かります
行けば分かるもの 道の広さ、渋滞、坂、駐車場、街の雰囲気 1日行けば分かります
住まないと分からないもの 実際に自分に合うか。何が自分に効く変数か 住むまで分かりません

10-3. 私が調べて、確認できたこと

以下は、私が実際に調べて確認した範囲です。住んで確かめたわけではありません。

調べたこと 結果
いま関東で通っているクリニック 名古屋にも進出していました
歯科 学会に所属していて、予防に重きを置く医師を見つけてあります
スーパー 関東で使っていたところがあります
ホームセンター 同じチェーンがあります
人口密度 いまより下がります

人口密度については、公表されている数字があります。名古屋市の資料によると、港区は面積45.64平方キロメートル、人口132,755人、人口密度2,909人/平方キロメートルです(令和7年国勢調査の速報値、令和7年10月1日現在)。

不便になるかどうかの大部分は、行く前に、家で調べられます。

そして三大都市であれば、そもそも不便になる場面が多くありません。これが私の現時点での見立てです。ただし、住んでいないので予測です。住んだら、答え合わせを追記します。

10-4. ここで、賃貸のほうが有利になります

「住まないと分からないもの」が残るなら、やることは1つです。

住んでみて、違ったら出られるようにしておく。

調べられることを全部調べても、最後の1段は残ります。その1段のために、動ける状態を残しておく。それが賃貸です。

買ってしまうと、その1段が外れたときに何年もかかります。7-1の表がそれです。

11. では、誰なら買っていいのか

ここは公平に書きます。私は「賃貸が常に有利」とは思っていません。

この記事が言っているのは、こういうことです。

賃貸が得なのではなく、動ける状態に値段がついているということです。

礼金も仲介手数料も更新料も、動ける状態を維持する代金です。そして、動く予定がない人にとって、その代金は無駄になります。

11-1. 買ったほうがいい条件

条件 中身
場所が動かないことが、確定している 家業がある。継ぐ土地がある。親の介護でその街を離れられない
その街にいる理由が、仕事以外にもある 人間関係、地域との関わり、子どもの環境
賃貸では手に入らない仕様が要る 大型犬、楽器、仕事用の設備、庭、駐車場2台
売る前提がない 資産として増やすためではなく、住むために買う
4章の表を全部埋めたうえで、なお納得している —

この条件に当てはまる人にとって、「家賃がもったいない」は正しいです。動く予定がないのに、動ける代金を払い続けることになるからです。

11-2. 逆に、私が買わない理由

私の場合
仕事が場所に縛られていません
5回住み替えて、まだ自分に効く変数を数え終わっていません
次に住む街を、いまも探しています
親の2軒で、街によって結果が正反対になるのを見ています

私にとっては、動けることに値段を払う価値があります。それだけです。誰にとってもそうだ、とは書きません。

11-3. ただし私は、一生借りるつもりではありません

ここまで読むと「賃貸派」に見えると思います。少し違います。

買うのをやめたのではなく、買うタイミングを後ろにずらしています。

いま買わない理由と、いつか買う理由は、同じ1つの表で説明できます。

いま 老後
自分に効く変数 まだ数え終わっていません 数え終わっているはずです
動く可能性 あります ほぼありません
そこに住む期間 読めません 短くなります
文明の後退が効く時間 長い。数十年です 短い。効き切る前に終わります
買えるもの いまの水準の建物 そのときの最新の建物

4行目と5行目が要点です。6章に書いたとおり、建物の文明は時間とともに後退します。ですが、住む期間が短ければ、後退が効き切る前に終わります。

そして、老後まで待てば、そのとき一番新しい建物を選べます。2025年4月に省エネ基準の線が引かれたように、基準はこれからも上がります。待つほど、買えるものは良くなります。

11-4. 何を買うつもりか

候補 理由
平屋 階段がありません。そして戸建てなので、窓も設備も自分で入れ替えられます
駅から近い新築マンション 坂と移動距離が、年を取るほど効いてくるからです

