売上は伸びている。利益も出ている。それなのに、口座の残高が増えない。
この記事は、その理由を1つに絞って書きます。結論を先に出します。
在庫を、仕入れた値段で見ているからです。
仕入値で見ている限り、含み損は帳簿に出てきません。出てこないので、損切りの判断も出てきません。判断が出てこないので、在庫だけが積み上がり、現金が在庫に変わったまま戻ってこなくなります。
これは意志の弱さの話ではありません。記録の方法の話です。そして、正しい記録の方法は、日本の会計基準に書いてあります。
先に、3つの数字を出してください
この記事を読む前に、紙に3つ書いてください。5分で終わります。
| 出す数字 | 出し方 | |
|---|---|---|
| A | いまの事業用の現金 | 口座残高+手元現金。カードの未払い分は引く |
| B | 在庫の簿価 | 在庫を、仕入れた金額で合計する |
| C | 在庫の時価 | 在庫を、いま売ったら手元に残る金額で合計する(計算方法は3章) |
B と C の差が、あなたの含み損です。そして多くの場合、この数字は一度も計算されていません。計算していないものは、改善できません。
| 知りたいこと | 読む章 |
|---|---|
| 簿価と時価の話は、会計的に正しいのか | 1章(会計基準の原文を引きます) |
| 利益が出ているのに現金がない理由 | 2章 |
| 在庫の時価を、実際にどう計算するか | 3章 |
| なぜ損切りできないのか | 4章 |
| 売れば売るほど苦しくなる仕組み | 5章 |
| カメラやアパレルは何が違うのか | 6章 |
| 明日から何を記録するか | 7章 |
1. 「簿価で見るな、時価で見ろ」は、私の意見ではありません
この記事の主張は、会計基準に書いてあることの言い換えです。まず用語を整理します。混ざりやすいので、3つの軸に分けます。
| 軸 | 2つの状態 | せどりでの意味 |
|---|---|---|
| 実現しているか | 実現利益/未実現利益 | 売れて入金された利益か、まだ売れていない「見込み利益」か |
| いくらで評価するか | 簿価/時価 | 仕入れた金額で見るか、いま売ったら残る金額で見るか |
| どこにあるか | 現金/在庫 | 口座にあるか、商品に化けているか |
「見込み利益」は、1つ目の軸の話です。仕入れた時点で想定した売価から計算した、まだ発生していない利益のことです。せどりの世界では、これが事実上の成績表として扱われています。仕入れた瞬間に「これで◯万円の利益」と数える、あの数字です。
問題は、その見込み利益が2つ目の軸を無視していることです。想定売価は仕入れた日の相場です。相場は動きます。動いた後の在庫を、仕入値のまま持っていると、含み損は帳簿に出てきません。
1-1. 会計基準の原文
企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」に、こう書かれています。
第7項 通常の販売目的で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理する。
そして「正味売却価額」の定義が、同じ基準の第5項にあります。
第5項 「正味売却価額」とは、売価(購買市場と売却市場とが区別される場合における売却市場の時価)から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したものをいう。
さらに第17項で、その差額の扱いが決まっています。
第17項 通常の販売目的で保有する棚卸資産について、収益性の低下による簿価切下額は売上原価とする(後略)
この3つを、せどりの言葉に翻訳します。
| 基準の言葉 | せどりの言葉 |
|---|---|
| 棚卸資産 | 在庫 |
| 取得原価 | 仕入値(=簿価) |
| 売却市場の時価 | いまの相場(Amazonの最安値など) |
| 見積販売直接経費 | 販売手数料、FBA配送代行手数料、送料、資材費 |
| 正味売却価額 | いま売ったら、手元に残る金額 |
| 簿価切下額を売上原価とする | 下がったぶんは、今期の費用にする |
つまり基準は、こう言っています。「相場が下がったら、下がった値段で持て。差額は今の費用にしろ」と。
