研究職はやめとけ?つらい・向いてないと言われる理由を統計で確かめる。辞めたいときの転職先と年収(計算機つき)

研究職はやめとけ?企業の自然科学研究費の77.8%は開発研究、研究者の年収の目安は802.0万円で機械技術者659.0万円・化学技術者641.7万円より高い。企業の研究者のうち博士は4.6% 生き方・キャリア

「研究職 やめとけ」「技術職 やめとけ」「開発職 やめとけ」「研究職 つらい」「研究職 向いてない」「研究職からの転職」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。

「研究職はやめとけ」と言われる理由のうち、公的な統計で確かめられるのは一部です。確かめられたのは、企業の自然科学研究費の77.8%が開発研究(基礎研究は6.9%)であること、研究者の年収の目安は平均802.0万円(42.5歳)で、機械技術者659.0万円・化学技術者641.7万円より高いこと、賃金構造基本統計調査の上では研究者の1か月の超過実労働時間が平均8時間で、比べた技術者(11〜20時間)より短いことです。ただし、77.8%は研究費の使い道の内訳で、研究者が自分でテーマを選べるかを直接示す統計ではありません。超過実労働時間も実際の負担の差を示すものではありません(裁量労働制の人の数え方は確かめていません)。「成果が評価されない」「人間関係が閉鎖的」「潰しが効かない」は、直接示す公的な統計が見つかりませんでした。

2024年度に企業の外へ転出した研究者は26,877人(うち親子会社へ4,781人)、外から転入した研究者は19,207人(うち親子会社から4,334人)で、親子会社間の移動も含まれます(科学技術研究調査 総括表第5表)。この人数から、転職のしやすさや成功率は判断できません。研究職以外の職種の年収の目安は、弁理士などを含む法務従事者の平均981.1万円、経営コンサルタントなどを含む、その他の経営・金融・保険専門職業従事者の平均1,134.6万円のように研究者より高い平均もあれば、ソフトウェア作成者の平均578.5万円のように低い平均もあります。年齢はそろっておらず、転職した人の年収ではありません。雇用動向調査の集計対象となった転職入職者のうち、前職より賃金が減った人は31.0%です(研究職だけの値でも、年収の減少率でもありません)。

知りたいこと 答え 章
研究職はやめとけと言われる理由 やりたい研究ができない・成果が評価されない・キャリアが狭まる・人間関係が閉鎖的・学歴と学費の負担、などが挙がる。公的な統計で確かめられるのは研究費の中身・年収・労働時間・研究者の移動など一部 2章
やりたい研究ができないのか 企業の自然科学研究費の77.8%は開発研究、基礎研究は6.9%。1社あたりの研究開発費の57.5%は期間1〜3年の短期、74.9%は既存事業向け(平均)。ただし研究費の使い道の内訳で、研究者が自分でテーマを選べるかを直接示す統計ではない。テーマを選べる割合の公的な統計は見つからなかった 2-2
研究職の年収は低いか・勝ち組か 研究者の年収の目安は802.0万円(42.5歳)。機械技術者659.0万円・化学技術者641.7万円より高く、システムコンサルタント・設計者889.0万円より低い。勝ち組の公的な基準はない 2-6
残業は多いか 賃金構造基本統計調査の上では、研究者の超過実労働時間は月8時間(6月分の平均)で、比べた技術者(電気・電子・機械技術者16時間、輸送用機器技術者20時間など)より短い。実際の負担の差を示すものではない(裁量労働制の人の数え方は未確認) 2-5
研究職からの転職は難しいか 転職のしにくさを直接示す公的な統計はない。2024年度の企業の研究者の転出26,877人・転入19,207人には親子会社間の移動も含まれ、この人数から転職のしやすさや成功率は判断できない 2-4
研究職から転職するなら何があるか 研究職の会社を変える、社内で異動する、研究職以外に移るの3つ。研究職以外の職種の年収は、令和7年賃金構造基本統計調査で並べられる 4章
転職すると年収は下がるか 雇用動向調査の集計対象となった転職入職者で、前職より賃金が増加40.8%・減少31.0%(研究職だけの値でも、年収の減少率でもない)。50〜54歳から上の年齢階級では減少が増加より多い 4-4
研究職に向いてないか 適性の公的な判定はない。job tag の「仕事の性質」で、つらい条件が研究者系の職業とほかの職業でどう違うかを並べられる 3章
自分の場合 理由ごとの統計、向いてる・向いてないの切り分け、職種別の平均が10年同じと仮定した参考の比較(残る・異動・転職)、転職先ごとの年収を計算機で 6章