この2つを候補にしているのは、東戸塚で見たものが理由です。年輩の方が、坂の街でバスに乗ってスーパーに買い物に来ていました。買い物ひとつで、あれだけ大変になります。

いま効く変数と、20年後に効く変数は違います。

ただし、これは計画であって、実行していません。いま書いているのは「そうするつもりだ」というところまでです。

11-5. 「老後は借りられない」という前提について

賃貸を続けることへの反論で、いちばん強いのはこれです。

年を取ったら、貸してもらえなくなる。だから買っておくしかない。

これは、買う理由としてよく挙がります。ただ、この前提は2つの向きから崩れつつあります。

11-6. ①借りる側が、増えます

国立社会保障・人口問題研究所の推計です。

2020年 2050年
単独世帯 2,115万世帯・38.0% 2,330万世帯・44.3%
65歳以上の単独世帯が一般世帯に占める割合 13.2% 20.6%
平均世帯人員 2.21人 1.92人

2050年には、5世帯に1世帯が65歳以上のひとり暮らしになります。

ここで、貸す側の立場で考えてみてください。人口は減り、住宅は増え、空き家は900万戸を超えています(3章)。そのうえで、借り手の5分の1を「高齢だから」で断り続けたら、どうなるでしょうか。

これは善意の話ではありません。算数の話です。

11-7. ②制度は、もう動いています

意見ではなく、施行済みの法律があります。

改正 住宅セーフティネット法(令和7年10月1日施行)
「要配慮者が安心して生活を送るための基盤となる住まいを確保できるよう、賃貸住宅に円滑に入居できるための環境の整備を推進する」

改正の柱 中身
居住サポート住宅 要配慮者向けの賃貸住宅の認定制度が新設されました
家賃債務保証 認定・登録家賃債務保証業者の制度が整備されました
終身建物賃貸借 高齢者などが生涯にわたって住宅を賃借できる制度が拡充されました
居住支援協議会 強化されました

国は、借りられるようにする方向に動いています。

これが十分かどうかは、まだ分かりません。施行されたばかりです。ただ「これから借りにくくなる一方だ」という前提は、少なくとも制度の向きとは逆です。

11-8. 本当の変数は、年齢ではありません

ここまでを整理すると、こうなります。

高齢だから借りられないのではありません。定期収入が説明できないから借りられないのです。

貸す側が見ているもの
毎月、家賃が入ってくるか これが本体です
年金 定期収入です
保証会社が付くか 制度が整備されました(11-7)
年齢 上の3つの代わりに見られている指標です

私の場合は、法人から役員報酬を得ています。だから理論上は、定期収入がある状態を続けられます。ただしこれは私の事情であって、誰にでも当てはまるものではありません。

そのうえで、結論を1つ書き直します。

私は「借りられなくなるから買う」のではありません。買いたいから買います。

この違いは大きいと思っています。追い込まれて買うのと、選んで買うのとでは、買う時期も、買うものも、払える金額も変わります。

12. 判定表

判定 状態
◎ 4章の表を全部埋めた+いまの街にいる理由を言える+間違えたときに何年で出られるか言える
○ 費用は数えたが、10年後もその街にいる理由は考えていない
△ その街に住んでまだ2年以内。自分に効く変数がまだ見えていない
× 家賃とローン返済額だけを比べている
× 修繕積立金を、いま提示されている額のまま計算に入れている
× 固定資産税・都市計画税を数えていない
× 売るときの費用と、売れるまでの時間を数えていない
× その街が20年後どうなるかを、考えたことがない
× いまの街にいる理由が、10年以上前に決まったままになっている
× 「値上がりするから」を理由の1つにしている(それは街への賭けです)
× いま気になっている不満を、あとから直せると思っている(マンションでは窓も専有部分ではありません)
× 20年後の自分が、その建物の設備で満足していると思っている