私が「時価で見ろ」と書いているのは、思いつきではありません。この基準の考え方を、個人の在庫管理に持ち込んでいるだけです。
1-2. ただし、適用範囲は正確に書きます
この会計基準は、主に金融商品取引法の適用を受ける会社などが対象です。個人事業主や小規模な法人に、この基準がそのまま強制適用されるわけではありません。ここを曖昧にすると嘘になるので、はっきり書いておきます。
ただし、強制されないことと、やらなくていいことは別です。基準がこの処理を求めている理由は、そうしないと財政状態が実態より良く見えてしまうからです。その理由は、事業の規模と関係ありません。
むしろ、規模が小さいほど深刻です。大企業は在庫を間違えても倒れませんが、個人は倒れます。
なお、税務上の評価損の扱いは、会計とは別のルールになります。ここが実は決定的に効いてくるので、4章で扱います。税務の個別判断については、必ず税理士にご相談ください。
2. 利益が出ているのに現金がない、その理由
ここは会計ではなく、税務の話です。そして、この1行を知らないまま何年もやっている人がいます。
仕入れた金額は、経費ではありません。売れた分だけが経費になります。
国税庁の「青色申告の決算の手引き」に、売上原価の計算式が載っています。
売上原価=年初(期首)の棚卸高+年間の仕入高−年末(期末)の棚卸高
同じ手引きに、棚卸をする理由も書かれています。年末時点で売れ残っている商品の仕入代金は、その年の必要経費に含めてはならないからです。だから在庫を数えて、仕入高から差し引きます。
2-1. これが何を意味するか
数字で見ます。以下はすべて仮の前提です。ご自身の数字に置き換えてください。
| 1年目 | |
|---|---|
| 売上 | 600万円 |
| 年間の仕入高 | 500万円 |
| 期首の棚卸高 | 0円 |
| 期末の棚卸高(売れ残り) | 200万円 |
| 売上原価(=0+500−200) | 300万円 |
| 粗利(帳簿上) | 300万円 |
| 実際に出ていった現金(仕入) | 500万円 |
| 手元の現金の増減(600−500) | +100万円 |
帳簿の粗利は300万円。手元に増えた現金は100万円。差の200万円は、在庫の棚に載っています。
ここまではよくある説明です。問題は次です。
税金は、帳簿の300万円をもとに計算されます。在庫として棚に載っている200万円は、まだ経費になっていないからです。つまり、手元にない利益に対して、現金で納税することになります。
そして、もしその在庫200万円が、実際にはいま売っても120万円にしかならないとしたら。差額の80万円は、どこにも記録されていません。帳簿の上では、まだ200万円の資産です。
これが「黒字なのに現金がない」の正体です。売れ残りは経費にならず、値下がりは記録されない。この2つが同時に起きています。
2-2. 「見込み利益」を成績にすると、必ずこうなります
仕入れた瞬間に「今日は5万円ぶん仕入れた」と数える習慣は、上の構造を加速させます。見込み利益は、仕入れれば仕入れるほど増えるからです。
仕入れを増やす → 見込み利益が増える → 成績が良く見える → 現金は減る → 在庫が増える → さらに仕入れないと不安になる。この輪は、時価で記録するまで止まりません。
3. 在庫の時価を、実際に計算する
1章の「正味売却価額」を、そのまま実務の式にします。
在庫1点の時価 = いまの販売可能価格 −(販売手数料 + 配送代行手数料 + 送料・資材費)
ポイントは3つです。
- 「いまの販売可能価格」は、自分の出品価格ではありません。いま売り切るなら、いくらに合わせる必要があるかです。カートを取っていない価格は、販売可能価格ではありません
- 手数料を引きます。基準の言う「見積販売直接経費」がこれです。引く前の金額を時価と呼ぶと、実態より高く出ます
- 保管費と、これから発生する費用も見ます。FBAでは保管手数料が毎月かかり、Amazonは「保管期間が365日を超えた在庫については、長期在庫保管手数料が追加発生します」と案内しています。滞留が長い在庫ほど、時価はさらに削れます
3-1. 3点の例
