東京の家賃は高すぎる?20〜29㎡で名古屋の1.5倍、20代の給料の差で埋まるかを統計で確かめた(計算機つき)

東京の家賃は高すぎる?23区の20〜29㎡は平均7.5万円で名古屋の1.53倍:狭い部屋で家賃の請求書を見て悩む女性 生き方・キャリア

「東京 家賃 高すぎる」で調べて来られた方に、先に結論を書きます。

東京23区の借家の家賃は、20〜29㎡(1Kや1DKくらいの広さ)の平均で月7万5,264円です。名古屋市の1.53倍、大阪市の1.40倍、福岡市の1.61倍、札幌市の1.82倍に当たります(総務省の住宅・土地統計調査、2023年10月。管理費を除いた、住んでいる人が払っている家賃)。建った時期をそろえても差は残り、2016〜2020年に建った民営借家(鉄筋コンクリートなどの非木造)の1畳当たり家賃は、23区が名古屋市の1.62倍でした。23区で1981〜1990年に建った(築33〜42年の)貸家の1畳当たり家賃は、札幌・仙台・名古屋・広島・福岡など16の政令市の2016〜2020年に建った(築3〜7年の)貸家より高くなっています。給料の差で埋まるかは、年齢で変わります。20〜24歳では、東京で働く人の年収の目安は愛知より6.7万円高いだけで、20〜29㎡の家賃の差(年31.5万円)に届きません。25〜29歳で名古屋とほぼ同じになり、30〜34歳では東京の上乗せが家賃の差を大きく上回ります(どれも額面の平均どうしの比較)。そのうえ、23区の通勤時間は片道の中央値41.9分で、名古屋市・大阪市より約10分、福岡市・札幌市より約13分長く、民営借家の約半分は29㎡以下です。上京して「高いお金を払っている割に、得られるものが浅い」と感じだした人の感覚を、お金の面で数字が裏づけるのは、主に20〜24歳で名古屋市・福岡市・広島市と比べたときです。仕事の機会や人との出会いのような、お金以外に得られるものは測っていません。自分の家賃と年齢を入れて、ほかの都市と比べられる計算機を8章に置きました。

知りたいこと 答え 章
東京で一人暮らしをすると家賃はいくらか 23区の借家の平均で、19㎡以下が月6万2,070円、20〜29㎡が月7万5,264円(2023年、管理費を除く) 2章
ほかの都市と比べると何倍か 20〜29㎡で名古屋市の1.53倍、大阪市の1.40倍、福岡市の1.61倍、札幌市の1.82倍 2章
築年数をそろえても高いか 2016〜2020年築の1畳当たり家賃で名古屋市の1.62倍。23区の築33〜42年は、16の政令市の築3〜7年より高い 3章
給料の差で埋まるか 20〜24歳は名古屋市・福岡市・広島市と比べると埋まらない(名古屋市とは年24.8万円の不足)。25〜29歳で名古屋市とほぼ同じ。30〜34歳では東京が上回る(どれも額面の平均どうしの参考値) 4章
家賃を下げると何を手放すか 23区の民営借家の約半分は29㎡以下。古い家ほど寒さと傷みへの不満が多い。23区の通勤時間の中央値は家賃の帯が違っても片道約40分 5章
私の実測 関東で家賃を払って住んだ2か所と、次に住む名古屋市港区の候補 6章
東京に残るか、出るか 私は、一度は都会に住む価値があるが、強い成長意欲がある人に限られると考えている。出るなら、地元そのものより、その地域で一番勢いのある都市へ 7章

1. 先に、立場を書きます

この記事は、地方から東京に出てきて家賃を払っている学生や会社員に向けて書いています。東京に住み続ける前提で家賃を下げる方法(物件探しのコツや値下げの交渉)は扱っていません。数字は総務省・厚生労働省・国土交通省の公的な統計から取り、海外の研究は原文で確かめたものだけを使っています。

私自身は上京組ではありません。イギリスで生まれ、関東で育ち、東京の月島では親が買った家に20年住みました。家賃は払っていません。東京を満喫し尽くした側です。家賃を払って住んだのは、そのあとの横浜市の東戸塚と、いま住んでいる千葉市の海浜幕張です。上京した人と同じ立場で東京の家賃を払ったことはないので、東京の家賃は統計で見て、私の実測は関東の郊外の数字として6章に分けて書きます。

