「管理職 残業代」「名ばかり管理職」「管理監督者」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。
管理職だからという理由で残業代が出なくてよいのは、労働基準法41条2号の「管理監督者」に当たる場合だけです(裁量労働制や高度プロフェッショナル制度など、別の仕組みが使われている場合は別)。当たるかどうかは課長・店長といった役職名ではなく、職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金などの待遇の実態で判断されます(厚生労働省)。当たらなければ、管理職でも残業代が出ます(いわゆる名ばかり管理職)。管理監督者に当たっても、深夜(22時〜翌5時)の割増賃金は請求でき(最高裁 平成21年12月18日)、年次有給休暇もあります。法改正は、2025年1月の厚生労働省の研究会報告書が管理監督者の健康確保の措置と要件の明確化を検討すべきとしましたが、大臣は2025年12月26日に「令和8年通常国会での法案提出は、現在のところ考えていません」と述べ、2026年10月時点で管理職の残業代のルールは変わっていません。私は役職者(店長・リーダーなど)にも残業代を払っていました。利益が出ていたから払えた、というのが本当のところです。管理職の残業代が出ないのは、それをしないと利益が出ない会社が多いからだと見ていて、会社員である以上しゃあなし、と考えています。名ばかり管理職だと気づいたときにどうするかは、本人が決めることです。月給・手当・残業時間を入れると、残業代が出た場合の額、管理職手当との差、時給、名ばかり管理職のチェックを出す計算機を8章に置きました。
この記事は、管理職の残業代と、労働基準法の管理監督者の話です。管理職を降りたいときは降格願いの記事、課長・部長の年収と出世するかどうかは出世したくない人の記事に書きました。
| 知りたいこと | 答え | 章 |
|---|---|---|
| 管理職に残業代が出ないのはなぜか | 労働基準法41条2号の管理監督者は、労働時間・休憩・休日の規定が適用されないため | 2章 |
| 管理監督者でも出るものは | 深夜の割増賃金、年次有給休暇。会社は労働時間の状況を把握する義務がある | 2章 |
| 名ばかり管理職の見分け方 | 職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇の4つ。時給換算で部下や最低賃金を下回ると否定要素 | 3章 |
| 管理職は実際に残業しているか | 統計で記録された超過実労働時間は、課長級で月4時間、係長級で月15時間 | 4章 |
| 2026年の法改正でどうなるか | 2026年10月時点で、管理監督者の扱いを変える法改正はない | 5章 |
| 手当と残業代、どちらが多いか | 月給45万円・残業40時間なら、手当5万円に対して残業代は約13.8万円 | 6章 |
1. 先に、立場を書きます
私は社員やアルバイトを雇っていた側です。この記事は、その経験と、法律・厚生労働省の資料・判例・統計で書きます。
この記事のために、私は次のように答えました。
| 問い | 私の答え |
|---|---|
| 自分の会社で、役職者(店長・リーダーなど)の残業代をどう扱っていたか | 役職者にも残業代を払った |
| なぜ払ったのか | 利益が出ていたから払えた |
| 「管理職は残業代が出ず、時給で見ると下がる(罰ゲーム)」という声をどう見るか | それをしないと利益が出ない会社が多いのだと思う |
| そういう会社で管理職をしている人は、どうするのが筋か | 殆どの会社がそうだと思うので、会社員である以上しゃあなし |
| 自分が名ばかり管理職だと気づいた人に、どう勧めるか | 本人が決めること |
2. 管理職に残業代が出ない理由:管理監督者だけの例外
2-1. 労働基準法41条2号
労働基準法41条は、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(2号)について、労働時間、休憩、休日に関する規定を適用しないとしています。この人を管理監督者と呼びます。