以下の数字はすべて仮の例です。ここでは販売手数料15%、配送代行手数料450円、送料・資材費150円として計算しています。手数料はカテゴリーとサイズで変わるので、必ず自分の商品の実額で計算してください。
| 商品 | 仕入値 (簿価) |
仕入時の 想定売価 |
いまの 販売可能価格 |
手数料等 | 時価 | 含み損益 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A(回転が速い) | 3,000円 | 6,000円 | 5,800円 | 1,470円 | 4,330円 | +1,330円 |
| B(競合が増えた) | 8,000円 | 15,000円 | 9,500円 | 2,025円 | 7,475円 | −525円 |
| C(1年放置) | 12,000円 | 22,000円 | 11,000円 | 2,250円 | 8,750円 | −3,250円 |
簿価の合計は23,000円。時価の合計は20,555円。差は2,445円です。
この2,445円は、帳簿のどこにも出てきません。売らない限り、永遠に出てきません。そして売らない理由は、たいていこうです。「まだ損したくないから」。
もう1つ見てほしいのは、想定売価との差です。Cは22,000円で売れると思って仕入れたのに、いまの販売可能価格は11,000円です。仕入れが下手だったのではなく、想定売価の見立てが甘かったという可能性があります。この差は、記録しないと一生見えません。
3-2. あなたの在庫で、いま計算してください
読むだけでは何も変わらないので、その場で計算できるものを用意しました。
仕入値・想定売価・いまの販売可能価格・仕入日を入れると、1点ごとの時価と含み損益、滞留日数、そして「現金+在庫の時価」が出ます。上の3点はサンプルとして最初から入っているので、数字を書き換えるところから始めてください。
入力した内容はどこにも送信されません。ページを閉じると消えます。
在庫の時価評価シート
仕入値ではなく「いま売ったら手元に残る金額」で在庫を評価します。入力した値はどこにも送信されません。ページを離れると消えます。
1. 共通の条件
手数料率と配送代行手数料はカテゴリーとサイズで変わります。自分の商品の実額に置き換えてください。
2. 事業用の現金
3. 在庫
評価結果
在庫を入力すると、ここに判定が出ます。
おまけ:現金が戻るまでの日数
—
この計算は概算です。実際の手数料、棚卸資産の評価方法、評価損の計上可否、低価法の適用可否などは、事業形態と個別の事実関係によって変わります。税務・会計の処理は必ず税理士にご確認ください。
在庫が10点あれば、それだけで判定が出ます。全部を入力する必要はありません。金額の大きいものと、いちばん古いものから順に5点も入れれば、自分の在庫がどちら側にいるかは分かります。
4. 塩漬けは「損を確定しない」ではなく「損を見えなくする」
ここが、この記事でいちばん言いたいところです。
塩漬けにしている人は、損を回避していると思っています。実際には違います。損はすでに発生していて、記録していないだけです。1章の第7項が「差額は当期の費用として処理する」と書いているのは、そういう意味です。
4-1. しかも、税務は逆向きに働きます
会計の考え方では、値下がりしたら費用にします。ところが税務では、単に相場が下がったというだけでは評価損を計上できない場合があります。法人税でも所得税でも、評価損や低価法の適用には要件や届出があり、誰でも自由に落とせるわけではありません。
この非対称が、実務上こういう結果を生みます。
| 選んだ行動 | 帳簿の上で起きること | 現金の上で起きること |
|---|---|---|
| 損切りして売る | 売上と売上原価が立ち、損が確定して利益が減る | 現金が戻る。次の仕入れに回せる |
| 塩漬けにする | 在庫は簿価のまま資産に残り、利益は減らない | 現金は戻らず、保管費が毎月出ていく |
つまり、こうです。
損切りは、気持ちの問題ではありません。損を経費にできるタイミングの問題です。
売らなければ、その損は経費になりません。経費にならないまま、資産として利益に乗り続けます。そして保管手数料を払い続けます。FBAなら365日を超えた時点で、長期在庫保管手数料が上乗せされます。