この記事を作るにあたって、次の問いに答えました。

誰に向けて書くか 地方都市から東京に引っ越してきた学生や会社員で、高いお金払ってる割に得られるものが浅いと感じだした層
今東京に住んでいる会社員に向けない理由 東京に今住んでいる会社員が読んでも、実行不可能な机上の空論になる
関東の住まいについての大局観 関東と同じ予算でエキチカでも、関東以外だと築浅が苦労することなく見つかる。そして駐車場も簡単に見つかる。関東だと駐車場付き物件がそもそも少ないし、オンボロ物件ばかり出てくる。人口密度もムダに高いため、狭くて古くて不便な生活を強いられる
古い家と暮らしの質 予算を下げればボロ屋に住まなければならず、ボロ屋はQOLを著しく下げる
私がこれからすること 名古屋への引っ越し、そしてその先に大阪への引っ越しを見据えている

2. 東京の家賃はいくらか:20〜29㎡で月7.5万円、名古屋市の1.5倍

総務省の住宅・土地統計調査(2023年10月)から、借家の広さ(延べ面積)別の1か月当たり家賃の平均です。家賃0円の住宅を除き、管理費・共益費は含みません。民間の賃貸だけでなく、公営住宅・UR・社宅なども含む「借家」全体の数字です。延べ面積は、部屋だけでなく玄関・台所・トイレ・浴室なども含めた専用部分の広さです。

地域 19㎡以下 20〜29㎡ 23区は何倍か(20〜29㎡) 23区との差(20〜29㎡、年)
東京23区 62,070円 75,264円 - -
横浜市 50,370円 62,168円 1.21倍 15.7万円
川崎市 53,417円 65,478円 1.15倍 11.7万円
さいたま市 48,511円 54,649円 1.38倍 24.7万円
千葉市 45,098円 49,954円 1.51倍 30.4万円
名古屋市 46,509円 49,043円 1.53倍 31.5万円
京都市 44,813円 53,279円 1.41倍 26.4万円
大阪市 45,155円 53,842円 1.40倍 25.7万円
神戸市 45,258円 50,930円 1.48倍 29.2万円
札幌市 41,415円 41,280円 1.82倍 40.8万円
仙台市 43,424円 46,386円 1.62倍 34.7万円
広島市 41,004円 45,985円 1.64倍 35.1万円
福岡市 39,418円 46,656円 1.61倍 34.3万円
熊本市 36,351円 39,211円 1.92倍 43.3万円
全国 46,520円 52,850円 1.42倍 26.9万円

20〜29㎡の部屋なら、23区は名古屋市より月2万6,221円、年31.5万円高くなります。福岡市とは年34.3万円、札幌市とは年40.8万円の差です。関東の中でも差は大きく、千葉市は名古屋市とほぼ同じ水準でした。

この数字は、2023年10月にその部屋に住んでいた人が払っていた家賃で、何年も前から住んでいる人の家賃も含みます。いま募集されている部屋の家賃とは違います。その後も東京都区部の民営家賃は上がっていて、総務省の消費者物価指数では、2026年9月に前年同月より2.2%高くなっていました。

3. 築年数をそろえても高いか:23区の築30年超は、名古屋・福岡の築浅より高い

2章の差には、建物の古さや設備の違いも混ざっています。そこで、建った時期をそろえて比べます。同じ調査から、民営借家(鉄筋コンクリートなどの非木造)の1畳当たり家賃です。1畳当たり家賃は、1か月の家賃を居住室の畳数で割ったものです。居住室には台所・玄関・浴室・トイレなどは入らず、洋室は3.3㎡を2畳として数えます。この表は2章と違って、家賃0円の住宅も含む数字です。