労働時間の規定が適用されないので、1日8時間・週40時間を超えて働いても、時間外の割増賃金(37条1項)を払う義務がありません。休日の規定も適用されないので、休日に働いても休日の割増賃金の義務はありません。管理職に残業代が出ないのは、この例外を使っているからです。
なお、労働時間の規定の例外は管理監督者だけではありません。41条には農業・畜産・水産業などの事業に従事する人(1号)、行政官庁の許可を受けた監視・断続的労働の人(3号)もあり、高度プロフェッショナル制度(41条の2)では深夜の割増賃金の規定も適用されません。裁量労働制(38条の3・38条の4)では、決めた時間働いたものとみなされます。この記事は、通常の労働時間制度で働く管理職の話です。
2-2. 管理職と管理監督者は違う
厚生労働省のパンフレット「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」は、会社で管理職とされていても、労働基準法の管理監督者に当てはまらない場合があるとしています。管理監督者は「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」で、当てはまるかどうかは役職名ではなく、職務内容、責任と権限、勤務態様などの実態で判断します。
「課長」「リーダー」といった肩書きがあっても、自分の裁量で使える権限が少なく、多くのことを上司に決裁してもらう必要があったり、上司の命令を部下に伝えるだけだったりする人は、管理監督者とは言えない、というのが厚生労働省の説明です。
2-3. 管理監督者でも出るもの、あるもの
| 項目 | 管理監督者の場合 | 根拠 |
|---|---|---|
| 時間外の割増賃金 | なし | 労働基準法41条 |
| 休日の割増賃金 | なし | 労働基準法41条 |
| 深夜(22時〜翌5時)の割増賃金 | あり(25%以上) | 労働基準法37条4項、最高裁 平成21年12月18日 |
| 年次有給休暇 | あり。年10日以上の人は、会社が年5日を取らせる義務もある | 労働基準法39条、厚生労働省のパンフレット |
| 会社による労働時間の状況の把握 | あり(会社の義務) | 労働安全衛生法66条の8の3 |
| 医師の面接指導 | 対象になる(週40時間を超えた時間が月80時間を超え、疲労の蓄積がある人が申し出たとき) | 労働安全衛生法66条の8、規則52条の2・52条の3 |
最高裁第二小法廷は平成21年12月18日の判決で、管理監督者に当たる労働者も深夜割増賃金を請求できると判断しました(判決当時の37条3項、今の37条4項)。管理監督者だから深夜も含めて何も出ない、という扱いは誤りです。ただし同じ判決は、給料に一定額の深夜割増を含める趣旨が労働協約や就業規則などで明らかなら、その額までは別に払わなくてよいとしています。
3. 名ばかり管理職の見分け方
3-1. 厚生労働省の4つの観点
| 観点 | 管理監督者と言えるための中身(厚生労働省のパンフレットから) |
|---|---|
| 職務内容 | 労働時間・休憩・休日の規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容がある |
| 責任と権限 | 経営者から重要な責任と権限を委ねられている。上司の命令を伝えるだけではない |
| 勤務態様 | 時を選ばず経営上の判断や対応が求められる。労働時間を厳格に管理されていない |
| 賃金などの待遇 | 定期給与、賞与などで、一般の労働者と比べて地位にふさわしい待遇がされている |
3-2. 店長などの「否定要素」
厚生労働省は2008年9月9日の通達(基発第0909001号)で、多店舗展開する小売業・飲食業の店長などについて、管理監督者であることを否定する要素を示しました。
| 観点 | 否定要素 | 重み |
|---|---|---|
| 責任と権限 | 店舗のアルバイト・パートなどの採用(人選を含む)の責任と権限が実質的にない | 重要 |
| 責任と権限 | 解雇が職務内容に含まれず、実質的にも関与しない | 重要 |
| 責任と権限 | 人事考課の制度がある会社で、部下の人事考課が職務内容に含まれず、実質的にも関与しない | 重要 |