13. 明日からの1手

# やること かかる時間
1 いまの街にいる理由を、1文で書く 3分
2 その理由が決まったのはいつかを書く 1分
3 4章の表を、検討中の物件で全部埋める 30分
4 修繕積立金を、専有面積×252〜338円でも計算し直す 3分
5 「間違えたと分かってから、何年で出られるか」を書く 5分
6 その街の10年前の駅前写真と、いまを見比べる 10分
7 行ったことのない街を1つ選んで、そこの家賃相場を見る 15分
8 いま通っている医院やよく行く店が、その街にあるか調べる 15分
9 いまの部屋で気に入らない点を3つ書き、それが直せるものか調べる(マンションなら管理規約を見ます) 20分
10 検討中の物件の天井高と、専有部分の範囲を確認する 10分

7番と8番が、この記事でいちばん実験的な部分です。ほとんどの人は、いまの街の外側を1度も調べたことがありません。私も20年、調べませんでした。

6番も効きます。10年で駅前に何も増えていないなら、次の10年も増えません。

14. まとめ

  • このKWで検索して出てくる記事は、ほぼ全部が家を売る側の会社が書いています。私は家を売っていませんし、この記事では投資商品も勧めません
  • 私は持ち家に42年住んでから、賃貸に出ました。順番が逆です
  • 親は同じことを2回やって、結果が正反対でした。買値と同額だった家と、大幅なプラスだった家です
  • 差を作ったのは買い方ではなく、街です。そして街が20年後どうなるかは、買うときには分かりません
  • 空き家は900万2千戸、空き家率13.8%で、どちらも過去最高です(総務省・令和5年)。住宅は増え、人は減っています
  • 家を買うというのは、その街に賭けるということです。賭けが悪いのではなく、賭けていると知らずに賭けるのが問題です
  • 家賃と比べるべきは、ローン返済額ではありません。買うとき・持っている間・売るときの全部です
  • 固定資産税の標準税率は1.4%、都市計画税は0.3%が上限です(地方税法)。ローンを払い終わっても終わりません
  • 修繕積立金の平均額の目安は、20階未満で252〜335円/㎡・月です(国交省ガイドライン)。そして国自身が「当初月額が著しく低く設定される例も見られる」と書いています
  • 建物は劣化するだけでなく、周りが進化することで相対的に後退します。国交省のガイドライン自身が「材料、設備等は…技術の向上等に伴い、時代とともに変化していきます」と書いています
  • 戸建てなら、窓も水道管も屋根も入れ替えて、技術の進歩を取り込めます。幹線道路沿いなら、防音性能の高い窓に替えられます
  • マンションでは、窓枠と窓ガラスは専有部分に含まれません(標準管理規約7条)。禁止ではありませんが、自分の一存では決められません(同22条)
  • 天井高、二重床・二重天井、配管ルートは、どれだけお金をかけても直りません
  • 2025年4月から、原則すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務付けられました。建物は何も変わっていないのに、相対的な位置だけが下がります
  • だから「ずっと家賃より安い」は起こりません。同じ建物の家賃は築年数とともに下がり、返済額は下がらず、修繕積立金は上がります
  • ただし市場全体の家賃は上がっています(総務省・2018年比7.1%増)。賃貸には家賃上昇のリスクがあります。ただし、上がったら移れます
  • 一度、文明レベルの高い部屋に住むと戻れません。我慢の問題ではなく、基準がずれる問題です
  • 買うというのは、いまの自分の基準に合わせて、数十年ぶん固定することです。ところが基準のほうは上がり続けます
  • そして、いちばん大きいものが計算に入っていません。動けなくなることです
  • 私は2か月で無理だと分かったのに、賃貸で10か月かかりました。持ち家だったら何年だったか分かりません