1. 先に、この記事の数字と、書いている人について

私は研究職に就いたことがありません。大学でも、卒業研究が必修ではなかったので研究室に所属しませんでした(その話はゼミ・研究室に入らないとどうなる?に書きました)。研究職の経験がないので、2〜4章の数字はすべて公的な資料から取り、私の考えは5章に分けて書きました。

企業の研究者の数・研究費・採用と転出は、総務省の「科学技術研究調査」(2025年調査。研究者数は2025年3月31日現在、研究費と人の動きは2024年度)です。研究開発費の期間と目的、博士の採用は、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の「民間企業の研究活動に関する調査」(2025年度調査、2024年度の値)と「科学技術指標2025」から取りました。年収と労働時間は、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査の職種別の表(職種第1表)から計算しました。仕事の性質・興味・学歴は、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の値です。

数字の書き方:原文にある数字はそのまま、出典の数字を割ったり掛けたりしただけの値は「計算」、資料を組み合わせた読み取りは「当てはめ」と書きます。確かめられなかったものは「見つからなかった」と書きます。「やめとけ」と言われる理由そのものは、検索結果の上位の記事に共通して出てくる言い方を見出しにしただけで、その記事の数字は使っていません。

2. 「研究職はやめとけ」と言われる理由を、統計で確かめる

2-1. 企業の研究者は52.6万人、8割が製造業

科学技術研究調査で、2025年3月31日現在の企業の研究者は526,300人(前年比0.5%増)です。産業別では製造業が436,400人で、企業の研究者全体の82.9%を占めます。この調査の「研究者」は、調査票で「大学(短期大学を除く。)の課程を修了した者、又はこれと同等以上の専門的知識を有する者で、特定のテーマをもって研究を行っている者」とされ、「管理者のうち研究経歴のある者は「研究者」に含めてください。」とあります。

2024年度の企業の研究費は17兆4303億円、研究者1人当たりは3312万円でした。研究者1人当たりは前年度より7.6%増えています。

2-2. 「やりたい研究ができない」:企業の自然科学研究費の8割は開発研究

企業が自然科学に使った研究費(2024年度)を性格別に分けると、開発研究が77.8%、応用研究が15.4%、基礎研究が6.9%です(科学技術研究調査)。これは研究費の使い道の内訳で、研究者が自分でテーマを選べるかを直接示す統計ではありません。

NISTEPの民間企業の研究活動に関する調査(2025年度調査、2024年度の値)では、1社あたりの研究開発費の内訳の平均が次のとおりでした。

区分 平均 中央値
期間が1〜3年の研究開発 57.5% 60.0%
期間が3〜5年 25.4% 25.0%
期間が5年以上 17.1% 10.0%
既存事業向け 74.9% 84.0%
新規事業向け 25.1% 16.0%

期間は1,666社、事業別は1,711社の回答の、1社あたりの比率の平均と中央値です。企業の研究費の多くは、会社の事業に近い開発と、数年以内の研究開発に使われています(当てはめ)。

研究者が自分でテーマを選べる割合、研究テーマが中止・変更された割合を示す公的な統計は見つかりませんでした。「やりたい研究ができない」のうち確かめられるのは、企業の研究費が開発と短期・既存事業の研究開発に多く使われている、というところまでです。

2-3. 「成果が出ない・評価されない」:公的な統計では確かめられない

研究の成果が評価や処遇に反映される割合、研究開発の成果が事業化に至る割合を示す公的な統計は見つかりませんでした。NISTEPの調査(2025年度)の公表された表にも、研究テーマの中止や研究者の評価を扱った表は見当たりませんでした。

