選択と集中とは、やることを、しぼりこんで、えらんだものに、お金と、人と、時間を、まとめて入れる、という経営の考え方です。全部を少しずつやるより、勝てるところに、全部を入れる。1990年代の終わりから、日本の会社で、合言葉のように、使われてきました。
先に、書いておきます。私は、しぼることで、うまくいった経験も、しぼりすぎて、1回で大きく失った経験も、あります。仕入れ先は、全部ためしたあとで、数か所に、しぼりました。一方で、売り場の運営から、利用を制限されたことも、あります。この記事は、「しぼれ」とも、「分けろ」とも、言いません。どこをしぼって、どこを分けるかの、分け方を、書きます。
この記事では、意味と由来を先に書いて、そのあとで、計算機、私の例、決め方を書きます。
1. 選択と集中とは
1-1. 由来
もとになった考えは、経営学者の、ピーター・ドラッカーです。1964年の本『創造する経営者』で、「成果をあげるには、集中が必要だ」と、書きました。会社が持つ資源は、かぎられています。全部の機会に、少しずつ手を出すと、どれも、成果に、とどきません。
これを、大きな会社で、実際にやって見せたのが、アメリカのGEの、ジャック・ウェルチです。1981年に社長になると、「その業界で、1番か2番になれない事業は、直すか、売るか、やめる」という方針を、出しました。日本で「選択と集中」という言葉が広まったのは、この成功が、紹介されてからです。
1-2. 2つの、ことばの意味
| ことば | 中身 | むずかしさ |
|---|---|---|
| 選択 | やることを、えらぶ。同時に、やらないことを、決める | やめることが、むずかしい。もうかっている事業や、思い入れのある事業を、切ることになる |
| 集中 | えらんだものに、資源を、まとめて入れる | 外れたときに、逃げ場が、ない |
多くの人は、「集中」のほうを、見ます。本当にむずかしいのは、「選択」のほう、とくに、やめることです。すでに払ったお金や時間が、やめる判断を、じゃまします(コンコルド効果)。
1-3. 批判も、ある
日本では、選択と集中の失敗の例として、1つの製品の大きな工場に、投資を集中させたあとで、その製品の値段がくずれた電機メーカーが、よく、あげられます。えらんだものが当たっているあいだは、集中は、強い。外れたときは、集中していた分だけ、深く、落ちます。「選択と集中」は、正しくえらべることを、前提にした言葉です。その前提が、いちばん、あやしいのです。
2. 計算機:集中すると、期待値と、全部を失う確率は、どう変わるか
持っている資源(お金、時間)を100として、AとBの2つに、分けます。それぞれの、うまくいく確率と、うまくいったときに何倍になるかを、入れてください。外れたら、入れた分は、0になる、と置きます。
A うまくいく確率 % うまくいったときの倍率 倍
B うまくいく確率 % うまくいったときの倍率 倍
Aに入れる割合 %(残りは、Bへ)
この配分の、期待値 / 全部を失う確率:
半分ずつの場合:
全部をBに入れた場合:
はじめの数字は、仮の数字です。全部をAに入れると、期待値は180。ただし、40%の確率で、全部を、失います。半分ずつなら、期待値は150、全部を失う確率は、8%。全部をBなら、期待値は120、全部を失う確率は、20%です。
集中は、期待値を、上げます。同時に、全部を失う確率も、上げます。どちらを取るかは、「全部を失ったときに、もう1回、やり直せるか」で、決まります。やり直せるなら、期待値の高いほうへ。やり直せないなら、期待値をけずってでも、分ける。この考え方は、ケリー基準の記事に、くわしく、書きました。
3. 私の例
3-1. 全部ためしてから、しぼった
ブランド品を仕入れていたころ、私は、業者向けのオンラインの市場に、かたっぱしから、入会しました。全部、ためしました。最後に残ったのは、3つの市場と、ネットオークションです。ほかの市場は、出品の数が少なすぎて、競争がきつく、さらに、参加費を取られるので、1つの取引で利益が出ても、合計では、赤字でした。
ここで大事なのは、順番です。先に、広く、ためしています。はじめから1つにしぼっていたら、どれがよいかを、知らないまま、えらぶことに、なっていました。「選択」は、くらべる相手があって、はじめて、できます。
3-2. 商品も、売り方も、しぼった