地域 2021〜2023年9月築 2016〜2020年築 2001〜2005年築 1981〜1990年築 23区は何倍か(2016〜2020年築)
東京23区 9,016円 8,383円 7,678円 5,751円 -
横浜市 7,212円 6,231円 5,181円 4,251円 1.35倍
川崎市 6,442円 6,436円 5,450円 4,669円 1.30倍
さいたま市 5,108円 5,133円 4,564円 3,525円 1.63倍
千葉市 5,592円 4,771円 4,199円 3,226円 1.76倍
名古屋市 5,210円 5,184円 4,034円 3,082円 1.62倍
京都市 5,824円 5,890円 5,056円 4,144円 1.42倍
大阪市 6,410円 6,149円 5,114円 3,965円 1.36倍
神戸市 6,162円 5,043円 4,817円 3,506円 1.66倍
札幌市 3,802円 3,722円 3,110円 2,664円 2.25倍
仙台市 4,855円 5,026円 3,915円 3,326円 1.67倍
広島市 4,620円 4,505円 4,026円 3,201円 1.86倍
福岡市 4,687円 4,499円 3,971円 3,120円 1.86倍
熊本市 3,874円 3,582円 2,690円 2,586円 2.34倍
全国 5,649円 5,177円 4,246円 3,543円 1.62倍

23区で1981〜1990年に建った貸家の1畳当たり家賃5,751円は、ほかの20の政令市のうち16市で、2016〜2020年に建った貸家の家賃を上回っていました。上回らなかったのは横浜市・川崎市・京都市・大阪市です。23区で築33〜42年の部屋に払う1畳の値段で、名古屋市(5,184円)・福岡市(4,499円)・札幌市(3,722円)なら、平均では築3〜7年の部屋が借りられる計算です。

この1畳当たり家賃は、家族向けの広い部屋も含めた平均です。1Kのような小さい部屋ほど1畳当たりの家賃は高くなるので、そのまま畳数を掛けると、一人暮らしの部屋の家賃は低めに出ます。そこで、2章の20〜29㎡の平均に、建った時期ごとの1畳当たり家賃と全体の比を掛けた試算をしました(8章の計算機と同じ方法です)。2章は公営住宅なども含む借家の延べ面積別、この比は民営借家(非木造)の居住室当たりで、違う集まりの統計を組み合わせています。建った時期による家賃の比がどの広さでも同じと置いた、調べた平均ではない試算です。2016〜2020年に建った20〜29㎡の部屋の試算は、23区が月88,503円、名古屋市が月65,089円、福岡市が月55,767円で、23区は名古屋市より年28.1万円、福岡市より年39.3万円高くなります。

どれも建った時期ごとの平均で、駅からの距離や設備はそろえていません。2021〜2023年9月に建った貸家は数が少なく数字が振れやすいので、主に2016〜2020年築で比べています。

4. 給料の差で埋まるか:20代前半は名古屋・福岡と比べると埋まらず、30代で逆転する

東京は家賃が高い代わりに、給料も高いと言われます。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)の都道府県別の数字で、年齢ごとの年収の目安(毎月のきまって支給する給与×12+前の年の賞与)を出しました。10人以上の会社で働くフルタイムの人(正社員以外も含む)の平均で、働いている事業所の所在地で集計されています。東京都の数字には、23区以外の東京都で働く人や、23区で働いて埼玉・神奈川・千葉に住む人も入っています。

働いている都道府県 20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳
東京都 388.2万円 500.2万円 605.3万円
神奈川県 372.9万円 473.4万円 553.2万円
愛知県 381.6万円 466.8万円 512.1万円
大阪府 360.6万円 446.4万円 494.8万円
福岡県 359.8万円 424.1万円 464.4万円
北海道 334.2万円 398.9万円 432.4万円
宮城県 349.2万円 424.6万円 459.7万円
広島県 355.8万円 420.8万円 478.5万円

この年収の差から、2章の20〜29㎡の家賃の差(年)を引いた参考値です。東京は23区の家賃、ほかは表の都市の家賃で、給料はその都市がある都道府県の数字です。給料は「その都道府県で働く人」、家賃は「その都市の借家に住む人」の平均で、比べている人の集まりが違います。年収は2025年、家賃は2023年の数字です。実際に手元に残る金額や、引っ越したときの損得を示すものではありません。