近い数字として、job tag の研究者系の4職業(薬学研究者・バイオテクノロジー研究者・情報工学研究者・土木・建築工学研究者)の「仕事価値観」(その職業で満足感を得やすい点、1〜5)は、「専門性」が4.0〜4.1で最も高く、「報酬や収入」は2.9〜3.5でした。「仕事の性質」の「結果・成果への責任」は3.3〜3.7で、経営コンサルタント3.7、データサイエンティスト3.7、医薬情報担当者(MR)3.6と大きくは違いません。job tag の値は、その職業の就業者へのアンケートに基づく平均で、研究者全体の代表値ではなく、会社ごとの評価の仕組みもわかりません。

2-4. 「キャリアが狭まる・転職が難しい」:公的な統計では確かめられない

科学技術研究調査の企業の値(2024年度)は次のとおりです。

項目 人数 内訳
研究者(2025年3月31日現在) 526,300人 製造業436,400人
新規採用 28,030人 うち博士号取得者1,217人
外部から転入 19,207人 会社から18,293人(うち親子会社から4,334人)、大学等から229人、公的機関から120人、非営利団体から54人、その他511人
外部へ転出 26,877人 うち親子会社へ4,781人

調査票では、「「転出研究者」とは、「【4】研究関係従業者」の「研究者」にあたる者で外部に転出した者をいいます。」とされています。同じ会社の中で研究部門からほかの部門に移った人は、この「転出」に入らないと読めます(当てはめ)。転出した人がその後も研究者として働いているかは、この調査からはわかりません。

転入19,207人のうち会社から移ってきた人は18,293人で、そのうち親子会社からが4,334人です。転出26,877人のうち親子会社へは4,781人です。この人数には親子会社間の移動も含まれます(科学技術研究調査 総括表第5表)。この人数から、研究職からの転職のしやすさや成功率は判断できません。

転職者実態調査(令和7年)では、「専門的・技術的な仕事」で転職者を採用した1,000人以上の事業所のうち、86.1%が「専門知識・能力があるから」、86.2%が「経験を活かし即戦力になるから」を採用の理由に挙げていました(3つまでの複数回答)。

一方で、前職が研究職だった人の転職のしやすさや、転職後の賃金を示す公的な統計は見つかりませんでした。job tag の自然科学系研究者等の有効求人倍率は0.32(令和7年度)ですが、これはハローワークの求人だけの値で、研究職の求人がどれだけハローワークに出ているかはわかりません。「研究職は潰しが効かない」を、公的な統計で確かめることはできませんでした。

2-5. 「残業が多い・人間関係が閉鎖的・病む」:統計の上では研究者の超過実労働時間は技術者より短い

令和7年賃金構造基本統計調査(6月分、一般労働者、企業規模10人以上)の1か月の労働時間の平均は次のとおりです。

職種 所定内実労働時間 超過実労働時間
研究者 159時間 8時間
化学技術者 158時間 13時間
機械技術者 162時間 16時間
電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く) 159時間 16時間
輸送用機器技術者 160時間 20時間
ソフトウェア作成者 159時間 12時間
他に分類されない技術者 159時間 11時間
システムコンサルタント・設計者 173時間 11時間

賃金構造基本統計調査の上では、研究者の超過実労働時間は月8時間で、比べた技術者より短くなっています。ただし、これは実際の負担の差を示すものではありません。研究開発の業務には専門業務型裁量労働制が使える場合があり、この制度が適用される人の労働時間をこの調査がどう数えているかは、確かめていません。就労条件総合調査(令和7年)で専門業務型裁量労働制がある企業は2.1%(1,000人以上の企業は8.7%)、適用を受ける労働者は1.1%です。2.1%は制度を採用している企業の割合で、研究職に適用されている割合ではありません(どちらも研究開発以外の業務を含む値)。

人間関係について、職種別の悩みの割合を示す公的な統計は見つかりませんでした。job tag の研究者系4職業の「仕事の性質」(1〜5)は、グループやチームでの仕事3.2〜3.9、対面での議論3.7〜4.1、外部の顧客等との接触2.4〜3.3、仕事上での他者との対立2.0〜2.6です。社外の人と接する度合いは、医薬情報担当者(MR)4.1、システムエンジニア(受託開発)3.7より低くなっています。