「いつか戻るかもしれない」は、その待ち時間ぶんの保管費と、その資金で回せたはずの回数を、両方捨てています。待つコストは、無料ではありません。
※ 評価損や低価法の適用可否は、事業形態・申告方法・個別の事実関係で変わります。実際の処理は必ず税理士にご確認ください。
4-2. だから、ルールを先に決めます
損切りができない人に足りないのは、決断力ではなくあらかじめ決めたルールです。感情が出てくる前に、数字で決めておきます。
例として、私が使っている考え方を書きます。数値は自分の資金と回転に合わせて決めてください。
| 条件 | 判定 |
|---|---|
| 時価が簿価を下回り、かつ滞留が一定日数を超えた | 売る。時価で売っても、現金が戻るぶんだけ増える |
| 時価は簿価を上回るが、滞留が長い | 利益 ÷ 拘束日数で判定する。日数あたりが自分の平均を下回るなら売る |
| 相場が戻る根拠を、自分で説明できる | 保有してよい。ただし「いつまで待つか」を先に書く |
| 相場が戻る根拠を説明できない | 売る。説明できないものは、事業計画に組み込めません |
3行目が重要です。待つこと自体は悪くありません。悪いのは、期限を決めずに待つことです。期限のない保有は、判断ではなく放置です。
5. 売れば売るほど苦しくなる仕組み
ここまでは在庫の評価の話でした。ここからは、現金が戻ってくる速さの話です。この2つは別の問題で、両方壊れると事業が止まります。
現金が一周して戻るまでの日数は、こう書けます。
現金が戻るまでの日数 = 在庫の回転日数 + 入金までの日数 − 仕入代金を払うまでの猶予日数
3つとも、自分で調べられる数字です。
- 在庫の回転日数:仕入れてから売れるまでの平均日数。売上原価 ÷ 平均在庫 で回転率を出し、365で割っても構いません
- 入金までの日数:売れてから自分の口座に入るまで。プラットフォームの入金サイクルを確認してください
- 支払猶予日数:クレジットカードで仕入れているなら、締め日から支払日までの日数です
5-1. この数字がプラスなら、伸びるほど現金が減ります
以下は仮の前提での計算です。入金サイクルとカードの締め支払は、ご自身の条件に置き換えてください。
| 回転日数 | 入金まで | 支払猶予 | 現金が戻るまで | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| 15日 | 14日 | 45日 | −16日 | 売った代金で仕入代金を払える。伸ばすほど現金が増える |
| 30日 | 14日 | 45日 | −1日 | ぎりぎり。1つ狂うと崩れる |
| 60日 | 14日 | 45日 | +29日 | 29日ぶんの現金を、自分で立て替え続ける |
| 120日 | 14日 | 45日 | +89日 | 売上を伸ばすほど、立替額が増える |
最後の行が「売れば売るほど苦しい」の正体です。この状態で規模を大きくすると、現金の不足も同じ倍率で大きくなります。黒字倒産と呼ばれるものは、たいていこの形をしています。
そして注意すべきは、この式に「利益率」が入っていないことです。利益率が高くても、回転が遅ければ現金は詰まります。利益率と回転率は、別々に管理しなければいけない数字です。実測値はせどりの利益率と回転率|20年3業態の実測値で出した目安に出しています。
5-2. カードの支払猶予は、資金ではありません
上の式では、支払猶予日数がマイナスに効きます。だから「カードで仕入れれば資金が要らない」と考えたくなります。
これは危険です。支払猶予は借入と同じで、期日が来れば必ず払います。回転日数が猶予日数を超えている状態でカードの枠を使い切ると、売れていない在庫の代金を、現金で払うことになります。
私が繰り返し使っている式を、ここでも出します。
必要資金 = 月商 ×(1 − 利益率 − 手数料率)×(拘束日数 ÷ 30)
この必要資金を用意できないなら、月商をそこまで上げてはいけません。上げられるかどうかではなく、上げていいかどうかの話です。
6. カメラやアパレルが難しい理由
商材によって、ここまでの数字の出方がまったく違います。