あつかう商品の中心は、2つのブランドの、バッグでした。売り方も、いまの私は、2種類しか、使いません。すぐ買える値段をつける売り方と、1円から始めるオークションです。
種類をへらすと、判断の回数が、へります。この商品は、どちらで売るか。それだけです。仕事の環境も、同じです。20年近く、自宅で働いていますが、お金をかけて作りこんだのは、空気清浄機、いす、机の、3つだけです。
3-3. やらないことを、決めている
このブログでも、同じことを、しています。アクセスがあっても、読んだ人の次の行動につながらない記事は、むりに、もどしません。あるジャンルの記事は、全部すてると、決めました。検索する人が少ないテーマは、むりに、記事にしません。お金を払って習った理論の一部は、記事にしないと、決めています。
「やらないこと」は、決めて、書いておかないと、もどってきます。「せっかく、アクセスがあるのだから」「せっかく、書いたのだから」。この「せっかく」が出てきたら、それは、選択が、ゆらいでいる合図です。
3-4. 自分という資源も、しぼった
いちばん大きな選択は、物を売る側を、やめたことです。事業を大きくしようとすると、私は、相手にも、完璧を求めてしまいます。社員や、アルバイトを、育てられませんでした。一方で、相手も経営者で、結果が自分の収入に直結している人を伸ばすことには、適性があると、判断しました。だから、「自分でやればもうかる枠」を、人にわたす側に、回りました(くわしくは、比較優位の記事)。
3-5. しぼれていないものも、ある
正直に、書きます。FXの自動売買は、通算でマイナスなのに、まだ、やめていません。中途半端に本気でやったので、切れないのです。いまは、5万円の小さな口座で、試しているだけです。それでも、1章で書いた「やめることが、むずかしい」を、私は、自分で、やっています。
3-6. 売り場から、利用を、制限された
逆の失敗も、あります。在庫を持たずに売る方法をやっていたころ、私は、売り場の運営から、利用の制限を、受けました。制限を受けた売り場の売上は、そこで、止まります。売り場は、自分のものでは、ありません。ルールを決めるのは、相手です。
2章の計算機で言えば、「全部を失う確率」のほうです。商品や、売り方は、しぼっていい。けれど、「それが止まったら、全部が止まる」という1点に、全部をのせては、いけません。何が起きうるかは、テールリスクの記事に、書きました。
4. どこをしぼり、どこを分けるか
| しぼって、よいもの | 分けておくもの | |
|---|---|---|
| 見分け方 | 自分で決められる。外れても、やり直せる | 相手が決める。止まると、全部が止まる |
| 例 | あつかう商品、売り方、書くテーマ、自分の時間の使い道 | 売り場、集客の入口、収入の出どころ、お金の置き場所 |
- 先に、広くためす:えらぶ前に、くらべる相手を、作ります。3章の1つ目です。
- やめる基準を、先に、決める:「何か月で、この数字にとどかなければ、やめる」。始める前に決めないと、やめられなくなります。
- やらないことを、書いておく:3章の3つ目です。
- いちばん得意なことでは、なく、あきらめるものが少ないことを、えらぶ:何をえらぶかの道具は、機会費用です。
- 全部を失う確率を、見る:2章の計算機です。期待値だけで、えらばないでください。
- えらんだあとも、見直す:えらんだ市場が、人であふれることも、あります(レッドオーシャン)。
5. まとめ
- 選択と集中とは、やることをしぼって、えらんだものに、資源をまとめて入れる考え方です。ドラッカーの「集中」と、GEのウェルチの方針が、もとになっています。
- むずかしいのは、集中より、選択です。とくに、やめること。
- 集中は、期待値を上げて、同時に、全部を失う確率も、上げます。
- 私は、仕入れ先、商品、売り方、書くテーマ、自分の役割を、しぼりました。一方で、売り場から、利用を制限されたことも、あります。
- 自分で決められるものは、しぼる。相手が決めるものは、分ける。
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【免責】この記事のFXの話は、私の経験の説明で、売買をすすめるものでは、ありません。FXは、元本を大きく失うことが、あります。

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