「研究職は病む」についても、研究職の心の不調の割合を職種別に示す公的な統計は見つかりませんでした。気分の落ち込みが続くときは、職場の産業医や医療機関に相談してください。

2-6. 「年収が低い」「研究職は勝ち組」か

令和7年賃金構造基本統計調査の職種第1表から、年収の目安(きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額、計算)を出すと、研究者は802.0万円(平均42.5歳、勤続12.5年)です。企業規模1,000人以上は836.9万円、100〜999人は731.6万円、10〜99人は627.4万円、男848.2万円・女641.8万円でした。この調査の「研究者」は、常用労働者10人以上の民営事業所の集計で、企業の研究者だけの値ではありません。

同じ表で、機械技術者659.0万円、化学技術者641.7万円、電気・電子・電気通信技術者703.9万円より高く、システムコンサルタント・設計者889.0万円、管理的職業従事者966.8万円より低い位置です。年齢・勤続はそろっていません。研究者の年齢別・企業規模別の年収と、低く感じる理由は研究職の年収はなぜ低い?に詳しく書きました。研究所の中の職位(主任研究員・主幹など)の序列は主任研究員・主幹・上席・主席研究員の違いにあります。

「勝ち組」を決める公的な基準はありません。年収の平均だけを見れば、研究者は技術者より高く、コンサルタントや管理職より低い、というところまでが言えることです。

2-7. 「学歴と学費の負担」:企業の研究者の博士は4.6%

科学技術指標2025で、企業の研究者に占める博士号保持者は4.6%(2024年)です。大学等は61.4%、公的機関は47.1%でした。企業の新規採用研究者に占める博士号保持者は、製造業3.5%、非製造業8.0%、医薬品製造業14.5%(2023年度)です。2024年度の企業の新規採用研究者28,030人のうち、博士号取得者は1,217人(4.3%、計算)でした。

NISTEPの調査(2024年度)では、博士課程修了者を「募集しており、応募があれば採用」する企業が35.5%、「募集していないが、応募があれば採用」する企業が42.2%で、合わせて77.7%でした(計算。公表された要点では「8割弱」)。

job tag の「実際に働いている人が多いと感じる学歴」(%。各学歴の割合の合計は100%を超える)は、薬学研究者で修士61.8%・博士56.4%、バイオテクノロジー研究者で博士79.2%、情報工学研究者で博士64.3%、土木・建築工学研究者で大卒59.1%でした。分野で大きく違います。大学院の学費は大学院の学費はいくら?、大学院生の就活の日程は大学院生の就活はいつから?に書きました。

2-8. 「技術職・開発職もやめとけ」か

技術職・開発職について確かめられたのは、2-5・2-6の平均の差です。機械技術者・電気・電子技術者・化学技術者は、研究者より年収の目安が低く(641.7〜703.9万円)、賃金構造基本統計調査の上では超過実労働時間が長い(13〜16時間)という平均でした。job tag の分析化学技術者は「同一作業の反復」が3.8で、研究者系4職業(2.5〜3.5)より高くなっています。仕事の中身は会社と部署で違うので、職種名だけで「やめとけ」かどうかは決められません。同じ「やめとけ」型の話でも、システムエンジニアについては「システムエンジニアはやめとけ」は統計上どこまで正しいかで別に確かめました。

3. 研究職がつらい・向いてないと感じたときの切り分け

3-1. 会社を変えれば変わることと、研究の仕事そのもの

「つらい」の中には、今の会社・部署の事情(テーマの決め方、上司、評価の仕組み、残業)と、研究という仕事の性質(成果が出るまで時間がかかる、正確さが求められる、同じ実験を繰り返す)が混ざっています。前者は研究職のまま会社や部署を変えれば変わる可能性があります。仕事の性質による負担も、分野・テーマ・進め方で変わるため、職種を変えずに軽くなる場合があります(当てはめ)。

3-2. job tag で見る、研究者系の職業とほかの職業の違い

job tag の「仕事の性質」(1〜5)で、研究者系4職業と、研究職から移る先として挙がりやすい職業を並べます。値は、その職業の就業者へのアンケートに基づく平均です。尺度の意味は job tag の数値の説明ページで公開されています。計算機2で出す研究者系4職業の平均は、この記事で出した4つの値の単純平均で、研究者全体の代表値や、個人の適性の判定ではありません。