| 責任と権限 | 勤務割表の作成や、残業を命じる責任と権限が実質的にない | 重要 |
| 勤務態様 | 遅刻・早退などで減給や人事考課での不利益な扱いがある | 重要 |
| 勤務態様 | 人員不足でアルバイトの仕事をせざるを得ないなど、労働時間の裁量がほとんどない | 補強 |
| 勤務態様 | マニュアルどおりの部下と同じ仕事が、労働時間の大半を占める | 補強 |
| 待遇 | 時間単価に換算すると、店舗のアルバイト・パートなどの賃金に満たない | 重要 |
| 待遇 | 時間単価に換算すると、最低賃金に満たない | 極めて重要 |
| 待遇 | 基本給や役職手当が、割増賃金が出ないことを考えると十分でない | 補強 |
| 待遇 | 年間の賃金総額が、一般の労働者と同程度以下 | 補強 |
厚生労働省のQ&Aは、否定要素に一つでも当てはまれば管理監督者に当たらない可能性が大きいとしています。一方で、否定要素に当てはまらないからといって管理監督者だと認められるわけではなく、総合的に判断されます。通達は多店舗展開する小売業・飲食業の比較的小さな店舗の店長などを念頭に置いたもので、アルバイトの採用や店舗の勤務表のような項目は、部下のいない本社の管理職などにはそのまま当てはまりません。その場合は3-1の4つの観点で判断されます。時間単価で待遇を見る考え方は、ほかの職場で自分の扱いを確かめるときにも使えます。
3-3. 裁判例
日本マクドナルド事件(東京地方裁判所 平成20年1月28日判決)では、直営店の店長が管理監督者に当たらないと判断され、割増賃金の支払いが命じられました。店長の権限は店舗の中に限られ、経営者と一体的な立場とは言えないこと、シフトの都合で長時間の時間外労働を余儀なくされ労働時間の裁量があったとは認められないこと、賃金も管理監督者の待遇として十分とは言えないことが理由です(厚生労働省「確かめよう労働条件」の判例紹介)。
4. 統計:管理職は記録の上でどれだけ残業しているか
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査(役職第1表、企業規模10人以上、男女計)で、役職ごとの1か月の労働時間と給料は次のとおりです。
| 役職 | 所定内実労働時間 | 超過実労働時間 | きまって支給する現金給与額 | 所定内給与額 | 差(残業代など) |
|---|---|---|---|---|---|
| 部長級 | 165時間 | 2時間 | 646,200円 | 635,800円 | 10,400円 |
| 課長級 | 163時間 | 4時間 | 544,100円 | 529,200円 | 14,900円 |
| 係長級 | 162時間 | 15時間 | 445,400円 | 399,200円 | 46,200円 |
| 非役職 | 162時間 | 12時間 | 342,700円 | 310,500円 | 32,200円 |
記録された超過実労働時間は、係長級の月15時間に対して、課長級は月4時間、部長級は月2時間です。きまって支給する現金給与額と所定内給与額の差(時間外・深夜・休日の手当など)も、課長級は月14,900円で、係長級の3分の1以下です。
ただ、これは会社が調査に回答した時間と金額です。厚生労働省の調査のQ&Aは、残業時間にかかわらず毎月一定額の残業代を払っている場合は、超過実労働時間と超過労働給与額をどちらも0と記入するよう求めています。課長級の人が実際に月4時間しか残業していないかどうかは、この統計からは分かりません。記録された時間で割ると、課長級の1時間あたりのきまって支給する給与は約3,260円、係長級は約2,520円ですが、記録に出ない時間があれば、課長級の時給はそのぶん下がります。
5. 2026年の法改正:管理職の残業代はどうなるか
厚生労働省の労働基準関係法制研究会の報告書(2025年1月)は、管理監督者について次の2点を挙げました。
- 裁量労働制や高度プロフェッショナル制度と違い、管理監督者には労働基準法の制定時から特別な健康・福祉確保措置がない。その措置を検討すべきで、労働基準法以外の法令で定めることも選択肢