比べる都市 家賃の差(20〜29㎡、年) 20〜24歳:給料の差/参考値 25〜29歳:給料の差/参考値 30〜34歳:給料の差/参考値
名古屋市(愛知県) 31.5万円 +6.7万円/−24.8万円 +33.4万円/+1.9万円 +93.2万円/+61.7万円
大阪市(大阪府) 25.7万円 +27.6万円/+1.9万円 +53.8万円/+28.1万円 +110.5万円/+84.8万円
福岡市(福岡県) 34.3万円 +28.5万円/−5.8万円 +76.1万円/+41.8万円 +140.9万円/+106.5万円
札幌市(北海道) 40.8万円 +54.1万円/+13.3万円 +101.2万円/+60.5万円 +172.9万円/+132.1万円
仙台市(宮城県) 34.7万円 +39.1万円/+4.4万円 +75.5万円/+40.9万円 +145.6万円/+111.0万円
広島市(広島県) 35.1万円 +32.4万円/−2.7万円 +79.4万円/+44.3万円 +126.8万円/+91.7万円

20〜24歳では、東京の年収の目安は愛知より6.7万円高いだけで、23区と名古屋市の20〜29㎡の家賃の差31.5万円の約2割です。福岡・広島と比べても、給料の上乗せは家賃の差でほぼ消えます。一方で、大阪市・札幌市・仙台市と比べると、20〜24歳でも少しプラスが残ります。25〜29歳では、名古屋市と比べてほぼ同じ(+1.9万円)で、ほかの都市とは東京が年28〜61万円上回ります。30〜34歳になると、名古屋市と比べても東京が年62万円上回りました。

読むときに気をつけてほしい点が3つあります。

  • 給料の差は額面(税と社会保険料を引く前)です。家賃は手取りから払うので、手取りどうしで比べると、東京の上乗せはこの表より小さくなります
  • 都道府県の平均には、本社や大きな会社、給料の高い仕事がどこに多いかの違いが入っています。同じ人が東京から名古屋に移ったときに、給料がこの差の分だけ下がるという意味ではありません
  • 家賃の差は、どの年齢も一人暮らしの20〜29㎡で計算しています。広い部屋ほど差は大きく、40〜49㎡では23区106,488円、名古屋市57,837円で、年58.4万円の差です

家賃以外の物価も見ておきます。総務省の消費者物価地域差指数(2025年、全国=100)では、物価全体の指数は東京都104.2、愛知県98.0、大阪府99.9、福岡県98.5でした。そのうち住まいの費用の「住居」は、東京都129.8に対し、愛知県94.6、大阪府98.0、福岡県96.4です。東京は物価全体も少し高く、なかでも住居の指数が特に高くなっています。

平均で見ると、東京の上乗せは30代で大きくなります。ただし、この表は年齢ごとに別の人たちの平均を並べたもので、20代に東京で働いた人が30代で給料が上がるかどうか、東京で働いた経験がどれだけ給料を上げるかは、この統計からは分かりません。40代の年収を、物価と家賃で割って都道府県別に比べた数字は、40代の年収の平均と、物価と家賃で割った都道府県別に置いています。

5. 家賃を下げると、何を手放すか

23区で家賃を下げるには、広さ、建った時期、場所(23区の外)など、何かを譲ることが多くなります。駅からの距離や設備なども家賃にかかわりますが、ここでは統計で見られる広さ・古さ・通勤時間の3つを順に見ます。

5-1. 広さ:23区の民営借家の約半分は29㎡以下

住宅・土地統計調査(2023年)から、民営借家(店舗などとの併用でない専用住宅)の1住宅当たりの延べ面積と、29㎡以下の住宅の割合です。

地域 民営借家の1住宅当たり延べ面積 29㎡以下の割合
東京23区 37.6㎡ 48.3%
横浜市 40.8㎡ 39.8%
名古屋市 43.7㎡ 36.8%
大阪市 36.7㎡ 48.3%
京都市 36.8㎡ 50.4%
札幌市 45.1㎡ 23.9%
仙台市 40.7㎡ 40.0%
広島市 44.3㎡ 34.3%
福岡市 40.4㎡ 41.3%
全国 44.1㎡ 33.3%

23区の民営借家は、約半分が29㎡以下です。ただし、大阪市と京都市も同じくらい狭く、狭さは東京だけの話ではありません。広さの差がはっきりするのは、名古屋市・札幌市・広島市と比べたときです。