職業(job tag) 目標の自己設定 チームでの仕事 外部の顧客等との接触 同一作業の反復 時間的切迫 競争水準
薬学研究者 3.6 3.9 3.0 3.2 3.1 2.8
バイオテクノロジー研究者 3.8 3.6 2.8 3.5 3.0 3.0
情報工学研究者 3.8 3.2 2.4 2.7 2.6 2.5
土木・建築工学研究者 3.8 3.3 3.3 2.5 2.5 2.1
分析化学技術者 3.7 3.4 2.9 3.8 3.1 2.0
生産・品質管理技術者 3.2 3.2 2.6 3.2 3.3 2.2
弁理士 3.9 2.2 3.0 2.6 3.3 2.3
医薬情報担当者(MR) 3.7 3.4 4.1 3.0 3.1 3.5
システムエンジニア(受託開発) 3.6 3.6 3.7 3.2 3.2 2.4
データサイエンティスト 3.9 3.6 3.1 3.0 3.2 2.7
経営コンサルタント 4.1 3.2 3.6 2.5 2.6 2.6

「目標の自己設定」は「優先順位や目標の自己設定」の略です。研究者系4職業の中でも値には幅があり、たとえば「チームでの仕事」は薬学研究者3.9、情報工学研究者3.2です。

スキルでは、研究者系4職業の上位(読解力・文章力・説明力・論理と推論が5.0〜5.9、0〜7)が、弁理士の上位(文章力5.9・読解力5.8)と重なります。データサイエンティストは「数学的素養」5.1が上位に入ります。営業の職業(OA機器営業・MR)は、傾聴力・説明力・交渉が上位です。

これは適性の診断ではありません。6章の計算機2で、つらいと感じる条件を選ぶと、研究者系の平均と比べて値が高い・低い職業を並べます。

4. 残るか、異動するか、転職するか

4-1. 社内で研究以外の部署に異動する

社内で研究部門から開発・生産技術・品質保証・知的財産・企画などに移る道があります。ただ、社内の異動の人数や、異動で給与がどう変わるかを示す公的な統計は、この記事では使える形で見つかりませんでした。

会社から研究以外の部署への異動を命じられた側の話(断れるか、断ったらどうなるか)は人事異動は拒否できる?に、仕事を与えられない状態になったときの話は窓際族とは?に書きました。

4-2. 他社の研究職に移る

他社の研究職に移った人の数や、移った後の年収を示す公的な統計は見つかりませんでした(2-4の転入・転出の人数には親子会社間の移動も含まれ、転職のしやすさは判断できません)。年収の目安は企業規模で違い、研究者の平均は1,000人以上836.9万円、100〜999人731.6万円、10〜99人627.4万円でした。大学に移る場合の職名と年収は、助教授と准教授の違いは?と准教授の年収はいくら?に書きました。

4-3. 研究職以外に転職する:転職先ごとの年収

令和7年賃金構造基本統計調査の職種第1表(企業規模10人以上、男女計)から、研究職から移る先として挙がりやすい職種の年収の目安を計算すると、次のとおりです。

職種(賃金構造基本統計調査) 年収の目安 平均年齢 研究者との差
研究者 802.0万円 42.5歳 ―
経営コンサルタントなどを含む、その他の経営・金融・保険専門職業従事者 1,134.6万円 39.4歳 +332.6万円
弁理士などを含む法務従事者 981.1万円 46.5歳 +179.1万円
システムコンサルタント・設計者 889.0万円 38.3歳 +87.0万円
企画事務員 736.8万円 43.0歳 -65.2万円
電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く) 703.9万円 42.1歳 -98.1万円
高等学校教員 666.1万円 43.9歳 -135.9万円
その他の営業職業従事者 660.7万円 42.4歳 -141.3万円
機械器具・通信・システム営業職業従事者(自動車を除く) 659.4万円 42.2歳 -142.6万円
機械技術者 659.0万円 42.3歳 -143.0万円
化学技術者 641.7万円 41.5歳 -160.3万円
他に分類されない技術者 611.9万円 43.9歳 -190.1万円
ソフトウェア作成者 578.5万円 37.1歳 -223.5万円