- 本来は管理監督者に当たらない労働者が管理監督者として扱われている場合があると考えられるので、要件を明確化することが必要
ただ、厚生労働大臣は2025年12月26日の記者会見で「令和8年通常国会での法案提出は、現在のところ考えていません」と述べました。厚生労働省の提出法律案の一覧で、2026年の特別国会と臨時国会に出た法律案を見ても、管理監督者の扱いを変えるものはありません(4月に出た労働者災害補償保険法等の改正案で労働基準法が変わるのは、災害補償の消滅時効の部分だけです)。
2026年10月時点で、管理職の残業代のルールは2章のとおりで変わっていません。「法改正で管理職にも残業代が出るようになる」という話は、今のところ決まったものではありません。
6. 手当と残業代の比較:割増賃金の計算方法
6-1. 計算の式
月給の人の割増賃金は、次の順で計算します(労働基準法37条、施行規則19条・21条、割増賃金の率を定める政令)。
- 時間単価=月給÷1年間の1か月平均の所定労働時間。家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時の賃金・1か月を超える期間ごとの賃金(賞与など)は月給に入れません。除くかどうかは手当の名前ではなく実質で判断し、たとえば距離や費用にかかわらず一律に払う通勤手当は除きません(富山労働局)。職責に対する管理職手当は除く賃金に入っていないので、管理監督者に当たらないなら、割増の基礎に入ります。
- 1か月平均の所定労働時間=(365日−年間休日)×1日の所定労働時間÷12。毎日の所定労働時間が同じ場合の簡易式で、曜日などで違うなら、1年間の所定労働時間の合計÷12で出します。
- 時間外(1日8時間・週40時間を超えた分)は25%増、月60時間を超えた分は50%増。法定休日の労働は35%増。深夜は25%を足します。所定労働時間が7時間の会社で8時間働いた1時間のように、法定の時間内の残業には、法律上の割増はありません。
管理職手当が、残業代の定額払い(固定残業代)として就業規則などで決められている場合は別です。厚生労働省は、固定残業代は通常の賃金の部分と割増賃金の部分を判別できる必要があり、法律の計算方法による割増賃金を下回るなら差額を払う必要があると説明しています(「確かめよう労働条件」Q&A)。その場合、手当は払われた残業代として扱われ、割増の基礎には入りません。
6-2. 例で計算すると
月給45万円(管理職手当5万円を含む)、年間休日120日、1日8時間、月の残業40時間、そのうち深夜5時間の場合です。
- 1か月平均の所定労働時間:(365−120)×8÷12=約163.3時間
- 時間単価:450,000÷163.3=約2,755円
- 名ばかり管理職なら出るはずの時間外の割増:2,755×1.25×40=約137,755円
- 管理監督者でも出る深夜の割増:2,755×0.25×5=約3,444円
- 管理職手当5万円は、時間外の割増で約14.5時間分
- 残業代が出ない場合の時給:450,000÷(163.3+40)=約2,213円。残業代がすべて出れば約2,908円
この例では、手当5万円に対して、出るはずの時間外の割増は約13.8万円です。手当が職責への手当なら、残業が月14.5時間を超えたあたりから、手当より残業代のほうが多くなる計算です。手当が固定残業代として決められているなら、この比べ方はできません。
7. 私の考え:払わないと利益が出ない会社が多い
7-1. 役職者にも残業代を払った。利益が出ていたから払えた
私の会社では、店長やリーダーなどの役職者にも残業代を払っていました。正直に言えば、利益が出ていたから払えた、ということです。
7-2. 罰ゲームの理由は、会社の利益
「管理職は残業代が出ず、時給で見ると下がる」という声について、私は、それをしないと利益が出ない会社が多いのだと見ています。殆どの会社がそうだと思うので、そういう会社で管理職をしているなら、会社員である以上しゃあなし、というのが私の考えです。