5-2. 古さ:古い部屋ほど、寒さと傷みへの不満が多い

同じ予算で23区に住もうとすると、3章のとおり古い部屋になります。古い部屋で暮らしの何が変わるかを、国土交通省の住生活総合調査(2023年)で見ます。住んでいる人に住まいの各要素の満足度を聞いた調査で、建った時期ごとの不満の割合(「多少不満」と「非常に不満」の合計。不明を除く)です。持ち家と借家を合わせた数字です。

建った時期 断熱性 いたみの少なさ 上下階・隣の騒音の遮音
1971〜1980年 61% 60% 32%
1981〜1990年 54% 51% 34%
1991〜2000年 42% 39% 31%
2001〜2005年 33% 31% 26%
2006〜2010年 27% 22% 25%
2011〜2015年 23% 17% 25%
2016〜2020年 23% 15% 24%
2021〜2023年9月 19% 14% 26%

断熱性への不満は、1981〜1990年に建った住宅で54%、2016〜2020年で23%と、2倍以上の差がありました。いたみの少なさも51%と15%です。一方で、上下階や隣の音への不満は、建った時期によらず24〜34%でした。古さで大きく変わるのは、寒さ・暑さと傷みです。

同じ調査で、すべての窓が二重サッシか複層ガラスの世帯は、断熱性への不満が21%で、そうした窓がない世帯は50%でした。ただ、住宅・土地統計調査(2023年)では、2021〜2022年に建った民営借家(非木造)でも、すべての窓が二重サッシか複層ガラスなのは全国で2割前後、23区では14〜17%です。借りるときは、築年数だけでなく窓を確かめる価値があります。

寒い部屋は体にもかかわります。慶應義塾大学の伊香賀俊治教授らの調査をまとめた国土交通省の審議会の資料では、室温が10℃上がると、起床時の血圧が30歳の男性で3.8mmHg、80歳の男性で10.2mmHg下がるという推計が示されています。若い人ほど影響は小さい推計ですが、ゼロではありません。

これから建つ部屋は、古くなっても今の古い部屋とは違う見込みです。2025年4月以降に着工する住宅などには省エネ基準への適合が義務になり、国土交通省は遅くとも2030年までに、基準をZEH(断熱と省エネと太陽光などで、使うエネルギーを実質ゼロ以下にすることを目指した住宅)水準へ引き上げる予定としています。20年後の築20年は、今の築20年より断熱の良い部屋が増えると考えられます。

5-3. 通勤:23区の中では、家賃の帯が違っても通勤時間の中央値は片道約40分

住宅・土地統計調査(2023年)から、家計を主に支える人が雇われて働いている世帯の、自宅から勤め先までの片道の通勤時間です。家族の世帯も含みます。1時間以上の割合は、時間が分からない世帯を除いて計算しました。

地域 通勤時間の中央値(片道) 1時間以上かかる人の割合
東京23区 41.9分 17.0%
横浜市 50.9分 35.8%
川崎市 49.2分 28.8%
さいたま市 52.3分 39.8%
千葉市 47.0分 36.0%
名古屋市 31.9分 12.4%
京都市 30.0分 16.2%
大阪市 32.4分 10.9%
神戸市 41.2分 23.5%
札幌市 28.0分 6.0%
仙台市 28.8分 7.7%
広島市 28.0分 8.7%
福岡市 28.6分 8.4%
全国 28.1分 15.2%

民営借家に住む世帯を、家賃の帯ごとに分けた通勤時間の中央値(片道)も見ます。

家賃(月) 東京23区 横浜市 さいたま市 名古屋市 大阪市 福岡市
4万〜5万円未満 40.4分 40.3分 34.6分 25.9分 29.0分 25.0分
5万〜6万円未満 39.8分 39.6分 40.5分 26.7分 29.3分 24.7分
6万〜7万円未満 40.2分 44.1分 41.4分 27.7分 27.2分 26.6分
7万〜8万円未満 39.8分 43.5分 47.0分 29.7分 30.0分 26.5分
8万〜9万円未満 38.4分 45.9分 51.5分 33.0分 30.9分 27.9分
10万〜11万円未満 39.4分 51.6分 55.9分 34.1分 31.2分 26.9分
12万〜15万円未満 40.9分 51.4分 54.8分 33.1分 30.4分 26.0分