| 商材の性質 | 回転日数 | 時価の下がり方 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 需要が安定していて、型番で特定できる | 短い | ゆるやか | 現金が回る |
| サイズ・色・状態で1点ずつ違う(アパレル) | 長い | 季節で急に落ちる | 回転と時価の両方が効く |
| 状態の説明が難しく、返品が起きやすい(カメラ等) | 中〜長 | 新型の発表で段差ができる | 返品ぶんの再作業も乗る |
| 値上がりを待つ「寝かせ」 | きわめて長い | 読めない | 拘束日数あたりの利益が落ちる |
アパレルは1点ずつ違うので、同じ作業が使い回せません。1点あたりの作業時間が長く、しかも季節で時価が落ちます。回転日数と時価下落が同時に効くので、5章の式では最も不利な側に来ます。
6-1. 「寝かせ」を実際にやった結果
最後の行については、自分の数字を出します。
ゼノギアスの設定資料集の再販版を、1冊5,500円で買いました。届いた封筒を開封せずに、4年ほど保管しました。売れたのは14,500円です。プラスではあります。ただし4年です。利益 ÷ 拘束日数で見ると、普通にせどりをしていたほうが上でした。
同じことをゲームのサントラでもやりました。10枚買って、上がったのは1枚だけです。残りは損切りしたので、トータルではマイナスでした。
そして、寝かせには5章で書いていない問題があります。保管の質を、自分で証明できないことです。紫外線、湿気、温度変化。私は封筒を開けずに保管しましたが、それが適切だったかどうかは、いまも分かりません。再現できない条件で出た結果は、事業計画に組み込めません。
この分解はおもちゃ投資は稼げるのかで、降りる場所ごとに書いています。
7. 明日から記録するもの
やることは1つです。月に1回、在庫を時価で洗い替える。それだけです。
7-1. 記録する列
| 列 | 入れるもの | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 商品名/SKU | — | — |
| 仕入日 | — | 滞留日数を出すため |
| 仕入値 | 簿価 | 比較の基準 |
| 仕入時の想定売価 | 見込み | あとで自分の見立ての精度が測れます |
| いまの販売可能価格 | 月1回更新 | 時価の材料 |
| 手数料等の合計 | 販売手数料+配送代行+送料+資材 | 正味売却価額を出すため |
| 時価(=販売可能価格−手数料等) | 計算 | この列がすべてです |
| 含み損益(=時価−仕入値) | 計算 | マイナスの合計が、隠れている損 |
| 滞留日数 | 今日−仕入日 | 拘束日数の分母 |
表計算ソフトで作れます。月末に1回、「いまの販売可能価格」の列だけを更新すれば、残りは自動で出ます。在庫が100点あっても、30分もかかりません。
列の作り方が分からない場合は、3-2の評価シートで「表計算用に出力」を押してください。そのまま表計算ソフトに貼れる形で出てきます。あとは毎月、価格の列だけを更新していきます。
7-2. 追いかける数字は、1つだけ
毎月、この1行を記録してください。
現金 + 在庫の時価
これが、あなたの事業の本当の大きさです。冒頭で出した A + C です。
売上でも、見込み利益でも、月商でもありません。この数字が先月より増えていれば、増えるせどりです。減っていれば、どれだけ売っていても減っています。
そして、この数字が増えていないのに在庫だけ増えているとき、起きていることは1つです。現金が、時価の下がる資産に変わり続けています。
7-3. 3か月続けると見えること
| 見えるもの | そこから決まること |
|---|---|
| 商材ごとの平均滞留日数 | どのジャンルをやめるか |
| 想定売価と実際の販売可能価格の差 | 自分の見立てが何%甘いか |
| 含み損の合計と、その内訳 | いくら損切りすれば現金が戻るか |
| 現金が戻るまでの日数 | 月商をどこまで上げていいか |
2つ目が効きます。仕入れが下手なのではなく、想定売価が甘いだけ、という人がかなりいます。その甘さは、記録しないと一生見えません。
8. まとめ