職種名は統計の分類なので、仕事の名前とは一致しません。job tag の職業ページに出ている年収は、この表の値と次のように一致します(計算で一致を確認):弁理士のページは弁理士などを含む法務従事者の平均981.1万円、経営コンサルタントのページは経営コンサルタントなどを含む、その他の経営・金融・保険専門職業従事者の平均1,134.6万円、医薬情報担当者(MR)のページはその他の営業職業従事者の平均660.7万円、データサイエンティストのページは他に分類されない技術者の平均611.9万円、システムエンジニア(受託開発)のページはソフトウェア作成者の平均578.5万円です。品質管理・品質保証や、社内の知的財産部門に当たる職種は、この表の職種名にありません。

どれも年齢・勤続のそろっていない平均どうしの比較で、転職した人の年収ではありません。弁理士などを含む法務従事者のように推計の労働者数が少ない職種は、企業規模や性別で分けると平均がぶれやすくなります。企業規模・性別ごとの値は、6章の計算機4で出せます。計算機では、推計の労働者数が1,500人未満の値に注意を出します。1,500人未満は、この計算機の注意表示の目安で、統計の信頼性の公式な境界ではありません。

4-4. 転職で賃金が下がる人の割合(年齢別)

雇用動向調査(令和7年)の集計対象となった転職入職者のうち、前職より賃金が増加した人は40.8%、変わらない人は25.5%、減った人は31.0%(うち1割以上の減少21.9%)でした。年齢階級別では、40〜44歳は増加44.9%・減少27.4%、50〜54歳は増加29.4%・減少42.0%で、50〜54歳から上の年齢階級では減少が増加を上回っています。研究職だけの値でも、年収の減少率でもありません。

転職がうまくいかなかったときの話は転職に失敗・後悔したら?に、45歳前後の転職の統計は45歳の転職は厳しい?に書きました。会社に辞めると伝えるときの理由の書き方は退職理由の書き方と伝え方にあります。

4-5. 研究職の働き方の決まり:裁量労働制と、無期転換の10年特例

研究開発の業務は、専門業務型裁量労働制の対象業務に入ります(「新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務」)。2024年4月1日から、この制度を適用するには本人の同意が必要になり、同意しなかった人を不利益に扱うことはできず、同意は撤回できます(厚生労働省の解説)。休日・深夜に働いた分は、みなし時間ではなく実際の時間に応じた割増賃金の対象です。

研究者の有期契約が無期契約に変わるまでの期間を5年から10年にする特例(科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律15条の2)は、大学等や研究開発法人と有期の契約を結ぶ研究者などが対象です。民間企業が自社の研究者と結ぶ有期契約は、大学等との共同研究開発に専ら従事する場合などを除いて、原則としてこの特例の対象外と読めます(当てはめ)。

5. 私の考え:研究職に就いたことがない私から見て

ここからは私の考えです。1章のとおり、私は研究職に就いたことがありません。2〜4章の数字とは分けて読んでください。

研究職に就いている人は尊敬しています。そのうえで、私の知る範囲では、研究職で出世して判子を押すような仕事が増え、「お金はいいが仕事がつまらない」と悩んでいる人がいます。家族がいると、違和感があっても損切りしにくいとも見ています。なので、研究職が一概に正解だとは思えません。

私は、大学で学んだことと仕事を盲目的に結びつけるのは機会損失だと考えています。大学で専攻したことを社会で使わない人のほうが多いと見ているからです。これは私の見方で、統計で確かめたものではありません。理系で身につけた仮説を立てて確かめる力や論理的に考える力のほうが、ほかの仕事にも使えると考えています。

私と同じ世代で、専攻にしがみついた人たちは、就職先の業績が悪化して部署が閉鎖されたり、配置転換されたりして、就職したときには勝ち組ともてはやされていたのに、いまはしんどそうに見えます。これは私の周りを見た話で、統計ではありません。