  • 自分に効く変数は、住む前には分かりません。私は45歳を過ぎてから、風呂が大事だと知りました
  • 家を買うというのは、この学習が終わる前に答えを固定することです
  • 「家賃がもったいない」の下には「この街に住み続ける」という前提があり、その下には「仕事が住む場所を決めている」という前提があります
  • 私は自分の働き方が場所に縛られていないと気づくのに、20年近くかかりました。だから他人を責められません
  • 不便かどうかの大部分は、行く前に家で調べられます。調べれば消える不安と、住まないと分からない不安を分けてください
  • 文明が後退するなら、対策は2つです。①6年から15年で売って買い替え続ける(住宅すごろく)か、②借り替え続けるか
  • ①には「売れること」と「売値が読めること」が要ります。②には要りません
  • 人は2070年に8,700万人(現在の7割)になり、空き家は過去最高で、それでもマンションの価格指数は上がっています(2010年=100で219.0)。価格は人口では説明できていません
  • 「人口が減るから下がる」も「上がってきたから上がる」も、どちらも予測です。①を選ぶのは、その予測に数千万円を賭けることです
  • 私は予測を当てられる自信がないので②にしています。「得だから」ではなく「予測が要らないから」です
  • 私は新築のモデルルームを20件以上、中古を5件、賃貸を5部屋見たうえで、借りています
  • 築30年前後の物件を内見して見たのは、エレベーターが未交換、地下駐車場のシャッターが故障したまま、機械式パレットが放置、という状態でした
  • 壊れたシャッターの代わりに付いていたゲートは、私が12万円で借りている賃貸と同じレベルの設備でした。その部屋に5,000万円超の値がついています
  • 国交省のガイドラインは「給排水管、エレベーター、機械式駐車場等の大がかりな修繕工事が増加する」と名指しで書いています。私が見たのは、まさにその放置でした
  • マンションでも、土地が所有権とは限りません。借地権は30年、最初の更新で20年、以後10年。定期借地権には更新がありません(借地借家法3条・4条・22条)
  • 「47年」は建物の寿命ではなく、減価償却の耐用年数です。税金の計算に使う数字で、使えなくなる年数ではありません
  • 問題は年数ではなく、手が入っているかどうかです。そして手を入れるかどうかを決めるのは、自分ひとりではありません
  • 管理が回っているかは、内見で見えます。築年数や価格には表示されていません。部屋ではなく共用部を見てください
  • 同じエリアで金額を上げても、返ってくるものが増えなくなりました。そこで選択肢の中で最適化するのをやめて、探す範囲ごと変えました
  • 賃貸が得なのではありません。動ける状態に値段がついているということです。動く予定がない人には、その値段は無駄です
  • そして私は、一生借りるつもりではありません。買うタイミングを後ろにずらしているだけです
  • 住む期間が短ければ、文明の後退は効き切る前に終わります。そして待つほど、買えるものは良くなります
  • 老後の候補は、平屋か、駅から近い新築マンションです。いま効く変数と、20年後に効く変数は違います
  • 「老後は借りられない」という前提は、2つの向きから崩れつつあります
  • 2050年には5世帯に1世帯が65歳以上のひとり暮らしになります(単独世帯38.0%→44.3%、社人研)。借り手の5分の1を断り続けたら、貸す側が成り立ちません
  • 改正住宅セーフティネット法が令和7年10月1日に施行されました。居住サポート住宅、家賃債務保証、終身建物賃貸借。国は借りられるようにする方向に動いています
  • 高齢だから借りられないのではありません。定期収入が説明できないから借りられないのです。年金も定期収入です
  • だから私は「借りられなくなるから買う」のではありません。買いたいから買います