これは私の感想で、管理監督者に当たらない人に残業代を払わなくてよい、という意味ではありません。払わなくてよいのは2章と3章の条件に当たる場合だけで、当たらないのに払わないのは労働基準法37条の違反です。会社の利益が少ないことは、払う義務をなくす理由になりません。厚生労働省のパンフレットは、管理監督者に当たらない店長に時間外・深夜の割増賃金を払わず、37条違反で罰金刑になった例を紹介しています。
7-3. 名ばかり管理職だと気づいたら:選べる手
どうするかは本人が決めることです。選べる手と、それぞれの事実を並べます。
| 選べる手 | 事実 |
|---|---|
| 記録を残す | 出退勤の時刻、仕事の中身、採用・評価・勤務表の権限の実態、給与明細。会社には、管理監督者を含めて労働時間の状況を把握する義務がある(労働安全衛生法66条の8の3) |
| 会社の規程を確かめる | 就業規則・賃金規程で、管理監督者の範囲と管理職手当が何の対価とされているかを確かめる |
| 相談する | 労働基準監督署、都道府県労働局の総合労働相談コーナー |
| 請求する | 賃金の請求権の時効は、当分の間3年で、各支払日から数える(労働基準法115条、附則143条)。裁判所は、割増賃金の未払いに対して、労働者の請求で未払金と同じ額までの付加金の支払いを命じることができる(114条、違反から5年以内) |
| 管理職を降りる | 降格願いの出し方と、下がる給料は降格願いの記事 |
| 会社を移る | 年齢ごとの転職と年収の変わり方は45歳の転職の記事 |
| そのまま続ける | 手当と時給の差を8章の計算機で数字にしてから決める |
8. 計算機:手当と残業代の比較、時給、名ばかり管理職のチェック
月給・管理職手当・年間休日・所定労働時間・残業や深夜の時間を入れると、管理監督者に当たらない場合の割増賃金、管理監督者でも出る深夜割増、手当との差、時給、3年分の目安を出します。権限と待遇の質問に答えると、3章の否定要素のうち「重要」「補強」のどれに当たるかと、時給が最低賃金や部下の時給を下回るかも出します。最低賃金は都道府県ごとの額を入れてください。
管理職手当と残業代の比較、時給、名ばかり管理職のチェック
入力した数字は、このページの中で計算に使うだけで、どこにも送られません。通常の労働時間制度で、毎日の所定労働時間が同じ場合の計算です(変形労働時間制・フレックスタイム制・裁量労働制は計算の仕方が違います)。割増率は労働基準法と政令の最低の率(時間外25%、月60時間を超えた分50%、休日35%、深夜25%)で計算します。会社の規程がこれより高ければ、実際の額は増えます。
給料と労働時間
待遇と権限(名ばかり管理職のチェック)
8-1. 例
初期値(月給45万円、手当5万円、年間休日120日、1日8時間、残業40時間、深夜5時間)では、時間単価は約2,755円、名ばかり管理職なら出るはずの割増は月約14.1万円(時間外約13.8万円+深夜約3,400円)で、時間外の割増だけでも手当より約8.8万円多くなります。権限の質問で採用、解雇、遅刻・早退の扱い、方針の決定に「いいえ」と答えると、通達の「重要な」否定要素に3つ当たり、基本の判断基準に関わる答えが1つになります。
計算は法律の最低の割増率で、毎月同じ時間働いたとする仮定です。36か月分は単純な掛け算で、請求できる額ではありません。管理監督者に当たるかどうかを決めるものではありません。
9. よくある質問
管理職に残業代が出ないのは違法ですか?
管理監督者に当たれば、時間外と休日の割増賃金を払わなくても違法ではありません。当たらないのに払わなければ、労働基準法37条の違反です。管理監督者でも、深夜の割増賃金は払う必要があります。
課長は管理監督者ですか?
役職名では決まりません。職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇の実態で判断されます。部下の採用や人事考課に関わらず、出退勤を厳しく管理され、時間単価が部下を下回るなら、課長でも管理監督者に当たらない可能性が大きくなります。
管理監督者は、休日出勤しても手当が出ませんか?
休日の規定が適用されないので、法律で決まった休日の割増賃金を払う義務はありません。深夜に働いた分の割増は出ます。就業規則や労働契約で休日出勤の手当が決まっていれば、管理監督者でもその条件どおりに支払われます。
管理監督者に36協定は関係ありますか?