- お金が残らない原因は、在庫を仕入値(簿価)で見ていることです。仕入値で見ている限り、含み損は帳簿に出ません
- 「時価で見ろ」は私の意見ではなく、会計基準の内容です。企業会計基準第9号は、正味売却価額が取得原価を下回ったら、その価額で計上し、差額を当期の費用にせよと定めています(第7項)。個人事業に強制適用ではありませんが、理由は規模と関係ありません
- 仕入れた金額は経費ではありません。売上原価は「期首棚卸+仕入−期末棚卸」なので、売れ残りは経費から外れます。だから手元にない利益に課税されます
- 塩漬けは、損を回避していません。損を記録していないだけです。そして税務では、売って初めて損が経費になります。損切りは気持ちの問題ではなく、経費にできるタイミングの問題です
- 現金が戻るまでの日数 = 回転日数+入金までの日数−支払猶予日数。これがプラスなら、売上を伸ばすほど立替額が増えます。この式に利益率は入りません
- アパレルとカメラは、回転の遅さと時価の落ち方が同時に効きます。寝かせはさらに極端で、私の場合は5,500円を4年寝かせて14,500円、サントラは10枚で1枚しか上がりませんでした
- 追いかける数字は「現金 + 在庫の時価」の1つだけです。これが先月より増えていれば、増えるせどりです
最後に1つ書いておきます。この記事は、在庫を減らせという記事ではありません。在庫は事業に必要です。言っているのは、その在庫がいまいくらなのかを、月に1回だけ確かめてくださいということです。
確かめれば、判断が出ます。判断が出れば、現金が戻ります。戻った現金は、次の仕入れで回転します。増えるせどりと増えないせどりを分けているのは、才能でも仕入れ先でもなく、この1回の洗い替えだと考えています。
関連する内容は、こちらにまとめています。利益率と回転率の実測値、中古せどりの勝ち方、4段階のキャリア設計。どこから始めるか決まっていない場合は初心者の館を見てください。
おまけ:なぜ私が、この測り方をするようになったか
ここまで読んで、「なぜこの人は、こんなに時間の話ばかりするのか」と思われたかもしれません。理由があります。
私は昔、相談を受けるたびに「続けていけば少しずつ増えますよ」と答えていました。いまは、それが質の低い助言だったと考えています。その助言には、測れる時間が入っていなかったからです。
キャッシュ・コンバージョン・サイクルという指標を知って、考えが変わりました。この記事で使っている「利益 ÷ 拘束日数」も、そこから出てきたものです。その経緯と、自分が撤回した助言については、別の記事に書きました。
手順は出てきません。読み物です。時間があるときにどうぞ。
→ 「続けていれば少しずつ増える」という助言を、撤回します
この記事で参照した情報源
| 種別 | 参照元 |
|---|---|
| 棚卸資産の評価 | 企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準委員会。2006年7月5日、2008年9月26日改正)第5項・第7項・第17項 |
| 売上原価と棚卸 | 国税庁「令和6年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」「Ⅰ 棚卸表の作成」 |
| 必要経費 | 国税庁 タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」 |
| FBAの保管手数料 | Amazon セラーセントラル「FBA在庫保管手数料」「長期在庫保管手数料」(2026年8月時点の掲載内容) |
| 筆者の実績値 | 筆者自身の取引記録に基づきます。当時の相場と条件のもとでの数字であり、同じ結果を保証するものではありません |
本記事は税務・会計の助言ではありません。筆者は税理士・公認会計士ではなく、記載は公表資料に基づく整理です。棚卸資産の評価方法、評価損の計上可否、低価法の適用、届出の要否などは、事業形態・申告方法・個別の事実関係によって変わります。実際の処理は必ず税理士にご相談ください。
最終更新:2026年8月30日

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