15. あわせて読むもの

知りたいこと 記事
賃貸で、何にいくら払っているのか 賃貸で本当に高いのは家賃ではありません
家で働く人にとって、部屋と街が何を決めているか 20年一人で働いて、壊れたのは1回だけでした
なぜ「拘束日数」で測るのか 「続けていれば少しずつ増える」という助言を、撤回します
賃貸と持ち家を資産の面から見ると 「賃貸は資産にならない」は半分嘘

16. この記事で参照した情報源

内容 出典
空き家数900万2千戸・空き家率13.8%・30年で約2倍 総務省 令和5年住宅・土地統計調査 基本集計(確報集計)結果
固定資産税の標準税率1.4%(第350条)/都市計画税0.3%が上限(第702条の4) e-Gov法令検索 地方税法
修繕積立金の平均額の目安/当初月額が低く設定される例 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)
売買の媒介に関する報酬の額(200万円以下5%/200〜400万円4%/400万円超3%) 国土交通省 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額
住宅ローン控除の控除率0.7%・所得要件・床面積要件 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合
マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除と、その要件 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
窓枠及び窓ガラスは専有部分に含まれないこと(第7条)/窓ガラス等の改良(第22条) 国土交通省 マンション標準管理規約(令和7年10月17日改正・単棟型)
居室の天井の高さは2.1メートル以上(第21条) e-Gov法令検索 建築基準法施行令
令和7年4月1日からの省エネ基準適合の全面義務化 国土交通省 報道発表資料/建築物省エネ法第10条 省エネ基準適合義務の対象拡大について
借家の1か月当たり家賃59,656円(2018年比7.1%増) 総務省 令和5年住宅・土地統計調査
借地権の存続期間30年(第3条)/更新後は20年・以後10年(第4条)/定期借地権は50年以上で更新なし(第22条) e-Gov法令検索 借地借家法
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造「住宅用のもの」の耐用年数47年 国税庁 耐用年数(建物/建物附属設備)/減価償却資産の耐用年数等に関する省令
修繕積立金の取崩しと借入れ(第28条) 国土交通省 マンション標準管理規約(令和7年10月17日改正・単棟型)
単独世帯38.0%→44.3%/65歳以上の単独世帯13.2%→20.6%/平均世帯人員2.21人→1.92人 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」令和6年推計
改正住宅セーフティネット法(令和7年10月1日施行)/居住サポート住宅・家賃債務保証・終身建物賃貸借 国土交通省 住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について
総人口は2070年に8,700万人(現在の7割)に減少 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」結果の概要
不動産価格指数(マンション・区分所有)219.0/2010年平均=100 国土交通省 不動産価格指数の公表(報道発表資料)
千葉市美浜区の人口(前回比5.0%増) 千葉市 令和7年国勢調査結果速報
名古屋市港区の面積・人口・人口密度 名古屋市「人口・国勢調査・面積と人口密度」

17. この記事について

この記事は、特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。当サイトは投資助言・代理業の登録をしていません。以前この記事に置いていた株式や年利に関する記述は、すべて削除しました。

税制と各種制度は改正されます。控除率・控除期間・借入限度額・特例の要件は、住宅の種類と居住開始の年によっても変わります。実行の前に、必ず国税庁と各自治体の最新情報をご確認ください。個別の判断については税理士にご相談ください。

固定資産税と都市計画税は、課税標準額に対してかかります。購入価格に対するものではなく、住宅用地の特例などもあります。金額は物件ごとに異なります。

本文中の家賃・面積・築年数は、私が実際に契約していた条件です。物件価格4,000万円の仲介手数料の計算は、告示の上限式に当てはめた例であり、実際の金額は取引ごとに異なります。

名古屋市港区について書いたことは、まだ住んでいないので調査の結果と予測です。住んだあとで答え合わせを追記します。

管理規約の内容は、マンションごとに異なります。本文で引用したのは国土交通省が示している標準管理規約であり、実際の規約とは違うことがあります。必ずご自身の物件の管理規約をご確認ください。

「築6年から15年あたりが有利」というのは私の見立てで、検証したものではありません。物件・地域・時期によって変わります。

5-10から5-14に書いた内見の内容は、私が実際に見たものです。特定のエリアや建物の評価ではなく、数件で見たことの報告です。同じエリアにも、きちんと管理されている建物はあります。修繕積立金の運用についての記述は、私の推測であって確かめたものではありません。

不動産価格や人口の今後について、この記事は予測をしていません。公表されている数字を並べたうえで、「どちらの向きも予測である」と書いています。私自身の見立て(住んでいるエリアの人口はいずれ減る、など)も、根拠のない予測として明記しています。

買うか借りるかは、家族構成・収入・勤務先・地域・時期によって答えが変わります。この記事は「どちらが得か」を決めるものではなく、比べるときに何を数え忘れているかを並べたものです。

 

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