36協定は時間外・休日労働についての規定(労働基準法36条)なので、労働時間・休日の規定が適用されない管理監督者には、その上限の規制もかかりません。ただし、上限がないから何時間でも働かせてよいわけではありません。厚生労働省のパンフレットは、管理監督者も健康を害するような長時間労働をさせてはならないとしています。会社は労働時間の状況を把握する義務があり、長時間労働のときは医師の面接指導の対象になります(労働安全衛生法66条の8・66条の8の3)。
管理監督者でも、遅刻や欠勤で給料を引かれますか?
欠勤や遅刻のときの給料の扱いは、法律ではなく就業規則・賃金規程で決まります。厚生労働省の通達は、遅刻・早退で減給や不利な評価をされることを、管理監督者であることを否定する重要な要素としています。
管理監督者にふさわしい年収はいくらですか?
法律や通達に、金額の基準はありません。待遇は、一般の労働者と比べて地位にふさわしいかで見られ、時間単価が部下の賃金や最低賃金を下回ることは否定要素です。参考に、令和7年の賃金構造基本統計調査で、課長級の所定内給与額の平均は月529,200円、非役職は月310,500円です(企業規模10人以上、男女計)。ただし統計の「課長級」は会社の役職の区分で、管理監督者と認められた人の集まりではなく、年齢や勤続年数も違うので、この差を基準にはできません。
2026年に管理職の残業代はどうなりますか?
2026年10月時点で、管理監督者の扱いを変える法改正はありません。2025年1月の研究会報告書が健康確保の措置と要件の明確化を検討すべきとしましたが、大臣は2025年12月26日に、令和8年通常国会での法案提出は現在のところ考えていないと述べています。
10. まとめ
- 管理職に残業代が出なくてよいのは、労働基準法41条2号の管理監督者に当たる場合だけ。役職名ではなく、職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇の実態で判断される。
- 管理監督者でも、深夜の割増賃金(最高裁 平成21年12月18日)と年次有給休暇はある。会社には労働時間の状況を把握する義務がある。
- 採用・解雇・人事考課・勤務表の権限が実質ない、遅刻・早退で減給される、時間単価が部下や最低賃金を下回る、は名ばかり管理職の否定要素(2008年の通達)。一つでも当てはまれば、管理監督者に当たらない可能性が大きい。
- 統計で記録された超過実労働時間は、課長級で月4時間、係長級で月15時間。ただし会社が回答した時間で、実際の労働時間は分からない。
- 2026年10月時点で、管理職の残業代のルールを変える法改正はない。
- 私は役職者にも残業代を払った。利益が出ていたから払えた。払わない会社が多いのは利益のためで、会社員である以上しゃあなし、と考えている。名ばかり管理職だと気づいたらどうするかは本人が決めること。
11. 出典
- e-Gov法令検索:労働基準法36条・37条・38条の3・38条の4・39条・41条・41条の2・114条・115条・附則143条、労働基準法施行規則19条・21条、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令、労働安全衛生法66条の8・66条の8の3、労働安全衛生規則52条の2・52条の3
- 厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」
- 厚生労働省「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」(平成20年9月9日 基発第0909001号)、「「管理監督者」の範囲の適正化に関するQ&A」
- 厚生労働省「基本給に含めた割増賃金って何?」(確かめよう労働条件)、富山労働局「「割増賃金の基礎となる賃金」と「最低賃金の対象となる賃金」は同じ?」
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査(全国)Q&A」Q3-9
- 最高裁判所第二小法廷 平成21年12月18日判決(平成21(受)440)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件:管理監督者に関する裁判例」(日本マクドナルド事件 東京地裁 平成20年1月28日判決)
- 厚生労働省(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 役職第1表」
- 厚生労働省「労働基準関係法制研究会報告書」(2025年1月)
- 厚生労働省「上野大臣会見概要(令和7年12月26日)」、「国会提出法案」、「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案の概要」
- 厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(令和8年9月3日)

コメント