23区の中では、家賃が月4万円台の世帯でも12万円以上の世帯でも、通勤時間の中央値は約40分でした。家賃の帯ごとに、勤め先や仕事、家族の形は違うので、同じ人が家賃を上げたら通勤が短くなるかどうかを確かめたものではありません。横浜市とさいたま市では、家賃の高い帯ほど通勤が長くなっていました。名古屋市・大阪市・福岡市は、どの帯でも24.7〜34.1分です。片道10分の差は、往復で年240日出勤すると、年80時間になります。

通勤時間と暮らしの満足度の関係は、日本の公的な統計にはなく、海外の研究で調べられています。原文で確かめられたものを3つ挙げます。

  • アメリカ・テキサス州の働く女性909人に1日を振り返ってもらった調査(Kahneman・Krueger、2006年)では、19の活動のうち、朝の通勤の気分(よい気分から悪い気分を引いた値)が2.09で最も低くなっていました
  • ドイツの約1万9,000人の追跡調査(Stutzer・Frey、2008年)では、片道1時間の通勤で、生活満足度が約0.2点(0〜10点)低くなっていました。平均の片道22分の通勤を満足度の上で埋め合わせるには、月に約470ユーロ(平均の月の労働所得の35.4%)の追加の所得が必要という試算です
  • アメリカ・テキサス州の4,297人の調査(Hoehnerら、2012年)では、通勤距離が長い人ほど、身体活動と心肺の持久力が低く、BMI・腹囲・血圧が高い傾向がありました

どれも海外の研究で、日本の通勤にそのまま当てはまるかは確かめていません。それでも、23区の通勤が名古屋市・大阪市より約10分、福岡市・札幌市より約13分長いことは、家賃や給料の数字には出てこない負担として入れておくべきだと私は考えます。

6. 私が関東で家賃を払った2か所と、次の候補

ここからは私の実測です。東京の月島では親が買った家に20年住み、家賃は払っていません。月島は立地が良く、どこへ行くにも無駄のない動線でした。そこを出てから家賃を払って住んだのが、次の2か所です。3列目は、次に住む予定の名古屋市港区の物件の掲載条件です。礼金・仲介手数料・更新料まで入れた比べ方は、賃貸探しで本当に高いのは家賃ではない話に書いています。

横浜市・東戸塚(民間の賃貸) 千葉市・海浜幕張(公社の賃貸、いま) 名古屋市港区(分譲賃貸、候補)
家賃 130,000円 118,000円 160,000円
管理費・共益費 6,000円 6,000円 10,000円
駐車場 14,000円(近隣で別契約) 11,000円 12,000円
月額の合計 150,000円 135,000円 182,000円
間取り・専有面積 3LDK・83㎡ 2LDK・70㎡ 3LDK・70.43㎡
築年数 築36年 築28年 築6年
駅から 徒歩20分 徒歩15分 徒歩5分

東戸塚は、駅から遠く、どこへ行くにも坂でした。スニーカーは3か月で擦り減り、車のタイヤも1年ほどで交換しました。駅は同じホームに行き先の違う電車が入り、ホームドアもありません。店は21〜22時に閉まります。入居して1週間で、ゴキブリが部屋に入ってきました。2か月で合わないと分かったのに、慣れるかもしれないと自分に言い聞かせて1年住み、違約金を払って出ました。住む場所を変えられなかった私の4件は、現状維持バイアスの記事にまとめています。

海浜幕張の公社の部屋は、家賃がエリアで一番安く、不満はあっても差し引きで出る理由がありませんでした。私は、住まいを満足度ではなく、払う金額と得るものの差し引きで決めています。動いたのは、この部屋を出て近くの分譲マンションに借りるか買うかで入ろうとしたときです。

  • 買うなら4,000万〜6,000万円。広さはあるが、築30年は分譲でももはや古すぎて、普通に住むのは無理だと感じた。直すのに1,000万〜2,000万円かかるので、それだけの投資をする価値はないと判断した
  • エレベーターが更新されていない物件や、修繕積立金が足りず壊れた設備を放置している物件がいくつもあった
  • 築浅は家賃22万円ぐらいで借りられるが、駐車場が空いていない

家賃を積んでも、「駐車場が空いていないタワマン」か「築30年超のオンボロマンション(駐車場は空いている)」の二択でした。管理が破綻したハリボテに家賃22万円はアホらしいと思い、名古屋への引っ越しを決めました。その先には大阪への引っ越しも見据えています。