6. 計算機:やめとけの理由ごとの統計/向いてる・向いてないの切り分け/職種別の平均が10年同じと仮定した参考の比較/転職先ごとの年収

4つは別々に使えます。

  • 1. やめとけの理由ごとの統計:理由を選ぶと、公的な統計で確かめられる数字と、確かめられないことを分けて出します。「年収が低い」「残業が多い」では、企業規模・性別ごとの研究者の平均と、自分の年収・残業時間との差を出します
  • 2. 向いてる・向いてないの切り分け:つらい・合わないと感じる条件を選ぶと、job tag の値で研究者系4職業の範囲と平均、平均より値が高い・低い職業を並べます。適性の診断ではありません
  • 3. 職種別の平均が10年同じと仮定した参考の比較(残る・異動・転職):年齢、今の年収、比べる年数、収入のない期間、移る先の職種と企業規模を入れると、職種別の平均が比べる年数のあいだ変わらないと仮定して、残る・社内で異動・他社の研究職・研究職以外の4つの道の年収の合計(額面、万円の整数)と、自分の年齢階級の転職入職者の賃金の増減の割合を出します。転職後の収入の予測ではありません。転職先の値はその職種にすでに就いている人の平均で、転職した人の初年度の年収ではありません。異動で給与が変わる公的な統計はないので、異動は今の年収のままと置いています
  • 4. 転職先ごとの年収の比較:企業規模と性別を選ぶと、研究者を含む18の職種の年収の目安・平均年齢・勤続・労働時間を年収の高い順に並べます。自分の年収を入れると差も出します

初めから入っている値は入力の例(架空)です。出てくる金額は職種別の平均を使った試算で、転職した人の年収や採用を保証するものではありません。

やめとけの理由ごとの統計/向いてる・向いてないの切り分け/職種別の平均が10年同じと仮定した参考の比較/転職先ごとの年収の比較

入れた数字は、このページの中で使うだけで、どこにも送られません。初めから入っている値は入力の例(架空)です。4つは別々に使えます。

1. やめとけの理由ごとの統計

2. 向いてる・向いてないの切り分け

今の研究の仕事で、つらい・合わないと感じるものを「はい」にしてください。

3. 職種別の平均が10年同じと仮定した参考の比較(残る・異動・転職)

転職後の収入の予測ではありません。転職先の値はその職種にすでに就いている人の平均で、転職した人の初年度の年収ではありません。初めから入っている値(40歳・年収700万円・10年・化学技術者)は入力の例(架空)です。比べる年数は変えられます。

4. 転職先ごとの年収の比較

初めから入っている例で使うと、1は「やりたい研究ができない」の理由で、開発研究77.8%などの数字と、テーマを選べる割合の統計がないことを出します。2は「目標や優先順位を自分で決められない」と「社外の人と関わる機会が少ない」を選んだ例で、それぞれ経営コンサルタント4.1、医薬情報担当者(MR)4.1などが研究者系の平均より高い職業として出ます。3は架空の入力例(40歳・年収700万円・10年)で、残ると7,000万円、化学技術者の平均641.7万円が10年同じと仮定すると6,417万円(Aとの差-583万円)です。4は企業規模計・男女計で、経営コンサルタントなどを含む、その他の経営・金融・保険専門職業従事者の平均1,134.6万円から、ソフトウェア作成者の平均578.5万円までの18職種が並びます。

7. よくある質問

研究職はやめとけと言われるのはなぜですか?

よく挙がる理由は、やりたい研究ができない、成果が評価されない、キャリアが狭まる、人間関係が閉鎖的、学歴と学費の負担です。公的な統計で確かめられたのは、企業の自然科学研究費の77.8%が開発研究で、1社あたりの研究開発費の57.5%が期間1〜3年の短期という研究費の中身までです。これは研究者が自分でテーマを選べるかを直接示す統計ではありません。評価・人間関係・潰しの効かなさを直接示す統計は見つかりませんでした(2章)。

研究職は勝ち組ですか?

勝ち組を決める公的な基準はありません。研究者の年収の目安は802.0万円(42.5歳)で、機械技術者659.0万円・化学技術者641.7万円より高く、システムコンサルタント・設計者889.0万円、管理的職業従事者966.8万円より低い平均です(2-6)。

研究職はつらい・病むと聞きます。本当ですか?