名古屋の候補は、1㎡当たりで見ると今の部屋より高くなります(月額の合計を専有面積で割ると、海浜幕張は1,929円、名古屋の候補は2,584円)。私が払おうとしているのは広さではなく、築年数と駅からの距離と、空いている駐車場です。海浜幕張の近くの築浅は家賃だけで22万円ぐらいで、駐車場は空いていません。名古屋の候補は、管理費と駐車場代を入れた月額が18.2万円です(広さは同じではありません)。

風呂の大きさも、住む場所が変わるたびに下がりました。月島は1600サイズ以上、東戸塚は1450サイズ、いまの部屋は1350サイズで足が伸ばせません。

東京(月島)から千葉(海浜幕張)に移って、計画的に開発された街の良さを知りました。そのうえで、名古屋の2020年代に開発された計画的な街(港区)に移ることで、自分の生産性と幸福が最も大きくなるという確信を持ちました。この確信は、何度か引っ越しをしないと得られなかったと考えています。1回住んだだけでは分かりません。

7. 私の考え:東京に残る意味がある人と、出たほうがいい人

私は、人生で一度は都会に住む価値があると考えています。特に若いうちは、人との出会いや刺激で感性が変わります。ただし、競争が激しく毒もあるので、強い成長意欲がある人に限られます。私自身は、その競争に疲れ切って関東を出る側です。

上京して「高いお金を払っている割に、得られるものが浅い」と感じだしたなら、私は、今の短期的なしんどさは、古い世界への違和感や合っていないことを知らせる信号で、広い視野で住む場所を選び直す機会だと考えています。4章の数字でも、20〜24歳で名古屋市・福岡市・広島市と比べると、東京の給料の上乗せは家賃の差に届いていませんでした。

出ると決めたときに、地元そのものに戻る前に考えてほしいことがあります。その地域で一番勢いのある都市に、ワンルームでもいいので移るという段階の踏み方です。九州なら福岡市、それが難しければ熊本市、それも難しければ自分の市か隣の市で一番強い街です。私は、家賃はそこまで変わらないはずだと考えていました。2章の数字で確かめると、20〜29㎡の部屋の家賃は、福岡市46,656円と熊本市39,211円で差は月7,445円でした。23区と熊本市の差は月3万6,053円なので、九州のこの例では、地域の中心の都市に移る上乗せは、東京に出る上乗せの約5分の1です。ほかの地域でも同じ比になるとは限りません。この段階の踏み方は、田舎生まれのハンデの記事でも書いています。

世間から見れば、私は都落ち、関東落ちする人です。しかし私から見れば、関東にしがみついて、仕事のために住みたくもない家や待遇に甘んじているほうが、よほど不幸です。見下すつもりはありませんが、名誉ある敗北を受け入れて、それなら底辺でいいとすら思っています(同じ人間が場所によって底辺にも特権階級にもなる話は、底辺の人間とはの記事に書きました)。「田舎は観光で行けばいい」と言われますが、東京もまた観光で行けばいい、と私は納得しています。都落ちするから不幸になるのではなく、どの因数が自分に効いているかを見極めることが大事で、動き続ける暮らし方に対応できる場所に住めているかで幸福度が決まる、と考えています。

上京した人が地元に帰ると、お金と時間がどう変わるかは、地元に帰りたいのは甘え?の記事で、地元の都道府県ごとに比べました。2025年に東京都から東京圏の外へ出た20〜34歳は7万5,454人で、東京圏の外から入ってきた同じ年齢の人の5割強に当たる数です(日本人、総務省の住民基本台帳人口移動報告)。ただし、この数はコロナの時期の2021年に増えたあと毎年減っていて、何人が地元に帰ったのかは統計では分かりません。

8. 計算機:あなたの家賃と年齢で、ほかの都市と比べる

今住んでいる都市と比べたい都市、部屋の広さ、建った時期、年齢を選ぶと、同じ広さの家賃の差、同じ広さ・同じ時期に建った部屋の家賃の試算、年齢ごとの給料の差、通勤時間の差を出します。今の家賃を入れると、比べたい都市の建った時期ごとの試算と並べます(借りられる部屋があるかどうかの判定ではありません)。20の政令市と東京23区から選べます。

東京の家賃は高すぎるか:ほかの都市と同じ広さ・同じ築年数で比べる

入れた数字は、このページの中で計算に使うだけで、どこにも送られません。初めから入っている数字は入力の例です。自分の数字に置き換えてください。

9. よくある質問

東京で一人暮らしをすると、家賃はいくらですか?