研究職のつらさや心の不調の割合を職種別に示す公的な統計は見つかりませんでした。賃金構造基本統計調査の上では、研究者の超過実労働時間は月8時間で、比べた技術者(11〜20時間)より短くなっていますが、実際の負担の差を示すものではありません(裁量労働制の人の数え方は確かめていません、2-5)。つらさが続くときは、職場の産業医や医療機関に相談してください。

研究職に向いてない人の特徴はありますか?

適性を判定する公的な基準はありません。job tag では、研究者系の職業は興味の「研究的」が高く(薬学研究者4.2、情報工学研究者4.3など)、仕事価値観では「専門性」で満足感を得やすいとされています。何がつらいかを条件に分けて、計算機2で、ほかの職業と値を比べてください(3章)。

研究職からの転職は難しいですか?

転職のしにくさを直接示す公的な統計は見つかりませんでした。2024年度の企業の研究者の転出26,877人(うち親子会社へ4,781人)・転入19,207人(うち親子会社から4,334人)には親子会社間の移動も含まれ、この人数から転職のしやすさや成功率は判断できません。雇用動向調査の集計対象となった転職入職者のうち、前職より賃金が減った人は31.0%で(研究職だけの値でも、年収の減少率でもありません)、50〜54歳から上では減少が増加を上回ります(2-4・4-4)。

研究職から転職するなら、どんな仕事がありますか?

研究職のまま会社を変える、社内で開発・品質保証・知的財産などに異動する、研究職以外に移る、の3つです。研究職以外では、弁理士などを含む法務従事者の平均981.1万円、システムコンサルタント・設計者の平均889.0万円、その他の営業職業従事者の平均660.7万円(job tag の医薬情報担当者(MR)のページと同じ値)などがあり、研究者の平均802.0万円より高い職種も低い職種もあります。年齢はそろっておらず、転職した人の年収ではありません(4章)。

技術職・開発職もやめとけですか?

平均では、機械・電気・化学の技術者は研究者より年収の目安が低く、賃金構造基本統計調査の上では超過実労働時間が長くなっています。ただ、職種名だけで決められる差ではなく、会社と部署で違います(2-8)。

研究職の残業は多いですか?

令和7年の賃金構造基本統計調査の上では、研究者の1か月の超過実労働時間は平均8時間で、比べた技術者より短くなっています。ただし実際の負担の差を示すものではなく、裁量労働制が適用される人の時間がどう数えられているかは確かめていないので、自分の会社の働き方は就業規則と労使協定で確かめてください(2-5・4-5)。

8. まとめ

  • 「研究職はやめとけ」の理由のうち、公的な統計で確かめられるのは一部。企業の自然科学研究費の77.8%は開発研究、基礎研究は6.9%。1社あたりの研究開発費の57.5%は期間1〜3年、74.9%は既存事業向け(平均)。研究者が自分でテーマを選べるかを直接示す統計ではない
  • 成果が評価されない、人間関係が閉鎖的、潰しが効かない、を直接示す公的な統計は見つからなかった
  • 研究者の年収の目安は802.0万円(42.5歳)。機械技術者659.0万円・化学技術者641.7万円より高く、システムコンサルタント・設計者889.0万円より低い。超過実労働時間は賃金構造基本統計調査の上では月8時間で、比べた技術者(11〜20時間)より短いが、実際の負担の差を示すものではない(裁量労働制の人の数え方は未確認)
  • 2024年度の企業の研究者の転出26,877人・転入19,207人には親子会社間の移動も含まれる。この人数から転職のしやすさや成功率は判断できない
  • 企業の研究者の博士は4.6%。博士課程修了者を「応募があれば採用」する企業は77.7%
  • 研究職から移る道は、他社の研究職・社内の異動・研究職以外の3つ。研究職以外の職種の平均は578.5万〜1,134.6万円と幅がある(年齢はそろっておらず、転職した人の年収ではない)。雇用動向調査の集計対象となった転職入職者のうち、前職より賃金が減った人は31.0%(研究職だけの値でも、年収の減少率でもない)
  • つらさを「会社・部署の事情」と「研究の仕事の性質」に分ける。仕事の性質による負担も、分野・テーマ・進め方で変わる場合がある。計算機で自分の条件と数字を並べてから決める

9. 出典

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