総務省の住宅・土地統計調査(2023年10月)で、23区の借家の家賃の平均は、19㎡以下で月6万2,070円、20〜29㎡で月7万5,264円です。管理費・共益費は入っていません。住んでいる人が払っている家賃で、いま募集されている部屋の家賃とは違います(2章)。

東京はなぜ家賃が高いのですか?

公的な統計で確かめられるのは、土地の値段が高いことと、若い人が毎年入ってくることです。国土交通省の令和8年地価公示で、住宅地の平均価格は東京都が1㎡当たり50万6,700円で、愛知県12万2,700円、大阪府17万3,400円、福岡県7万8,300円でした。総務省の住民基本台帳人口移動報告(2025年)では、東京都は転入が転出を6万5,219人上回り、東京圏の転入超過は20〜24歳が8万443人と最も多くなっています。この記事では、この2つが家賃をどれだけ押し上げているかまでは確かめていません。

東京の家賃が高いのは、おかしいですか?

広さをそろえた平均家賃(20〜29㎡)では、23区は名古屋市の1.53倍、福岡市の1.61倍です。建った時期をそろえた1畳当たり家賃(2016〜2020年築)では、名古屋市の1.62倍、福岡市の1.86倍です(2章・3章)。高いのは確かです。一方で、30〜34歳では、東京で働く人の給料の平均と他県の平均の差が、20〜29㎡の家賃の差を上回っていました(4章、額面の平均どうしの参考値)。

給料が高いから、東京の家賃が高くても損ではないですか?

年齢と比べる都市によります。20〜24歳では、東京の年収の目安は愛知より6.7万円高いだけで、23区と名古屋市の20〜29㎡の家賃の差(年31.5万円)に届きません。25〜29歳で名古屋市とほぼ同じ、30〜34歳では東京が上回ります。どれも働く人と住む人という違う集まりの平均を比べた参考値で、手取りで比べると東京の上乗せはさらに小さくなります(4章)。

上京したことを後悔しています。地元に帰るべきですか?

私なら、地元そのものに戻る前に、その地域で一番勢いのある都市に移ることを考えます。20〜29㎡の家賃で、福岡市と熊本市の差は月7,445円、23区と熊本市の差は月3万6,053円でした。地域の中心の都市なら、東京に出たときほど家賃は上がりません(7章)。

10. まとめ

  • 23区の借家の家賃は、20〜29㎡の平均で月7万5,264円。名古屋市の1.53倍、大阪市の1.40倍、福岡市の1.61倍、札幌市の1.82倍(2023年、管理費を除く)
  • 2016〜2020年に建った民営借家(非木造)の1畳当たり家賃で、23区は名古屋市の1.62倍。23区の築33〜42年の貸家は、16の政令市の築3〜7年の貸家より高い
  • 給料の差は年齢と都市で変わる。20〜24歳は名古屋市・福岡市・広島市と比べると東京の上乗せが家賃の差に届かず(名古屋市とは年24.8万円の不足)、25〜29歳で名古屋市とほぼ同じ、30〜34歳では東京が上回る(額面の平均どうしの参考値)
  • 家賃を下げるには何かを譲ることが多い。23区の民営借家の約半分は29㎡以下。古い住宅ほど断熱性への不満が多い(1980年代築54%、2016〜2020年築23%)
  • 23区の通勤時間は片道の中央値41.9分で、家賃の帯が違っても約40分。名古屋市・大阪市より約10分、福岡市・札幌市より約13分長い
  • 私は、一度は都会に住む価値があるが強い成長意欲がある人に限られ、出るなら地元そのものより地域で一番勢いのある都市に移るのがよいと考える。福岡市と熊本市の例では、地域の中心の都市に移る家賃の上乗せは、東京に出る上乗せの約5分の1

11. 出典

12. あわせて読む

 

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